この病気は、早く見つけて治療し、進行を抑えることが重要です。重症になってからの発見では、既に酸素を鼻から吸入する治療を導入しないといけない段階になっている場合もあるのです。
(1)禁煙
一番の治療は、禁煙することです。禁煙しないと肺機能はまっしぐらに悪くなります。禁煙を始めると、呼吸機能の低下速度がゆるやかになり、病気ではない人の低下と同じような速度になります。
(2)薬物療法
治療には気管支拡張薬をつかって気道を拡げ、呼吸を楽にする薬物療法をおこないます。飲み薬や貼り薬もありますが、主には吸入薬です。
COPDの薬物療法はこの10年で進歩がめざましく、種類も増え、適応となる薬も増えています。主には「β2刺激薬」「抗コリン薬」「ステロイド薬」の3種類のなかから1~3種類を組み合わせた吸入療法が中心となります。
(3)運動療法
運動の効能は、この10年で重要視されるようになり、「下肢の筋肉量が多いと予後がいい」と言われています。筋力を増やすトレーニングを続けることで息切れは改善しますので、無理のない範囲で続けましょう。
呼吸が苦しいと体を動かすのが億劫になりますが、動かないでいるとますます症状は悪化します。まずは日常生活で歩くことからはじめてみましょう。症状が重い方であっても、マスクで酸素を吸いながらでも運動を続けると症状の改善につながることがわかっています。
(4)栄養療法
この病気は呼吸をするだけでたくさんのエネルギーを必要とする病気で、呼吸が苦しくなるだけでなく、全身の消耗につながる病気です。進行するとエネルギーの消耗が激しくなるので、重症の方はたいてい痩せています。
食事療法では、体が衰弱しないようカロリーを摂り、痩せないように指導します。食事は高タンパク・高カロリーが良いでしょう。高タンパクといっても、タンパクのなかには二酸化炭素を体内に蓄積しやすくするものがあるので、詳細は栄養士さんに相談されると良いでしょう。食事が十分食べられない人には、栄養補助食品をおすすめしています。
(5)在宅酸素療法
肺機能がある一定以上に低下すると日常生活でも苦しくなるため、在宅酸素療法を導入します。COPDを早期に発見して禁煙をすれば、在宅酸素療法を導入しなくても過ごすことができます。
COPDと診断されたときに在宅酸素療法を導入するほどに症状が悪い場合は、数年以内の死亡率も高くなります。
重度の方には、機械で風を送り込んで呼吸の補助をするマスク(NPPV)を睡眠時につけてもらいます。
この病気は、二酸化炭素を体に溜めやすいため、酸素を送るだけでなく一定のリズムで風を送り込む器械が必要になります。
(1)~(5)は患者さんの症状にあわせて、併用しながら治療します。
COPDは、たばこの煙などの有害物質が原因で肺が炎症を起こし、呼吸がしにくくなる病気です。
COPDは有害物質の吸入や大気汚染によって起こります。中でも原因のトップにあげられるのはたばこの煙です。日本ではCOPDの原因の90%以上が喫煙によるものといわれています。
有害な物質が長期にわたって肺を刺激すると、細い気管支に炎症を起こし(細気管支炎)、咳や痰が多くなります。その結果、気管支の内側が狭くなり、空気の流れが悪くなります。
有害物質が肺胞にまで及んで炎症を起こすと、肺胞の壁が破壊され、古くなったゴム風船のように弾力がなくなり(肺気腫)、空気をうまく吐き出せなくなります。
このように、COPDは細気管支炎や肺気腫により、肺の空気がうまく吐き出せなくなり、その結果酸素不足を起こし、息切れを起こす病気です。
COPDの肺の様子
増悪の場合は息切れなどが悪化し、命にかかわることもあります。
風邪やインフルエンザなどの呼吸器の感染症をきっかけに、呼吸困難などの症状が悪化して、いつもの治療で改善せず、治療内容を変更する必要がある状態をCOPD の「増悪」といいます。
ウイルスや細菌などの呼吸器の感染症や大気汚染がきっかけでおこることが多いですが、原因がはっきりわからないこともあります。
増悪がおこると、肺機能は安定期より低下し、息切れが悪化し、咳や痰の増加がみられます。その他、発熱や頻脈、倦怠感・疲労感、不眠などの症状を伴うこともあります。
増悪の主な症状
いったん増悪を起こすと、命にかかわることがあります。また、息切れや風邪のような症状、呼吸機能の低下は回復までに1ヶ月以上を要する場合があります。いったん増悪を起こすと、その後反復する患者さんがいますが、増悪を起こさない人に比べ、生活の質(QOL)をより低下させたり、より命にかかわることがあります。そのため、普段から増悪を起こさない対策が重要となります。
COPDは増悪のたびに段階的に悪化することが知られています。このような事態を避けるためには、「増悪を繰り返さない」、「増悪が起きたら早めに対応する」ことが重要です。痰の色や量が増加した場合は、早めに受診しましょう。
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