円高(財務戦略/村藤功)
■日本の円高の現状
今日は最近ニュースで
よく見る円高についてお話します。
現状からいうと、為替レートは1ドル102円位ですね。
2000年に入ってからずっと115円位を中心として、
100円と130円辺りを行ったり来たりしていました。
ところが、サブプライム問題などによって
株価がぐいぐい下がるにつれて円高になってきています。
「ミスター円」と言われた榊原さんは、
1ドル90円位になるのではないか、
そうなっても実効レートからすればおかしくない、
ということを言っていましたね。
それで皆、心配に思っていたのですが、
一時95円位になったドルも、
102円位まで戻ってきているのが今の状況です。
この円高について、
昔は日本政府がよく介入をしていました。
介入した結果、今では100兆円位、
ドルでいえば1兆ドル位の外貨準備があります。
そうすると、ドル当り1円動くと
1兆円の損や得をすることになります。
もし、10兆円の円高になれば、
10兆円を損することになります。
そういう意味では、日本政府が介入して、
100兆円を為替にかけて、10兆円を損したとか、
得したとかやっていていいのか、という問題があります。
そもそも、中国は、自分の人民元を安くした方が
中国の輸出に便利だといって、一生懸命介入しています。
それを7カ国財務省中央銀行総裁会議(G7)が
中国はけしからん、と言って非難しています。
一緒に非難している日本としては、
円安にする為の介入は、格好悪いので
なかなか出来ない、という状況になってきています。
■円高の背景
円高の背景の一つには、
サブプライム問題があります。
以前も少しお話ししましたが、
金利をどんどん下げてきて、
フェッド・ファンド(Federal Fund)金利は
2%台まで下げています。アメリカのインフレは、
最近は3~4%位になっています。
アメリカと日本のインフレ差は、アメリカは2、3%のインフレで、
日本はバブル崩壊後、ほとんど金利はゼロに近く、
インフレがデフレか分からないような状態でしたから
2-3%程度だといえます。
インフレとは通貨の価値が下がるということです。
為替レートとしては、インフレがない通貨の方が、
インフレがある通貨に対して強くなるということが起こるはずですね。
これが、榊原さんが言っている実効レートというものです。
この計算でいけば、1ドル90円台でもおかしくない、と言っているわけです。
これは、どういう計算かというと、
仮に2000年で、円ドルレートが115円だったとします。
その後2007年になってもう7年位経ち、
7年間毎年2、3%インフレ率が違うとすれば、
インフレ率が小さい円がインフレ率の高いドルに対して
強くならないといけないことになります。となれば、
115円を1.02とか1.03の7乗で割ることになって、
実効レートは90円とか92円位になります。
このようにインフレを計算に入れると、
当時の1ドル115円というのは95円位でいいのではないか、ということです。
■円高による経済効果
円高になると良いこともあれば悪いこともあります。
まず、良いところとして、日本人が
海外でものを買うときには、安くなります。
ただ、海外のものを安く買うということは、
実はインフレをストップする効果があります。
最近、日本では、インフレが起こるのではないかという話がありますね。
原油が上がるし、食品が上がるし、インフレが進むのではないかと。
円安になると、海外から買うものが高くなるので
インフレが大きくなりますが、円高になると、
輸入するものが安く買えるはずなので、
大変なインフレになる予定だったものが、
デフレ効果でそれほどインフレにならずに
済むのではないかとも考えられます。
大手のスーパーなどでは、
円高還元セールをやるところもあります。
本当はいろんなところで円高還元セールがあっていいはずです。
円高によって輸出企業は大変ですが、
輸入企業は得をしているところもあります。
アメリカでは、ドルが強くなると「ストロングダラー」と言って喜びます。
しかし、日本は円が強くなると、困ることはあっても
喜ぶことはないので少し不思議ですね。
円高は悪いところもありますが、良いところもあります。
だからある意味、ニュートラルといえないこともありません。
日本は製造業の輸出で頑張ってきた国ですから、
トヨタ、ホンダ、キャノンといった自動車や機械の
輸出をしている企業の利益が円高によって減ると、
少し心配になりますね。しかし、
原油や食糧の輸入をしているところでは、
円高によって多少は安く買えるようになるので、
そこは別に悪い話ではありません。
■今後の展望
インフレ差が為替に反映されるというのは
中長期的な理論だと言われていますが、
実際にそれが起こるかというと、必ずしも起こるわけではありません。
実際は理論どおりにならずにブレることが多いです。
もともと何が起こったかというと85年のプラザ合意によって、
当時1ドル当り240円だったものが、
95年には1ドル当り80円まで円高が進みました。
これをみても、為替マーケットはどちらかに偏る、
“フレ過ぎ”になりがちという特質を持っています。
そうなれば今回の円高は、ひょっとすると、
95円か90円位までいくかもしれないと思っていたら、
そこまでは行っていません。今後どうなるか分かりませんが、
円高が100円位でとどまってくれれば嬉しいと思います。
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Posted at 2009/02/18 15:59:27 |
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