
短期間に終わったフェラーリ348との生活。改めて言いたいのは、金銭面での問題ではないということ。348はほぼノートラブルで、ショップの協力もあり維持費は最小限だったし、もし高額修理が発生しても支払える資金はあった。私にとってはそれよりも、ライフスタイルとの不一致が大きかった。一人目の育児が落ち着き、「今なら…」と購入したものの、やはりフェラーリは男にパワーを与えるのだろう、すぐに二人目を授かってしまった。二人を子育てしながらだと、「オレはフェラーリを持ってるぞ!」と言いながら、ほとんどの時間を足車で過ごすこととなる。私にはそれが合わなかった。
348を購入したショップに売却しに行くラストドライブの日。朝早めに家を出て、首都高をドライブしてから、ショップへと持って行く予定。入道雲が浮かぶ晴れた日、気温は朝から30度を超えていたが、躊躇なくエンジンに火を入れた。すると、いつもならすぐに涼しい風が出てくる吹き出し口から、風が出てこないし、コントロールパネルも暗い。まさかの、手放す当日にエアコンが壊れるという事態に。やはり車は生き物だと感じた。最初は、短期間で手放す不甲斐ないオーナーに対して348が怒ったのだと思った。「そっちがその気なら!」と私も意地で応え、灼熱のコックピットで、ノンパワステと重いシフトと格闘しながら、首都高を汗だくになり夢中でドライブした。次第に、もしかしたらこれは、348が最後に私にプレゼントしてくれた、「あるべきフェラーリの世界観」なのかもしれないと思い直すようになった。気分はまるでタツィオ・ヌヴォラーリ、なんという快感。やはりフェラーリは死の匂いを感じながら乗るものだった。
いつものPAでポカリを飲み干し、なんとか無事ショップへ到着。エアコン故障はあれど約束通りの売却金額で契約。ローンを精算し、思わず頬が緩む「おつり」が口座に振り込まれた。結果的には頭金だけでフェラーリを乗り回せたことになる。そういう意味では本当に良い経験だったし、後悔はまったくしていない。むしろ、このタイミングで「フェラーリに乗る」という夢を一度叶えられたというのは、今後の人生においても糧になるし、次またフェラーリに乗る際は、より自信が持てるようになるだろう。30代でフェラーリを所有できて本当によかった!
Posted at 2025/08/16 07:39:34 |
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