
今日は僕の人生を語る上で欠かせない、最高の相棒についてお話ししようと思います。
僕の愛車、三菱・eKワゴン(H82W型)。
今の時代、わざわざ5速マニュアルの、しかも15年以上前の軽自動車をメインで転がしている20代は珍しいかもしれません。
最初は、ただの「練習用」だったんです。
整備士としての腕を磨くため、そして日々の移動を支えるための、いわば「使い倒すための道具」として僕の元にやってきました。
でも、気づけばこの車は、僕にとって単なる鉄の塊以上の存在になっていました。
なぜ僕がこの車にこれほどまでに心血を注ぎ、「軽自動車の常識を覆す長距離快適仕様」を目指したのか。その軌跡を少し長くなりますが、綴ってみたいと思います。
「壊れない」という、最大の誠実さ
まず、このH82W型eKワゴンという車のすごさを語らせてください。
整備士という職業柄、僕はこれまで星の数ほどの車を見てきました。最新のハイテクマシンから、数千万円する高級車まで。
そんな中で僕が惚れ込んだのは、この車に搭載されている「3G83」というエンジンです。
今のエンジンに比べれば、お世辞にもパワーがあるとは言えません。音もガサツだし、燃費だって最新型には敵わない。でも、このエンジンの「タフさ」は異常なんです。
構造がシンプルで無駄がなく、基本に忠実。オイル管理さえしっかりしていれば、10万キロ、20万キロを超えても、まるで呼吸をするように当たり前に回り続ける。
僕自身の性格もそうなんですが、僕は「目立つ華やかさ」よりも「裏切らない誠実さ」に価値を感じるタイプです。どんなに荒天の日も、どんなに遠くへ行く日も、「絶対に目的地まで連れて行ってくれる」という安心感。この3G83エンジンが持つ質実剛健なキャラクターは、僕が人間関係で大切にしている「誠実さ」や「安定感」そのものだったんです。
「この信頼できる心臓を持っているなら、もっとこの車のポテンシャルを引き出してあげられるはずだ」
そう確信したのが、すべての始まりでした。
「大切な人が、助手席で眠れる空間を」
僕がこの車を「究極の快適仕様」に作り替えようと決意した背景には、ある強い想いがあります。
僕は、自分の運転で誰かをどこかへ連れて行くのが大好きです。家族だったり、友人だったり、そして大切な女性だったり。
でも、軽自動車で高速道路を走ると、どうしても「疲れ」がつきまといます。エンジン音はうるさく、風に煽られればふらつき、路面の凹凸でガタガタと揺れる。目的地に着いた時には、運転手も同乗者もぐったり……。これでは、せっかくの楽しい時間が台無しになってしまいます。
「自分の運転する車では、隣に乗る人に最高にリラックスしてほしい」
「長距離を走っても、目的地に着いた瞬間に『あぁ、楽しかったね』と笑顔でドアを開けてほしい」
そんな「おもてなし」の心が、僕のチューニングの原動力になりました。
僕は自分のことを、周囲のバランスを取りながら、みんなが居心地よく過ごせるように環境を整える「マネージャー」のような性質だと思っています。だからこそ、自分の車というプライベートな空間を、最高に快適な「移動するリビング」に仕立て上げることは、僕にとって必然の使命だったのかもしれません。
弱点を論理的に潰す、僕なりの「おもてなし」
そこからの日々は、整備士としての知識を総動員した「徹底的な弱点克服」の連続でした。
静寂を求めて:フルデッドニング
軽自動車特有のペラペラな鉄板の響きを消すために、車体をバラバラにして、床から屋根まで一面に防音・制振材を敷き詰めました。雨の日に「トタン屋根を叩くような音」がしなくなった時、車内の会話は驚くほどクリアになりました。
身体を支える:レカロシートへの換装
「疲れない椅子」の代名詞であるレカロシートを導入しました。これで、300キロ、500キロという長旅でも腰が痛くなることはありません。
最高の足回り:KYB Lowfer Sports L・H・S Kit
高速道路でのふらつきを抑えるために、足回りを試行錯誤して厳選しました。目立たない工夫ですが、これだけで高速走行中の安心感が劇的に変わります。ハンドルを握る僕の緊張が減れば、それは同乗者の安心にも繋がるんです。
足取りを軽く:RAYS CE28N
世界最軽量級の鍛造ホイールを履かせました。靴を重いブーツから軽いスニーカーに履き替えたようなもので、段差を乗り越える時のショックが驚くほどしなやかになりました。
これらの施工は、一つひとつが「大切な人との時間を守るため」の論理的なステップでした。
ブルーセラドンMに込めた、一生の約束
そして2024年、僕はひとつの大きな決断をしました。
この車の色を、ルノー純正の「ブルーセラドンM」に塗り替える全塗装(オールペン)です。
派手すぎず、かといって埋もれない。穏やかな海のような、あるいは晴れ渡った空のような、優しくて芯の強いこの色は、僕が理想とする「自分自身の在り方」を象徴しています。
この塗装が終わったとき、僕の中でこの車は「練習用の足車」を完全に卒業しました。
たとえ10年経っても、20年経っても。たとえ世の中が電気自動車ばかりになっても。僕は、この自分で育て上げた世界に一台だけのeKワゴンを、一生大切に乗り続けようと心に誓ったんです。
最後に
僕のeKワゴンは、スペック表の上ではただの古い軽自動車かもしれません。
でも、その中には僕の整備士としてのプライドと、大切な人を想う優しさと、決して揺るがない誠実さがぎっしりと詰まっています。
今の僕の目標は、この車でまだ見ぬ景色をたくさん見に行くことです。
数多の高速道路を走破し、ワインディングを楽しみ、美味しい料理を堪能する。
隣に誰が乗っていても、その人が「Navyの車は本当に落ち着くね」と言ってくれること。それが、僕にとって最高の褒め言葉です。
これからも、この青い相棒とともに、一歩一歩、堅実に、情熱を持って道を切り拓いていこうと思います。
もし、どこかでこのブルーセラドンのeKワゴンを見かけたら、気軽に声をかけてください。
中には、最高に幸せな時間を追求し続ける、ちょっと頑固で、でもすごくお節介な整備士が乗っていますから。