
日本中を巻き込み震撼させ、未解決のまま時効となった昭和の「グリコ森永事件」。この事件をモチーフに綿密な取材と着想が織り交ぜられ、事件の真相と犯人像に迫る物語。フィクションでありながらノンフィクションのような重厚な展開が観る者を引き込んで行く。
時々映画を観るために高速バスで仙台を訪れる。
地元には映画館がないからね…。
2020年11月29日話題の「鬼滅の刃」をレイトショーで観た。前半は自分には眠くなるような展開だったが、後半は話題通りのデキでとてもよかった。
翌日、高速バス出発までの時間潰しにもう1本観ることにした。それがこの「罪の声」だった。一切の事前情報もなく、ただ何となく観た映画だったが…。
感動した。ものスゴくよかった。自分には、前日観た「鬼滅の刃」を遥か彼方に置き去る作品だった。あの時、時間潰しを選択した自分に感謝したい。
1984年当時、勤めていた工場のお昼休み。社員食堂の片隅にグリコの社員さんたちがお菓子の販売に来ていた。あの脅迫事件以降、お菓子を店頭に置けなくなったからだ。工場直送の安全なお菓子を袋詰めにしたセット販売。おカネのない若者だったが、時々買わせてもらった。頭を深々と下げ、大きな声をあげる社員さんたち…。嫌でも必死さが伝わってきた。あの時、裏側ではこの映画のようなことが起きていたのかも知れない。そう思うと感情移入も没入感も半端なものではなかった。
完全に余談だが、この当時の愛車はS130Zだった。安月給なのに車とパーツのローンにほとんど注ぎ込んでいた。ギリギリ残るのはガソリン代と煙草代くらい。寮生活だったからできた、若さだけが取り柄のガキだった。
あれから2年。その「罪の声」をAmazon Primeで発見し、もう一度じっくりと鑑賞した。そしてやっぱり泣いてしまった。ストーリーはもちろんのこと、共演の俳優さんたちが素晴らしい。あの人やこの人がほんのワンシーンや数分の出番のために出演している。この作品の重厚さは強力な脇役さんたちによって支えられているのだろう。特に宇野祥平さんの演技はスゴかった。いや、凄まじかったと言うべきか。”35年間の地を這うような生活”が滲み出るような演技だったと思う。
エンドロールで流れる主題歌、Uruさんが歌う「振り子」もまた素晴らしい楽曲だ。人生を「振り子」に例え、今は悪い方に振られていてもいつか必ずいい方へと振られる時が来る…そんな希望を歌っている。まさにこの映画にピッタリだと思った。Uruさんのどこかアンニュイで透明な歌声がとてもいい雰囲気で大好きになった。いつかライブに行ってみたい。
当時を覚えている方、思い出せる方にはオススメできる作品だと思う。いや、あの事件を知らなくても十分に見応えはある。是非鑑賞してほしい。
Posted at 2022/11/14 00:17:28 | |
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