今回は日産・ADワゴン(Y10型)のカタログです。
1990年に2代目へとフルモデルチェンジを果たしたADシリーズ。
同時に発売され、これまで別ボディだったサニーカリフォルニアとボディが共通化。
そしてADとしては初の5ナンバー車も新設定。
これから紹介するのはワゴンがウイングロードへとビッグマイナーチェンジを受ける直前の95年のワゴン専用カタログになります。
ADワゴンSLXのエクステリア。
フロント周りはバンとは異なり、カリフォルニアと共通のマスク。
ただ、RVテイストを強みにしていたカリフォルニアに比べ、全体的に「貨客兼用」的なイメージであったADワゴンですが、最終型にのみ設定された写真の「スタイリッシュパック」を装備することにより、見た目だけはかなりカリフォルニアに近づいた印象があります。
【参考】サニーカリフォルニア特別仕様車 サンホゼGT
垂直近くまで立てたリヤゲートのせいで悪く言えばバン臭いのですが、デザイン重視で猫背だったライバルのカローラに比べてしっかり積めるのがADの美点でしたね。
室内は実用モデルだけに、ADバンの上級グレードとほぼ同じの仕立て。
B13サニーと同意匠のインパネを採用していたカリフォルニアに対し、こちらはADバン専用のシンプルなもの。
もちろんタコメーターすら付いていません。
ADシリーズの中でもユニークでひときわ目立っていたのが、フルゴネットスタイルが斬新な「MAX」の存在。
和製ルノーエクスプレスとも言えるそのスタイルは、全高を1810mmまで高めたリヤセクションの中に1205mmという室内高を確保。
ちょっとしたワンボックスに近い荷室空間を誇っていました。
当時は凄く背高ノッポに見えたADMAXも、最新軽スーパーハイトワゴンのダイハツ・ウェイクより全高・室内高ともに小さいのですから驚きですね。
エンジンはガソリンとディーゼルの各1種類。
前年のB14サニーなどに引き続き、キャブ仕様からEGI化された1.5LガソリンのGA15DE型は105ps/13.8kgmを発揮。
極めて実用的なエンジンではありましたが、意外に高回転まで回る90年代の日産らしいユニットです。
ディーゼルのCD20もまた日産らしく、エンジン音だけは随分勇ましかったですが、トルクで走る感覚が意外に楽しいエンジンでしたね。
ADシリーズの4WDシステムは3種類も存在し、ワゴンはビスカスカップリング式のフルオート・フルタイム4WDを採用。
バンにはパートタイム式やアテーサも設定されていました。
95年と言えば「エアバッグならイチロ・ニッサン」と盛大に宣伝していた時期ですから、5ナンバーのADワゴンにも今回の改良で運転席SRSエアバッグが標準装備になったのも大きなトピック。
ADワゴンのラインナップ。
ワゴン、MAXともに上級のSLX、ビジネスユースも想定した廉価版のLEという2グレード構成。
上のページに出てきたスタイリッシュパックを装着しないSLXはこの外観。
因みにバンの最上級グレード、VXに設定されていたエクステリアパックを装着すると、4ナンバーのSLX(のようなもの)が出来上がる仕組みになっています(笑)
「らくらくパック」という長閑な名前のオプションも、この頃の日産商用車ではよく見かけた装備ですね。
(Y10最終型バンのカタログより)
MAXのSLXは1サイズ大きい14インチタイヤが大きな違い。
MAX LEはらくらくパックが選べない代わり?にSLX用ローバックシートと、ドアミラー付け根の室内側に付いたツマミをゴニョゴニョ動かして鏡面調節が出来るダイレクトリモコンドアミラーを装備。
装備は前述のとおり、全体的にADバンプラスαといったレベルで、上級のSLXでも前席のみのパワーウィンドウ、2スピーカーラジオ、マニュアルエアコン装備となるなど、中にはカリフォルニアには標準装備でもADワゴンではオプションすらないものが数多くありました。
その割りにディーラーオプションはカリフォルニア並に豊富(≒共用)ですね。
このカタログが発行された約1年後の96年5月にはカリフォルニアと統合された
ウイングロードが登場。
ここでノーマルのADワゴンは生産終了、ADワゴンのポジションはウイングロードJSグレードが引き継ぎ、サニー店以外で貰うウイングロードのカタログはカリフォルニアグレードが掲載されていない専用品になるなど、ADワゴンの片鱗を感じさせました。
一方MAXワゴンはバンとともにY11型にモデルチェンジされた99年まで販売されました。
商用車ベースゆえに面白みもないモデルではありますが、使い倒す素材としては最高のクルマだと思いますね。
特にMAXは現代にはないモデルだけに、カーゴルームのアレンジに強い創造力を掻き立てられる1台ではないでしょうか。