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2011年11月24日

ふりむくな ふりむくな うしろには夢がない

ふりむくな ふりむくな うしろには夢がない セブンがいない休日・・・ん~、ヒマ。
何をするでもなく、ベッドに寝っ転がって昔買った本をパラパラと眺めておりました。

手に取ったのは寺山修司。そう、あの寺山修司です。

学生時代、彼の書く文章が好きで、ガラにもなく詩集とか買い漁りました。



でもまぁ社会人になって、人並みに結婚して子供も生まれて仕事もそこそこ忙しいとくれば、の~んびりと読書に耽る余裕など当然無いわけです。こうして落ち着いて彼の作品を味わうのはホント二十年ぶり位かな?

2冊、3冊と読み進むにつれて蘇る青春時代の甘くホロ苦い思い出。

ふと、一節の詩のところでページをめくる手が止まります。

そう言えばこんな詩があったな~

最初に出会ったのは二十歳頃・・・
何十年の歳月を経て、再び魂を激しく揺さぶってくれました。









ふりむくと
一人の少年工が立っている
彼はハイセイコーが勝つたび
うれしくて
カレーライスを三杯も食べた



ふりむくと
一人の失業者が立っている
彼はハイセイコーの馬券の配当で
病気の妻に
手鏡を買ってやった




ふりむくと
一人の足の悪い車椅子の少女がいる
彼女はテレビのハイセイコーを見て
走ることの美しさを知った



ふりむくと
一人の酒場の女が立っている
彼女は五月二十七日のダービーの夜に
男に捨てられた




ふりむくと
一人の親不孝な運転手が立っている
彼はハイセイコーの配当で
おふくろをハワイへ
連れていってやると言いながら
とうとう約束を果たすことができなかった



ふりむくと
一人の人妻が立っている
彼女は夫にかくれて
ハイセイコーの馬券を買ったことが
たった一度の不貞なのだった




ふりむくと
一人のピアニストが立っている
彼はハイセイコーの生まれた三月六日に
自動車事故にあって
目がみえなくなった



ふりむくと
一人の出前持ちが立っている
彼は生まれて初めてもらった月給で
ハイセイコーの写真を撮るために
カメラを買った




ふりむくと
大都会の師走の風の中に
まだ一度も新聞に名前の出たことのない
百万人のファンが立っている

人生の大レースに
自分の出番を待っている彼らの
一番うしろから
せめて手を振って
別れのあいさつを送ってやろう
ハイセイコーよ
おまえのいなくなった広い師走の競馬場に
希望だけが取り残されて
風に吹かれているのだ



ふりむくと
一人の馬手が立っている
彼は馬小屋のワラを片付けながら
昔 世話したハイセイコーのことを
思い出している



ふりむくと
一人の非行少年が立っている
彼は少年院の檻の中で
ハイセイコーの強かった日のことを
みんなに話してやっている



ふりむくと
一人の四回戦ボーイが立っている
彼は一番強い馬は
ハイセイコーだと信じ
サンドバッグにその写真を貼って
たたきつづけた




ふりむくと
一人のミス・トルコが立っている
彼女はハイセイコーの馬券の配当金で
新しいハンドバッグを買って
ハイセイコーとネームを入れた



ふりむくと
一人の老人が立っている
彼はハイセイコーの馬券を買ってはずれ
やけ酒を飲んで
終電車の中で眠ってしまった




ふりむくと
一人の受験生が立っている
彼はハイセイコーから
挫折のない人生はないと
教えられた



ふりむくと
一人の騎手が立っている
かつてハイセイコーとともにレースに出走し
敗れて暗い日曜日の夜を
家族と口もきかずに過ごした



ふりむくと
一人の新聞売り子が立っている
彼の机のひき出しには
ハイセイコーのはずれ馬券が
今も入っている







もう誰も振り向く者はないだろう
うしろには暗い馬小屋があるだけで
そこにはハイセイコーは
もういないのだから


ふりむくな
ふりむくな
うしろには夢がない
ハイセイコーがいなくなっても
すべてのレースが終わるわけじゃない
人生という名の競馬場には
次のレースをまちかまえている百万頭の
名もないハイセイコーの群れが
朝焼けの中で
追い切りをしている地響きが聞こえてくる


思い切ることにしよう
ハイセイコーは
ただ数枚の馬券にすぎなかった
ハイセイコーは
ただひとレースの思い出にすぎなかった
ハイセイコーは
ただ三年間の連続ドラマにすぎなかった
ハイセイコーはむなしかったある日々の
代償にすぎなかったのだと


だが忘れようとしても
眼を閉じると
あの日のレースが見えてくる
耳をふさぐと
あの日の喝采の音が
聞こえてくるのだ





  「さらば ハイセイコー」(新書館刊「競馬への望郷」より)



いや~、歳をとると感性が鈍くなるって言うけど、なかなかどうして・・・。
感動という意味では、昔より大きかったかも。

親不孝。
初めてもらった月給でカメラ。
受験で挫折・・・。
何か、まるで自分のストーリーの一部を眺めているような気がしました。

前を向いて行く力を、ほんの少しだけ分けてもらえたかな。


ふりむくな
ふりむくな
うしろには夢がない

ブログ一覧 | 本の話 | 日記
Posted at 2011/11/24 22:02:22

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この記事へのコメント

2011年11月24日 22:19
おいらはど~も昔からふりむくクセがあるようで、今の幸せを感じ取るセンサーが鈍い体質みたいです (^◇^;)

しかしBGMも“さらばハイセイコー”じゃなくってよかったwwww
コメントへの返答
2011年11月25日 22:16
ふりむくのが人の常ですからネ
自分も何回も何回も振り返りつつ、ここに辿りつきました。

この詩を書いた寺山修司自身、彼の作風から想像するとかなり「ふりむく」部類の人間だったような気がします。
「ふりむくな ふりむくな」はある意味、自分に言い聞かせる言葉だったのかも知れませんね。

さらばハイセイコー・・・騎手・増沢末夫の名曲も一瞬選択肢に考えたんですが、さすがにそれだとハイセイコー一色の濃過ぎるブログになってしまうので(笑
ちなみにBGMは阿川泰子の『Good Bye』です。
2011年11月25日 0:31
久しぶりに 詩を味わいました^^

自分の青春時代に照らし合わせると 
気恥ずかしく感じますが・・・・・・・

まだまだ振り返っている場合じゃあ有りません^^
明日がマイ・ベストデイでありますようにっ(^0^)
コメントへの返答
2011年11月25日 22:28
自分の中では、この詩と宮沢賢治の『雨ニモマケズ』が“声に出して読みたい日本語”の双壁かな?
まぁ、中年男がブログに詩をアップするなんて異和感あるかも知れないけど、たまにはネ(笑

寺山修司の作品では『ふるさとの 訛りなくせし友と居て モカ珈琲はかくまで苦し』といった短歌も大好きだったりします。

>まだまだ振り返っている場合じゃ・・・

その通り♪
振り返るのは・・・セブンを降りた時かな
2011年11月25日 8:49
ふりむけば 今の自分がある。
何回も挫折しそうになり、けど頑張る自分。
疲れる自分・逃避したくなる自分。
それを乗り越えた自分がいる。

何のためにがんばる 自問自答の自分。

幸せって、なんでもない今なんだよね。
気付かないだけで・・・・・・・・・・
コメントへの返答
2011年11月25日 22:37
コメントしづらいブログだったでしょ?
ありがとネ、空バカさん。

このところ、仕事も結構ハードで正直へばっていました。無意識のうちに何処かに救いを求めていたのかもしれません。
それだけに胸を衝かれるものがありました。

いちばん沁みたのは「親不幸な運転手」のくだりかな?
父親、母親ともこの世にはもういないけど、せめて温泉くらいは・・・と、悔んでもあとの祭り。

>ふりむけば 今の自分がある。

空バカさんが言うと説得力が違うなぁ~(^^
ふりむくな、ふりむくな・・・で、最後に振り返った時に何もないスカスカの人生じゃ意味ないですもんね。

ほんと、「何でもない今」を大切にしたいです。
2011年11月26日 13:44
3年前現車見ずにFAXで注文しました明けてお正月納車の時バスに乗り着き電車で市外へ又バスに乗り住宅地で降りたらすこし遠くで社長さんがおおきな犬を散歩させていました、犬はこちらを見ていました。
開店後大きな犬が出迎えてくれました初対面ではないので解っているようでした、
手続きを済ませいよいよ店の前に7が来ました驚きもほどほどにハンドルを握りながら
後悔しながら東京に着きました今思うと驚きは慣れましたがあの後悔はなんだったのか
不思議です、頭で考えることがすべてではないと感じました。
この時期になるとマイ7を思い出します 磨かないけどいつまでもいっしょにいようと
しています、 おわり。


コメントへの返答
2011年11月26日 21:51
ふりむくと
一人の男が立っている
彼は昔からの憧れを絶ち切れず
酒の勢いにまかせ
現車も見ずにスーパーセブンをオーダーした

もう後悔することはないだろう
うしろに流れてゆく風景は
日々の諸々の煩わしさを忘れさせてくれるから

走れ
走れ
うしろには夢がない

人生という名のサーキットには
次のレースをまちかまえている数百人の
名もないセブン乗りの群れが
朝焼けの中で
爆音を轟かせているのが聞こえてくる


・・・と、e-doさんをイメージするとこんな感じでしょうか?3年前のセブン納車ストーリーも、ある意味では一編の詩のようが気がします。

ハイセイコーと共に幾つもの人生があったように、スーパーセブンと共に沢山の人生があるのですね。
これからも一緒にセブンライフを歩んで行きましょう。
2011年11月28日 18:22
時の歩みは三重である

未来はためらいつつ近ずき

現在は矢のように速く飛び去り

過去は永久に静かに立っている


コメントへの返答
2011年11月28日 20:54
コメントありがとうございます。

誰の言葉かは存じ上げませんが、とても含蓄のある言葉ですね。
未来、現在、過去の本質に迫る恐るべき慧眼。
著名な作家か文学者かな?・・・いや、もしかしてB7さんが今思いついた言葉??

冒頭の画像、“ポケットに名言を”の中にも、寺山修司が選んだ古今東西の沢山の言葉が散りばめられていて、おススメですよ。
普通、名言っていうとどこか「上から目線」的なものがあったりして取っつきにくいんですが、これはそんなこと無いですから。

ちなみに、自分が好きなのはコレ↓

『愛のために死んだ人は神の中に葬られる』
(ナヒテノルト)
2011年11月29日 9:00
こころ若ければ

始まりはいつでもある

こころ若ければ

おとぎばなしは現実となる

・・・(しつこくてごめんなさい)
コメントへの返答
2011年11月29日 21:27
再びコメントありがとうございます。
(しつこいなんてとんでもございません)

う~む、こちらも一体誰の言葉なのか・・・
ただ、あの有名なサミエル・ウルマンの詩『青春』に通じるものがありますね。

“人間は年齢(とし)を重ねた時老いるのではない。理想をなくした時老いるのである。歳月は人間の皮膚に皺を刻むが、情熱の消失は心に皺を作る。 ”
というアレです。

ほんと、心にいつも情熱を持って、おとぎ話を現実にできたら素敵ですよネ。

人は信念と共に若く 疑惑と共に老ゆる
人は自信と共に若く 恐怖と共に老ゆる
希望ある限り若く  失望と共に老い朽ちる

この続きは・・・ひさのさんで語り明かしましょう

プロフィール

「雨の日はセブンを磨いて http://cvw.jp/b/400034/42148662/
何シテル?   11/04 20:02
はじめまして。セブン歴は20年目に突入しました。 あまり遠出せず、近場をウロウロしてることが多いです。 末永く、よろしくお願いします。
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