(2016/11/27、純正リモコンスターター使用に関する記述を再訂正)
寒冷地仕様で寒冷時の補助暖房として装備されている「PTCヒーター」だが、それを作動させるにはどうしたらいいのか良く判らなかったので、実車で試してみた。
結論から言うと、我が70VOXY後期の場合、
寒い日に、冷えているエンジンを始動した直後から、空調の風量レベル設定を手動で上げて風を出すだけで、エンジンが冷えたままでもPTCが効いた温風が出てきた。
その他の空調回りの設定は不問で普段使いのままでいいが、唯一AUTOボタンだけはOFF状態でないとダメってことが判明。
(エンジンスターター始動でPTCを活用するコツは末尾参照)
(2016/11/27訂正)純正エンジンスターターを装備し、それでリモート始動したときは、環境条件さえ揃えば自動的にPTCが作動する。社外品スターター装着車でのリモート始動でPTCを作動させるには、事前の空調設定に工夫の余地ありと思われる。詳細は後述。
以下、上記結論に至るまでの経緯諸々。
我が車70VOXY寒冷地仕様にエンジン冷間時の補助暖房として装備されているPTCヒーターだが、寒さ本番のこの時期にも関わらず、どうもその有り難みを感じにくい。
クルマを買うときにはカタログやWebサイトの緒元表に「寒冷地仕様で追加される装備」として、PTCはさも有用そうに記載されている。
しかしいざ購入後にクルマの取扱書を見ても、PTCのことは使い方の説明どころが、その存在すら記載がない。
電子技術マニュアルを読んでもその制御については概念程度しか書いていない、謎多き装備品。
折角出費して装備させたんだし、せめてどんなとき働いているかは知りたいところだ。
しかしネット検索してみるも、寒冷地仕様のPTCというとプリウスなどハイブリッド車の情報ばかりヒットする。ガソリン車の情報は殆ど見つからない。
トヨタ車でも一部車種だと(ハイエースとか?)、それ用の作動ボタンがコンソール上にあったりするようだが、我がVOXYにはそんなモノは無い。
トヨタHPから、作動条件は?どう操作すれば積極的に使える?と質問メールしてみたら(取扱書に何も書いてないとはけしからん!とのクレームを兼ねて・・笑)、
電子技術マニュアルには書いてある、PTCの機能点検手順の要約に過ぎない回答しか得られず。
気温+10℃未満のとき温度設定をMAXにすれば作動します、なんて、普段ユーザーが絶対やらないであろう非現実的な操作を、さも必須の如く言ってくる始末で呆れた(苦笑)。文面としてはソツなく丁寧だったが。
温度設定をわざわざMAXにしなきゃ働かない補助暖房機能だって?そんなのあり得ない・回答としてなんか変だ、って、自分がユーザーの立場になって考えれば容易に判るだろうに。
しょうがないので実車検証してみた。
当方所有は70VOXY後期ZS・寒冷地仕様、2013/12製。
結果は冒頭の如く。
普段から空調はAUTO設定、室温設定は20℃台半ばにしているってユーザーが多いと思うが(自分もその1人)、
暖房方向で作動する温度状況にてAUTOにしていると、エンジン始動~暖機が進んで低温の青ランプ表示が消えるくらいまでの間は送風が始まらず、無風状態で相当暫く待たされるのはご承知の如く。
そこを手動で風量設定して強制的に送風させてやれば、まだ冷えているエンジン水温に代わって/補うべくPTCが作動、数十秒か1分かするとそれで暖められた空気が吹き出してくる、って単純な話なのだった。
今回、外気温+6℃・室温25℃設定・外気導入・吹き出し口モード正面・風量レベルを設定4程度にて、センターコンソール吹き出し口に温度計を設置、
エンジンを冷間から始動して1分かそこらしたら、吹き出し口からは実測+16~20℃程度(風量設定により変動あり)の風が出てきた。
吹き出しの温度は次第に上がり、5分くらいで+30℃超に達した。
寒い中で乗車・始動して直ぐに、とりあえず手足だけでも暖めたいって時なら、十分ありがたい温度だ。
エンジン水温はまだ50℃以下で青ランプが点いたまま、AUTO設定だったらようやく風量レベル1になるかどうかの段階だ。
(ちなみにエンジン水温はBluetooth OBD2ドングル→スマホにて読み出し)
電子技術マニュアル記述と実際の動作をまとめると、PTCが作動する条件は概ね以下。
1)外気温:+10℃以下。
2)エンジン状態:IG ON且つエンスト状態でない(650rpm以上)。
3)エンジン水温:+65℃未満≒青い低水温ランプが点いている。
4)空調AUTO設定:解除=マニュアル状態。
5)温度設定:最低のLO以外ならどうでも良い=普段使っている適温設定のままで良い。
6)送風:ON、風量レベルはOFF以外なら1~最大の何処でも良い。
7)吹き出し口モード:不問。どこに向けても出る。
8)外気導入/内気循環設定:不問。ガラス内面が曇っても結露してもよければ、内気循環設定の方が早く室内温度を上げられる(当たり前だが)。
上記故に、エンジンが冷えていて外が寒い状況なら、
エンジンを始動したら早々に、風量ボタン右側(風量アップ方向)を数回押して手動で風を出すか、FRONT DEFボタンを押すかのどちらかの操作をするだけで、PTCの作動を実感できる。
風量ボタンを弄ればAUTOは解除されるから、手動で風量レベル1以上に設定すればPTCの効いた風が多かれ少なかれ得られる。
PTCの出力パワー(発熱量)は風量設定に依存・比例しないらしく、風量を少な目にした方が温度の高い風が出る。
吹き出し口モードは暖めたいのが手なのか足なのかフロントガラスなのかで、好きに選べば良い。
またFRONT DEFをONすると、吹き出し口モードはフロントガラス方向・AUTO解除・風量最大、が一度に設定されるから、フロントガラスに向けてPTCの効いた暖気が目一杯の風量で吹き付けられる。
フロントガラスの解氷を最優先したいなら、これがベストと言える。
ただし、車内を暖めたいのにエアコンまで連動ONしてしまうのが余計なので※、これだけはA/Cボタンを押してOFFしてやる必要あり(※カスタマイズ機能でキャンセル可能、詳細後述)。
低水温の青ランプが点いている間は、その時々のエンジン水温、外気温、室内温度設定と実室温の差を加味して、PTCの出力パワーは段階的・適切に自動調整されている模様(回路図から推測)。
故に温度設定をMAXにしなきゃダメなんてことはなく、いつもの適温に設定したままで良い。
設定温度に対して室温がうんと低い、エンジン水温もまだ上がってない、って状況だったら勝手にPTCがフルパワーを出すよう制御されるし、室温やエンジン水温が上がってくれば、それ相応にPTCのパワーを抑える方向に制御される(ように作っているはず)。
その後エンジン水温が上がって青ランプが消える頃には、PTCの動作は控えめに制御~停止しているはずだから、以後はAUTOボタンを押してONにして通常の使用状態に戻せばいい。
無論、青ランプが消えた状態ならAUTOでも適切に送風され、通常のエンジン水温のみで暖められた温風が吹き出す。
以下トヨタへの苦情(笑)、
それにしても、何故トヨタはPTCのことを取扱書に書かないのだろうか?
ネットで見ても「折角『寒冷地仕様』にしたのに全然あったかくない」って不満や質問があちこちに出ていることからして、メーカーへの不信や疑問を持っているユーザーは沢山いるように思う。
設計者はちゃんと役に立つ機能を造り込んでいるのに、説明書の中身が悪いばっかりに製品やメーカーへのユーザイメージを悪くしている典型的な例と言えるだろう。
また設計面で強いて注文を付けるなら、
その個体(クルマ)にPTCが積まれているかどうかも空調のAUTO制御の条件に組み入れ、
空調がAUTO設定でも外気温・室温・エンジン水温が共に低くPTCが作動する条件が揃って且つPTCを積んでいたら、送風OFFにはせずに多少の送風はするようにすべきだろう。
そうするだけで、上記のごとくやれAUTOがどうのとか風量設定がどうのとか気にしなくても、ユーザーは自ずとPTCの恩恵に与れるのだから。
PTCつきの寒冷地仕様車を選ぶ人がトヨタ車購入者全体の何%を占めるのか知らないが(かなりの少数派?)、空調のAUTO制御にPTC装備の有無を考慮していないのは、設計上の考慮不足/手抜きだと言わざるを得ない。
個人的に最も不満なのは、純正のリモコンエンジンスターターを付けているにも関わらず、空調を常時AUTO設定して使っているが為に、事前にリモートで15分かそこら暖機しても室内がさっぱり暖まらないこと。
それもそのはず、AUTO設定での暖房時は上述の如くPTC不作動でエンジン水温が上がらないと室内への送風を始めない造りだから、エンジン始動時からAUTO設定だったら寒冷時に少々エンジンを暖機したところで、室内まで暖まる訳が無いのだ。今まで気付かなかったのだが(苦笑)。
普段から空調はAUTO設定で年中使っているユーザが殆どのはず、なのに「寒い時期にリモート始動し且つPTCを作動させたければ、予めAUTOでなく手動で風量を設定して降車しろ」と強いているに等しい仕様は、どうにも納得し難い。
以前からなんでかな・・と不思議だった現象の訳が今回ようやく解った反面、冬場の活躍を期待して取り付けたエンジンスターターを半ば意味なく使ってたと知って、がっかりしている。
(2016/2/7訂正、2016/11/25再訂正)
上記純正スターターでの始動に関しては、事実誤認だった。
実際は温度5℃以下の時に純正スターターで始動すると、空調回りは強制的に、FRONT DEF・REAR DEF・A/CがそれぞれONになる。当然AUTOはOFFとなってPTCも作動する。
なおA/C強制ONは回避不可能。後述カスタマイズ機能で「コンプDEF連動」をOFF設定していても作動する。とはいえ、極寒時にはコンプレッサーは稼働しないので気にしないでも良いが。
参考例、外気温+3℃のときに純正スターターで冷間始動して間もなくの、空調パネル表示がこの写真。この時期の普段使いの設定はAUTO/+25℃/ACオフなのだが、上述の如く純正スターター作動により一時的・強制的に設定が変わっている。
#純正スターター故にドアを開けると全停止しちゃうので、車外からガラス越しに撮影(笑)。
また、スターターの作動時間が終わらないうちにドアを開けて乗り込みエンジンを再始動すると、上記の「強制」設定が継続する(場合がある?継続しないこともあり)。逆に、スターターの作動時間が終わりエンジンが自動停止した後に乗車しエンジンを再始動した場合は、上記の「強制」設定ではなく、直前回降車時点の設定が適用される。
なお、ドアを開け乗り込んだ時点でまだ暖房/解氷が不十分に感じたら、エンジン再始動→FRONT DEFを手動オン、で良い。
当方「純正スターターが役立たず」と思っていたのは、上述「エンジンが自動停止した後に乗車」することが殆どで、純正スターターが作動している「間」の空調が実際どうなっているかを把握出来ていなかった故の誤解だった。
リモート始動が止まらないうちに乗車し止まったエンジンを掛け直すとFRONT DEF・REAR DEF・A/CがすべてONになっているのに気付いたことは何度かあったが、しかしそれは直前回使った家族が荷物をボタンに当てたか子供のイタズラだろう、くらいにしか思っていなかった。今回たまたま、リモート始動中にドアを開ける前に車内を覗き込んだらそうだった、って次第。
ちなみに夏場で温度が+25℃以上の場合だと、スターターで始動すると自動的にA/Cオンとなる。これも厳寒時の動作同様、直前の降車時にオフしてたとしても強制的に、なので、折角エンジンスターターを使ったのに、車内が冷えてなかったってポカミスもない。
これら5℃以下・25℃以上での自動動作については、純正スターターの取扱書を良く見たら、そうなることがちゃんと書いてあった。「車種によっては」と但し書きはあるが、我が70VOXYもその範疇だった模様。
なお純正以外のエンジンスターターを使うとこの辺がどうなるかは不明。70VOXY以外の車種についても然り。あしからず。
余談、
かつてZZV50ビスタアルデオに乗っていたが、思えばあの頃は確か、空調AUTO設定で極寒時に始動すると勝手にDEF+一部FOOTの風量最大で作動してたような気がしないでもない。
冬場にエンジンスターター(社外品)で15分も暖機すると、ガラスの凍結はある程度溶け、室内もそこそこ暖まっていた記憶があるので。
いまどきの省燃費エンジンと違って当時のエンジンは発熱が多く、暖機に時間が掛からなかっただけなのか、それとも当時の設計屋の方が今より気が利いていたのかはよく判らないが、極寒時のこの辺に関しては当時の方が有用・便利だったのは確かだ。
トヨタの関係者がこれを読んで、早々に善処してくれることに期待したいところだ。
補足。他年式・車種、社外品スターター装着車に関してのヒント。
現行80VOXYのようにECOモードボタンが装備されたクルマだと、PTCが作動する条件としては上記に加えて「ECOモードがOFF」な必要がある模様(70VOXYにECOボタンは無いので関係ないが)。
従い、もしECOボタンが付いている車種・年式の寒冷地仕様だったら、ECOモードをOFFにして試されたい。
更にハイブリッド車なら、走行用バッテリーの残量が充分あることも条件なはず。といっても残量がなければ勝手にエンジンが掛かるだけなのかもしれないが。
また、ECOボタンが装備されているクルマでも、ECO設定は運転回りには適用するが空調回りには適用させないように「カスタマイズ機能」で設定可能。以前乗っていたZGE20ウイッシュでは出来たから、最近の年式なら他車も同様のはず。
これを適用すれば、寒い日にECOボタンを弄る手間はなくなる。
ついでに言えば、この設定で夏場のエアコンの冷えも良くなる※。ECOモードONでもECOな空調制御はするなとクルマに対し明示的に指示する結果、暖房時にはPTC有効・冷房時も快適さ優先に制御される。
同様、上記のFRONT DEFオンでエアコン(コンプレッサー)が強制オンされる連動動作も、「カスタマイズ機能」で無効にできる。
但しこれを連動OFFにすると、今度は梅雨時など湿度が高いときのガラスの曇りを速く取るのに、FRONT DEFとA/Cボタンを別々に押すことになるから一長一短、どちらを重視するかで判断が分かれるところ。
これら項目は「カスタマイズ機能」の中でも取扱書には記載の無い、いわば裏メニュー。
ディーラーに希望を伝えて内部設定を弄って貰えば出来るので、もしその必要を感じるようならディーラーに相談を。
工賃無料、工場に空きがあればその場でやってくれる。
※参考 夏場にエアコンONのAUTO時でECOモードONだと、炎天下での始動直後のような酷暑の室内でも風量MAXにはならず、風量設定に6段階?あるうちの4くらいまでしか上がらない。その結果、今すぐにも下げたい室温がなかなか下がってくれない、「冷えの悪い」クルマと化す。
ECO重視で定常時の室温が設定よりも高めに制御されるのはまぁ良しとしても、始動直後くらいは設定値に向かってフルパワーで動くように作るべきと思うのだが。。
(2016/2/7以下削除)
(2016/2/16復活修正、3/2追記)
と言うわけで自分にとっての現実解、
冬場にエンジンスターターとPTCを活かすには、
もしトヨタ純正品以外のスターターを装着した寒冷地仕様車でPTCを積極活用するには、以下を試してみるといいかもしれない。
また純正スターター装着車でも、リモート始動で前述のFRONT DEF/REAR DEF等強制ON=PTCもONになるのは、気温0℃近いか氷点下で明らかに凍結しているであろう時だけかもしれないので、以下やっておくことをお勧めする。
- ディーラーで上記※のカスタマイズ機能設定をしてもらい、FRONT DEFボタンとエアコンが連動しないようにする(項目名「コンプDEF連動」を「連動なし」に設定)。
- 寒い時期は必ずFRONT DEFオンにしてからエンジンを切ってクルマを降りる、って手順を習慣にする。
とするしか無さそうだ。
これら両方をやっておけば、次回エンジンを掛けると空調はFRONT DEF且つA/Cオフで立ち上がるから、上記の純正スターターの如く「強制」設定が効かない?社外スターターでのリモート始動でも、PTCが確実に作動して室内を暖めてくれるはず(寒ければ)。
余談。
PTCの作動をモニターするグッズを小手先で作って繋いでみることを画策中。
PTCは出力の大小が異なる3回路の発熱体で構成され、エンジン水温や外気温・室内の現在温度・空調の設定温度によって、それら発熱体の個々をリレー3個でON/OFF制御されている。
従って、それらリレーがONしている時に点灯する3個のLEDを室内に設ければ、PTCが作動しているのか否か・どれ位頑張って作動しているのかが見た目で判るようになる、って寸法。
まぁPTCを動かすのに必要な条件は今回判っちゃったから、実用上はそれ以上意識する迄もなく、ただの興味本位だが(笑)。
(1/27追記)
早速ディーラーでカスタマイズ機能設定を変えてもらい、上記実践中。狙い通り、
厳寒時のリモコン始動FRONT DEFオンで降車後の冷間始動時に以前より車内が速く暖まるようになった。
エンジンOFF直前のワンアクションはやっぱり面倒くさい・忘れやすい、と日々感じつつ(笑)。
(4/7追記)
結局上記のPTC作動モニターは作ったものの、車内配線へのアクセスが大変なので挫折した。
我が70VOXYの場合、PTCのコントロール信号を含むハーネスコネクターが右Aピラーの根元付近に来ているのは車両配線図と艤装図で把握したのだが、フロントのダッシュボード上面を剥がさないとアクセスできない作りだった。
ダッシュボード上面は見た目すっきり感重視の作りゆえに、上から見える固定ネジの類はない。従って、その下側即ちエアコン吹出口やらセンターメーターやらグローブボックスやらの多数の装備品を外すところから始めないと、隠された固定箇所には行きつけない。
来冬までの宿題、
室温が10℃以下の時エンジン始動したら「FRONT DEF」ボタンを勝手にONする仕掛けでも付け足そうと思う。
室温を測る温度センサーと、エンジン始動後数秒待つタイマー、FRONT DEFランプの点灯状態くらい検出して、ワンショット動作でFRONT DEFボタンの接点を短絡してやればいい。そう難しくはなさそうだ。
といっても自分のクルマは「純正」スターターゆえ、明らかに気温5℃以下と判っていれば単純にリモコンでスタートすればいいだけか。。。やっぱり放置でいいや(笑)。