最近、アメリカの自動車産業界が青息吐息になっているニュースを目にする機会が多いですね。
GMに至っては、チャプター11申請・・・
あのGMがねぇ・・・
GMが潰れた=アメリカが潰れたという気さえしてしまいます。
そんなニュースを見ていて思い出したのが、この映画です。
ガン・ホー(原題:Gung Ho) 1986年 アメリカ
00_Package posted by
(C)伯爵
ロン・ハワード監督、マイケル・キートン主演の異文化コメディーです。
ストーリーは・・・
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とあるアメリカの田舎町。
自動車工場が閉鎖され、多くの労働者が失業の危機に晒されたとき、マイケル・キートンが日本の自動車会社の現地工場を誘致するために訪日。
迷子になりながらも自動車会社にたどり着き、さっそく役員連中にプレゼンテーション。しかし反応が薄い。
折角用意したアメリカンジョークまでもが滑りまくり、「ダメだこりゃ」と帰国。失意の日々を送っているところに、日本の自動車会社から現地進出のGOサインが出たとの知らせが入る。従業員の雇用が確保されることとなって、マイケル・キートンは一躍街のヒーローに。
ところが、実際に日米ハイブリッドの職場になってみると、双方の習慣/文化の違いでギクシャクすることばかり。些細なことで諍いが絶えない日々が続く。そのせいか、目標の生産台数に到底及ばない結果となる。
日本人の管理職とアメリカ人労働者の狭間で苦悩するマイケル・キートン。
終いには、目標の生産台数を達成できなかったら工場撤収という、最後通牒まで突きつけられるのであった・・・
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オープニングは、プリテンダーズの"Don't Get Me Wrong"の軽快なメロディーとともに、80年代の東京の風景が映し出されます。
01_Opening posted by
(C)伯爵
80年代中盤の秋葉原。
現在とはだいぶ景色が違いますね~。
ハリウッド映画では、日本の文化や習慣が曲解されて描かれることがままありますが、この作品も酷いものです。
02_こんなサラリーマンはいない posted by
(C)伯爵
口角泡を飛ばしながら、自分の欠点を克服したことを上司に説明しているところ。
自分の「ビジョン」を説明させるとかだったらわかりますけど、色とりどりの短冊を体中に貼って、欠点克服宣言をさせるって・・・
確かに、日本人はお風呂好きですが・・・
03_沐浴 posted by
(C)伯爵
川で水浴びするのは、日本の一般的な習慣じゃないはず。
この俳優たち、日系人ばかりのようで、カタコトの日本語で「コレがジンセだな(これが人生だな)」なんて言ってます。
アメリカに進出してきた日本の自動車メーカーとは・・・
04_Assan_Motors posted by
(C)伯爵
圧惨自動車!?
圧力の「圧」に惨事の「惨」??
恐らく「日産」をイメージして、語感だけでつけた名前だと思いますけど、字面から受けるインパクトは相当なものがあります。
会社のビジネスジェットから降りてきた圧惨自動車ご一行様、レッドカーペットを目にしたら・・・
05_Red_Carpet posted by
(C)伯爵
靴を脱ぎ始めました。
どこまで日本人をバカにしているのか・・・
出迎えの市長まで、つられて靴を脱いでしまったり。(w
06_Mayor posted by
(C)伯爵
因みにこの市長役の俳優、ロン・ハワード監督の実のお父さんらしいです。
余談ですが、ロン・ハワード監督は自分の映画に家族を出演させるのが大好きみたいで、「アポロ13」にも自分の母親を出演させています(ラベル船長の母親役)。
この映画に登場している、唯一の日本人俳優と思われるのがこの方。
07_いつかはクラウン posted by
(C)伯爵
山村総です。
大昔のクラウンのCMキャラクターとか、「ザ・ハングマン(知ってる?)」でゴッド役を演じていた俳優さんです。
他にも各シーンで、日本人/アメリカ人双方の生態を面白おかしく表現していますが、大まかには以下のような分類ができると思います。
この映画における日本人の描写:
・自己主張しない
・自分よりも会社のために働く
・目標未達成は「恥」
・集団で同じことをやるのが好き
この映画におけるアメリカ人の描写:
・我が強い
・会社より自分や家族が大事
・目標未達成でも「仕方ない」
・個々に勝手なことをやるのが好き
と、まるで正反対です。
当然ながら、実際にはこんなステレオタイプな分類ができるわけはありません。
日本人にだって自己チュ~な奴はいるし、アメリカ人にだって勤勉な人はいるわけだから。
しかし、ストーリーを展開していくうえで、上記の前提は必須だったのでしょう。
物語が進むにつれ、双方の長所/短所が「わかりやすく」明らかになってきます。
結論として、両方ともダメ~!ということが言いたかったのかな?
つまり、映画で描かれている日本人のように杓子定規では人生を楽しめないし、アメリカ人のように自分本位ではマトモな仕事はできないよ~・・・ということを、僕はこの映画のメッセージとして受け取りました。
そして、日米双方の労働者が協力して生産したクルマってのが・・・
08_イタ車じゃん posted by
(C)伯爵
日本車のはずなのに、どう見てもフィアット・レガータ。
取って付けたようなストライプが
イカレてイカシてますね~。(w
どうやら、撮影に使用されたのはアルゼンチンにあるフィアットの現地工場らしいです。
当然、アメリカ国内で撮影すべく、あちこちにオファーは出したらしいのですが、デリケートな内容だけにアメリカ中の自動車生産拠点から肘鉄を食らったとの由。
ビッグスリーの一角であるクライスラーが、フィアットの援助を受けて経営再建中ですけど、この映画を撮影している時点では、そんな未来が来るなんて誰も予測できなかっただろうなぁ・・・
そう考えると、感慨深いものがありますね。
因みにこのフィアット・レガータというクルマ、むかし車検の代車で1週間ほど乗っていたことがあるのですが、全ての操作系が羽根のように軽かった記憶があります。
その当時乗っていたクルマが重ステだったので、余計にそう思ったのかも知れませんけどね。「安っぽいカローラ」って感じでしたけど、僕にはそのユルさが心地よかったです。
実はこの映画、日本では劇場公開されていません。
しかし、ビデオではリリースされたので、レンタルして観た記憶があります。
これが製作された当時は、日米貿易摩擦が深刻な政治問題になっていましたので、その絡みかな?とも思ったのですが・・・何故だったのでしょうね。
あと、Gung Hoというタイトルですが、辞書で調べるとこんな意味でした。
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《形》前向きで情熱的な,やたらに熱心な,熱狂的な,熱烈な,熱血的な,がむしゃらな,感情的な,熱心に働く,忠誠心の強い,やる気満々の,誠を尽くす,忠誠な,忠勇無双の,【語源】「協力してやろう」(work together)という意味の米国海兵隊の標語から
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字面や語感から受ける印象は、中国語っぽいんだけどなぁ。