
一度も山登りの経験がない人なんて,いないと思うが,ちょっと思い返してみて欲しい。
山を歩いていると,すれ違う人,すれ違う人が,挨拶をしてくる。
だから自ずとこちらも挨拶を返す。
普段は斜に構えて,他人のことなど意に介さない奴さえ,山に行ったら挨拶をする。
昔から,信仰の対象とされてきた山は…
まるで,神仏に憑かれたように,登山者を人格者に豹変させ,心を解放し得る魔力を持っているのだ。
私も山登りにはよく行く。
前から迫って来るオープンカーが,自分と同じ車種なら,もちろんのこと…
同じメーカー,場合によっては同じ国籍でも,親指を立てて挨拶を交わす。
グッジョブ!イケてるね!あんたもね!
本来は同じクルマだから,自分のクルマを褒めているのに等しい。
それでも褒められた側は嬉しいし,そうなると,いずれにしてもウイン・ウインだ。
まぁ,同じ価値観を持った輩がいるだけで,自分の存在意義を見い出せる。
すなわち,同類相求む。同胞意識の好循環に繋がるのだ。
ところが,街で金色のプリウスの隣に金色のプリウスが並んでも,こうはならない。
もぉー恥ずかしいから早く行ってちょうだい!とか…
俺のは誰も見分けがつかねぇが,ディーラー限定車だから同じじゃねぇー!とそっぽを向く。
確かに売れ筋は,その数の多さから,個性が薄くなりがちだ。
しかし,それを気にする必要など全くない。
大切なのは,クルマを愛する心と,同じ愛情を持った仲間を尊重する心だ。
1日に何回もすれ違うロードスターや…
あるとき,山一面を覆いつくしたチンクエチェントに,遭遇したこともあるが…
逆に数の力で,同胞意識は非常に強い。
さぁ!恥ずかしがらずに,ぜひ山へ行き,一度その魔力に触れてみることをお勧めする。
グッジョブ!

A氏に連れて行かれたのは,南青山にある,中華料理『S(仮名)』。
二人掛けと四人掛けのテーブル席が,それぞれ二つずつあるだけの,隠れ家的な小さな店だ。
壁には,大きな水墨画と額に入った書が掛けてあり,唯一それが中華の店であることを主張している。
中華料理と一口に言っても,北京・上海・広東・四川など様々あるが,ここSが提供する料理は,「新中華料理ヌーベル・シノワ」。
何でもかんでもフランス語にすりゃいいってもんじゃないが,油を控えて素材の持ち味を活かした料理が,洋食器でコースのように,一品ずつ運ばれてくるのだそうだ。
季節ごとに最高の食材を惜しみなく,そしてさりげなくアレンジ。
そんなイメージの料理が満喫できる気になるお値段は,完全予約制のお任せコースのみで,お一人様二万円也。
くぅ~!否が応でも気分が高まってくるではないか。
なぜか紹興酒やパイチュウではなく,ワインで喉を潤していると…まずは,寒天に海老を閉じ込めた煮こごりの冷製前菜が並ぶ。
一口でいけるところをお上品に二口で平らげた。
そして待つこと10分。次に運ばれてきたのがフカヒレスープだ。
これまたチミっとだけで,こんなに大きなスプーンでは最後まで掬(すく)い切れない。
さて次は何だろう?隣の客を見ていると菜っ葉を食べている。
やってきたのはイカとチンゲン菜の炒め物。
さすがに自宅で作るクックドゥーよりは美味しかったが,メインディシュは何か別の普段は口にしないものが食べたい!
厨房から笑顔のウェイトレスが手にして来たのは,まるで興奮しているかのように湯気を立てた蒸籠。
恐る恐る蓋を開けてみると,可愛い小籠包が二個現れた。
どうやら私の心の叫びは,届かなかったようだ(涙)
そしてコースの最後を飾るのは,挨拶に出て来たシェフがわざわざ説明してくれた。
自家製の長ネギと地鶏の玉子,世界中から厳選した岩塩をブレンドしたシェフ渾身のチャーハンだそうで「締めの一品として,黄金に輝く力作をご賞味下さい」とのことだった。
資本主義の基本は競争社会だ。横並びのままでは発展はない。だからそこには格差が生ずる。
セレブな人たちは料理の味や量ではなく,出来上がるまでの過程や理屈に敬意とカネを払うのだ。
もっと言えば,一万円のモノに価値があるのではなく,一万円出すことに価値を見出すのだろう。
それを認識している(飲食店だけでなく)多種多様な業種が,ここ港区界隈に群がり金儲けを繰り広げる。
まさにコアな分配(循環)社会。これこそが経済なのだ。
そんなことを考えながら,チーズケーキ風の杏仁豆腐を口に運び思うのだった。
ああ早く帰って来来軒のチャーハンをたらふく食べたい!と…

ドン・キホーテ前のファミレスで,隣の席から何やら,うさん臭い会話が聞こえてきた。
会話の主は,上司らしき男と若い部下二人。
男;田中さんは,女装の趣味があるって噂,君たち聞いてないか?
A;実はですねー,いまって街中でタバコ吸えないんでー
B;そうそう吸えないしー,無理だしー
A;で,駅前の喫煙コーナーみたいなとこ,行ったんでー
男;それで?
A;で,その中にデカい女だなーと思ったんでー
B;え?それ違うしー,女じゃないしー
A;で,近づきましたら,なんか見覚えあったんでー
男;田中さんだったのか?
A;で,ファンデでヒゲ隠してるみたいだったんでー
B;ジロジロ見れないしー,失礼だしー
A;で,足を見たんですけど,ストッキングでー
男;それで,田中さんだったのか?
A;で,よく分からないですけど,ツルツルだったんでー
B;足はワックスとかあるしー,テープ痛いしー
A;で,自分店舗販売員やってたんでー
男;それはどうでもいいから,田中さんは?
A;で,これ話しませんと続きませんのでー
B;それ,知ってるしー,やってたしー
A;で,お客さんには色々といるんでー
男;・・・・・?
こういう見方を偏見と言うのだろうか?
あきれて物も言えないんでー,イライラするしー
で,私では,彼らの上司は務まらないんでー
語尾が接続助詞「で」や「し」では永遠に終わらないしー

世の声を代表して言わせてもらうが,私は歯医者が大嫌いだ。
別に歯医者さん個人を嫌っているわけではない。
意気地のない私は治療に伴う痛みが大の苦手なのだ。
診療所に一歩踏み入れた瞬間に漂う,あの独特の薬剤の臭いをはじめ…
待合室にいても響いてくる情け容赦ないドリルの金属音。
それに呼応するかのように,悲痛なうめき声が院内にこだまする。
もうこれだけで,刑場で順番を待つ罪人の面持ちになるのだ。
虫歯は細菌と食べかすの発酵による化学反応だが,子供のころから悪魔の仕業と教えられてきた。
頭から2本のツノ,尻には稲妻形のしっぽがある,手にトライデント(マセラティのエンブレム)を持ったバイキンマンみたいな野郎だ。
毒を以て毒を制すではないが,そんな恐ろしい悪魔を退治する歯医者は,むしろ悪魔より恐ろしい存在だった。
待合室では平静を装いつつも,ひとたび診察台に横たわれば正にまな板の鯉と化す。
それゆえ座禅のごとく目をつむって雑念を消し,心を静めて何事にも動じず,どんな痛みも感じないように全身の力を抜く。
ところが,人が近寄る気配を感じた途端に目は更に固く閉じ,言われる前に口を大きく開けてしまうのだ。
周りからは,まだ目も見えぬヒナが親鳥に餌をせがんでいるようで,滑稽な姿であろう。
そんな私ではあるが,それでも幾多の治療に耐え抜き,インプラントを何本も打ち,今ではケアのために歯石取りでガリガリされに毎月通院を欠かさない。
それは人生で初めて,穏やかで優しい歯医者さんに巡り会えたからだ。
ご本人も仕事柄ご尽力されておられるとは思うが,とにかく威圧感がない。患者に安心感を与える素養をお持ちである。
前述した歯医者たちのようにドリルとペンチを片時も手放さず,四の五の言わず削らせろー!とか,抜かせろー!とは言わない。
どんな治療をするにせよ患者の意思を尊重し,状況を的確にかつ正確に伝え,本人の覚悟を促してくれるのだ。
時折り時間があれば,世間話をすることもある。
先日は趣味のことに話題が及んだ。
学生時代の先生はヨット競技をされておられたとのこと。
髪を短くまとめた爽やかな先生のイメージ通りで,もし先に明かされなくとも,3回以内に言い当てたことだろう。
しかし,今はすっかりやめてしまい無趣味だそうだ。
ただ趣味と言えるほど頻繁ではないが,革製のバックなどをハンドメイドすることがあるらしい。
え!でも先生,革って動物の皮膚ですよね?
それを切ったり縫ったりしているのですか?
診察台の脇には怪しく光る銀色の皿に,先ほど摘出した歯茎の欠片が転がっている。
私は,それをじっと見詰めながら…
趣味に没頭する先生の表情と,歯茎を切っていたときの先生の表情とを…重ね合わせていた…

ほんとに美味しいニラは「生」で食べられるんだよ。
本来野菜は「生」か「焼く」か「煮る」か「捨てる」しかねぇんだからさ。
これはニラの生産量が全国で三本の指に入るJA(農協)の元理事長から何年か前に聞いた話である。
このオッさんの風貌形姿は正にお百姓さんそのもの。
偉ぶった様子も見せずあっけらかんと言い放った言葉だったが,何かを極めた人の言葉には不思議と重みを伴い妙に納得させられる。
来月部下の婚礼があり,主賓の挨拶を頼まれている。
その前にお嫁さんに会っておきたいと思い,二人を会食に誘った。
予約しておいた店はイタリアンだ。
二十席ほどの小さな店だが,その日のコースを一品ごとに給仕が説明してくれるリストランテである。
食べたこともないオーストリッチの肉や復唱しろと言われても言えないような野菜やソースの数々を堪能して,最後にデザート。
ひと段落ついたと見え,最後はシェフが直々テーブルまで来てデザートの説明を始めた。
実はこのシェフ,渋谷の有名店のシェフを務めたのちイタリアに渡り,五つ星を含む五都市の店で修行した経歴を持つ。
三年前にこの店をオープンし地産地消をコンセプトに僅かな間で数々の栄誉にも輝いている人だ。
デザートについて熱く語るシェフに対し,私は素朴な疑問をぶつけてみた。
素材を生かした様々な料理を創作しているようですがスイーツにも造詣が深くなければならないのですか?
すると…
スイーツは材料がちょっと違うだけで,砂糖を抜けば他の料理と同じです。
だからデザートと言えども腕を問われる一品ですから気を抜くわけにはいきません。
なるほど。正に目からウロコの言葉である。
婚礼まで二週間を切った。
挨拶の内容はこれから考えねばならないが,新郎新婦や参列者をハッとさせるような良い言葉はまだ思いつかない。
いや,待てよ。何も極めていない私などが名言金句を口走ったところで赤っ恥をかくだけだ。
やはりここは,身の丈にあった祝辞を心から述べることに徹するとしよう…
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