
「交流電化」
交流電化(こうりゅうでんか)とは、鉄道の電化方式の一つで交流電源を用いる方式。
ED79 58と51号機の重連 (2009年撮影)
JR貨物ED79形50番台機関車58及び51号機の重連
JR津軽線蟹田~瀬辺地の駅間にて
作成: 2009年9月20日
1 概要
単相交流を使うものと三相交流を使うものがある。さらに単相交流には商用周波数(50 - 60Hz)を使うものと、その2分の1から3分の1の低周波数を使うものがある。現在、主流は商用周波数の単相交流で、電圧は主に25kVを使用する。
2 特徴
直流電化と比較して、以下のような特徴がある。
・送電ロスが少なく地上設備のコストが低い
同一電力を送電する場合のロスはおおむね電圧の2乗に反比例することから、電圧はできるだけ高くした方が送電には有利である。交流は変圧器を用いて容易に電圧を変えられるため、1500 - 3000Vを用いる直流電化の約10倍の高圧が用いられており、送電ロスが少なく変電所間隔を長く取ることができる [1] 。さらに、直流電化に必要な整流設備や饋電線(架線に並行した電力線)も不要であり、全体として地上設備コストの低減が図れる。そのため、直流電化区間には高い鉄塔を造って特別高圧線や饋電線などを配備している複雑な電線設備から比較して交流電化区間は一般住宅街並の電柱の高さに留まっており、シンプルな電線設備である。ただし、高電圧ゆえ地上設備の絶縁距離を長めにとらなくてはならない。
・大容量送電が可能
交流は高電圧を用いることから、直流に比して小さい電流での送電が可能である。そのため、負荷電流が直流方式と比べて1/10以下になり、電車線は細いものですむ、したがって、大きな出力を必要とする電気車両への大容量送電に適している。日本の新幹線は高速走行で大量の電力を必要とするため、交流電化を採用した [2] 。
電動機起動制御のロスが少ない
抵抗制御を用いた直流車では、主電動機に与える電圧を制御するため、抵抗器を用いて一部を熱として捨てていた。これに対し交流車では、電圧を直接制御できるタップ制御やサイリスタ制御が基本となっており、無駄なく電力を利用できる。
・粘着係数が高い
交流車は粘着係数が高いという長所を持つ。直流車では低速で電動機を直列につなぐが、電流一定のために、ある電動機で空転が始まってもトルクが下がらず回転数がむしろ上がる傾向になる。一方交流車では一般に並列接続であるので、回転が上がるとその電動機に流れる電流が減少してトルクが下がり、容易に再粘着する。また、以前の直流車で一般的であった抵抗制御では、加速(力行)中一段ごとに電流が一時的に増大して空転を起こしやすいのに対し、連続的に電圧を変えられる交流車は優位であり [3] 、一時は交流電気機関車のD級(動軸数4)は直流電気機関車のF級(動軸数6)に匹敵すると評された [4] 。
ただし、後に直流車・交流車の区別なくVVVF制御方式が主流となり、再粘着制御が容易に行えることから、交流車としての利点は少なくなっている。
・車両コストが高い
特別高圧を電動機が使用可能な電圧に下げるため、車両には変圧器を搭載しなければならない。また、主電動機は一般に直流を電源として用いるため整流器も必要であるほか、集電装置も高電圧対応である必要がある。したがって、車両の製作費およびメンテナンスコストが高くなり、重量も大きくなりがちである。
直流直巻電動機を用いた直流電車においては短時間の最高出力は連続定格出力の4、5割増しの大きなものとなる。しかし交直両用車の場合、コストの制約のため、電動機の最高出力時の消費電力よりかなり容量の小さい、連続定格をやや上回る程度の変圧・整流機器となるため、最高出力は直流時をかなり下回る。
以上が交流電化の特徴であり、地上設備と車両のコストに鑑みると、需要が少ない地域の輸送や動力集中方式に適した方式と従来言われてきた。JR在来線のように交流電化と直流電化が混在する場合、交直両用車を使うことになるが、交直両用車では交流車のメリットはほとんど失われ、デメリットのみが残る。
現在では整流機器が安価になったことにより直流電化の費用が低下したことに加え、電車化の進展やVVVFインバータ制御により直流電車の性能が向上したため、変電所の設置間隔以外で交流電化のメリットは低下し、新幹線のような大電力の必要な高速鉄道や貨物輸送主体の鉄道以外での交流電化の優位は失われてきている。
※
1.^ 変電所の間隔は、直流饋電方式の5-10Kmに対して30-50Kmと数倍になる。
2.^ 鉄道車両1編成を走行させる際に必要な電流(A)は「出力(W)÷電圧(V)」で算出できる。例として、16両編成のN700系電車(定格出力:17,080kW)を交流25kVで走らせる際に必要な電流は683.2Aであるが、仮に直流1.5kVでこれを走らせようとすると11,387Aもの電流が必要となる。
3.^ 曽根悟「インバータ制御電車の実用」『鉄道ピクトリアル』465号、10-17頁。
4.^ 原勝司「国鉄電気機関車発達史」『電気車の科学』1962年6月号、53頁。
最終更新 2014年11月29日 (土) 07:14 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
フリー百科事典『ウィキペディア』 「交流電化」より抜粋。
≪くだめぎ?≫
「交流電化」・「貨物駅」・「ディーゼル機関車」が日常、と書いた。
「交流電化」は多くの場合、地方幹線である。戦後でも、"電化区間=直流電化"であり、大都市・しかも多くがいわゆる"電車・市電区間"で現在でも直流電化のメリットが多い所である。
非電化区間は蒸気機関車であり、無煙化のもう一つの選択肢・ディーゼル機関車・ディーゼルカー化は、当時は幹線向け開発途上で、電化に向かうのは当然の流れ。
「送電ロスが少なく地上設備のコストが低い」は非常に魅力的だった。
Posted at 2014/12/11 09:09:45 | |
トラックバック(0) |
交流電化 | その他