1954年356 1500クーペでグロスグロックナー峠を駆け下り、ポルシェ・スポーツカー生誕の地グミュントに着いたところで乗り換えたのは、同じくシルバーの1958年356A1600Sスピードスターでした。
このスピードスターと、魅力的な猫背のリアビューを見せてその前にパークしているプリAクーペ、年式は4年しか違いませんが、乗ってみるとその進化ぶりはかなりのもので、4年以上の隔たりがあるかのように感じます。
その理由のひとつは、スピードスターがOHVモデルとして当時最も高性能だった1600Sだったため、最高出力75psと1500クーペの55psよりずっとパワフルなことがあげられます。レヴリミットが1000rpm高い5500rpmに引き上げられていることも、アップダウンのある道で速いペースを保つには効果的でありました。
もうひとつ重要なポイントは、コントロール類の感触が正確さを増していることで、ステアリングはセンターがプリAクーペより遥かに締まっている上に、タイヤもラジアルを履いているため不整路面での直進性も大きく向上しています。さらにギアシフトも、レバーがぐっと短くなってストロークも詰められているので、より確実に、しかも素早く操作できます。
それにもうひとつ、今回のような好天の下で山間部を走る場合、開放感に溢れたスピードスターボディのオープンエア感覚が、すこぶる爽快に感じられたのはいうまでもないでしょう。
というわけで、いわゆるファン・トゥ・ドライブの度合いでいうと明らかにスピードスターがプリAクーペを上回っていましたが、では、もしも1台お持ち帰りが許されるとしたら僕がどっちを持ち帰るかというと、たぶんプリA1500クーペを選ぶのではないかと思います。
その理由は、ちょっと説明するのが難しいのですが、スムーズに走らせるのが難しいにもかかわらず、プリAクーペはそのドライビング感覚に得もいわれぬ味というか、魅力があるんですね、素晴らしい乗り心地を含めて。
356スピードスターの後は、ターボルックの1988年911スピードスターに乗り換えて2日間のヒストリック・ポルシェ・グランドツアーを終えたのですが、356から乗り換えると911のなんとパワフルで乗り易いことか。それこそ大きな進化を実感したのですが、それと同時に、両者に明確に共通する感覚がちゃんと伝承されてるところに、ポルシェの血筋を鮮烈に感じたのでした。
このポルシェ・スポーツカー60周年イベント、当ブログでの展開はこれで終了になりますが、もっと多くの写真を使ったリポートを僕の別ブログ
『TAKUMI YOSHIDA.log』にアップしているので、興味のある方はそっちも覗いてみてください。
Posted at 2008/06/04 21:13:57 | |
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