F1も残り3戦になりました。
その3戦中の次戦の第17戦アメリカGPと翌第18戦ブラジルGPに小林可夢偉選手は出られなくなりました。
と言うのもチームが管財人の管轄下に置かれたと言う事でいわゆる資金難で差し押さえをくらったと言う事です。
差し押さえが解消されないと最終戦も出られない可能性大です。
チームスタッフはファクトリーにも立ち入れない状態だそうです。
小林可夢偉選手はトヨタのフォーミュラスクールの出身でその後、活動の場をヨーロッパに移し2007年のシーズン途中にトヨタF1のサードドライバーになります。
翌2008年もヨーロッパで活動しながら引き続きトヨタF1のサードドライバーとなりシーズン後半のF1日本GPとアブダビGPにレギュラードライバーだったティモ・グロック選手の体調不良に伴い代役で出場しそこでの活躍から翌2009年のトヨタF1のレギュラードライバーの座を物にします。
しかし2009年一杯でトヨタはF1から撤退する事となりレギュラードライバーの座は海の藻屑と消えてしまいます。
がザウバーのレギュラードライバーとなり2010年から2012年までの3年参戦し2012年の日本GPでは3位表彰台を獲得します。
ザウバーはメルセデスのワークスチームとしてCカーに参戦していた頃は資金も潤沢でトップクラスのチームでしたがF1にスイッチしてからは徐々に資金難に陥りマシン開発も十分に行えず戦闘力の劣るマシンで奮闘していました。
ただ元チームオーナーのペーター・ザウバー氏によると可夢偉選手は一円も持ち込まずに乗っていたそうです。
通常、中堅チームや下位チームなどに乗るにはペイドライバーと言って持参金(スポンサー)持ち込みでシートをゲットする場合が多いのですがチームは資金難にも関わらずノーマネーで乗れていたのはラッキーでした。
チームは可夢偉選手のチームメイトだったメキシコ人ドライバーのセルジオ・ペレス選手が持ち込んだメキシコの大手通信会社の資金などで何とかやり繰りしていたのですが2013年はニコ・ヒュルケンベルク選手が決まり、レギュラードライバーだったセルジオ選手がマクラーレンへの移籍が決まりその後釜にはザウバーの育成ドライバーでメキシコの大手通信会社の支援を受けていたメキシコ人ドライバーのエステバン・グティエレス選手が決まり可夢偉選手はチームから放出され違うチームのシートを探す事となります。
がフェラーリやマクラーレン、ウィリアムズ、レッドブル、AMGメルセデスなどの上位チームはすでに満員御礼なので中堅~下位チームのシート探しをするのですがドライバーはたくさんいてシート争奪戦です。
ドライバーとしての技量は当然必要ですが先述の通りペイドライバーが大半を占めるのでいくらお金(スポンサー)を持ち込めるかが重要になってきます。
F1はヨーロッパのチームが大半なのでヨーロッパ人ドライバーと同じ技量、同じ持参金額だと日本人ではなくヨーロッパ人ドライバーを採用されるかもしれません。
となればさらにその上を行く何かが必要となるかもしれませんね。
チームがトヨタエンジンやホンダエンジンなどを使用すればメーカーのコネが使える場合もありますがトヨタもホンダも参戦していません。
可夢偉選手はスポンサーを集めたのですがそれだけでは足らずファンに寄付金を募り1億数千万かが集まりスポンサーと併せて9億近い金額になりましたが最終的には乗れるシートは見つからずWEC(世界耐久選手権)に活動の場を移します。
WECとはル・マン24時間レースなどを始めとしたハコ車(スポーツカー)の耐久レースで昔で言うCカーレースです。
可夢偉選手が参戦するチームはフェラーリのワークスチームでしたがWECにはいくつかのクラスがありフェラーリはLMGTE-Proクラスと言う市販車ベースのクラスでした。
ル・マンで優勝争いをするアウディやトヨタなどはLMP1と言う最上位クラスでマシンもいわゆるCカータイプでトヨタには可夢偉選手と同じくトヨタ育ちの中嶋一貴選手が参戦しています。
中嶋一貴選手は言わずと知れた日本人初のF1フル参戦の中嶋悟さんの長男でかつてはウィリアムズからF1参戦していましたがF1を降りてからはこのWECとスーパーフォーミュラ(日本のトップフォーミュラ)、スーパーGTの3カテゴリーの掛け持ちで全てトヨタワークスチームです。
1年間フェラーリで活動し今年はスポンサーと寄付金でケータハムからF1に復帰する事となりました。
ただチームは資金難でマシンも戦闘力不足は分かっていたのでフェラーリからは残留するように説得されたのですがF1への復帰が諦めきれず留意を断ってケータハム入りします。
資金難でマシン開発も不十分でやはり苦労します。
チーム側からは可夢偉選手に「もっとスポンサーを集めてこい」とハッパをかけられていたようです。
そんな中、ベルギーGPでは日本でもお馴染みのアンドレ・ロッテラー選手が代役で参戦します。
正式な理由は明かされてませんが可夢偉選手の持ち込み額によるものでしょう。
ベルギーGP以降も乗れるかどうかが不安定な状態でしたが何とか乗れて日本GPにも参戦できましたがその次のロシアGPでは通常のピットインかと思いきやそのままガレージインしてリタイアとなりました。
可夢偉選手曰くマシンは何ともなかったのにいきなりのリタイアになったと。
これは資金難によりパーツの寿命を延ばす為の延命処置としてリタイアさせたのではないかとされていましたが(パーツの寿命がきちゃうと代えがないので)、チーム側はこれを否定し走行中のマシンとのデータ通信でブレーキに異常が見られたので安全処置としてリタイアさせたと。
ただ可夢偉選手はブレーキには異常やその前兆はなかったと言っているのでこれいかにです。
その後はレース期間中にチームのファクトリーが差し押さえにあったなんて噂も出たのですがチームは問題ないと言っていましたが今回に至りました。
80年代後半~90年代初頭あたりのエントリー台数が多くて予備予選のあった時代では下位チームでは資金難でエンジンの使用料が払えずにサーキットにエンジンが届かないとか債権者の差し押さえにあったとかはよくありピットに差し押さえがきた事もありましたが久々の最悪の状態です。
ケータハムは首脳陣が経営権を放棄して去ってしまっており現在新たな経営者を探しています。
最近だと投資ファンドなどが購入したりする事もありますが戦闘力不足のケータハムでは投資対象としては厳しいでしょうね。
新たに経営者が見つかれば最終戦のアブダビGPには出場できるようです。
今は年間19戦もあるんですね。
昔は16戦だったので当時ならシーズンオフです。
レースで結果を残すか光る走りをすればさらに上のチームへのステップアップの可能性もありますが、ケータハムを始め下位チームだとハナから戦闘力不足なので結果を残すのはかなり困難でそこから上にステップアップするのはやはり困難です。
となればスポンサーを集めて少しでも戦闘力のある中堅チームに乗る事ですがそうそうスポンサーを集めるのも容易ではありません。
トップクラスのチームは先述の通り満員御礼でレッドブルだと系列で中堅チームのトロロッソからのステップアップもあり、マクラーレンだと提携しているフォースインディアからのステップアップも考えられ、さらにその中堅チームには育成ドライバー制度もあったりしてかなりややこしくなっています。
レッドブル入りはまず無理ですがレッドブル入りするならまずトロロッソ入りしないとレッドブルへの道はかなり厳しいでしょうね。
となるとやはりカネです。
可夢偉選手の技量の高さはファンは元より日本のジャーナリストや元F1パイロットなどからも評価されてますが3年+2戦と今シーズン15戦参戦で3位表彰台1回だけだとこのレベルのドライバーは他にもたくさんいますのでシート争奪戦の上位に食い込む材料には難しいですね。
戦闘力の高いマシンに乗っていれば好結果が出ていたはずと言う人もいますがそれは“タラレバ”の話で現実としては結果は残せてないので厳しいですね。
まぁ中嶋悟さんが現役時代にマクラーレン・ホンダのマシンに乗っていたとしてアイルトン・セナと同じタイムで走れてチャンピオン争いができていたか?です。
マシンの戦闘力は最重要ですが乗り手の技量も伴っての事です。
中堅チームのザウバーも資金難ではありましたがまだケータハムよりはマシンも戦闘力があったのでその時に結果を残していたかスポンサー集めをしていれば状況は変わっていたかもしれませんね。
悲しいかなスポンサー集めも仕事の内で自らスポンサー集めをするのが苦手なら優秀なマネージメントを雇うかですね。
どちらにせよ不況なのでかなり困難ですが…
かつて鈴木亜久里さんと片山右京さんはベネトンと契約までこぎ着けたのですが日本人の性格なのかスポンサーとの恩義を優先してベネトン入りを断った経緯があります。
2人ともベネトン入りしていればその後のF1人生は変わっていたかもしれませんし右京さんは優勝していたかも?とも言われています。
90年ベネトンのレギュラードライバーだったアレッサンドロ・ナニーニ選手がヘリの事故で右腕切断してしまった時に日本GPに代役として星野一義さんに声がかかるのですがペイドライバーとしてで星野さんはプロたるものはお金を払って乗るのではなく貰って乗るものと言うポリシーから断られたのですが後に乗っていればよかったとも言われています。
まぁ亜久里さんも右京さんも星野さんもベネトンは実力を認めてオファーしてますからね。
かつての全日本F3000選手権やフォーミュラニッポンと呼ばれた日本でのトップフォーミュラの現スーパーフォーミュラでは今年の開幕戦の鈴鹿ではトヨタワークスのトムスのアンドレ・ロッテラー選手が予選でコースレコードを出します。
先日のF1日本GPでのケータハムの小林可夢偉選手の予選タイムはそのコースレコードより遅いタイムでした。
スーパーフォーミュラにはF1経験者が結構いてコーナリングスピードならF1よりも速いなんて言われてたりもしましたが実際に同じコースでF1よりも下のカテゴリーのマシンの方が速いタイムが出ました。
フェラーリからの残留の留意を断ってまで乗ったチームがこの状態です。
まぁ開幕戦前から資金難と戦闘力不足はある程度分かっていたので仕方のない部分もあります。
分かっていたからこそフェラーリは残留を留意したわけで。
ただWECでのフェラーリはトップクラスではなくトップクラスには同じ時代をトヨタで過ごした中嶋一貴選手がいるのでプライド的にも下のクラスで走るのは嫌だったのかもしれませんね。
ハコ車の最高峰レースで中嶋一貴選手が活躍しているのなら自分はオープンホイールの最高峰レースで活躍して対抗したいみたいな。
来年からホンダがエンジン(正式にはパワーユニット)サプライヤーとしてF1に復帰し、マクラーレンとタッグを組み注目の目となっていて可夢偉選手のファンからはマクラーレン入りを願う声もありますがトヨタ育ちの可夢偉選手にはまずないでしょうね。
ホンダ育ちでマクラーレン以外のチームにも供給となればかつての中嶋さんのロータス入りの時みたくホンダのバックアップ(コネ)も使えない事もないでしょうが。
となればホンダ育ちには佐藤琢磨選手がいますがF1を離れてブランクもありますししばらくはインディだと思われるのとホンダは今の所、マクラーレンのみの供給ですからね。
フェルナンド・アロンソ選手がマクラーレン入りするのでは?との噂も飛び交ってますね。
またジェンソン・バトン選手の名前も挙がってますね。
今と昔とでは違いますが“日本一速い男”の異名を持つ星野さんは日産ワークスドライバーで当時F1に参戦するエンジンメーカー(ホンダ)などとのコネクションがなかったので実力はあったにも関わらずF1には行けませんでしたからね(ホンダF1のテストドライバーにはなりましたが)
星野さんの弟子で“二代目日本一速い男”の本山哲選手も同様で。
ただ本山選手の場合、年齢、資金、語学力などの問題もありましたが。
まぁ下のカテゴリーよりも遅い現状、もうF1にこだわる必要もなくなってきた気がしますね。
上の中堅チームに行くのは難しいでしょうし。
可夢偉選手ファンには申し訳ないですがそろそろ違うカテゴリーへの移籍も含めて考えた方がいいかもしれませんね。
来年日本人ドライバーは参戦してるのかな。