
アルミシリンダーの掃気ポートを研磨し終えて排気ポートの最終仕上げをしようと手を掛けたんですけど基本的な事を考えていたら迷宮に迷い込んでしまいました。 (ToT)
基本的な事! それは僕の弄ってるシリンダーって2サイクルのシリンダーなんで当然の様にチャンバーを着けますよね?
実はそのチャンバーの効率を100%引き出すにはどんな形状がいいのか考えたんですよ。 ノーマルシリンダーは諦めに近いですが妥協出来たんで良かったんですけど今回のシリンダーはどうしても妥協出来なかったんで真剣に考えちゃいました。
そもそもチャンバーってどんな効果を狙った物かと言いますと‥‥
パワーアップです

もう少し詳しく言いますと
燃焼ガスの膨張エネルギー(排圧の排出力)を利用して負圧を作り新規ガスをシリンダー内に入れ易くしてチャンバー迄新規ガスを送り込み、それを排気ポートが閉まる迄にチャンバー内の新規ガスをシリンダーに押し戻す効果が有るんです。 定説ですけど‥‥。
チャンバーってある意味過給器の無い過給システムなんですね。
あくまでもパワーバンドの時の事ですけど、この『出した物を戻す』を真剣に考えてしまったんです。
するとですね。 まず考えたのが混合気が爆発して膨張過程に有るうちに排気しないと強い負圧が作れないと思ったんです。っと 言っても最大圧力で排気してしまってはパワーは出ませんので当然ながらその後の話しです。
でも これってレーサーのシリンダーを見るとどれも皆ほぼ同じなんで「右に習え」で解決させました。 (笑)
次に考えたのが排気ポートの吹き出し角度です。
これは排気ポートの側面から見た時の角度の事でシリンダー内をピストンが下降して行き排気ポートが開いた時にどの角度で出て行き、またどの時点で負圧を作るのに必要な排気が終わるのか?
っと 言う事を考えたものです。
パワーバンド時の排気ポートが開いている時間なんて1000分の2秒程度なんで一瞬のロスも逃したくないんですね。
スムーズに出してスムーズに戻す

これっ 鉄則です。
先に『何時、負圧を作るのに必要な排気は終わるの?』を説明しますと。
排気ポートの形状によって違うので分かりませんでした。 (汗)
それでも掃気ポートが開く迄には終わって欲しいですね。
そして、排気ポートが開いた時のガスの排出角度ですけど、これは斜め下方向に出て行くんです。
これっ! 説明するの凄ぉーく大変なんで触りだけで勘弁して下さいね。
まず、シリンダー内にかかっている燃焼圧力は排気ポートが開き始めた時と開き切った時とでは吹き出し角度は斜め下から横方向へと変化してしまうんです。 1000分の1秒位の世界だからどうでもいい気もしますけど‥‥(汗)
そこで、排気ポートが開き始めた時と掃気ポートが開き始める前(それまでには必要な圧力は出ていると信じたいので)の排気の噴射角をそれぞれ出して複合させて、排気が剥離を起こさない角度で排気ポートの上側の角度を出したらその答えが何と‥‥。
ホンダのワークス・マシーン

NSR500と同じだったんです。
偶然なのか僕の脳ミソがホンダさんと同じなのかは分かりませんけど

そして、その角度を基準に排気ポートの投影面積を考慮して下側の角度を決めました。
ここで軽く妄想してみました。
排気圧力がエキパイを抜けてダイバージェントコーンに達し、負圧が出来て掃気ポートが開きクランクが圧縮した新規ガスをシリンダー内に勢い良く噴射ぁ~っ
あっぁ~ん

気持ちいい~

シリンダー内に充満した新規ガスが排気ガスを押し出し間髪を入れず排気ポートを通過してエキパイに差し掛かると
コンバージェントコーンに達した排気圧力が反射波となって新規ガスをシリンダーに押し戻さんと襲い掛かる

エキパイの中で激しくぶつかり合う排気ガスと新規ガス
ウガァー

押し戻すぞぉ~( ̄▽ ̄)/
うわぁ~っ


反射波に押し戻されるぅ~

そして反射波に押し戻された新規ガスの目前に有ったのは‥‥‥‥

ピストンの壁
そうです。 半分位に閉じかけたピストンが有るんです。
えっ

ピストン?
当然と言えば当然なんですけど掃気ポートが閉じて無いうちはパワーバンドを外れているのでパワーバンドに入っている時、即ちチャンバーが回転数とマッチングしている時は当然ながらピストンが排気ポートを半分位閉じている時なんです。
そこへ排気ポートからシリンダーに新規ガスを押し戻す事なんて出来ますかぁ?
10000分の5秒位の時間ですよ?
無理

そんなの無理です。
そりゃあ ちょっとなら戻せますよ。
だって 考えてみて下さいよ。
排気ポート下側ってピストンの下死点に合わせてエキパイに繋がってるんですよ。 ピストンが無ければズコーンって戻るんですけどそんなの掃気ポートだって開いてるからパワーバンドじゃないし、ピストンが排気ポートに対して半分も出てたら一気に方向が変わって折角気持ち良く戻ってる上側の気流にぶつかってモタモタしてるうちにポートは閉まってしまいますもんね。
あぁ~あっ


また変な矛盾が生まれて来ちゃいましたね。 要は排気して引っ張り出す時と反射波で押し戻す時とでは気流の通り道が違うって事なんです。
でも、排出ポートの形なんて行きと帰りで変わる訳じゃないし
1000分の1秒位だから無視しますか~

だったらチャンバーだって要らないですよね。 例え1000分の1秒でもその効果は絶大なんですから。
実際はパワーバンドの時のピストンが排気ポートを半分位閉じてる状態なんで10000分の5秒位の話しなんですけど

行きと帰りで流れを変える
実はこの事について考えたんです。
でも今回の話しはここで区切りますね。
余談ですが早く排気を済ませたい時はどうすればいいかと言いますと、ポートの上側を水平に広く開ければいいんです。でも、ただ単にそんな事をすればピストンリングがポートに飛び出して壊れるのは確実です。
壊れなければそれは横幅が足りて無い証拠なのでパワーもあまり出ません。
『それでも俺は横一直線に広く開けたいんだぁ~』って思った人が居たんでしょう。
排気ポートの真ん中に柱を残して2つに区切り横に大きく広げた物(Tポートとか2ポートと呼ばれています)やシングル・ポートの両端に小さめの排気を一個ずつ追加した物(3ポート)等が有ります。
ですがやはりポートの投影面の輪郭はリングが引っ掛からない様に丸みを帯びています。
画像は作りかけですが開き始めの排気ポート投影面積が一番大きく取れる排気スリー・ポート・シリンダーです。