母乳からヨウ素131が検出と伝えられ、ツイッター等で一時「1ヶ月かけて生物濃縮か?」とパニック感が広がったが、中身を見れば放射性物質が多く降った直後の検査であり、値も小さい上に、多い人も1週間後の再検査でかなり少なくなっている。内容的にはむしろ安心材料であった。
一方で、検査主体の生協と発表を行った市民団体とでかなり質が異なり、前者は組合員向けに詳細な情報を伝えているのに、後者は検査内容の把握が不十分なまま政府批判をするという有様。また、4/21 22:30現在、結果をHPで公開していない。
不安を煽るだけのかなり疑問が残る記者会見であった。
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今朝ツイッターで検索をしていたら、いきなり山のような「母乳から放射性物質検出」「1ヶ月でももう生物濃縮」「こわい」「もう終わった」等々かなりパニック気味なつぶやき(と言うか叫び)が飛び込んできた。
ヨウ素131が今更問題になるほど母乳から検出されるとすると、よほどの高リスクな状態にあったと考えられるが、千葉県在住の方が最高値で、とても高リスクとは考えられない地域。しかも1キログラム当たり36・3ベクレルと微量。不自然さいっぱいで検索を開始した。
1.報道を検索
共同通信(47NEWS)とサンスポ、時事通信が報道しているのを確認。
詳細であった共同通信の記事については本ブログの速報参照。
母乳から検出……線量ピーク直後の古いデータを今頃出すのか。[追記あり]
2.お粗末な記者会見
http://www.youtube.com/watch?v=W5IiJ9s4P8Y&feature=player_embedded
母乳調査・母子支援ネットワークによる会見(4/20)。
母乳のリスクが高い可能性があるのに政府が調べていないから調べざるを得なかったというのが動機だと言うことでその憤りは理解できるし、その活動は評価できると思う。だが、この会見だけではむしろ不安感が増すだけになっている。準備不足が目立つ。
検査値についての評価を拒んでいて、検査の継続を訴えていた。
しかし、
検査値を発表するものの採取日や検査日を正確に把握しておらず、とても当事者とは思えない内容。しかもその状態でその団体の側の科学者を名乗る人物が「検査から1ヶ月経っているのでこの値は半減期によって1/16になっている可能性がある、採取したときは16倍などともっと多かった可能性がある。」などと言うのはあまりに無責任すぎる(実際は採取後すぐ検査されている)。これでは不安を煽っているのと同じだ。
検査日から1ヶ月ちかくもあとに発表し、しかも内容を把握していないなど、検査主体であるならちょっと考えにくい。
〔母乳〕という、子供を育てるために最も大切なものの汚染の発表となればインパクトがあり、内容よりインパクトを与えることを狙ったのではないかと言われても仕方がない。
「継続検査を」と訴えていながら、第2次検査(3/30)から3週間近く経っているのに検査をしていないのも理解できない。4/7の再検査内容も把握していない。自主的に検査をすることが目的とは考えにくい。
検査の主体と発表を行った市民団体とは全く異なり、結果を利用しているだけなのではないかとすら疑わせるようなお粗末な会見であった。
3.極めて詳細で充分な情報を提供している常総生協の組合員向けニュース
母乳から検出……線量ピーク直後の古いデータを今頃出すのか。[追記あり]を参照のこと。
記者会見で提出された検査結果の元ネタであるようだ。
内容的にはかなり充実しており、検査の詳細、関連データ、評価をきっちり載せている。
組合員の母乳の検査であると記されており、文章から判断する限り、検査主体は常総生協と考えていいようだ。
これによると1次検査は24日採取で検査結果は28日に出ているとのこと。
2次検査は30日採取で検査結果が出た日にちは不明。
残念ながらこのニュースが提供されたタイミングが掴めていないが、会見よりずっと早いタイミングであると考えられる。
2回のリリースに分かれている。
1つめは1次検査の結果が分かった3/28以降で、30日の2次検査(再検査)にも触れているので、3月30日以降に出されていると分かる。30日の検査結果はその数日後には得られているはずなので、1つめのリリースはその前で4月に入ってすぐ出されたものと思われる。なお、この時点ですでに
「安心できるレベル」と報告されている。
2つめは1次検査と2次検査を、原発の状況や水道の検出状況などとつき合わせたもので、4/7までのことが書かれており、このあたりがリリースされた時期と考えられる。
4.それぞれの組織への私的評価
ネットで見る限り、マスコミについては、あまり広く報道されている様子がない。サンスポ、時事通信、共同通信が載せているのみのようだ(検索不足かも知れないが)。
時事通信は検査の最大値に触れるだけで、検査日に触れていない。落第。
サンスポと時事通信は不検出含め全ての検査値と検査日に触れているので及第だろう。
追記
しかし、内容を考えると過去の検査結果であり今更バリューのない内容。時事通信のように伝え方を間違えれば不安を煽るだけ。市民団体の名前の広報にしかならないような会見をあえて伝える必要があったのかどうか、そこに疑問が残る。
追記終わり
「母乳調査・母子支援ネットワーク」については、記者会見を開催し、母乳が危険だから自分達で調査したとかけ声は勇ましいが、検査の詳細を把握しておらずキチンと説明できないなど、あまりにいい加減だ。他人のフンドシで相撲をとっているように見えるというのは言い過ぎか?
記者会見をすることばかり広報し、蓋を開けてみれば1ヶ月も前の内容。しかもその肝心の検査結果を自ら公開しないなど、目的がどこにあるのか疑わせる。不安につけ込もうとしているようにしか見えない。
検査の主体であり、組合員向けのニュースで、原発の状況や水道検査値の推移など、重要な関係情報を付け加え詳細に評価を含めた報告を行っている常総生協はまさに「天晴れ」と言っていいだろう。生活の安心安全に取り組む生活協同組合としてあるべき姿かもしれない。
5.検査の内容について
21日の降雨による放射性物質の降下後、水道などから検出された直後に採取がされている。
検出されたのはヨウ素131のみでセシウム134,137は不検出。
■採取日と検出量
(3/24採取 3/28結果判明)
・(つくばみらい市)不検出
・(つくば市) 8.7Bq/kg
・(守谷市) 31.8Bq/kg→再検査(3/30採取) 8.5Bq/kg
(3/30採取 結果判明日不明)
・(つくば市) 6.4Bq/kg
・(柏市) 36.3Bq/kg →再検査中(4/7)
1名のかたの母乳は4/7に再検査中となっているが、4/20の会見時にその結果が出ていないはずはなく、会見団体はそれすら把握していなかった。
ヨウ素131が出ていることは子育てをしている人にはショックなことではあるが、量は非常に少なく、その点では比較的安心できると言えそうだ。また、再検査でかなり少なくなっていることも安心材料である。
追記
市民団体はこの他4名の検査があるとしているが、その内容がよくわからない。
一方、原発事故の影響がより強いと考えられる地域の調査がないため、より影響が強い地域がある可能性は否定できない。
追記終わり
21日の放射性物質ピーク時に水道(あるいは食品)などから取り込んだものと考えられる。例が少なすぎるが、水道から3桁の検査値が出た直後に母乳から2桁の値が出た例でも、水道その他のヨウ素131検査値が下がるのと同期するように母乳の検査値も下がっているように見える。
ただ、水道から検出された23日以降すべてペットボトル(ミネラルウォーター?)で水分を得て料理にもつかったという方から36.3Bq/L出ている。23日以前に取り込んだのだろうが、そのルートが気になるところではある。産婦人科医のアドバイスでそうした経歴も答えてもらっているようだが追加の情報をなるべく得るべきだ。
こうしたものは継続的に調査していかなければならない。
母乳にしぼって調査する必要性が高いとも思わないが、状況を把握したい。水道水や食品のモニタリングはしっかりしてほしい。できることなら、食品は販売時に計測できる体制が欲しい。
追記 4/22 7:45
国なり公的性格を持った団体が調査を行っていなかったのは、否応なく原発事故の影響が強い地域で生活する人にとっては不安であり、確かに不足がある。
今回の会見から厚生労働省も実態調査を決めたとのこと。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011042100706
この市民団体の会見は不安を煽るものであったが、国が動いたことについては、一定の効果はあったと言える。
とはいえ、市民の不安を煽らなくては国が動かないとか、何かの目的のためには煽動すればよいとかというのは、どちらも正しくない。
追記終わり。