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頑固一徹カズですのブログ一覧

2013年01月25日 イイね!

NAVIアーカイブ(2006年1月26日発売3月号)(6)メルセデスML

NAVIアーカイブ(2006年1月26日発売)
(6)メルセデス・ベンツML500
メルセデスの論文を夢中で聞いていたのは……

タイプ:LSDなしセンターデフ式4WD
トランスファー:センターデフ(ベベルギア)
前後トルク配分:通常時50:50

 4WD市場の拡大を受けて、GクラスやMクラスといったSUVに加え、CクラスやEクラスにも積極的に4WDモデルの“4MATIC”をラインアップしているメルセデス・ベンツ。この4MATICとMクラスの4WDは、実は基本的な構成において同じで、通常時はベベルギアのセンターデフによりトルクを前後車軸に等配分するが、前後の回転差を制限するLSDを持たないのが特徴だ。もちろん、回転差を野放しにしておくわけではなく、必要に応じて、4WD車用のESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)である“4ESP”がスリップする車輪にブレーキをかけることによって、他の車輪にトルクを伝えている。なお、今回試乗したML500にはオプションの“オフロードパッケージ”が装着されていて、これを選ぶとAIRマチックサスペンションやローレンジモードセレクターとともに、電子制御のセンターデフロック/リアデフロックが加わる。本格的なオフロード走行にはぜひほしいアイテムといえるだろう。

◇インフォメーションの伝達
 メルセデスの4WDは、ポルシェやアウディ同様、オーストリアのマグナ・シュタイヤ社と密接な関係にある。1979年に登場したゲレンデ・ヴァーゲン(Gクラス)は、日本ではプレミアムなニッチカーとして人気がある。Gクラスは四半世紀以上モデルチェンジしていないが、最近のミニタリーブームで再び売れだした。まるでオフロードカー界の貴公子のような存在だ。
 このクルマはメルセデスのバッジをつけているが、100%シュタイヤ・プフ社(現在のマグナ・シュタイヤ社)が開発したモデルだ。その後、メルセデスはアウディ・クワトロの影響もあってシュタイヤ社とともに本格的な乗用車4WDの開発に着手する。
 87年、メルセデスは初めてミディアム・クラスで4マチックを登場させた。初代4マチックはポルシェと同じように油圧電子制御の4WDであった。当時の4マチックを雪道でテストしたことがあるが、発進ではテールが簡単にズルッと滑るほどトルクの伝達に遅れを持っていた。これではせっかくの4WDなのに、パフォーマンス(加速性能)は決して有利ではないと思った。
 いったいメルセデスの4マチックにどんな考えがあったのか、疑問に感じていた。当時の日本のエンジニアはメルセデスの思想を理解できず、自分たちが開発したフルタイム4WDや電子制御4WDのほうが優れていると信じていた。実際、加速性能などでは国産4WDの方が優れていたのだから。
 ある年、アメリカで行われたSAE学会(The Society of Automotive Engineers)でメルセデスは電子制御4WDの開発思想を発表した。メルセデスが4WDを採用した理由は、駆動力を高めることではなく、タイヤのスリップを量るための駆動力配分である、という論文を発表したのだ。きょとんとする各国のエンジニアが多いなか、日産の研究所でGT-Rに使われた油圧電子制御を開発していたエンジニアは鳥肌を立てて聞いていた。
 メルセデスは、発進の際、(リアのスリップによって)フロントへトルクが流れるのを意図的に遅らせ、後輪が滑ることをドライバーに体感させ、さらにインパネに「!」マークを点灯させることで、路面が滑りやすいという状況を知らせる。「タイヤの接地状況の厳しさをインフォーム」することが目的……。そう述べたのである。そして、その若きGT-Rのエンジニアは、その意味を正確に理解していたのだ。
 そうした思想をベースに、メルセデスの乗用車4WDの開発が始まった。しかし、メルセデスは次の世代の4マチックを電子制御からメカニカル4WDに変更してしまった。今度は50対50のフルタイム4WDだ。発進時からストレスなく発進する様子は、機能としては優れているが、初代の4マチックに与えた崇高なインフォメーションとしてのオンデマンド思想は継承されなかった。
 メカニカルタイプのセンターデフに変更した理由は「コストの関係」とエンジニアは正直に述べている。電子制御4WDもメカニカル4WDも実際の開発はオーストリアのマグナ・シュタイヤ社が担当した。もともとこの企業はポルシェ博士が主任技師を務めていたオーストリッチ・ダイムラー社、軍事産業のシュタイヤ社、小型車の専門メーカーであったプフ社が合体した企業だ。100年以上も前から険しい冬のアルプス越えを強いられてきた同社には、欧州でも有数の4WD技術が集積されている。
 しかし、メルセデスの先進技術部門では、もうひとつの極めて重要なある技術が着々と開発されていた。路面の状況をドライバーに知らせる「インフォメーション」をアナログからデジタル化する戦略が講じられていたのだ。テールを少し滑らせ、ドライバーに路面状況を知らせるというのは、考えてみれば野蛮な手法だったかもしれない。
 そして、90年代半ばになると、ESPという画期的な安定装置が考案され、クルマの不安定さをタイヤのスリップで見張る従来の手法から、車体に発生するヨーイング・モーメントで測定する手法が実用化されたのだ。ヨーレイトをコアにした車両情報をもとに、ステアリング角やステアリングの操舵速度などを検出し、ドライバーの意志をコンピューターに伝える。実際の挙動とドライバーの意志がずれたと判定すると、自動的にエンジンの出力を制御したり、片輪ブレーキを介入させて、積極的かつ自立的に安定性を確保する。ESPはそうした一連のシステムを統合した、画期的な技術であった。
◇やっぱり宇宙一
 メルセデスの安全思想はどの時代も健全で、SUVとして登場した新型Mクラスにもふんだんに先進技術が織り込まれている。大きなボディにもかかわらず、とてもリズミカルに走れる。リスクの高い路面を安心して走れるのには、それなりの理由がある。
 まず、スロットルは過敏ではなく、リニアにコントロールできる。300ps超、50kgm超のエンジンだが、雪道で利用できるのは4分の1程度。そんなわずかなパワーとトルクを、寒さで感覚が麻痺している右足でもデリケートに操作できた。
 そんな当たり前の性能。誰も気が付かないが、誰もが感じている性能が、本当によくできている。メルセデスは人間研究がもっとも進んでいるメーカーなのだ。
 ブレーキも違う。低ミュー路にもかかわらず、「なんでこんなに利くんだ」と思わず声を上げてしまった。リニアな「ちょっと踏めば、ちょっと利く。しっかり踏めばしっかり利く」。強く踏むとABSが作動するが、減圧していても「グワーッ」と引き込まれるように利く。
 さらに驚いたことに、雪道でもステアリングのセンターフィールをしっかりと感じとることができたのだ。最終的にはESPで安定性を維持しているが、操縦性がリニアな点が後述するライバルのボルボやエクスプローラーとの違いだ。
 雪のジムカーナはどんなパフォーマンスか。驚異的だったのは、2トンを超えるMクラスが旋回ブレーキテストで、正確に曲がりながらストッピングパワーを出したことだ。タイムも、この巨体を考えると予想外。なにしろ、ポルシェよりも速いのだ。多くのクルマのABSが暴走気味となり、減速Gが減少する傾向にあったが、Mクラスは雪道旋回ブレーキでも宇宙一だった。メルセデスの思想は貫かれていた。ことダイナミックな安全性に関してはMクラスは血統書付きだ。

<タイムメモ>
メルセデスML500
ESP ON 42秒30
ESP OFF 41秒85
Posted at 2013/01/25 11:10:05 | トラックバック(0) | クルマの安全 | 日記
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