ライダーの聖地北海道は,オープンカー乗りに取っても同じこと。
そこで私は,北海道移住を目論んでいると北国出身の人に明かしたところ,意外な反応が返ってきた。
その車高じゃ冬は亀の子になるよ!
亀の子?一瞬ピンとこなかったが,轍(わだち)に腹がつっかえて足をバタバタさせ動けなくなることだ。
確かに,これまで所有してきたクルマは,どれもスポーツカーばかり。
地を這うような低い車高が美しいと信じ,雪とは無縁の地でその優雅さを楽しんできた。
だが雪国では,その美しさが逆に仇となってしまうのだろう。
考えただけでも恐ろしい。
立往生して迷惑をかけるのも困るが,走り屋にとって「亀」と揶揄されるのは屈辱以外の何ものでもない。
走ることにプライドを持つクルマが,歩みの遅い亀のように見られるとは…
だが,そこで一つ閃いた。
亀ではないが,すっぽんならばどうだ?
すっぽんといえば,その力強い足取りと泥沼でも前進する粘り強さで知られる。
亀のように見えて,全く別物。
一度スリップストリームで尻に食いついたら,決っして放さない。
これこそ,冬の厳しい環境でも進むクルマの象徴ではないか!
そんなわけで,すっぽん鍋を食べに行くことにした。(単純)
個室に通されると,どこか懐かしい出汁の香りが漂い,食欲をそそる。
一献傾けながら待っていると,まず供されたのが,透明感のある黄金色のスープだ。
すっぽんのエキスが凝縮されたそれは,驚くほど旨味が深い。
ひと口飲むと,身体の芯から温まるような感覚が広がり,寒さの厳しい冬に備えるには打って付けだと思った。
次にお目当ての鍋が運ばれてきた。
大ぶりのすっぽんのぶつ切りが惜しげもなく並び,周りには長ネギ,白餅のシンプルな面々が脇を固める。
火が入るにつれ,出汁はさらに濃厚な香りを放ち,湯気とともに素材の良さを主張してくる。
その後,煮えた具材を次々と引き上げ,これまたエキスの溶け込んだ出し汁と共に口に運ぶ。
コラーゲンたっぷりのプルプルとした皮,程よい弾力のある身,そして野菜の甘み。
それぞれが絶妙に絡み合い,口の中で一つの完成形を作り上げる。
滋味深い味わいが,心も身体も満たしてくれる。
これから冬に立ち向かうためのエネルギーをたっぷりと補充した気がした。
すっぽん鍋を前にして,ふと思う。
亀のように立ち止まるクルマではなく,すっぽんのように粘り強くプルンプルン走るクルマ。
それは一体どんな姿をしているのだろうか。
鍋の熱気に包まれながら,冬を乗り切るための次なる愛車について,頭の中で思い描くのだった。
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