
1991年太平洋戦争で主役の座を降りた「戦艦」その最後の艦が其の役目を終え退役した。 アイオワ級戦艦、アメリカ海軍が最後に建造した戦艦である。
1937年ロンドン軍縮条約失効と共に各国は戦艦建造に乗り出した。 アメリカ イギリス 日本 イタリア フランス ドイツ 世界の主たる海軍は主力たる戦艦建造に力を注ぐ。
アメリカは低速 重防御の戦艦群から中高速戦艦への転換を進め ノースカロライナ級 サウスダコタ級と速力28ノットの中速戦艦の建造を開始した。
しかしアメリアの仮想敵国である日本にはある厄介な戦艦が存在した。 「金剛型戦艦」 1913年建造されたこの艦は当時世界最強の「巡洋戦艦」であった。 当時の日本戦艦の中では最も古い艦であるにも関わらず、幾多の大改装を受け門の14インチ砲(36センチ)と相応の防御 そして30ノットという高走を発揮する「高速戦艦」として存在していた。
当時米国にこの速度に対抗する戦艦はおらず(軒並み21ノット前後)で日本艦隊(23〜26ノット)に比べ劣速でありとてもではないが30ノットの金剛型には追随できない。
これに対して「重巡洋艦」では大きな火力の差があり(重巡の主砲は8インチ(20センチ))偵察任務等で遭遇した場合一方的に叩かれてしまう恐れがあった。
もし艦隊戦になり金剛型4隻がその有速をもって遊撃戦や強行偵察等を行った場合、アメリカ海軍にそれに対抗する艦無く。 重巡洋艦戦力等を食いつぶされその穴から日本軍の水雷戦隊が主力本体へ突っ込んでくるとう最悪のシナリオが現実となってしまう。
無論アメリカ対金剛へ刺客を建造する。 それがアイオワ級であった。
スペック
排水量 45,144 トン(基準)
56,500 トン(戦時計画排水量)
全長 270.43m
全幅 32.96m
主機 蒸気タービン方式, 4軸推進(212,000馬力)
バブコック・アンド・ウィルコックス式重油専焼ボイラー 8基
GE式またはウェスチングハウス式蒸気ギヤードタービン 4基
最大速度 約33.0ノット
航続距離 15ノットで16,600海里
乗員 1,921名
兵装 Mk.7 16インチ50口径砲
(3連装砲塔として搭載) 9門
Mk.12 5インチ38口径砲
(連装砲塔として搭載) 20門
40mm機銃
(4連装砲塔として搭載) 60門
20mm機銃 60丁
艦載機 カタパルト 2基
水上機 3機
装甲 舷側 307mm+22mm
甲板 121~127mm+22mm
主砲防盾 432mm+64mm
司令塔 440mm
排水量は4万5000トンで建造された米国戦艦の中では最大量を誇る。
武装はノースカロライナ級やサウスダコタ級と同じ16インチ砲(40センチ)だが口径が45→50への長砲身となり高初速をもって威力の増大を計った。
速力は強力な機関(212,000馬力)にて最高速33ノットをたたき出す。 因に戦艦大和の機関出力が約150000馬力であることを考えると驚異的な出力であることがわかる。
速度性能を重視したため全長は270メートルを超え大和より長いが幅は33メートルとパナマ運河の規制に合わせ作られている。
これをもって約6隻の建造予定であったが建造されたのは アイオワ ニュージャージー ミズーリ ウィスコンシン の計4隻となる。
性能は金剛を遥かに上回り艦隊戦においても金剛を駆馳し逆に日本の補助戦力を圧倒する筈であったが、太平洋戦争開戦と同時に主力は航空機へと移り 就役が始まった1943年にはその時代は終わりを告げていた。
しかしその高速と強力な対空火器とレーダー索敵能力を持って空母部隊護衛に活躍。 さらに強力な火力は艦砲射撃での上陸支援にも使われ上陸部隊から絶大な信頼を得る。
1945年8月15日 日本ポツダム宣言を受諾し第二次世界大戦は終わりを告げた。 そいて同年9月2日アイオワ級三番艦ミズーリの艦上において降伏の調印が行われ名実共に戦争は終わりを告げた。
その後朝鮮戦争 ベトナム戦争に従軍 対地支援等で活躍、しかし平時は予備役として保管状態であった。 ロナルド・レーガン政権下での600隻艦隊構想により 巡航ミサイルトマホーク 対艦ミサイルハープーン等のミサイルを搭載 近接防御火器CIWSの搭載 レーダー等の変更など大幅な回収を受け再就役を果たす。
そして昭和も終わり平成に突入し戦争は過去となった日本、しかし其の当時戦果をまみえた艦は其の時も戦場に立っていた。 そう湾岸戦争においてミズーリとウィスコンシンはイラク軍地上施設に対して猛烈な艦砲射撃を実施それを破壊した。
湾岸戦争終結後アイオワ級も遂に退役する。 ソ連崩壊による東西冷戦終結に寄る脅威の減少は人員や維持で非常に高コストな戦艦は割に合わず、その意義も既に無い。 50年近い任務を終えこれにて世界海軍の表舞台から「戦艦」は消えた。
今もアイオワ級は各所で博物館として又は未だに保存されている。 しかしほぼ全てが無くなってしまった日本海軍艦艇と違って今も尚その威光と権威を国民や観光客に見せ付けるアイオワ級、それは多くの戦いで米国を勝利に導いた「誇り」なのであろう。
ずんぐりした船体が多い米戦艦でもスマートで非常に優雅な雰囲気をかもちだす本艦は異常に色気が溢れた艦だと自分はおもう・・・・・・・ 彼らはアノ時の戦いを今も尚覚えているのだろうか・・・・・・・
Posted at 2013/09/27 20:00:41 | |
トラックバック(0) | 日記