自動車メーカーのダイハツが、その会社の歴史で「たった一度だけ」販売した二輪車です。それがソレックス。
60歳以上のクルマ好きなら、恐らく分かるでしょうが、ソレックスという名前は、はい、その「ソレックス」です。フランスのキャブレターメーカーです。
キャブと言えば、日本のケイヒンかミクニ製が一流品でしょう、と今のバイク乗りは思いますが、1970年頃までは、まだまだ世界の有名メーカーの模倣をしていました。パクリではなく、キチンとライセンス料を払って作っていましたが。
例えばミクニは、戦前はイギリスのアマル型、戦後はフランスのソレックス型のキャブを作っていました。
その昔の一流キャブと言えば、アマル(英)、ソレックス(仏)、ウェーバー(伊)、デロルト(伊)などでしょうか。
で、そのフランスのソレックスが戦後すぐから製造していたシーラカンスのような50cc空冷モペッドが、これです。
めっちゃ非力。スピードは20km/hも出ません。
ですが、ヨーロッパでは、これが高校生の通学や、奥様のママチャリ代わりに、とても売れていました。
これに目を付けたダイハツが「これは日本の奥さん連中に売れるぞ」と輸入を決めます。
で、1976年からダイハツ店舗にて販売開始。販売直後はなかなか売れたようです。
ですが・・・、ダイハツはたぶん(クルマ屋だから)分かってなかったけど、日本のバイクメーカー各社も、実は、この「婦女子向けのカンタン原付」という需要を分かっており、水面下で、急ぎ、このジャンルの開発をしていました。
で、ダイハツ・ソレックス発売の直後に、ホンダがロードパル(ラッタッタ)を発売。追ってヤマハもパッソルを発売。
ここに日本の女性向けの簡単バイク、「ソフトバイク」ブームが起こるのです。
なので、フランスからやってきた「値段の割に、あまりに非力なママチャリバイク」は、途端に売れなくなってしまうのです。(当時、ロードパルが2.2馬力。これに対し、ダイハツ・ソレックスは僅か0.4馬力。そりゃ、ね)
販売期間は実質3年でした。
ヨーロッパとは違い、日本の市場においては、ダイハツの予想に反し、このモペッドはとても短命商品となったのでした・・・。
空冷2ストローク(オイル混合)50cc、前輪駆動。
メカ的には、どう見ても自転車のような車体に、前輪の真上にエンジンを搭載。
エンジンで直下の鉄ローラーを廻し、それを前輪のトレッド面に擦り付け、タイヤを廻します。
走行中、ペダルを踏むことで、自転車のように人力で後輪を廻して(エンジンの非力さをカバーすべく)加勢することができるので、その瞬間は二輪駆動とも言えます。
僕のは、実は僕にとって2台め。
1台目は、10年以上前、乗ってたんですが、お客さんに欲しいとねだられて、安価で譲ってしまいました。(その時は分かってませんでしたが、今思えば、とても程度が良い車体でした)
で、酒の席で「ソレックス、また乗りたいなぁ」なんて言ってたら、数カ月後、友人がボッロボロの物を見つけて持ってきてくれました。(ありがとうね!)
友人の気持ちも嬉しかったので、頑張ってレストアしましたよ、そりゃ。
で、とりあえず走るようにはなったのですが、あまりに錆が酷くて可哀そうな姿だったので、新車同様に戻す事は諦め、塗色も含めて、「お洒落なフランス車」のイメージで、まるっきり僕の好みでカスタムしました。