ここ数日は雨の日が続いたので、ワイパーを作動させた方もたくさんいらっしゃると思います。
唐突ですが、ワイパーって凄いと思いません?
自動車の黎明期から使われていて、あんなにプリミティブなメカニズムなのに、いまだに取って代わるものがないんですよ。
細かいことを言えば、ブレードの本数が違ったり、複雑なリンク機構を備えているものもあったりしますが、ゴムブレード付きのアームがガラスの上を動いて排水する仕組みに変わりはないですよね。
さて、過日このような映画を観ました。
幸せのきずな(原題:Flash of Genius) 2008年 アメリカ
01_Package posted by
(C)伯爵
日本では劇場未公開で、DVDが発売されたのみです。
評論家の宮崎哲弥氏が、何かの雑誌にこの映画のレヴューを書いていたのを読んで、面白そうだったので購入しました。
現在市販されているクルマのワイパーには「間欠モード」が付いているのが当然ですが、その間欠ワイパーを発明したロバート・カーンズの半生を描いた作品です。
1960年代後半までは、間欠ワイパーというものがこの世に存在しなかったんですね
各自動車メーカーともアイディアは持っていたようですけど、問題があって実用化できなかった。
それを簡単な仕組みで解決したのが、ロバート・カーンズ氏なのです。
02_でけた~ posted by
(C)伯爵
基本特許を取得したところまでは良かったのですが、その先に罠が待っていた。
最初に売り込んだフォードと契約がまとまりそうになったので試作品を渡したのですが…
03_フォードのワル posted by
(C)伯爵
フォード側は色々と難癖をつけて契約を反故にしてきた。
そればかりか、カーンズ氏が渡した試作品を丸パクリの間欠ワイパーを搭載した新型車が、数年後に市場に出てきた。
04_ナニぃ~ posted by
(C)伯爵
それを見たカーンズ氏、当然怒り狂ってフォードと争う構えになるわけですが、仕事仲間からは「相手が巨大過ぎるから止めておけ」と言われ、弁護士からは「大金もらって和解しろ」と諭され、家族からは「もういい加減にして」と見放されるのでありました。
それでも自分の特許の有効性を主張して引き下がらないカーンズ氏、友達はいなくなる、弁護士には見放される、ついに家族までもがバラバラになってしまい、自分ひとりで戦う道を選択しました。
05_三行半 posted by
(C)伯爵
最終的に彼は裁判に勝つのですが、それまでの道のりの長いこと。
簡単に時系列でまとめると、以下のようになります。
1964年:カーンズ氏が間欠ワイパーの特許を申請
1969年:最初に間欠ワイパーを装着したフォード車が発売される
1978年:カーンズ氏がフォードを訴える
1990年:裁判でフォードが敗訴
特許申請から、それが正式に認められるまで26年がかりですよ。
気の遠くなるような時間を費やして、彼は戦ったんですね。
弁護士の勧めに従って、フォードから示談金をもらっていれば、70年代に彼は大金持ちになれただろうし、家族も離散せずに済んだはず。
06_弁護士に命令 posted by
(C)伯爵
それをしなかったのは、発明家としてのプライド故でしょうか。
この映画では、カーンズ氏が相当な頑固者で、猪突猛進型の人間として描かれていました。
彼がもう少し物腰の柔らかな人物だったら、結果は違っていたかも知れないとも思いました。
この辺は、事実なのか映画としての脚色なのかは定かではありませんが、時間の経過とともにカーンズ氏が感じの良い人物に変わっていく様子も描かれていたので、ちょっと気になりました。
カーンズ氏の人間性が丸くなるとともに、彼の元を去った子供たちも裁判に理解を示して協力してくれるようになり、その結果として大企業相手の裁判に勝つことができたようです。
それで邦題が「幸せのきずな」になったのか…と思いますが、あまりにも安易でベタ過ぎる!
原題の「Flash of Genius(天才のひらめき)」が持つニュアンスは、何処へ行ってしまったの?
レヴューを読まずに邦題だけ見ていたら、恐らくこのDVDは買わなかったかも。
Posted at 2010/03/26 21:52:12 | |
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