私は野球よりもサッカーのほうが観戦するのが好きだ。
おそらく世間的には野球のほうが人気で、クラブの経営規模やスタジアム設備などの面からいっても野球のほうが充実しているだろうとは思う。
それでも、私はサッカー観戦のほうが好きだ。
野球と比べて点が入りにくく、0-0で試合終了、なんてこともよくある。野球と違って1点ずつしか入らないので一発での大逆転というのもない。
しかし、サッカーはボールのないところでも選手間の駆け引きが多く見られるし、ボールに関わっていないところでの動きがゴールに繋がったりする。
得点が入りにくいスポーツではあるが、ゴールする時はあっさりとゴールが決まってしまう。そのギャップがいいのだ。
サッカーは野球と違い、一度試合が始まれば止まることがないので試合にのめり込める。ちょっと目を離したら決定的なシーンやスーパープレーを見逃してしまう。もしかしたら歴史的瞬間の目撃者になれるかもしれないのだ。スマホを触っている暇などない。
野球は適度に間がありゆったり観戦できるという良さもあるが、個人的には目を離せないサッカーのほうが見ていて面白い。
サッカー観戦はまるで劇場にアクション映画を見に行くような感覚だ。ストーリーを、登場人物の一挙手一投足を見逃すまいと集中してスクリーンに目を向ける。両チームがつむぎ出すストーリーを、選手の一つ一つのプレーを見逃すまいと集中してピッチに目を向ける。この没入感がいいのだ。
私は静岡県在住であるが、静岡にはプロ野球球団がなく(一応ウエスタン・リーグ(二軍リーグ)の球団があるにはあるが)、たまに県内の球場で地方遠征みたいな形で年に数回試合が行われるくらいである。
先述の地方遠征を除いてセ・リーグ、パ・リーグ12球団の試合を見ようと思ったら近くても東京か横浜、名古屋まで出かけなければならない。旅行も兼ねて行くにはいいだろうが、思い立ったら行くというような観戦はなかなかできない。
一方、静岡にはJリーグのクラブが4つもある。清水エスパルス(J1)、ジュビロ磐田(J2)、藤枝MYFC(J2)、アスルクラロ沼津(J3)。各チームが属するカテゴリーは昇降格のため変動はあるが、2025年現在は各チーム上記のカテゴリーに属している。
基本的にリーグ戦はシーズン中毎週末行われているため、ほぼ毎週末どこかしらのクラブのホームゲームが開催されるのだ。ふと思い立ったらスタジアムへ足を運ぶことができる。サッカー観戦するのにこれほど恵まれた地は全国的に見てもそうそうないだろう。
冒頭で私は野球観戦よりもサッカー観戦のほうが好きだと言ったが、決して野球を批判したくて言っているのではない。確かにサッカーには逆転ホームランなどないし、売り子のねーちゃんからビールを買う余裕もない。
私のサッカー好きは、ただ単に頻度と環境の問題なのだ。環境がちょっと違えばおそらく野球好きになっていたことだろう。
私が現地でのサッカー観戦をし始めたのが2022年。当時J3だった藤枝MYFCの試合を何試合か見に行ったのだが、その年のシーズン最終順位2位でJ2に昇格した。
(その一方でエスパルスとジュビロが揃ってJ1からJ2に降格してしまった年でもあるが)
2022年9月、台風15号により静岡県各地で水害が発生した。
サッカーの試合もその影響を受けた。エスパルス対ジュビロのダービーマッチがスタジアム周辺の土砂崩れの影響で延期を余儀なくされたほどだ。
藤枝のスタジアムも一部の駐車場が水没し、トイレや照明、大型ビジョンなどのスタジアム設備が使用できなくなるなどの大きな被害を受けた。試合開催そのものが危ぶまれたが、各方面のご尽力のおかげで開催にこぎつけることができた。
私はその被災直後のスタジアムで試合を観戦したのだが、駐車場は排水したばかりで土まみれ、トイレはスタジアム外の仮設トイレ、出場選手・得点の表示はアナログ式で対応、照明が使えないので猛暑の中のデーゲーム、普段どれだけ恵まれた環境で観戦できていたのかを痛感する。
そしてなにより、その時の相手チーム(Y.S.C.C.横浜)のサポーターの方々が飲料水などの物資を車いっぱいに届けてくださったり、手書きの横断幕を掲げてくださったのを見て、心が動かされた。

(静岡への想いが込められた横断幕。その上には両チーム出場選手の掲出がある)
試合は4-1で藤枝の勝利。昇格争いへ大きな弾みをつけた。
県内各地で甚大な被害が出ている中、サッカーなどやっている場合ではないという批判が上がっても不思議ではない。
開催のために尽力された方々、通常とは異なる運営にも関わらず快適にサッカー観戦をさせてくれた方々、静岡にエールを送り、真っ向勝負でぶつかってくれたY.S.C.C.横浜の選手スタッフ、サポーターの方々に改めて敬意を表したい。
須藤大輔監督の言う「藤枝のエンターテイメントサッカーで全ての人に勇気や希望、感動を!」という言葉の真髄を見た気がした。
また、特に大きな被害を受けたエスパルスに対し、ジュビロが飲料水を提供したというニュースにも心を動かされた。
静岡ダービーではバチバチの雰囲気、煽り合いブーイングの応酬だが、有事には助け合う。敵に塩を送る。まさにサッカーファミリー。
これらの思い出が印象的で、私はクラブ問わず思い立った時に気ままにスタジアムへ足を運んでいる。
まだアスルクラロ沼津の試合には行ったことがないので、今度行ってみよう。ゴン中山こと中山雅史監督の率いるサッカーはどんなストーリーを見せてくれるだろうか。

(DAZNのJリーグライブ配信開始・終了時に流れるテーマソング、今年はリトグリ。いい曲だったので運転中も聴いてます)
終わり
Posted at 2025/06/08 22:16:44 | |
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