現在、豊田市博物館で大好評開催中の
「深宇宙展」。

開館前でも長蛇の列が出来ています。
その豊田市では関連イベントを多数開催中で、先日も
トヨタ自動車のエンジニアによるトークショーを聴講しました。
そして今回はロケット開発エンジニアによる講演会へ。
先日のトークショーが子供向けだったので、今回もそうだろうと思っていたらやはり(笑)
会議室には多くの机と椅子が並び、その最前列の椅子のみの席は子供の優先的席という仕切りでした。
講演者は2名。JAXA子会社のベンジャミン・ブランチという会社の方と、宇宙タレントの
黒田有彩(くろだありさ)さんです。
まずは黒田さんが自己紹介して爆笑を誘い、続いてベンジャミンの方も。普段から子供向けの教室などをやっているそうなので、お二人とも上手にしゃべります。
この日のテーマは「
なぜ月に行くのか」「
ロケットはどうやって打ちあがるのか」の二つ。
まずは月についての説明で面白かったことを書き連ねます。
・潮汐ロックはなぜ起きるか
月が常に地球に同じ向きで自転する状態となるのが潮汐ロックです。月の重力によって潮の満ち引きが発生しますが、地球の重力によって月の自転が遅くなることによって発生するとされます。
・月の裏側はなぜボコボコなのか
3Dプリンターで作った月の模型が会場内全員にまわされました。

確かに裏側は「海」がありません。
しかし結論としては「よく分からない」。
ただ、多くの隕石は地球の重力に引かれてくるので、地球側を向いている月面に隕石が落ちようとすると先に地球に当たる確率が高くなります。もう1点は、潮汐力によって地球側の月面(及びその地下)は流動性がより高く、反対側はより低いため、地球側は隕石衝突跡が消されていくことになります。
・月面でジャンプするのはすごく危険
アポロ計画の宇宙飛行士が月面で時間ができたので試しにジャンプしたら、より重量のある背中から落ちて生命維持装置が壊れてしまい、危うく死にかけたそうです。
漫画などではジャンプする様子が描かれることもありますが、実はすごく危ない行為のようです。
・アルテミス計画潰しは対策済み
NASAは、トランプ氏の大統領返り咲きによってアルテミス計画がキャンセルされるかもしれないと恐れ、安易なキャンセルが出来ないよう、各国との約束をつけておきたいと考えました。その結果、計画策定の前に関係国との間で「アルテミス合意」が先に形成されました。
しかしそれでもNASAの予算は大きく減らされ、計画の先行きに暗雲が漂っています。そうした状況を受けての前回のトヨタ自動車のトークショーでした…
・アルテミス計画とは
計画では月に拠点を作るとともに、月と地球の間にゲートウェイ(中継点)を構築することになっています。ただ、各国でやりたいことは違っていて、NASAは火星に行きたい、日本は月に行きたいなど、温度差がいろいろとあるようです。
次のテーマはロケット打ち上げについて。
・ロケット打ち上げ映像
当日はH3の8号機打上げ日だったのでその場でライブ中継を行う予定でしたが、機器の不具合で打ち上げが延期されたので、過去のH3ロケット打ち上げ映像が大画面に流されました。この時も子どもたちは大喜び♪
国際宇宙ステーション(ISS)の話も出ましたが、星出宇宙飛行士はものすごくお酒に強いそうですw
また若田宇宙飛行士はISSでの一日2時間のトレーニングがすっかり習慣となった結果、地上でもどこへ行ってもトレーニングしないと気が済まないようになってしまったそうですw
・風船ロケットの実演
黒田有彩さんの作った風船ロケットを飛ばす実演をしていましたが、すごい勢いであちこち飛び回るのかと思いきや、ゆーっくりと垂直に上がっていきます。
これはすごい。
材料は100円ショップで売っているものばかりとのことですが、特に垂直に上がることは実際のロケットでもかなり神経を遣う部分で、事実、H3ロケット1号機ではそれがうまく行かずに指令破壊されました。
・ロケット発射ボタンは誰が押すのか
「誰も押さない」「機械でプログラミングされたタイミングで発射される」というのは以前から知っていましたが、講演では「発射ボタン以外に押すボタンがあるが、それは何か」と問われていました。子供たちからはアイデア溢れる意見がたくさん出ていましたが、正解は「準備完了ボタン」だそうです。

ロケットのリフトOFFまでには多くのステップがありますが、天候、周辺環境、機器の状態など様々な条件が整って発射のための準備が完了したと判断されるとそのボタンが押されるそうです。これは知らなかった…。
先にも書いたように、講演のあいだ中、子供たちは講演者2名にずっとしゃべり続けていました。時折講演者から質問が出ると当てられてもいないのに我先にと答えを喋り出す始末(笑)
しかしその答えが正しく、しかも大人顔負けのマニアックなフレーズが出てくるのです。
「それって第一宇宙速度でしょ!」
「月には空気が無いから喋る時に困るよね!」
などなど。
会場には本当に宇宙のことが好きな子供たちが集まったのだなと感じると同時に、その積極的な姿勢に「なんてかわいいんだろう♪」と思ってしまいました。
講演の最後にベンジャミンの方がボソッと言ったのは「こんなやりにくい講演は初めてです」と。しかしこれはネガティブな意味ではなく、質問したことへの子供たちからの回答が正解ばかりだったので、そのレベルの高さに驚いたという意味でした。
来場者の大半は豊田市内の子でしたが、私のすぐ前に座ったカップルの女の子は、講演中、終始メモを取り続け、隣の男性と楽しそうに会話していました。

このカップルの例にみられるように、基本的には子供向け講演であったものの、そこかしこに大人でも楽しめる情報がちりばめられており、大変よくできたプログラムであると感じました。
はやぶさ初号機の感動的な帰還をテレビで見て、それをきっかけに勉強を始めた小学生が今ではJAXA職員になったという例もあるとか。
あの会場からもそうした子供が出てくるといいですね♪
Posted at 2025/12/09 19:40:28 | |
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