ここ最近、私が凄く興味があり、原因を探りながらやっている魚の研究を紹介します。
(今日もマニアックな話題で、クルマとは一切無関係ですので、ご興味のある方だけお読み下されば結構です。)
研究テーマは、
「フナの体色変化について」です。
以前、ご紹介した透明鱗ギンブナ (ギンブナの突然変異個体で、ウロコの黒色細胞が欠乏し体が透けて見えるフナ)を、たまたま金魚(ワキン、ランチュウ、オランダ、東錦、出目など)を飼育している水槽に同居させたところ、徐々にではありますがこの透明鱗ブナの体色が変わり、最終的にはオレンジ色の個体と、オレンジ色×黒色の混じる個体に変化したというものです。
まるで、
自分達が金魚にでもなったかのように・・・。
難しい文章の前に、まずは写真を載せますので、リラックスした気持ちで見て下さいね。
まずは上から。↓
比較のために、一匹は色が変わる前の透明鱗ギンブナです。
これは色が変わる前の透明鱗ギンブナ。↓
すいません、写真は素人なものでして汗
上にいるのが全身オレンジ色の個体。↓
こちらも、画像がアレで申し訳ありません。汗
これはオレンジ色×黒色の混じる個体。↓

いかがでしたか?変わっているでしょ?笑
とてもフナから色変わりしたとは思えない体色だと、思いませんか?
ここからは文章が長々と続きます。
疑問①、
生物界では天敵から身を守る手段として、周囲の環境や背景色に応じて似せる「擬態」が知られていますが、この場合も擬態をしているのか?・・・でもこれはちょっと違うと思う。
疑問②、
金魚やアジアアロワナ(一部の品種)など、体色の赤色の濃さにより価値が高まるものは、通常はクリル(エビを乾燥したもの)や色揚げ用飼料を積極的に与えて、体色をコントロールさせるが、この水槽内の全個体の餌は、ドッグフードのみのため、餌による変色とはとても考え難い。(えぇ、ドッグフード? と笑ってやって下さい)
疑問③、
色揚げ方法には、照明(赤色蛍光灯使用)のコントロールもあるが、水槽内を直接照らす照明は一切使用していない。(室内用の白色蛍光灯のみを照射=人間用のもの)
疑問④、
そもそも透明鱗ギンブナというのは、ウロコの黒色細胞が欠乏しているから透明鱗と呼ぶのに、何故欠乏した色素細胞が復活?して、オレンジ色や黒色が出現し始めたのか分からない。
疑問⑤、
この透明鱗ギンブナは、元々河川から採集してきた天然個体(当時は稚魚だった)を大きく育てあげたので、遺伝子的にも金魚の系統では無いと断定*できる。そのため本来の色素は渋銀のみのはず。
*断定出来るのは、ギンブナの繁殖形態にある→ギンブナは雌性発生で、クローン個体しか産まない。
疑問⑥、
金魚というのは、稚魚の時点では全ての個体は黒色をしており、成長に従って赤色や白色が現れてくる。勿論、ギンブナの場合、途中で色が変わるというのはこれまで聞いた事がない。
※ヒブナやヒゴイというのは、生まれた稚魚の時点から緋色をしており、金魚のように成長途中で体色が変色することはない。
疑問⑦、
実は、尾が著しく伸張する個体のいわゆる「尾長ブナ」も、同じように体色が変わった個体を飼育しているため、フナ類全般で起因するものなのだろうか。
→こちらは朱文金の水槽で一緒に同居させたところ、やはり淡いオレンジと黒色が目立ち始めるようになった。
せっかくの尾長ブナということで展示していたが、来館者の方に金魚と思われてしまうため、慌てて水槽から取り出し、今は別の水槽で飼育中。しかし変色した色が元の渋銀に戻ることは未だに無い。
尾長ブナ↓

写真は色が変わる前の個体で、中央にいるのが尾長ブナ。(変わった後の写真はまだ撮っていません)
●実験1.(2011.夏実施)
今回は透明鱗ギンブナ及び尾長ブナの体色が変色したが、通常のマブナでも体色変化が起こるのか?という疑問が発生。
そこで、「透明鱗ではない普通のギンブナ」を、金魚達の泳ぐ水槽に試験的に入れてみた。
→現在このギンブナは、見事ヒブナのように全身がオレンジ色に変化している。
・・・恥ずかしながら、この時はまだ興味本位だったため、正確な日時のデータ取りをしなかった。今頃になって反省。気が付いた時には既に全身が変化していた。
しかし、約半年という短いスパンで劇的に色が変化していることが分かった。
●実験2.(2011.11.19実施)
ギンブナと同じく、ゲンゴロウブナでも体色が変わるのか?と最近になって疑問に思い、やはり金魚達の泳ぐ水槽に試験的に入れてみた。
ゲンゴロウブナは、頭部~頭頂部にかけてせり上がるという特徴を持つフナであるため、もしこの個体の色が変われば、一目瞭然、誰しもが変色したことに気付く。(ギンブナの場合、ワキンやコメットに似るため、パッと見では金魚と誤同定されやすい。)
◎考察(2011.11.22時点)
まだ実験段階ではあるが、透明鱗ブナ・透明鱗ではない尾長ブナ・透明鱗ではないギンブナ、の3種類に至っては、体色変化が起こることが分かった。
しかしながらそのメカニズムに至っては、何ら証明出来ていない。
今後は、他のフナ属においても体色変化が起こるのか実証するとともに、個体の体長による変色の有無、変色する季節・水温・混泳期間などの因果関係、その他の発生要因を引き続き検証していく。
まずは、先般投入したゲンゴロウブナが今後どうなるのか、凄く楽しみである。
ゲンゴロウブナのオレンジ個体というのは、アルビノ個体(生まれた時からの突然変異)を含め、私は聞いたことない。
ここからは、私の仮説です。
私の仮説①、
フナ属は群れて生活する習性があるため、水槽内に同居する魚を、自分の仲間だと認知しているのではないか?そのため、自分も同じような体色に意識的に真似たのではなかろうか。
(同属間では群れて生活するが、ランチュウや出目と一緒にしてもそれらを仲間だと思い、体色を似せるのかどうかという事に、これまた疑問が残るのであるが・・・。)
私の仮説②、
上述したが、ギンブナは全て雌性発生(無性生殖の一種)のため、色変わりする奇形遺伝子?が存在しているのかもしれない。
もし、ゲンゴロウブナやキンブナ、オオキンブナ、ニゴロブナ、ナガフナなど、ギンブナ以外のフナの体色変化が認められなければ、ギンブナ独自の雌性発生が大きな要因になっているのではないか?と想像される。
たかがフナ。されどフナです。
日本人にとってこんなにもポピュラーな種であるフナが、未だ謎めいているというのに、あなたはロマンを感じませんか?
では、またいつかレポートします。
次回の報告をお楽しみ?に。