今の若い人、例えば40代以下の人は代表的な公害病ってそらで言えるんだろうか? この辺はたとえ子供の頃であってもリアルタイムにその報道を耳にしてきた世代と、公害病の報道が途絶えた後に物心ついた世代とでは、公害病との距離感が違うのかも知れませんね。私達の頃には教科書にも載ってましたが、今の社会、あるいは公民(日本史か?)の教科書にも公害病に関する記述はあるんでしょうか?
映画「MINAMATA」を観てきました。平日の午後6時45分からの上映とはいえ、名古屋駅付近の広い劇場に、観客は7人。しかし、このテーマだと、まあ、こんなもんかな?
最初にこの映画について知ったときに驚いたのは「どうして今?」ってことですね。そして主人公を演ずるのがあのジョニー・デップ。観ないわけにはいかない。
髭面で飲んだくれのカメラマン、ユージン・スミスを演じる彼は、言われなければあのパイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパローと同一人物だとは思えません。しかし、よく引き受けたなぁ。
この手の映画の通例通り based on true story で始まりますが、やはり盛ってあるようですね。映画の中でチッソの社長がユージン・スミスにネガと引き換えに5万ドルが入った封筒を渡そうとする場面があったり、彼の現像小屋が放火されたりする場面がありますが、この辺は史実とは違うようです。
ただ、ユージン・スミスがチッソの工場で従業員らと揉みあいになり重傷を負って入院する場面があり、映画のエンドロールでその時の怪我が遠因で亡くなったことが知らされますが、このあたりをWikipediaで調べてみると、この時の怪我は「脊椎を折られ片目を失明」するほどの大怪我だったとのこと。逆に映画では怪我の程度については史実よりは軽く受け止められるように描写されています。
あまりに有名な下の写真を撮る場面では、傷の癒えない彼が他の人にシャッターを押させています。
水俣病の写真と言えばこれと言うくらいに有名な写真(入浴する智子と母)で、水俣病はこの写真によって光が当たったと言ってもいいくらいですが、ここに貼るのにはいささかのためらいもあります。と言うのは、当時の通訳であり後のユージン・スミスの妻であり現在はユージン・スミスの写真を管理するアイリーンと智子の両親との間の話し合いによって、この写真の使用を許諾しないとしたからです。
でも映画にはこの写真の撮影場面がクライマックスとして描かれます。私も久しぶりに映画で涙しました。
おそらく史実ではないと思いますが、こんなセリフもありました。(うろ覚えなので正確ではありません)
アメリカ先住民は写真に撮られると魂が抜かれると言ったが、魂を抜かれるのは被写体じゃない。撮影者の魂の一部も撮った写真と一緒に抜かれるんだ。
これくらいの気持ちを込めて撮ればいい写真が撮れるんでしょうね。
水俣で撮影当時のユージン・スミスと通訳のアイリーン(彼女は日米のハーフ)。この後二人は結婚、そして離婚。
ベルリン国際映画祭のレッドカーペット上の真田広之、ジョニー・デップ、そして現在のアイリーン。
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2021/10/09 19:06:06