買ってしまった。
筋金入りの貧乏性な自分にとって、ありえないくらいの散財である。
今までトヨタ車乗り継いできたのに、突然イタリア車?
いやドル円160円(当時)のご時世に?
18年乗ってる原チャリ買い替えた方がいいんでない?
考えに考え、迷いに迷った半年間。
決め手はやはり、左ハン3ペダルの新車に乗る機会は、ここを逃したらもうないと思ったことだった。
ことの初めは昨年末、乗っていたアクアの補機バッテリーが上がってしまったことにある。
確かにそんなに乗っていないクルマであったが、それなりに遠出もしているのに。
九年乗って二回目のバッテリー交換であった。
補機バッテリーがダメなら、ハイブリッドシステムも相当に傷んでるんだろうな。
昔はクルマ、乗るの好きだったんだけどな。
クルマ替えたらもっと乗るようになるのだろうか?
そう思い始めたことだった。
突然だが、健康はありがたい。
カラダが動けばなんでもできる。
腰を痛めたり、暴食して左足の親指痛い病が発症したりすると、ありがたみが身に染みる。
ラクなハイブリッドではなく、四肢を使うMT車に乗れるのも、健康なウチなのではないだろうか?
そう思ったが、MT車はもはや絶滅危惧種。
いろいろ調べる中で、その選択肢の無さに驚いた。
当初はトヨタ車からの乗り換えということで、トヨタを中心に調べ始めた。
GRヤリスも見に行ってみたが、後席があまりに暗いのでやめた。
まあそこまでガチに走るということもないし。
いいなーGRカローラとか。って、なんだよ抽選かよ?おまけに高いし。
スイスポもなー。やはりトヨタ車乗り慣れてると細かい作りとか気なっちゃうんだよなー。
やはりノーマルヤリスの6MTあたりがいいんじゃないですかね?
でもなー、欲しいグレードのアルミがちっちゃくてごにょごにょ、とウダウダとしていた。
まあ、ないだろうけど一応見ておくか、くらいの感じでアバルトの店にも行ってみた。
昔、67年式のFIAT500F赤に七年、ノーマルのまま乗っていた。
もちろんエアコンはないし、ブレーキが床まで抜けるし、二気筒のプラグが一つ吹っ飛ぶし、そもそもドアがちゃんと閉まらないとか、とんでもないクルマであった。
遠出もできないし、気を抜くとママチャリに抜かれるポンコツであったが、本気を出さないと幹線道路を走れないという、なかなかなスポーツカーであった。
いや280psのクルマだって、本気出すシチュエーションなんてそう無いと思うんです。
でもFIAT500Fは本気のゼロ発進を常にしなくてはならなかった。
環八から甲州街道曲がるのにヒールアンドトウしないと曲がれないなんて、スポーツカーですよ。
首都高なんて四速ベタ踏みで80km/hですよ。
その後はポイントが焼き付いて走れなくなったし。
結局七年で手放したが、その後も心に残り続けるクルマであった。
またあんなクルマに乗りたい、という気持ちがあった。
んでなんですか?
アバルトF595Cとかいう限定車が出たという噂を聞きましたが。
即日完売?マヂか売れてますな。
そして?なに?ストランティスがEVにチカラを入れている?ガソリン車は廃止にする方向?
それってホントなんですかね?
まあ今日は軽く見積もりだけいただいて帰りますわ。
うわ高っ、ないわー。てか円安で一年前より値段、上がってますよね?
しかもハイオク?知ってるよアレでしょ?黄色いノズルでしょ?アレって高級ブランド身に纏ってるブルジョワジーしか触っちゃいけないんじゃないの?知らんけど。
ただ、イタリア車の赤は、美しいんですよねー。
当初は完全に、冷やかしのつもりであった。
長年乗っている原付を6MTに買い換えるというプランもあった。
しかしヤマハXSR125が新型で出てすぐ見に行ったが、思いの外大きいのと、車格の割に高いのでやめた。
ではやはり、クルマを買い替えるか。
しかし仮に、ヤリス6MT買ったとして、そのクルマを愛せるか?
手放してなお、また乗りたいと思えるようなクルマなのか?
ロマンと貧乏性のせめぎ合い。
WBC2023日本対メキシコ戦並みの激闘を経て、ついにロマンが勝った。
契約した4月の時点ではまだ、ガソリン車廃止というのは信じられないでいた。
おかげでせっかく買って周りの人は喜んでくれているのに、騙された気がして罪悪感しかなかった。
だって若い頃からコツコツと、それはもう地道に積み立ててきた外貨預金を支払にあてたので。
果たしてそれを使うのがここで、本当によかったのか?コツコツ貯めてきた昔の自分、ゴメン。
納車は9月と言われていたのが6月になり、どうやら本当にガソリン車の生産が終わるというニュースが出回り、結果として最後になるかもしれない左ハン3ペダルの新車を手にいれることとなった。
それでも生来の貧乏性の上にいくらか貧乏生活が続いたので、せっかく納車だと言うのにその喜びを上回ってくる罪悪感。
ハイオクに関しては早々に諦めがついたが、その罪悪感は納車後も1ヶ月くらい続いたから、相当重症であった。
果たしてこれが良かったことなのかどうなのか、これからの付き合いで答えを出していかなくてはならぬ。