しばらく日産車が続きますが、今回は日産を代表するFRスポーツクーペ、シルビア(S14型)を取り上げます。
大ヒットとなった先代S13から、1993年にフルモデルチェンジされたS14シルビア。
S13とはうって変わり、緩やかな曲面で構成された3ナンバーボディへとサイズアップされました。
リアコンビランプは横一文字に配置され、どこかアメリカンセクレタリーカーのような雰囲気も漂います。
個性的だったインテリアはずいぶん落ち着いたイメージになりましたが、全体的に質感がアップした印象。
前期型の途中でエアバッグ全車標準化が行われたため、この頃の日産車はマーチでもGT-Rでもこのデザインのステアリングが装着されています。
S13で目を惹いたワンモーションフォルムのシートは、すっかり普通のデザインに改められました。
エアロ系グレードでは、当時流行でもあった昼夜反転式のホワイトメーターを装備。
フロントガラスに速度を虚像表示させるフロントウィンドウディスプレイもS13から引き継がれました。
KENWOODサウンドクルージングシステムも、この時代の日産車の定番でしたね。
エンジンは先代に引き続き、2リッターのSR型。
220ps/28.0kgmにパワーアップされたターボのSR20DETと、ハイオク仕様化され160ps/19.2kgmに向上したNAのSR20DEの2種類。
今となってはかなり控え目なスペックに見えますが、とにかく扱いやすく、90年代日産車の屋台骨を支えた名機。
カチッともしていないけど、グニャリとはしていない独特のシフトフィールの5速MTは、クラッチミートにもクセがなく、とても乗りやすかったですね。
サスペンションはFストラット・Rマルチリンクという、これまた定番の組み合わせ。
パワーアップに伴い、ターボ車のタイヤは16インチに大径化され、フロントブレーキには対向4ピストンキャリパーが装着されました。
4輪操舵システムのSUPER HICASは制御が油圧から電動に変更され、より緻密なコントロールが可能に。
この頃日産が各車種に展開していた、ノーマルとは違った個性を演出するブランド「Navan」(ナヴァーン)。
1995年に追加された「エアロ」グレードには、3分割のNavanリヤスポイラーが標準装備されました。
このブランドはエアロパーツの他、アルミホイールやステアリング、ドライビングシューズやグローブにいたるまで、少しだけアダルトテイストを狙ったブランドでしたね。
グレードはトランプをモチーフにした先代を継承した3種類が基本。
ターボはお馴染みのK's。
最上級のK'sエアロと、快適装備を簡略化したベースグレードのK's。
NAのラインアップもターボ車とほぼ同様。
Q'sにはモデル途中で装備を充実させた「クラブセレクション」が追加されました。
これまたトランプを意識したネーミングですね。
最廉価のJ'sは14インチのスチールホイールにエアコンレス、オーディオレス、集中ドアロックレスetc…という無い無いづくしの漢なグレード。
現役当時もほとんど見かけませんでしたね。
1996年にはマイナーチェンジを実施、後期型へと移行します。
何かと評判の良くなかったデザインは大きく変更され、エッジのきいた鋭いフロントマスクをもつスタイルにチェンジされました。
テールランプも、前期型の赤基調から黒基調のものへ変更。
室内は大きな変更はないですが、メーター・ステアリングのデザイン変更、K'sエアロへの3連メーターの追加などが行われました。
メカニズムは前期型から特に変更されることなく、スペックもそのまま。
90年代後半、厳しい局面を迎えていた日産のお家事情がこんなところにも窺い知れます。
モデル末期には、落ち込む販売にてこ入れするため、数々の特別仕様車も投入。
中でもカーボンセンターリヤスポイラーや専用赤バッジを備えた受注生産の「スポーツパッケージ」はかなり希少な存在。
スポーツと銘打ってはいますが、やっぱり走る部分はノーマルのままです(笑)
後期型の途中で廃止された最廉価のJ'sに代わり、ターボながら素っぴんの出で立ちに生まれ変わったK'sの方が、よっぽど市場の需要に応えていましたね。
しかし、これではイカンと立ち上がったのがオーテックジャパン。
このK'sをベースに、専用のIHI製斜流タービンやフジツボ技研製大径マフラー等を装着して250psまでパワーアップしたSR20DETを搭載、足回りも強化したオーテックバージョン、「MF-T」を投入。
外観は大きな開口部を持つフロントバンパーや高くそびえ立つリヤスポイラーが、ノーマルとはひと味違ったオーラを醸し出していました。
S14シルビアも早いもので生産終了から今年で15年。
一時期隆盛をきわめた走り屋御用達車としての人気も一段落した感がありますね。
人気だったS13や15に比べ、不人気と言われるS14ですが、現代の目で見ても充分に魅力的なFRとして、輝きは色褪せないものだと思います。
日産らしい楽しさあふれるシルビアの走りを、いつまでも記憶にとどめておきたいものです。