みん友さんのお知り合いが
車両盗難被害に遭われた。
絶対に許せない犯罪である。
自分の事のように憤るのは、私も
盗難被害者であるという部分が大きい。
今回は備忘録もかねて自分の体験を書き綴ってみたいと思います。
(長文申し訳ありません)
今から15年前。
2000年1月。
当時は千葉県柏市に、後に結婚する事になる彼女と住んでいた。
乗っていた車は1年前に新車で購入した
ランサーエボリューション5。
マンションから200メートルほど離れた月極駐車場に止めていた。
その日は、とにかく寒い朝だった。
自分と違って定時出社の彼女が家を出る。
私はまだ布団の中でまどろんでいた。
と、家を出たばかりの彼女から携帯に着信。
「SADA?
昨日、車どっか別の場所に止めた?」
「いや?駐車場に止めたけど。
何で?」
「車無いよ!
盗まれちゃったんじゃないの?」
!!
いっぺんで目が覚める。
そんなバカな…
駐車場は駅までの通り道にあるので彼女が車がない事に気づき、すぐ電話をくれたのだ。
慌てて着替え、駐車場に行ってみると…
確かに愛車は忽然と消えていた。
一体なぜ…!?
パニックになりながらもまずは警察に電話。
なかなか来ない警官にイライラ。
15分後、チャリに乗った警官が到着。
やる気のなさそうな事情聴取にさらにイラつく。
そして。
「何か分かったら連絡します」
とだけ言われ、ろくに現場検証もしないまま、そそくさと帰ってしまった。
「本当にちゃんと探してくれるのだろうか…」
思いっきり不安に。
当時は
“車が盗まれる”なんて事は想像もしてなかったので車両保険に入っていなかった。
ランエボが盗難率の高い車という事さえ知らなかった。
だから、何のセキュリティも施していなかった。
「待ってるだけじゃダメだ」
そこから、愛車を探し続ける日々が始まる。
まずはレンタカーを借り、仕事が終わった後、夜中から朝まで付近を探し回る。
特に千葉は車両盗難が多く、外国人犯罪者のアジトになっている
ヤードも多い。
それらしい所を見つけては何か手がかりはないかと調べ回るが、高い塀に囲まれたヤードはとてもじゃないが中をうかがい知る事なんて不可能だった。
それでも諦めない。
ネットの盗難情報ページや各地のランエボチームへコンタクトし、盗まれた愛車の情報をアップしてもらった。
「自分の命の次に大切な愛車が盗まれました。
どんなささいな情報でもいいので、何かあったら連絡ください」
海外へ輸出される可能性も高いので、千葉や横浜、新潟などの港湾関係事務所にも電話し車体ナンバーを伝え照会してもらったりもした。
柏警察署にも毎日電話し捜査の状況を聞いた。
まぁ決まって
「特に進展はありません」
と返されるのだが。
・・・
1年前に買ったこの車。
「峠を楽しく走りたい」という思いから吸排気系、足回り、ブーストアップと手を加え、一週間前にナビを付けたばかりだった。
楽しくて楽しくて用もないのに毎日走り回っていた。
色んな峠を走ったし、東北までロングドライブした事も。
ローンはまだ2年分残っている。
絶対にもう一度自分の手に戻したい…
しかし、何の進展もないまま一ヶ月が過ぎてしまった。
知り合いによると…
「ランエボは中東とかで人気が高いから、専門のプロが盗んであっという間に船に積み込んで輸出しちゃうんだよ。
今頃は海外で走ってるんじゃない?」
返す言葉がなかった。
もはや、この一ヶ月で私は疲れ果ててしまった。
彼女から言われたのは
「SADA、この一ヶ月で別人みたいになっちゃったね。
このままだと体も心も壊すよ?」
レンタカー代も相当な額になってしまっていた。
でも諦めきれない。
ならば…
同じ車を買い直すか…
しかし。
当時のランエボは毎年ナンバリングを重ね、進化し続けていた。
自分が愛したエボ5はもう販売していない。
でも、ちょうど2世代後の
6.5(トミーマキネンエディション、通称トミマキ)が販売を開始している。
ベースモデルも同じCP系。
「こいつを買って、エボ5っぽくモディファイすればいいんだ!」
と発想の転換。
そうと決まればすぐに動く!
何せ当時のエボは限定生産で、うかうかしていると売り切れてしまう。
まずはエボ5を買った都内のディーラーへ。
しかし。
ローンの審査が通らない。
下取り車がないフルローン、さらに自分の収入に対して新車2台のローンは負担が大きいと判断されたようだ。
この“ローン審査に落ちた”という結果が、何か自分という人間自体を否定されたようで思いっきり落ち込む。
千葉のディーラーにも行ったが結果は同じ。
いったんは新車を諦め、エボ5や6を求めて中古車屋回りをしたが…
程度のいいエボ5や6は下手すると新車より高いという事実を知り断念。
そこで、目を付けたのがディーラーではなく低金利で新車販売を行うショップ。
あまりいい評判は聞かないが、審査はディーラーより甘いという。
さっそく申し込んでみると…
あっさりOK!
そこからはトントン拍子で事が進み、1か月後エボ
6.5が自分の元へ。
あの盗まれた日から2ヶ月半。
遂に戻ってきてくれた。
目の前のエボが涙でにじむ。
しかし、喜んでばかりもいられない。
何せ住んでいる場所は変わっていないので、またこのエボを同じ月極駐車場に止めるしかないのだ。
当然また窃盗団のターゲットになってしまう。
今度は絶対に盗ませない!!
納車と同時に、まずは某有名店で
セキュリティ取りつけ。
約30万円。
続いては、当時日本初のGPS+PHSを使った
衛星監視システムも装着。
(このシステムでトランクの半分くらい埋まってしまった)
これも約30万円。
更に月々使用料も発生。
そしてハンドルを着脱式にしたり、全てのキーシリンダーを抜いたりと、ありとあらゆる手を尽くした。
そのカスタマイズを自分のHPにアップしてたので、車雑誌の
「Option」から取材を受け記事になった事も。
セキュリティエキスパートなんて呼ばれてますw
さらに。
セキュリティが発砲し車に駆けつけた際、犯人と鉢合わせになる可能性もあると考え、強力な
スタンガンと
特殊警棒も購入。
いつしか
“盗ませない”というより
“犯人を捕まえたい”という気持ちの方が勝っていったのかもしれない。
同時に少しでも早く前のエボ5に近づけたいと、一気に吸排気系や足回り、ブーストアップ
まで手を付ける。
これら掛かった費用は全てカードなどの
借金。
気づくと毎月の支払いが車2台分と合わせ
数十万円になっていた。
これを払うために自分がしたのは…
仕事を3倍に増やす事。
シャア大佐もビックリ!?
住んでいるのは
千葉の柏。
仕事場は
東京。
帰れるのはよくて
週に1日。
ほとんど会社かカプセルホテルで寝る日々。
たまに家に帰っても、ひとたびセキュリティが発砲すれば夜中だろうが朝方だろうがスタンガンと警棒を持って車の元に飛んでいく。
駐車場が国道沿いにあったので、全てトラックなどの振動による誤報なのだが。
結局ここまで防御したのが功を奏したのか、この車を所持している3年間、窃盗未遂などは起きなかった。
しかし…
その3年間で自分自身は疲弊してしまった。
まさに
「何と戦っているんだ?」状態。
更に疲弊していたのは自分だけでなく
車もだった。
あまりにセキュリティに
電力が掛かりすぎ、走行中突然止まってしまったり、始動できないという日も多くなってしまった。
そして、3年目の車検を前に…
手放してしまった。
あんなに執着して手に入れた車だったのに。
でも、こんな車との付き合い方はやっぱり普通じゃないと分かったのだ。
これだけが理由ではないが、その後結婚した彼女ともわずか2年弱で離婚してしまっていた。
昨年他界した父が、生前よく言っていたのが
「お前はあの日から人生が狂い出したな」
そう。
大げさかもしれないが、たかが
車両盗難で人生が狂う人間もいるのだ。
だから今は。
もっと自然な気持ちで車と付き合おうと思っている。
盗まれる以前のように。
2年前、同じ千葉県柏市で、愛車のインプが盗まれるその瞬間に居合わせたオーナーが、犯人にひき殺されるという痛ましい事件が起きている。
そのインプは現場から60㎞離れた袖ケ浦市のヤードで発見された。
後日捕まった犯人たちは海外に盗難車を売りさばく
窃盗団のメンバーだった…
オーナーの無念を思うと胸が張り裂ける思いだ。
車両窃盗団の撲滅を切に願います…