今回はトヨタのミドルクラスワンボックス、タウンエースワゴン(R20系初期型)をご紹介したいと思います。
1976年、ライトエースの上級版として発売されたタウンエースは1982年、初のフルモデルチェンジを敢行。
新たに登場した2代目は、先代の雰囲気を上手く引き継ぎながら、80年代のクルマらしく直線的なスタイルがポイント。
内装も格段に豪華になり、カローラクラスからカリーナ/コロナクラス辺りのレベルまで質感が向上しました。
上級グレードには、このクラスとしては珍しかった回転対座が可能なキャプテンシートを装備。
安全面もあり、現在ではミニバンでも回転対座を備えた車種は見かけなくなってしまいましたが、ドライブの最中に皆でおしゃべりやゲームでも楽しみながらワイワイガヤガヤ、なんてやっていた古き良き時代を感じさせます。
写真のスーパーエクストラのセカンドシートは3人掛けの8人乗りですが、左側はこれまた懐かしさを感じる折り畳み式の所謂「補助席」。
誰がここに座るかで良くケンカになった思い出のある方も多いのではないでしょうか(笑)
エンジンは先代のT型に代わり、ガソリンは2.0Lの3Y-EU型4気筒OHVと同1.8Lの2Y-U、ディーゼルは2.0Lの2C型を搭載。
正直なところ3Yでも「まあまあ走る」くらいのレベルで、2Yや2Cはフル乗車では相当荷が重いものでした。
後期型になると2C-T型ディーゼルターボも追加されていますが、それでもアンダーパワーであることは変わりなく、まだまだワンボックスが貨物車の延長線上にあった時代ならではと言えます。
それでもコラム4MT→フロア4AT、リーフスプリング→コイルスプリングへのチェンジは大きな進化で、より乗用車に近付いたタウンエースは女性にも比較的扱いやすいクルマになりました。
主な女性のターゲットは「ママ」でも「ご婦人」でもなく、「ワイフ」!
くどいようですが、こういう時代です(笑)
ここからは'80sワンボックスらしい装備の数々を見ていきましょう。
今では当たり前になったものから、こんなのあったの!?的な装備までまさに百花繚乱。
タウンエース専用のスーパースペースコンポは懐かしのオージエスバイヨ。
7スピーカーにリヤコントローラー&リモコン、カセットを聴きながらヘッドホンでラジオが聴ける「サウンドインサウンドシステム」を備える豪華版。
カーテレビも当時のワンボックスでは定番のアイテムでしたが、仰々しい見た目の割には5インチしかないという…(苦笑)
大きめのスマホと変わらないくらいですね(^^;
製氷機能付き冷温蔵庫もあの頃はワンボックスの必須アイテムでした。
ロイヤルラウンジの助手席には角度調整が可能なフットレストが装着され、小柄なワイフも至極快適♪(笑)
その他、2段ベッドを装備したキャニオンパッケージという変わり種のオプションまであり、まさにレジャーを楽しいものにするアイテムばかり。
グレードは全部で6種類。
上級版のロイヤルラウンジとグランドエクストラ。
至れり尽くせりのロイヤルラウンジは価格も高く、初期型の頃はなかなか見かけませんでした。
中間グレードのスーパーエクストラとスポーティグレードのカスタムS。
街中で出くわすタウンエースのほとんどがこの「スーパーエクストラ」でしたね。
けっこう上級グレードのイメージがありましたが、装備を見てみると意外にチープな雰囲気があります。
一方、カスタムSは2リッターEFIエンジンにミドルルーフ&5MTのみの設定とした硬派な実力派。
同じエンジンを搭載するロイヤルラウンジより100kg軽い車重も相まって、なかなか快活な走りが楽しめた1台だったのかもしれません。
普及版のカスタムとデラックス。
この辺りはファミリーユースというよりも、旅館や建築業の送迎車としての需要が多かったですね。
これ以後、タウンエースは大小のマイナーチェンジを繰り返しながら、1996年まで長きにわたり生産が続けられました。
今ではありふれた存在になったワゴン車ですが、この頃はファミリーカーと言えどセダンタイプが主流の時代。
自分が子供の頃にはタウンエースに限らず、見晴らしが良く広大な室内のワンボックスは、まさに夢のようなクルマとさえ思えたものです。
特に我が家はずっとセダンでしたから、友人宅のタウンエース(後期スーパーエクストラ4WD・スカイライトルーフ)に乗せてもらった時は、それは嬉しくて。
セダンを見下ろすその眺めは、もう観光バスにでも乗っているかのようでしたね。
現代のミニバンでは感じる事はない、ワンボックスのまた違った楽しさ。
魅力的なモデルが少ない昨今、こういうファミリーカーもアリではないかと思わせる1台ですね。