車を選ぶ時、機能や性能、或いは予算などと同時に、デザインを重視している人は多いみたいですね。
勿論、万人にとって良いデザインというのは存在しなくて、結局好みで選んでいるのですが、その時に語られるのがデザインの良し悪し。
しかし、デザインで選ぶのも、実は、どんどん難しくなってきているのではないか、と個人的には、思えてしまう一面があるのですが、皆さんは、どう捉えていらっしゃるのでしょうか。
特に、自動車をサーフェスの集合体として見ると、何となく、メーカーによる特色が次第に無くなってきているのを、感じられて仕方ないのです。
まあ、これは、当たり前かもしれませんが、モノ作りがデジタル化されてしまってからは、手作りレベルは別として、工業製品として作られるものは、サーフェスにしろ曲線にしろ、デジタルデータによって産み出されたもののみしか、存在しえなくなってしまっているからなんですね。
恐らく、今は、デジタルデータに利用するツールは、どのメーカーも同じものを利用しています。厳密に言えば、ハイエンド製品は大手3社くらいあるのだけど、どれもこれもサーフェスの計算式は、NURBSに統一されてしまっているからなんです。
私は、職業的に分類するなら、デジタル造形師 みたいな事をしてきました。
勿論仕事を始めた時は、まだアナログの時代で、手作業で仕事をしていましたから、デジタルとアナログの両方の感覚が残っています。
アナログで表現する 最も難しい仕事は、直線とか平面とか、直角とかいうもので、一方で、デジタルなら、それは最も単純な作業となります。反対に、曲面を作るというのは、実は、アナログの方が、ものすごく自由度が高いんですね。しかも、そこに個性をおもいっきり投影することが出来るんです。人によっては真似できないものが存在出来るんです。
デジタルツールは、実は、使いこなせる人は、さほど多くないので、デザイナー自身が3次元で曲面を描くということは、あまりしていないと思います。大概は、イラストレベルの提案をするんですが、実は、この分野もツールは、かなり限定的というか、MACのイラストレーターとか、そういう類になるかと思います。
あと、決定的な問題は、自分の場合、スケール感でした。
携帯電話も自動車も同じモニターで描きながらスケール感を正確に把握するのは、無理があります。
今日、ワンモーションみたいなデザインの車が増えたけど、ツールの影響もあるのかなという気がします。実測で現物を作る場合、自分の肉体がむしろツールの主体となるので、あんな動きをワンモーションでやるとか、至難ですからね。手に握る工具のストロークが、ある意味自然な形状定義の範囲でした。
まあ、普通の人には、そういう視点は無いでしょうから、おっさんの個人的な趣味の問題ではあります。
まあ、しかし、いかに3次元のツールの操作に長けたところで、所詮、NURBSの計算式の中で、踊らされているだけ ということに気づいたときは、仕事に対する情熱は奪われていきました。
勿論、一番、つまらなかったのは、いつも、どこでも 誰からも、「コストダウン」という囁きが、耳鳴りのように響き渡ることでしたけどね。
個人的に、国内メーカーでは、日産のサーフェスが好きなのは、恐らく30年くらい前の、日産のモデラーの方々のセンスが、自分の理想のサーフェスだと感じ取ったからでしょうけどね。
新しい車は、ある意味、デジタル造形になってきている気がするので、どういう好みの変化をしていくのか、わかりませんが。
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デザイン | クルマ
Posted at
2023/10/23 19:41:52