
Sam’s Detailing RUBBER & TRIM DRESSINGの色合いを見たとき、手が止まってしまいました。これは何色と形容すれば良いのだろうか、と考え始めてしまったのです。ブルーグレイには、間違いありません。それを直裁的に記したのでは、無粋かなと。
昔の音楽にヒントがあるはずだ、と思いました。菊池桃子の曲ではありません。松田聖子か……。「青い珊瑚礁」とは異なるし、「マイアミの午前5時」に出てくる海の色ともちょっとイメージが合いません。絶対なにかいい表現があるはずなのです。
最終的に、ぴったり符合する曲が見つかり、あまりにもマッチし過ぎて、その勢いで本稿を書いています。――柳ジョージ&レイニーウッド「青い瞳のステラ」です。
少年時代に流行っていた曲でした。情感あふれる柳ジョージのしゃがれ声がかっこよく、美しいメロディにうっとりしてしまったものです。しかし、当時は、歌詞の深い意味が分からず、涙することはありませんでした。涙腺が緩みやすい年齢になっていることに加え、今は一言一句歌詞の意味が分かり、かつその景色までもが鮮明に思い浮かびます。このため、曲を聴くと、寂しさが涙に負けそうになってしまいます。
この曲には、実話であるという話に加えて、いくつかの解釈がありますが、私なりの受け止めかたで梗概を記します。
舞台は戦後間もない頃の横浜です。多くの米国人が渡ってきた中に、青い瞳をしたステラがいました。彼女には、貨物船や港の盛り場で働いていた経験があり、米軍の将校にみそめられた経緯があってこの地に暮らしていました。
少年は、ブロンドが色褪せる年齢になっていたステラにかわいがられ、古い新聞紙に包まれた赤いキャンディをもらった忘れ難い思い出があります。
ステラは、豊かな胸に派手なペンダントを付けていて、遠くの船を眺めては、故郷テネシーの思い出を語るのが好きでした。異国の地で年老いていく寂しさを紛らわせていたのでしょう。望郷の思いが氾濫して涙が止まらない夜があったり、片言の日本語しか話せなくても、生きるために日本に残る道を選びます。
やがて、少年は青年となり、海を見ながら、ステラから教わったテネシー流のダンスステップを彼女の前で披露します。そして、つぶやくのです。青い瞳を細めながら上達した俺を褒めてくれよ、芝生の下で眠ってないでさあ、と。――1962年、夏のことでした。
原曲が素晴らしいのはもちろんですが、甲斐よしひろ、JAYWALK、BIGINなど、そうそうたる実力者達にカバーされていて、それぞれ感動します。どのボーカリストも主人公に感情移入して歌い上げているのが印象的です。わけても、あるカバー曲を聴くと涙があふれてしまうのですが、ここでそれを記すと物議を醸しますので、内緒でご容赦下さい。
YouTubeを少し探せば、ステラに会いに行けます。
Posted at 2022/06/30 06:48:46 | |
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Sam’s Detailing | 日記