2008年09月30日
メルセデスの開発チームに籍を置くベルリン大学の心理学者・ローゼンベルグさんとの対談
Q:他にどんな研究がありましたか?
A:臭いにの研究でこんなことがありました。
シガーの葉を砕いてシートの下に置いたら、シガーを心地よく思う被験者は良い香りの皮シートだと評価したことがありました。
Q:臭いは難しいですね
A:良いにおいはすぐに慣れて感じなくなります。悪いにおいは長い間不快感を与えることが分かっております。
Q:走行性能の安心感はどうなんでしょうか
A:まず、情報が大事だと思ってます。
何を考えて運転しているのか。人間に何を考えさせるのか。そのためにクルマからの情報発信が必要です。
Q:新型SLKではどんなお仕事をしましたか?
A:新型SLKはAピラーが視界の邪魔をしているので、なんとか小さくしました。
Q:心理学者が評価したのですね、人間工学的に!
A:人間工学ではだめです。工学ですから。もっと人間の内面を客観的に把握しないといけません。人間工学では限界があります。
Q:メルセデスを高速で走らせると、バウンド側はどんどん沈み込む、リバンド側は50%位しか浮きませんね。路面に吸い付く感じですが。これは意図的ですか。
A:まさに、意図的です。路面に吸い付く感じがハイスピードでは必要だと考えたのです。
Q:どのようにしてメルセデスのブランドを維持してきたのですか?
A:先輩から教えられることがほとんどです。それともう一人の先生はお客さんですね
Q:それ以外にはどんな研究がクルマ作りに役立っていますか?
A:いろいろな国の文化を多角的に研究してます。人間研究ー社会研究ー文化研究ー文明研究ーそしてクルマ研究
Q:心理学者以外には?
A:神学者、社会学者、文化人類学者、地球物理学者、動物・植物学者など、色々な学問の専門家が社内にいます。
Posted at 2008/09/30 09:11:46 |
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2008年09月29日
マヨルカ島で出会った心理学者はベルリン大学で博士号を取得するためにダイムラー社で実践的に実務を経験していた。名前はローゼンベルグさん(Jürgen Rosenberg)Diplom-Psychologe。彼はいちどベルリン大学に戻り学位を取得。そして再びダイムラー社に就職する予定とのこと。彼との対談テープが見つかりましたのでアップします。
~インタビュー日時は2004年の4月・スペインマヨルカ島にて~
Q:日本の美といいうものが最近欧米メーカーから見直されているですが、日本の文化をどのようにみてますか?(彼は親日家だったのでこんな質問から始めました)
A:最近日本の文化研究がこちらでも盛んです。当社も本格的な研究対象となっております。
Q:心理学者がなぜ開発研究部門にいるのですか?
A:エンジニアはどうしてもモノの特性などに深く入り込む性質を持った人種です。結果的に顧客の価値を忘れがちなのです。そこでお客さまの立場でクルマを見る必要があるわけです。
Q:つまりお客とエンジニアの仲立ちをしているのですね?
A:ハイ、そうです。
A:おもしろ研究がありました。人間の主観性はなかなか定量的には学問としては成立しなかったのでですが、こんなユニークな研究が発表されました。
Q:どんな?
A:スイッチの研究ですが、指で操作する時の力の入れ具合と操作量を測定したものです。するともっとも人間が心地よいと感じるスイッチの動きは、ほとんどの人間に共通のパターンがあるのです。これはいままで心理学という学問では困難とされてきた人間の主観性の客観データなのです。
Q:人間が感じる心地よさとコンピューターがはじきだした測定結果が一致しない時、どうするのいですか?
A:もちろん人間のフィーリング結果を重視します。
Q:どの程度定量化が進んでいますか?
A:かなり最近は進みました。ですから心理学者のような人材を開発に入れているのです。
Q:人間のフィーリングとクルマのダイナミクスの関係は、どのように関連づけられているのですか。
A:核心的な質問ですね。ところが大きな問題があるのです。人間はバラバラということです。経験や生活環境で、好みや感じ方が変わるのです。
Posted at 2008/09/29 01:51:04 |
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2008年09月28日
数値化を急ぐ組織は、管理体制の行き過ぎた結果ではないだろうかと思う時がある。日本メーカーの中には管理がとても好きな企業が少なくない。日本車が高コストになりつつあるのは管理部門が多すぎるからと指摘する専門家もいる。
さて、2005年・スペイン領のマヨルカ島で行われた新型SLKの試乗会で、大変ユニークなメルセデスの人と出会った。彼はベルリン大学の心理学を専攻する学者であり、3年契約でメルセデスの開発部門に席を置く。その心理学者は「メルセデスの先生は顧客です」と述べ、人間研究(ユーザーの嗜好や行動)をクルマ作りの重要な要素と位置づけている。「エンジニアは専門的(数字の世界)な世界に入りこみやすい人種なので、我々のような顧客の立場に立った評価部門が、エンジニアとの仲介役を行うのです」と語っていた。この話を聞いて、なんだかいままで喉につかえていたことがすっと取れたような気がした。メルセデスのクルマ作りの神髄に触れた気持ちだった。
彼と交わした会話は明日のブログにアップしましょう。
Posted at 2008/09/28 21:04:40 |
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2008年09月27日
「清水さ~ん、外人のボスから広報活動を数値化しろ!と言われて困っているのですよ」とある外資系日系自動車メーカーの広報部長から相談されたことがあった。話を聞くと媒体に掲載された露出数を基本とするもの。ポジティブな記事にはボーナスポイント、ネガティブな記事にはマイナスポイントを与えるのかしら。その数値化した実績で翌年の予算が決まるらしい。
でも広報活動は決して数値化できるものではない。というのは、人間関係がもっとも重要な職場だからだ。こうして海外メーカーいかに数値化にこだわっているのかと思われるが実は数値化にこだわるのは急速にグローバル化した日本企業だ。だから冒頭の話は「外資だから」ではなくその外人のボスが間抜けだったのでしょう。
オレの経験では人間関係やコミュニケーションをもっとも大事にしているのはむしろGMやフォードというアメリカ企業です。プレスやユーザーに対して徹底的に情報を公開するという文化があるのでとても付き合いやすいのですね。魅力的なアメリカのクルマは少ないですが、アメリカの自動車メーカーの広報活動はジャーナリストには最高です。
Posted at 2008/09/27 18:10:24 |
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2008年09月26日
以前に他のブログで書いたことだが、人材派遣会社からあることを依頼されたことがあった。自動車業界の人材をクロスチェックする教育プログラムを作って欲しいというのだ。試験問題を作り、人材の能力を数値で計測するつもりなのだ。それなら最近二玄社で始めた「カー検定」でいいのだろうと思ったが、その時の依頼は断った。
自動車業界の人材を探すなら、本当の能力は決してペーパー試験では評価できないことを知るべきだ。人間の能力を数値化しようとするMBA的発想に理不尽さを感じたのである。
クルマへの愛情、運転のレベル、自動車文化・歴史への知識などがどれほど大切か。しかも知識だけではなく、自分の意見をきっちりと喋れる能力は過去の学歴や実績とは無関係なのだ。
Posted at 2008/09/26 09:57:14 |
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