
2016年8月2日
トヨタ「86」の兄弟車、サイオン「FR-S」が消滅した理由
Text :桃田健史
Photo:トヨタ自動車/桃田健史
ついに13年間の歴史に幕が下りたあっと言う間の13年間
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トヨタがアメリカで2003年から展開してきた、「サイオン」が2016年7月31日に消滅した。
現地8月1日の時点で、サイオンのオフィシャルウェブサイトは継続しているが、サイオンブランドとしての販売は終了した。2017年モデル(2016年夏発売)ついては、トヨタへ「リ・バッチ(ネームバッチの変更)」が行われ、2017年以降は一部のモデルが廃止される。
具体的には、2ドアの「tC」が8月生産でモデル消滅し、小型セダン「iA」、5ドアハッチバックの「iM」はトヨタ車となる。そして「FR-S」は、日本での「86」及びスバル「BRZ」の大幅改良を受けて、2016年秋からアメリカで、トヨタ「86」として再デビューを果たす。
今回のサイオン廃止について、トヨタは若い年齢層に対するブランド戦略の見直しを示唆した。サイオンは13年間に、合計8モデルを投入し、2015年末までの総販売台数が109万2675台に達した。そのうち約70%がトヨタ車の初購入者であり、また約50%が35歳以下と、当初の目的だった若い年齢層の呼び込みが成功したといえる。
だが、伸び悩みが続いた販売を立て直すことは難しかった。導入開始の4年目には、年間17万台を超えたが、リーマンショック以降は低迷が続き、2015年に新モデル「iA」「iM」を投入するも販売数は前年比でマイナスとなった。
トヨタとしては「そろそろ潮時」という判断なのだろう。店じまいをサイオンのブランドイメージカーだった「86(FR-S)」の大幅改良のタイミングに合わせてきた、といえる。
きっかけは、映画「ワイルドスピード」の大化け
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サイオンが生まれる4~5年程前の90年代後半、アメリカに「スポコン(スポーツコンパクト)」ブームが到来した。主役は、ホンダ「シビック」などのホンダ車だった。
なぜ、ホンダ車なのかというと、80年代~90年代中盤に販売されたホンダ車が、西海岸の家庭で「子どもへの、おさがり」となり、それを使った「遊び」が流行ったのだ。
最初は、「ショー」と呼ばれる展示会で、ローダウンやエアロパーツによる演出が流行した。その流れが、ストリートドラッグレースとなり、さらに独自のドラッグレースシリーズを開催する団体が設立された。
参加車両は、ホンダのFF車を中核に、日産「240SX(シルビア)」、「GT-R」、トヨタ「80スープラ」などに及んだ。
こうしたトレンドに、ハリウッドの映画関係者が目を付けた。それが「ファースト&フューリアス(邦題:ワイルドスピード)」だ。
筆者は、同一作の現地撮影にも直接関与したが、低予算で無名の俳優ばかりだったため、まさかあれほど大ヒットするとは、制作関係者一同、まったく予想していなかった。しかも、現在に至る人気シリーズに大化けするとは…。
踏み切れないホンダを尻目に、大胆な行動に出たトヨタ
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「ワイルドスピード」大ヒットをきっかけに、三菱は「ランエボ」、スバルは「WRX」の北米導入を決定。ラリーの人気が低いアメリカで、これら2モデルの販売計画はなかったが、ジャパニーズ・ストリート用チューニングカーのビジネス拡大に便乗したかたちだ。
一方、ホンダはこうしたトレンドに対して、ある程度の「距離感」を持って接していた。なぜなら、ブームの本質であるホンダ車を使った各種イベントが、チャイニーズ・マフィアなどとの繋がりがあったからだ。
また、各種改造パーツが、アメリカ連邦法、またはカリフォルニア州法において、合法と非合法の中間の「グレーゾーン」であり、ホンダ本体として「さらに一歩踏み込むこと」を躊躇っていた。
そんな時期が2年ほど続き、スポーツコンパクトブームがひと息つこうか、という頃にトヨタがサイオンブランドを発表したのだ。
トヨタの狙いは、スポコンブームでクルマの新しい価値を持った若い世代に対して、彼らに手が届く新車を提供すること。トヨタブランドへの「エントリー」を設けることだ。結局、ホンダが新しい市場の種を撒き、成長したところでトヨタが刈り取ったということになる。
「若者のクルマ離れ」によってサイオンの使命は終わった
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トヨタとしては、サイオンを若者向けブランディングの実験場として位置付けただけではない。「新車を購入したことがない各世代の人たち」や、「セカンドカー、サードカーとして、コスパの高い新車が欲しい人たち」に向けた販売促進を進めた。
そして、2012年にサイオンのブランドイメージリーダーとして「FR-S」を発表。90年代後半のスポコンブームを彷彿させる、ジャパニーズ・チューニング、ジャパニーズ・カーデコレーションの世界観を訴求した。
だが、ライドシェアなど新しい交通システムが急激に普及し始めたアメリカで、「FR-S」のプロモーションには「時代遅れ感」があった。一部の熱狂的ファンによる「閉じた社会」に終始し、初期のワイルドスピードのような社会全体を巻き込むトレンドは起こらなかった。
ブランド全体としての販売数の低迷、そしてアメリカでも顕著になる「若者のクルマ離れ」によって、サイオンの使命は終わった。
100年に一度と言われる自動車産業界の大変革期に突入したいま、サイオン廃止の意味合いは極めて大きいと思う。
[Text:桃田健史]
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≪くだめぎ?≫
カローラ店・・・若い家族向け。
ネッツ店・・・若者向けコンパクトカー・ミニバンのお店。
「サイオン・パブリカ対決」と評しているが、米サイオン店はあくまで「若者向けコンパクトカー」の"お店"だった。先代シエンタがサイオンマーク極似のエンブレムだったが、現行シエンタがサイオンエンブレム投入でも良かったのではと思うネッツ店関係者もいるのでは・・。
Posted at 2016/08/26 14:05:09 | |
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