午前1時30分。
まだまだ秋だと言うのに空気が冷たい。
積載トラックのドアをおもむろに開けて乗り込むオレ。ジョニー・オーシャン。通称「運び屋ジョニー」だ。
ジョニーは寝てなかった。
前日は3時間。その前も3時間半だ。
眠気覚ましに飲んだコーヒーも、この日のジョニーの睡魔の手にかかれば立て板にコーヒー。
相棒のオッキーナ・ターバン・アンクルマンはレース用のサポート・カーを転がし先行する。
夜のハイウェイ。
ストレスフルな渋滞は一切無い。
荷台で揺れる「骨骨ロック号」をミラーで見ながら、ハンドルを握るジョニー。
睡魔と闘いつつ、なんとか這う様にしてサーキットに到着。
時計の針は午前4時を過ぎたばかりだ。
そう。ココは筑波。「栃木のブルース・ブラザース」こと「U字工事」の天敵、茨城の走り屋のメッカだ。
レースに参加する他のチームの連中が待機所で談笑するのが見える。
笑っていられるのも今の内さ。
少しでも睡眠時間のスコアに追加点を入れたいジョニー。
ワイドボディーのトラックのキャビンで横になる。
が、ほどなく相棒に起こされる。時刻は5時15分。
45分ほどは追加点を入れられた。
ココから怒涛の準備が始まった。
骨骨ロック号を降ろし、サポート・カーからエレクトリカル・カートを降ろし、組み立て、整備・・・・。
いつもの如く参加してる相棒のオッキーナは、ルーティン・ワークを淡々とこなす。
初参加のジョニーは戸惑いながら作業の足を引っ張るのが関の山。
睡魔が邪魔をして、手も足も頭も思うように動かない。
ココ3日間の合計睡眠時間は7時間10分。一日平均2時間20分だ。
朝日がすっかり眩しくなった午前10時。
「車検」だ。
ユニフォームに身を包んだスタッフがやって来る。
エントリー・マシーンのボンネットを開け、下回りを覗き込み、ゼッケンを確認し、計測器を取り付ける。
さすがの相棒オッキーナも、ルーティン・ワークとは言えその項目数の多さ、そしてジョニーの不甲斐無さも手伝いナーバスになっている。
車検やその他、一通りの手続きが済むころ、チームのメンバーが続々と現れた。
相棒オッキーナを介して紹介されるジョニー。
なぜか「ジョナサン」と紹介され、もちろん訂正する。
だが事前に相棒が配布した紹介状にもすでに「ジョナサン・オーシャン」と記されていて、チームのメンバーの間ではすっかり「ジョナサン」だ。
名前なぞどうでもいい。男は中身だ。
そうこうする内に、第一種目のエレクトリカル・カートの出番だ。
ところがチームメンバーのパイロットの女性が、試運転中に壁に激突。
予備のないカートは自走不可能の事態。
レース開始まで時間がない。
このままでは失格になってしまう。
急遽メカニックに変身するジョニー。
そう。ココからはマッケンジー・ボールヘッドになる。
通称「メカニックのマック」。
サポート・カーに用意された工具には限りがある。
マックは付近を見渡し、お誂え向きな工具代わりを捜す。
見つけて担いで来たのは、長さ3メートルはあろうかと言う太い鉄パイプ。
パイプを担ぐマッケンジーを、バンパーがひしゃげ、自走が不可能になったカートに群がるチームメンバーは
「こ・・・・怖い・・・。」
とのたまう。
手際よくカートの前部を解体し、曲がったバンパーに鉄パイプを差し込み、微妙なチカラ加減で直して行くマック。
ものの10分ほどで、ぱっと見はわからぬ程に修復。
さすがマック。拍手喝采を浴びる。
が、眠い。
その後開会式やらなんやらが行われ、そこでライバルの「ウキョウ・カタヤマ」の姿を目の端が捉える。
首を洗って待っとくんだなウキョウ。今日は唇を噛みながら帰るハメになるぜ。
仕事のなくなったマックは、カートのジムカーナをぼんやりと眺める。
こんな時に昼寝でも決め込めばいいんだが、なんせ初めて来る筑波サーキットだ。
ハートに漲る熱さと高ぶりは、コーヒーより遥かに強力な気付け薬。
結局、喫煙所とサーキット・コースとパドックを行ったり来たり。
物見遊山にも限度がある。
そろそろ限界が近づいて、どこかにシケ込んで居眠りでもしようと思っていると、チームメンバーの女性パイロットが紹介したい人がいると言って近付いてきた。
先程のアクシデントで気負っている彼女。
言ってみればあのアクシデントは、あのあとの2種のレースに参加出来なくなる程の大惨事。
それを見事に何事もなかった様に短時間で修復してのけたメカニックのオレ、マッケンジー・ボールヘッドは彼女にとっては言わばヒーロー。
彼女に案内されるままパドックに用意されたテーブルに赴くと、そこに待っていたのはその日イチバンのキュートな子猫ちゃん。
イスからすっくと立ち上がった子猫ちゃんは身長5フィート。
山本モナを小さくした様な美しい面持ち。
パイロットの彼女に誘われ見学に来た友達らしい。
背は小さくキュートだが、瞳の奥から「イイ女」のオーラを出している。
礼のつもりなのか、間を取り持って紹介を済ませるとそそくさとどこかへ消えるパイロットの彼女。
小洒落たカフェのようなしつらえのパドックのテーブル。
テーブルの上はクリスマスよろしく、緑と真紅のテーブルクロスとキャンドル。
そこに残されたメカニックのマックと「プチモナ」の2人。
マックはココでまた変身する。
そう。ラテン系関西人の「ヒロシオーネ・ウミリアーノ」になった。
眠気はどこに吹っ飛んで行ったのか、コトバ巧みにプチモナの笑顔を引き出すヒロシオーネ。
あっと言う間に意気投合。
彼女の生い立ちから現在の住まいまで聞きだす。
あと少しで手を握り合うくらいのところまで来たが、次に変身する予定のオレに邪魔をされる。
このハナシはこのへんにしておこう。
とにかくサンクス。パイロットの彼女。
さて出番だ。
骨骨ロック号とは別の、ナンバーの付いたエレクトリカル・ジムニーに乗り込むオレ。
「ケェハエル・シューマッハ」に変身だ。
フルフェイスのヘルメットを被り、ドライバーズ・グローブ姿のケェハエル。
この勇姿を子猫ちゃんにも見せたかったが、用事があるとかで帰ってしまっている。
軽く舌打ちをしつつバケット・シートにカラダを捻じ込み、4点式のシートベルトに抱かれる。
筑波サーキットの第一コーナーを疾走する、ケェハエル・シューマッハ操るエレクトリカル・ジムニー。
しかし勝手が違う・・・・。
ガソリンやケロシンのエンジンと違い、電気で駆動するモーター・エンジンはちとワケが違う。
まず、燃料であるところの「電池」を温存しなくちゃーならない。
コイツがネックだ。
踏めばイイってモンじゃない。
ペース配分を考えて、電気の残量を温存しつつ走るワケだ。
生来、「0か100か」でしか生きた事のないオレ。
向いてない・・・・。
「35で行ってくれ!」
35?
意味がわからない・・・・。
行くのか?行かないのか?
100なのか?0なのか?
オレに中途半端な指示は通用しないぜ。
そして・・・・あろう事かレースだと言うのに居眠り運転。
こいつにゃーオレ自身ぶったまげたさ。
いろいろあったが最終ラップを回るオレ。
完走出来ず・・・・。
すまん。>ゼペックスのみんな
ちなみにウキョウは、オレに恐れをなしてか、このレースには参加せず。
オレの参加してない他のレースで好成績を叩き出してチヤホヤされていた。
ふっ・・・・良かったじゃーないか。ウキョウ。
オレとやり合わない事で面目を保てたな。
夕方午後4時過ぎ。
またもや「運び屋ジョニー」に変身したオレ。
来た時と逆さまの行程をトレースする。
しかし茨城ってートコは、どうしてこんなに寒いんだ。
Tシャツ一枚にボマーズ・ジャケットを羽織っただけのオレは、吹き荒ぶ風に身を丸める。
とにかく眠い。寝たい。横になりたい。いや・・・・縦でもいい。
そして寒い。とにかく寒い。いや・・・ちゃんと防寒対策さえしていればなんの事はない。
Tシャツ一枚のオレが悪い。
数時間後、地元に帰り着いたオレ。
昨晩の1時30分から翌日の20時までの仕事だった。
道路がすいてたお陰で、意外と速いご帰還だ。
おかげで早目に寝られる・・・・ってな按配だが、そーはいかない。
予定外に出来た時間でバーボンをグビリ。
今夜の気分はディキシーランドじゃーない。
スウィングに身を揺らしながら、オレは久しぶりに深い眠りに就いた。
表彰台でシャンパンを浴びながら、子猫ちゃんと抱き合ってたのはオレの夢の中だけの話さ。
さらば筑波サーキット。
楽しかったぜウキョウ。
ありがとう、相棒のオッキーナ。
そして・・・・・また会おうぜ子猫ちゃん。
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