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2016年12月02日

Def busta 第二章 ~recovery line~ 第四話

 Def busta 第二章 ~recovery line~ 第四話












        


レース終了後、コース脇に設けられている駐車場で成海は着替えをしていた。もちろん更衣室などシャレたものは、こんな所には存在しないので、青空生着替えが通常なのだ。しかしながら、いかに成海といえど一端の女子である。そこは男並みの事はできないので、タオルケットで作ったポンチョに身を包み、その中での着替えを行う。そしてあおりを倒した軽トラの荷台に座り、不機嫌そうにオフブーツを脱ぐ。その近くには七菜香の姿があった。




そこへ、MXジャージを着たままの岩野がやってきた。

「どうっスか成海ちゃん。足回りのセッティングの奥深さが分かったっスか?」




などと痛いところを付いてくる。ふくれ顔の成海は、コンバースオールスターハイカット履く。
一息吐きながら、『やれやれ』 といった表情の岩野。




「ナルちゃん、そんなに怒らないで」

七菜香が心配そうな表情で成海をなだめる。




「いや別に怒ってなんか…。ただ下村さんが観てたのに…ブツブツブツ」

更に心の中でもブツブツ呟く。

『あんな邪魔さえなければ…。いや、違う。こんなんじゃダメなんだ。もっと速くならないと !! そうじゃなきゃ、下村さんに喜んで貰えない…』




その時だった。妙な雰囲気の上場見がフラリと現われ、少しラリった様子で横から声をかけて来た。




「おうコラ、このクソアマァ~、人の目の前をチョロチョロとウゼェ走りしやがってよぉ~」




上場見に視線が集まる。明らかな敵意であった。しかし成海は、少しも臆することなく、凛々しい表情で上場見を睨みつけた。




「お~お~怖ぇ~なぁ~」

ヘラヘラとした表情を一変させ、凶悪な蛇顔となる上場見。

「俺のバイクまで壊しやがってよぉ」




その言葉を聞き成海が喰ってかかった。

「ふざけんな ! あれはアンタがアタシに向かって突っ込んできたんだろ !! 」




またヘラヘラとした表情に戻る上場見。

「まあいい。テメエは無理だろうけどよぉ、そっちのメガネのお友達に修理代を払って貰おうかぁ~。あん !? 」




そう言うや否や、上場見は蛇のように素早い動きで、スルスルと七菜香に詰め寄り、右手で彼女の胸を鷲掴みにした。

「ひゃうっ」

七菜香の身体が硬直する。





「ひっひっひ。お前がウチの店(デリヘル)で働けぇ。俺が直々に仕込んでやっからよぅ~」

上場見が、ハ虫類を連想させる細長い舌をベロリと垂らした。




「いやだぁやめてーー ! 」

抵抗する七菜香。しかし上場見はこれ見よがしに胸を揉んできた。




その時、成海の中でブチッと何かが音を立ててキレた。 弾かれた様に身体が動き一瞬で間合いを詰め、間髪を入れずに上場見の右手首へ前蹴りを放った。濡れタオルで叩かれたような音が響く。そこで纏っていたポンチョを脱ぎ捨てながら、怪鳥の鳴き声にも似た気合を一閃いれる。

「シャラーーー !! 」



しなやかに引き締まった、成海の上半身が露わになった。黒いスポーツブラを着用はしていたが、小振りながらも形の良い乳房が見て取れる。

七菜香から上場見が離れ、その間に成海が立ち塞がる。左構えのオーソドックススタイルを取った。




「こおのクソアマがぁ~ !! 」

凶悪な蛇顔に戻る上場見。




「クソは手前ぇだぁーー ! ゲスヤロー !! 」

成海が吼えた。




そんな成海の気合いに呼応したかのように、岩野が上場見に飛び付いた。後ろから抱きつく形となり、左腕を後ろ手に取り押さえる。

「もうやめるっスよ ! 」




「ひっひっひ。なんだぁ~オイ !? 」

上場見はその体勢から、平然と体を右に捻り出した。奴の左腕から岩野の手に “ゴリゴリ” と骨の軋む感触が伝わってくる。そして間もなく、上場見の左肩が嫌な音を立てて外れた。




「何考えてんスか !? 」

岩野は思わず手を離してしまう。




今度は正対した上場見が、岩野のこめかみの辺りに、勢いよく右肘を打ち込んできた。

「グッ」

驚きと意表。まともに肘を食らった岩野は片膝をつき、上場見を見上げた。
左腕はだらんと垂らしたまま、奴はヘラヘラと笑っている。




「痛みを感じてねーんスか !? 」

「ひっひっひ」

更に下卑た笑いをする上場見。




その場にいた全員に冷汗が流れた。が、その時だった。とてつもない威圧感と共に、下村が現われ、成海と七菜香の前に立ち、上場見を睨みつけた。

「何してんだ上場見」

下村の低音の声には相当な凄身がある。




そこで上場見は急に態度を変え、慌てた様子で答えた。

「あっ、いやいやいや下村さん。別にSANTANAと事を構えようなんて気はサラサラ無ぇーんですよ」




下村は更に睨みつけた。

「…じゃあナンだ !? 」




口元を吊りあがらせる上場見。

「いやただね、手ぇ出されたらこっちだって降りかかる火の粉は払いますぜ」




それを聞き “カッ” ときたのは成海だった。

「ふざけんなぁーー ! お前が先に…」




言いかけ、後ろ手に成海を制する下村。

「文句があるなら俺に言え」




ヘラヘラと笑いながら答える上場見。

「SANTANAに文句なんてありゃあしませんぜ。しかしそっちのお嬢ちゃん達は別ですがね ! ひっひっひ」




「なんだと !? 」

一歩前に踏み出す下村。それを見て後ずさりする上場見。




「おお~~怖い怖い。俺ぁさっさ退散しますわ」

左腕をだらんと垂らしたままの状態で、奴は成海を睨み付けた。

「じゃあまたなお嬢ちゃん達。ひっひっひ」




そう言い上場見はそそくさと退散していった。




しかしながら下村は、そんな奴の後ろ姿を、なんとも寂しそうな表情で見送っていた。

「バイクは良い腕してんのにな…。どこであんなんなっちまったんだろ…」




うずくまる七菜香の肩を抱いていた成海は、複雑な気持ちで下村を見上げていた。









    


その夜。ペンション輪道のガレージで、成海はKX500の整備をしていた。オフ車用レーサースタンドにバイクを載せ、リヤサスのプリロード調整を行っていた。やはり岩野の言葉が成海には響いていたのだ。
だがそれ以上に、『もっともっと速く走れるようになりたい』 そんな気持ちが成海を突き動かしていた。

しかし、そんな衝動とは裏腹に、近くに置かれたラジオからは流行りのラブソングが流れ、なんともゆっくりしたメロディーを奏でている『~♪』

そして甘い2ストオイルの香りが充満するガレージ内には、KTCの大型工具箱、その他にアーク溶接用酸素ボンベ、フライス、旋盤があり、壁にはチャンバーが4本ぶら下がっている。その殆どは源三にしか扱えない代物だが、それなりに知識のある者がその気になれば、かなりの重整備が可能なガレージであることが見て取れる。

成海にとっては心落ち着くスペースであるのと同時に、祖父・源三と、堅い絆が結ばれたガレージでもある。幼い頃からここでたくさんの事を教わった。祖父は本当にあらゆることを伝えてくれた。それは妹の七菜香も同様で、彼女にとっての思い入れのある場所とは、ペンションのキッチンであろう。

両親を失っている彼女達にとって、祖父はあまりにも偉大であった。時には厳しい父親であり、また時には優しい母親のような存在。それに成海にとってはバイクの師匠であり、空手の先生でもあった。

一人で作業をしていると、様々な事が頭を過る。 そんな時であった。入口付近に七菜香が現われた。少し様子がおかしい。




「ナルちゃん…」

少し脅えていた。か細い声で成海を呼ぶ。




異変に気付いた成海が七菜香に歩み寄る。

「どうしたナナ?…まさか胸痛むの?」




パジャマ姿の胸元に、赤くなった痣が見えた。

「ううん…そうじゃないけど…なんだか怖くて…」

言うや否や、七菜香は目に涙を浮かべながら成海の胸に飛び込んだ。




「わたしナルちゃんが羨ましい。強くてたくましくて、バイクに乗るのが上手で…わたしは何にも…」

最後の言葉を遮るように成海が言う。

「ううん。そんな事ない。アタシはね、逆にナナが羨ましいよ。アタシはガサツだけど、ナナは優しくてカワイくて料理が上手で。ナナはお母さんによく似てるよ」




そう諭しながら、幼い記憶に残る、とても優しくて綺麗だった母の姿を思い浮かべていた。それから2人はきつく抱き締め合った。少しの間、七菜香は声を殺して成海の胸で泣き続けていた。
   














        


次の日の朝。そこにはいつも通りの日常があった。








パイプを吹かしながら濃いコーヒーを飲む源三の姿と、朝食の用意をする七菜香の姿。成海は寝ぼけ眼でそんな風景を見ながら、“ホッ” とした気持ちになっていた。

しかしその穏やかな朝とは裏腹に、テレビから強烈なニュースが流れた。それは指名手配となった上場見のニュースであった。




テレビ 『昨晩午後9時、道警は売春防止法違反の疑いでデリヘル店経営の店長「上場見顎(25)」容疑者を全国に指名手配しました。現在上場見容疑者は逃走を続けており、道警は行方を追っています。その他にも麻薬取締法違反の疑いもあり、逮捕後には容疑を固める方針です』





女のキャスターが硬い表情でニュースを伝える一方、平静を装う七菜香ではあるが、動揺は隠しきれない様子だった。手が細かく震えている。 が、成海は無表情にテレビを見つめながら、努めて興味無さ気に呟いた。

「アイツはもう終わりだね。ナナも気にしなくていいよ。どうせどっかにトンズラして、この辺になんか居やしないんだから」




無言で頷く七菜香。しかしそんな成海も少なからず動揺していた。身体の中で小さな不安が一つ脈を打ち、机の下では脚が一瞬 “ブルッ” と震えた。










つづく



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Posted at 2016/12/02 20:26:25

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