久しぶりの記事ですが車以外のネタを。
知人より壊れて使えないというiphone5sを譲り受けました。
リカバリモードを繰り返し起動しない、いわゆるりんごループというやつだ。
脱獄をしたりメイン基盤(ロジックボード)が損傷をうけるとなるらしい。
脱獄はしておらず、バッテリーを自分で交換したら壊れたとのことです。
修理業者にも2件出したそうだが、いずれもメイン基盤に致命的な損傷があるということで修理不可と断られたらしい。
とりあえずiTuneにつないで復元を試みてみたところ不明なエラー(14)が出てiphoneが落ちる。
何度か試してみたがNG、たまに不明なエラー(9)も出た。
エラーコード14を調べてみるとデバイスとコンピュータ間のUSB 接続が中断されると出るエラーのようです。
ケーブルを交換→×
USBポート交換→×
間にハブを入れる→×
iTune再インストール→×
などなど、そのほか他の有志が試みている事をやってみたが全滅。
何度か復元を試していると、iphoneが落ちる時一瞬ブルースクリーンになっていることに気付きました。
ブルースクリーンで調べると、海外のサイトにメイン基盤の破損の情報があった。
そこには、ディスプレイとメイン基盤を接続しているコネクタを押さえているカバーのネジの取り付けを間違えると、回路に傷を付けブルースクリーンになるとものだった。
ネジのサイズは以下になります。
青→1.7mm
黄色→1.3mm
赤→1.2mm
赤〇の雌ネジの下に回路が走っていて1.2mm以外のネジを使用すると干渉して破損するようです。
知人にこの事を聞いたら、気にせずネジを付けたらしい・・・
これてメーカーがわざとやってるでしょ?
とにかく赤〇部の雌ネジを撤去して見ないことには破損の確認はできそうにありません。
ここからは引き返しが出来なくなる事を覚悟し、コテを当てて力を加えると数秒・・・根こそぎ雌ネジが取れました。
目視では何が何だかさっぱりです。
ここからは顕微鏡を使って確認していきます。
回路を傷つけないよう少しずつ表面を削り取っていきます。
徐々に回路が見えてきました。
中央に走るトラックは髪の毛より細いです。
更に、削ります。
全容が見えました。
やはりトラックが切断されています。
調べてみると7本ある内の4本が切断されていました。
中央にはうっすらネジの痕も見て取れます。
続いて切断されたトラックの修復に取り掛かります。
作業は顕微鏡を見ながらで、指どころかピンセットすら大きすぎて使えません。
裁縫箱から一番細い針を2本使って作業を行いました。
先ず、既存の回路にハンダメッキ処理を行います。
コテ先にハンダを馴染ませ、フラックスを塗った回路にやさしく擦り付けます。
フラックスを塗ることでトラック同士が繋がることなくハンダが薄く伸びます。
更に拡大して確認して見ます。
青色矢印はハンダメッキ時に繋がったようです。
黄色矢印と黄色線の3か所を繋げていきます。
リード線にはイヤホンコード内部のリッツ線を使用します。
この撚り線は非常に細いエナメルコーティングされた銅線の束でできています。
撚り線をほどき銅線1本を取り出し、ハンダメッキします。
修復箇所に合わせ、長さ出しして断線した個所にハンダ付けを行います。
と言っても直接コテを当てることはできないので、針先でリード線を押さえ、針をコテで加熱します。
トラックは非常に細い為、加熱しすぎると直ぐに剥がれます。
1,2秒程の加熱を数か所スポット的に行って、最後にヒートガンを使いリフローを行います。
リフローを行う際は患部以外が加熱されないように耐熱部材で覆う必要があります。
一通り修復が終わったら組み立てて動作確認です。
が・・・
私の場合1回では成功せず5回程、分解→修復→組立→動作確認をしました・・・
3回目ぐらいで「ここ以外にも破損個所があるのでは?」と疑いつつも憑りつかれたかのように手直しを繰り返しました。
見事復活を遂げた際は、喜びより一気に疲れが出ました。
修復には6時間程、2日に分けて作業をしました。
顕微鏡を使った作業など年に1,2回するかどうか程度ですが、その中でも高難易度の作業でした。
【今回の作業に必要な物】
・iphone専用特殊ドライバー
・精密ドライバー
・空割する際の吸盤 ※100均で調達
・ハンダコテ ※出来るだけコテ先が細いもの
・ハンダ、フラックス ※フラックスは必須です
・ヒートガン ※ハンダのリフローに使用
・ピンセット ※出来れば絶縁物
・顕微鏡 ※これが無いと無理です
・リード線 ※今回はリッツ線を使用
・養生テープ ※色々固定に使います
・カッター ※リード線の切り分け時に使用
・根気・・・ ※一番大事かも
【私的な総括】
今回の破損を引き起こしたネジですが、バッテリー交換ならず部品交換をする際は必ずと言っていい程取り外しが必要な部分です。
パッと見では解らない程度の長さの違いで、この長さでなければ製品上問題があるという物でもなく、ましてやネジ下に回路を仕込んであるなどメーカーが故意にやっていると思わざるを得ないものです。
写真を見てもらえば解るとおり、ネジ下を避けようと思えば可能なスペースは十分あります。
分解、改造をすると保障が効かないという話は良くあり理解できますが、分解をすると破損するトラップが仕掛けてあるっていうのは如何なものかと・・・
アフターで稼ごうと考えているメーカーのDIY潰しの1つといったところでしょうか。
ともかく空割りする際最初に外すネジが特殊ネジということからメーカーからの「開けるな!」という警告でもあるわけです。
ちなみに私はアンチAppleではありません。
【注意】
「同じ症状で困っている方は是非!」と言う作業ではありません。
特殊な工具も必要とする上、顕微鏡作業をこれまでやったことが無い方は恐らく無理だと思います。
当ブログを参考にチャレンジされる場合、自己責任でお願いします。
<2015/3/25>
後日・・・
一通りの機能チェックをしましたが、特に問題はなさそうです。
修復を施した箇所を裸にしておくか迷いましたが、落下や振動などによる耐久にも懸念がありますので、モールド封止することにしました。