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成田のオッサンのブログ一覧

2012年03月11日 イイね!

不連続断片小説「その日」・・・第二話「家」

早いもんですね。あれからもう一年。

私なりの追悼と、記憶の留め方です。


第二話「家」

「今けえった。やっぱ地震が来るからか、さっぱり釣れんなぁ。」
「あんた、これ読んだ?」
「なんだ、いきなり。お帰りなさいも無しか。なにぃ、震災対策説明会のお知らせだと。」
信行は、畳の上に転がったメガネを拾い、チラシに目を落とした。
「んーと、なんだ、昨日じゃねぇか。もう済んでんじゃねぇか。」
「うちは行かなかったけど、近所は大方の家が公民館で説明聞いたんだって。あんたは朝早くから漁に出たから知らんかも知れんけど、朝からその話で近所で大騒ぎよ。うちを壊さなきゃならんのだって。」
「なにぃ? 地震で壊れる前に自分で壊せってのか? そんなバカな話あんめぇ。」
「さっき、市役所行ってる洋輔君が来て・・・」
「ああ、箕輪んとこの洋輔か。」
「昨日、来られなかった人に個別に説明するから必ず市役所に来てくれって。」
「面倒くせぇなあ。明日じゃあかんのか。」
「とにかく、行ってきてよ。」

信行が市役所に着くと、市役所の駐車場は車で一杯で、入るまで暫く待たされた。やっと空いたスペースに軽トラックを停めて、市役所に入ると、中は人でごったがえしていた。
きょろきょろとあちこち見回す信行を洋輔が先に見つけ、声をかけた。
「あ、村木さん、こっちこっち。」
「お、洋輔か。震災対策課が1階にあるとは思わなんだ。」
椅子に腰掛けると、信行はカウンター越しに座る洋輔をしげしげと眺めた。
「お前、立派になったなぁ。」
信行はネクタイ姿の洋輔を初めて見て、慣れない世辞を言ったつもりだったが、洋輔は反応しなかった。
「一昨日までは3階だったんですけどね、昨日から1階に移りました。」
「1階と言ったら、戸籍とか市民の用事が多いところかと思ったが。」
「ええ、戸籍係も忙しいですよ。大量の転出手続きでてんやわんやです。」
「なに? もう出て行く奴らがおるんか。まだ何ヶ月も先やろが。」
「みんな、浮き足立ってるんですよ。特に小さい子供や寝たきり老人を抱えた家はね。」
「うちは夫婦二人だけやから、気楽でええわ。」
洋輔には世間話に付き合う余裕はなかった。いきなり用件を切り出した。
「村木さん、お聞きになってると思いますが、村木さんがお住まいの地区は、震災対策で住宅を除却する地域に含まれてるんです。3ヶ月以内に引っ越してもらえますか。」
「なに? なんで3ヶ月で出てかないかんのや? いずれ、地震の時期が近付きゃ、そら、避難もしなあかんやろ。そやけど、まだ10ヵ月も先やろ。それに除却てなんや? どうして壊さなならんのや?」
「まさか、国会の事前除却法案の強行採決のときの大騒ぎを知らないわけじゃありませんよね。」
「事前除却法案? 知らんな。おら、新聞もテレビも見ねぇからな。漁から帰ったら、飯食って酒飲んで寝るだけやから。」
洋輔は村木にも聞こえる溜息をついた。
「予知連の予知は、あと10ヶ月プラス・マイナス3ヶ月。つまり、あと7ヶ月で大地震が起きるかも知れないんですよ。」
「それにしたって、7ヶ月も先やろ。」
「たった、7ヶ月ですよ。7ヶ月しかありません。」
「たった7ヶ月かも知れんが、何でおらんちを壊さにゃならんのや。そら、津波が来るかも知らんが、来る前に防波堤を高くすりゃええやろ。」
「7ヶ月ではそんな大規模な土木工事はできません。それに防波堤を高くするとしてもここの港だけじゃ済みません。今から太平洋側の海岸線全域に高い防波堤を築くなんて無理でしょ。残念ながら津波の被害が予想される地域は、津波から逃れることはできません。」
「だからって、地震も来ねぇのに先に壊すことはなかろ。」
「村木さんも東日本大震災の津波のニュースはみたでしょ。」
「ああ、見た。」
「じゃ、あの時、流されていく家が他の家を壊してくのを見たでしょ。」
「ああ・・・・。」
「港の船や陸地にある建物が被害をより大きくしてしまうんですよ。それに東日本大震災の時、津波の被害にあった地域のガレキの処理に大変苦労したのもご存じですよね。うちの市でも被災地のガレキを受け入れるかどうかで一騒動ありましたよね。」
「ああ、知ってはいる。」
「それを聞いて安心しました。津波で壊れてからではガレキでしかありませんが、壊れる前なら分別して資源にできる部分もあるんです。今度は放射能の問題もありませんし。おかしな話と思うかもしれませんが、地震の前に壊す方が後でガレキ処理するより予算も安くて時間も早く済むんですよ。それにガレキによる海洋汚染も防ぐことができて漁業の復興も早まります。村木さんも震災後は早く漁に出たいでしょ。ご同意願えませんか。」
「建ててから30年も経つボロ家やが、女房と苦労して建てた家や。はい、そうですかと壊す訳には・・・・。」
そう言おうとして、村木は洋輔の家のことを思い出した。確か、建てて3ヶ月も経っていない。何とかいうハウスメーカーの二世帯住宅だったはずだ。あの辺では浮き上がって見える白い壁の家だった。
「そういや、お前んちって・・・。」
「ええ、大地震が来るって分かってりゃ、新築なんてしなかったんですけどね。」
「どうするつもりや。」
「もちろん除却します。仕方ありませんよ。」
無表情で語った洋輔の苦悩は、村木にも容易に想像できた。
「仮に同意したとして、建て替えてくれるんやろうな。」
「政府が評価額を保証します。」
村木は陽介の視線が逸れたのを見逃さなかった。洋輔に同情していくらか落ち着きかけていた村木の感情が、再び昂ぶり始めた。
「評価額って何や。30年も経ったおらんちの評価額なんて知れとるやろ。おんなじとこに、おんなじ家を建て替えてくれるんやないのか。」
「津波に襲われた場所に建て替える気になりますか。おそらくは東北の被災地と同じように高台に移っていただくことになると思います。」
「高台ってどこに。それに、ひょっとしたら、そこに建てたアパートみたいなとこに住めって言うんやないやろうな。」
「東日本大震災と違って今回は事前に分かってるわけですから、既に移転地の計画は進んでると聞いてます。そんなに遠くないところだと思いますよ。それと、アパートと言うか、マンションと言うか住宅の形態が変わる可能性は何とも言えません。」
「そんな、あてもない話は聞きたないな。」
村木は自分の感情が更に昂ぶって来るのを感じていた。
「嫌だと言ったらどうなるんや。」
そう言った時、簡単な衝立で仕切られた隣のブースで大きな物音と共に椅子が転がり、大柄な男が立ち上がった。
「何だと、強制執行だと。おもしれぇ、やってもらおうじゃねぇか。おらぁ、テコでも動かねぇからな。」
村木はその男の顔を見上げた。矢野だ。この辺じゃ、誰もが関わり合いになるのを避ける男。村木が首を伸ばして衝立越しに応対してる職員を確かめると、よりによって、どう見てもまだ20代の女性だった。完全に怯えている。
「斉藤さーん。」
洋輔が立ち上がり、誰かを呼んでいる。間もなく、斎藤と呼ばれる男が現れた。矢野よりは小柄だが、逞しさが服の上からでも分かる体格をしている。矢野を睨みながら近づくと、いきなり二の腕をつかみ持ち上げた。
「矢野、震災前にムショに入るか。」
「俺は何もしてねぇだろ。」
矢野は、まさかと言う顔つきで動揺していた。明らかに斎藤を知っているようだった。わめき続ける矢野の二の腕を掴んだまま、斎藤は矢野をどこかに連れて行った。
矢野が消えると、一瞬だけシーンとした市役所に再びざわめきが戻った。
「小林さん、ちょっと休憩してきたら。」
洋輔が声をかけると、隣の席の女性は頷いて席をたった。
「おい、こっちも忙しい時間を割いて来てんのに、まだなの。」
「ちょっと待ってくださいね。」
洋輔は矢野の後ろに並んでいた男性に頭を下げて謝った。いつの間にか、市役所の内部は村木が来た時よりも混み合っている。振り返ると村木の後にもイライラしながら二人が並んでいる。
「私服警官に来てもらってるんですよ。皆さん、気が立ってますからね。」
洋輔は村木に嫌味と取られることも気にせず、平然と言った。既にこうした場面には慣れている落ち着きが感じられた。
「もう少し、ベテランというか、年配の男の方がいいんじゃないのか、こういう話は。あんな女の子じゃかわいそうだ。」
「仕方ないんですよ。管理職は一日中、会議や打ち合わせで缶詰です。その報告を夜になって私たちが聞く。その繰り返しです。前例のない事態ですからね。ここ二月はろくに休みも・・・、あ、そんな話はいいですね。さっきの話ですけどね、政府は最終的には強制執行も視野に入れる方針です。あくまでも最終手段ですけどね。市としては市民の皆さんが自主的に同意していただけるものと思っています。」
村木は、そんな市民なんているもんかと腹の中では思ったが、矢野の騒動で怒りが削がれてしまった。
「あ、それと所有されてる船は4トン未満ですよね。これも3ヶ月以内に陸地に上げて移動してください。適当な保管場所がない場合は国が移動して保管してくれます。廃船されるなら廃船費用の半額の補助金が出ます。」
洋輔の話を聞いているうちに、何だか、もうどうでもよくなってしまった。
「まあ、考えとくわ。」
村木はそう言い残して、市役所を出た。

遠回りにして自分が住む街を見下ろせる堤防を走った。彼方に見える水平線が夕日に照らされ輝いていた。その海が盛り上がり、街を覆う日が来ると言う。その日を待たずに家々を壊せと言う。東日本大震災の津波の後の荒涼とした景色と、住み慣れたこの街の景色とを重ね合わせようとした。しかし、村木にはそれを重ね合わせることはできなかった。
Posted at 2012/03/11 00:44:26 | コメント(1) | トラックバック(0) | 小説 | 日記
2012年01月29日 イイね!

不連続小説「その日」・・・第一話 通告

ある日、ふと、「地震予知が正確にできるようになった何が起こるんだろう?」って思い付きが浮かんできました。それができるとして、どれくらい前に予知できるんだろう? 1秒前? 1分前? 1時間前? 1日前? 1週間前? 1月前? 1年前? 10年前? 予知がどれくらい前かによって起こることはまるで違うものになるのではないか? この思い付きから、久し振りに小説を書いてみることにしました。
私の小説は「日高の遺書-another story-」もそうですが、なぜか会話主体になってしまいます。まるで脚本みたい。まあ、どうせ素人の拙い小説。お目汚しですが読んでみてください。

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                            その日

「ちょっ、ちょっ、そりゃないでしょ。いきなり全員解雇だなんて!」
西日の差し込む工場長室に大声が響き渡り、その声は廊下を歩く女性事務員の耳にまで届いた。
「誰もいきなりなんて言ってないだろ。5ヶ月後だ。それに全員じゃない。ほぼ全員だけどな。」
「5ヵ月後だって、いきなりじゃないですか! それと、だ、誰が残れるって言うんですですか。」
「そう、唾を飛ばすな。まだ誰と決まったわけじゃない。中国に建設される新工場に行って作業の指導ができる者は会社に残れる。まあ、10人くらいらしいがな。」
「たった10人。それも中国。」
「委員長、あんただって、度重なる円高で中国への生産施設の移転の噂は聞いたことがあるだろう。それが例の地震予知で早まっただけのことだ。元々、会社は考えていたことなんだ。」
「しかし、あとたった1年で中国工場で操業なんてできるんですか。」
「9ヶ月でできるそうだ。会社はそう言ってる。もう用地は押さえてあるらしい。あす、全体朝礼でこの工場の従業員全員に伝える。その前に君達、組合執行部にこうして伝えたわけだ。」
「あ、あんたはいいよな、工場長。首にはならないんだから。俺たちゃどうすりゃいいんだ。」
「安心しろ。俺も解雇だ。新工場長は、ここにいる副工場長だ。人件費の高いものは真っ先に首だよ。」
工場長の斜め後ろに立つ副工場長は目を伏せた。ソファから立ち上がったままの委員長は、二人の顔を交互に見つめ、拳を宙に止めて口を開けたまま息を飲んだが、すぐに続けた。
「だ、大体、会社はあの地震予知連の眉唾を信じる気なんですか。あんな明日の天気も当てられない連中の戯言を真に受けるんですか。」
「最初は日本中が疑ったさ。でも君も連中が二つの中規模地震の発生を連続して当てたのを知らんわけじゃないだろう。最初は相模湾のマグニチュード6、続いて駿河湾のマグニチュード5。二つ目は確かに想定発生時期は外れたが、その3日後にちゃんと起きた。予知連は、大きな地震ほど当てやすいと言い訳までした。政府はもちろん、財界も疑うものはおらんよ。予知発表から1月経ったから、あと11ヶ月プラス・マイナス3ヶ月で、東海・東南海・南海大地震が起こることは、まず間違いないだろう。」
「しかし、地震とこれとは・・・・。」
村木委員長は消えかけた語尾に、自分の無力を感じずにはいられなかった。
「さっきも言ったが、これは地震予知がなくても起きてたことかも知れないんだ。私としても残念だが了承してくれ。それと、この工場での操業はあと4ヶ月間。その間は忙しくなる。おそらく残業が続くと思ってくれ。部品を作り溜めて長野に確保した倉庫に保管しておく。その後はラインを撤去し、中国に運ぶ段取りだ。」
「本当に、もうどうにもならないんですか。社長はあんなに国内生産にこだわるって言ってたじゃないですか。」
「ああ、もうどうにもならん。決まったことだ。あとの条件闘争は会社とやってくれ。ただな、社長も決して安易に中国への工場移転を決断したわけじゃない。この工場を耐震改修する費用と中国移転の費用を天秤にかけて、総合的に判断したと言っていた。この工場の耐震改修には建て替えと変わらん費用がかかるそうだ。費用をかけて耐震改修したところで、工場がここにある限り、被害なしと言うわけにはいかないだろう。工場が持ちこたえても電力や道路の復旧にどれだけかかるか見当も付かない。その間、親会社への部品供給を止めるわけには行かないんだ。特に、今回のように事前に分かっていてはな・・・。」
「いっそ、地震予知なんてない方が・・・。」
「それを言うな。少なくとも今度の大地震では人的被害は出ないはずなんだから。」
Posted at 2012/01/29 23:09:29 | コメント(0) | トラックバック(0) | 小説 | 日記

プロフィール

「@渥美格之進 finding0111さんは、受付終了で見られなかったそうです。 」
何シテル?   08/05 18:21
昔、メルマガで漫画のコラムを書いてました。
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