私が選手だった90年代、欧州のプロレースはもちろん、欧州アマチュア(当時)のハイクラスのレースでは、ステロイド(筋肉増強剤)やEPO製剤(エリスロポエチン)なんかを殆どの選手が使用していたことは、レースに関わる人も我々ロードレースファンも、みんな知っていた。80年代後半からは、それまでの勘と経験だけのトレーニングから科学的に裏打ちされた効果的なトレーニングメニューが確立したのと、強力な効果がある薬物が出回ったことで、レースのスピードも信じられない程速くなった。今一番思うことは、プロレースのファンが、「しょうがないよ」と目をつむってしまっていたこと。3週間で3000km以上走るグランツールや260kmの過酷すぎるクラシックレースなんかは、スポーツというよりも、“冒険”に近い(苦笑)だから選手に同情的になって、みんな許していた。そしてそれは、みんなが卑怯だったと思う(私も含めて)。想像を超えたパフォーマンスを見たいファンの気持ちは冷酷で、ドーピングの効果が超人的なレースを生み出すのなら、やらないよりやってほしい、くらいに思っていた。1998年のフェスティナ事件以来、ロードレースの人気は低迷し、スポンサーの獲得も難しい状況は続いているみたいですが、閉鎖的な世界のモノサシで動く時代はとっくに終わって、グローバルな視点でロードレース(や物事)を見る感覚を持たなきゃいけない…のでしょうね。