バラッドをお前に・・・

横浜市の外れから、川崎市の朝鮮学校に通っていたのだが



私は、この民族衣装の制服が大嫌いだった




駅のホームで、電車を待つ時は、絶対に先頭に並んではいけないと、親にも先公にも言われ、耳にタコだった




何故なら、朝の通勤通学の時間に、サラリーマンに背中を押され、ホームに落ちて危うく死にかけた女生徒がいたからだ





だったら、一目で朝鮮学校の生徒と解る




こんな時代錯誤の民族衣装の制服なんて廃止にすればいいのに・・・



































・・・キリトリ・・・








バラッドをお前に











昼休み、川猫メンバー達と屋上でタバコを吸っていると




「おい、お前ら勝手に、横浜抜けて鎌倉行ったろー」



浜連のナムルがやって来た



単車に乗ってる時は、敵同士だが、俺達は日本人の学校とは違うので、校内では横浜の奴等とは普通にダチだ





以前、集会でカチ会った時には、ナムルは大袈裟にやれたフリをしてくれ、思わず笑った事もある





まぁ、その辺の在日事情は、鬼のような怖いチームの先輩達も分かってくれてる




ようは、集会と浜連からバックレなきゃ良き








「行ったどころか、祭りみたいな騒ぎになってたぞ」




アンソンが、極楽寺について説明すると




「おかげで、次に来たら、全殺しって、こっちじゃ完全に戦闘モードだよ」





「そっちも、たまには入って来て、多摩川超えて都内まで行けよー」



アンソンとタメで、同じ黒猫のゼットンが言うと





「そんな事したら、お前らに挟みウチにされんだろが」


ナムルが言い返す





「そんな物騒な話題より、あのツッパた女は誰？」





屋上の手すりにもたれ、下を眺めていた、キムコが言ったので




アンソン達も下を覗き込むと




堂々と、遅刻して、チマチョゴリの上に、赤いスカジャンを羽織ってる、女が校門から歩いていた







「あーユンソナだよ、昔は、お前らと同じ土手だっただろ」






じぇじぇじぇ！


あの、大人しかったチビが？


あんなズベ公の不良に？






「集会も出てんぞ」



「マジか、あいつレディースなのか？」




「まさか、高校デビューには、そんな根性ねーよ」






「じゃあ、何で集会出てんのよ？」





「先輩の助手席で、ふんぞり返ってるだけだよ」




「あー乗っけてちゃんか・・」




この頃は、集会に出たいが為に、四輪で来る先輩の車に乗る女を、




「乗っけてちゃん」




と、現役の単車乗りや、レディースのスケバン達は揶揄していた







「俺らなんか挨拶してもシカトだよ、調子に乗りやがって」



ナムルは屋上から、唾を吐いた






「感じ悪りーな」




「先輩の女だから、何も言えねーけどな」




「ふーん」




アンソンは、ユンソナが校舎に入るまで上から見ていると





「俺もシカトしってけど、あの女には、川猫のオマエらは絶対に関わんなよ」





「なんで？」




「その先輩ってのが、ウチの頭なんだよ、変わったばかりだけどな」




ナムルのチームは浜連でもデカくて支部もあり、浜連の総長もナムルのチームだった




「総長も継いだの？」



キムコが質問




「まさか、総長は上大岡になった」




「上大岡も危ねーの多いよな」




「二期続けては、同じチームからは出来ねーんだよ」




「そうなんだ」


今度はゼットンが質問






「他所から、ウチばっかりって不平不満がでるだろ、ウチらみたいな連合ってのは、チームごとに決まりは別だし、紙一重だからな」






「なるほどなー、極道も間一回あけねーと、世襲出来ないっていうしな」




「へぇーそうなんだ、良く知ってんな？」




「どうせ、豚子ちゃんの受け売りでしょ」




「うるせー！」





「川猫みたいに、看板が一つの方がやっぱり纏まってるし、喧嘩や、どっかの支部がモメると、次の夜には、恐ろしい程の台数が集まるから羨ましいよ」






「こっちに移籍すっか？」


アンソンが、ふざけて誘うと






「そんな事、出来るワケねーだろ馬鹿っ！単車どころか団地に火付けられるって！」




「消化器に放火されたら、シャレになんねーな」





「ギャグじゃねーって馬鹿！」




「そういえば、オマエんとこレディースも結構いるよな」




ついでに、浜連では最大のナムルのチーム事情を聞いてみた





「レディースも結構いるけど、そっちの、女支部長の方が有名人だろ、っていうか、そんなに凄いのか？」





「鬼だよ・・・」



「死神かも・・・」



「だったら、メデューサだろ」



「デビルマンの女キャラって何だっけ？」



「シレーヌだよ！」























「まともに、目を合わせらんねーよな」





川猫メンバーが言いたい放題に豚美さんを表現すると












「マジかよー」


（;￣O￣）（;￣O￣）　ナムルは驚く








「女だけど、喧嘩で負けたの見た事ねーし」




「女でも、あの人に負けても、恥ずかしくねーよな」




「アレが男だったら、絶対〜CRSの総長だよ」




「俺なんか、バイト先で、いつも理不尽に殴れてるし」



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キムコが愚痴る


まぁ、本当の事なんだが・・





「パクちゃんが、優しい人に思えるよな」


最後にアンソンが言うと




「うん、うん、」


みんな同意して、うなずきマーチ



星五つの、川猫メンバーの豚美さんの評価が終わると









「黒猫のパクちゃんが、優しく感じるって、噂通りの、とんでもねー女なんだな」


ナムルが納得する




「だろー」





「とにかくよ、さっきのユンソナには、オマエラ川猫は関わるなよ」


　
ナムルは、もう一度アンソン達に、鍵を刺すように忠告した










夏が終わり、二学期だが


春のように眠くなる、欠伸がでるような


かったるい午後だった