2010年11月19日
オキツモ耐熱塗料の考察
これまで数々の塗料を使用してきたものの、”耐熱塗料”は今回がお初。
ということで事前に色々と調べてみるも、「流石オキツモ」、「色が引けない」、「10年経ってもツヤがある」 といった意見もあれば、「なかなか乾かない」、「どうしてもワキができてしまう」、「塗装面に貼ったシールを剥がしたらツヤが無くなった」 更には、「クソみたいな塗料」 といった極端な書込みもあるこの塗料。
さて、どれが本当なのだろうか?
とゆー事で、実際に使ってみた個人的感想を備忘録を兼ねて並べてみようと思います。
あくまで個人的な所見なので、お約束通り責任は持てませんが、その辺りはご了承下さい。(爆
使用したのは、「オキツモ耐熱塗料スタンダード(ツヤ有)」 という代物。
まずは結果から言うと、これ等の意見・書込みは、あながちどれも間違ってはいないという事。
「耐熱」 という特殊な方向性を持った塗料だけに、使用する側に ”心構え” の様なものが必要とされ、普通の塗料と同じ様な感覚で使用すれば不満や文句といった事に繫がり、きちんと理解した上で正しく使用すれば満足を得られるといった類のモノでありました。
まだ作業が完全に終了しておらず、継続使用もしていないため、経年劣化等のテスト結果については記録することはできませんが、これから使用してみようという人には、何らかの判断材料になるかと思います。
< メーカーの取り扱い説明 >
・薄く塗り、2~3回の重ね塗りで仕上げる。(0.3~4μの塗膜で仕上げる)
・塗り重ねるには、16時間以上経過してから重ね塗りすると綺麗に仕上がる。
・常温(20℃)で24時間以上自然乾燥させる。(触指乾燥)
・180℃で20~30分焼き付けることで完全硬化し、3H程度の硬膜となる。
< 実際の使用感・注意点 >
・色にもよると思われるが、顔料の沈殿量が多いため、スプーン等の金属を使用しないと混ぜるのが困難である。
・塗料の混ざり具合、粘り、塗り具合等は通常の塗料と何ら違いは見られない。
・”薄塗り” を行い、塗り重ねによって発色を良くするため、塗り方に関しても通常の塗料と同様である。
・付属している ”専用薄め液” が少量のため、筆やエアガンの洗浄には注意が必要である。
< 塗装時に於ける特徴・注意点 >
・”厚塗り” は特に厳禁である。(触指乾燥もままならない状態に陥り易く、ワキ・フクレの発生率が極端に高くなる)
・鋳物に塗装を行なう場合は、エアスポットの発生を避けるため、初回は筆塗りを行なう方が良いと思われる。
・発色を良くするための下地(白)処理は、結果的に厚塗りとなってしまうため避けるのが好ましい。
・下地が透ける程の薄塗りを数回重ね、下地が見えなくなった時点で即終了とするのが成功の秘訣である。
・厚塗りは厳禁であるが、やむを得ず重ね塗りしなければならない場合は、希釈度合いを更に高くして塗装する。
・エアガン使用の際は、希釈度合いをかなり高めにした方が作業性が良い。
・ドライスプレーや、エアの噴霧によるツヤ消し化に注意する。(硬化後はそのままになるため)
・重ね塗りをする際に、ワキ・フクレ防止策として前回の塗装残存物(空気・溶剤)をなるべく取り除くための仮焼付
(80~120℃前後)を行なってみたが、結果は良好であった。
(本焼付けによる完全硬化は、次に重ねる塗料の食い付きに不安があるため避ける事とした)
< 自然乾燥後に於ける特徴・注意点 >
・丁寧に薄塗りして自然乾燥を行なえば、通常の塗料同様に乾燥し、塗装物に指紋の痕がついたりする事はない。
・自然乾燥だけでは完全硬化には至らないため、爪などを強く立てると痕になり易い。
・自然乾燥後の塗装物にテープ等を貼ると、剥がした跡が艶消し痕として残ってしまう。(マスキングテープはOK)
・自然乾燥後の塗装物は薬品耐性が特に低く、パーツクリーナー等を使用しただけで塗料が容易に溶解し、ツヤ
消しとなってしまうため、なるべく他の薬品・溶剤がかからないよう注意する。
< 焼付け乾燥時に於ける特徴・注意点 >
・焼付けは除々に温度を上昇させ、一気に昇温しないこと。
・メーカー推奨昇温速度は、「30分掛けて180℃」 であるが、その倍程度の時間を掛けた方が良い結果であった。
・80~120℃付近での乾燥には特に神経を使い、80℃前後から発生し出すワキを防止するため、少しでも多くの残
存溶剤を排出させる目的で、乾燥時間を80℃前後では特に長めに設ける事とした。
< 焼付け乾燥後に於ける特徴・注意点 >
・発色・・・完全硬化後はほんの少し濃い(焼けた)発色となる。
・艶 ・・・完全硬化後は多少失われる。
・塗膜・・・完全硬化後は少しヤセる。
・硬度・・・完全硬化後は飛躍的に高くなる。(爪等で凹むことは皆無となる)
・耐性・・・完全硬化後は高くなる。(溶剤で拭いた位では殆んど色落ちしない)
・自然乾燥後に爪等にて付いた痕は、軽いものであれば完全硬化時に無くなる可能性が高い。
・塗装表面にツヤが無かった部分は、焼付け乾燥後もツヤが出る事はない。
・硬化後にペーパーやコンパウンドを使用しても、簡単にツヤを出すことは出来ない。
・完全硬化後の塗装物にテープ等を貼っても何ら影響はない。
・完全硬化後の塗装物は薬品耐性も上がり、パーツクリーナー等を使用しても簡単に塗料が溶解することはない。
(一度 ”強酸” に属す錆取り剤が付着した事があったが、早急に排除すれば何の問題も無いが、放置すれば時間
の経過と共に ”色引け” が見られ、今回使用した青色の場合は、2~3分の付着により塗装が水色に変色した。)
・完全硬化後はその性質が全く異なってしまうため、硬化後の再塗装は塗料の食い付きに疑問が残る。
< 総評 >
”美しさ・強度・耐久性” を求めてこの塗料を使用するに至った訳ですが、この塗料の持つ本来の性質を発揮するには ”完全硬化” させることが必須条件となります。
逆に自然乾燥だけで済ませてしまえば、一見、仕上がりは綺麗に写るかも知れませんが、その性能は通常の塗料以下と思われた方が良いと思います。
その性能の落差が、冒頭にもあるような両極端なユーザーの声へと繫がっているのでしょう。
通常の使用下に於いてキャリパーの塗装を完全硬化させる程の温度上昇は見込めませんし、この車の持つキャラクターから考えても現実的ではありませんので、やはりオーブン等の焼付炉がない場合は使用をオススメ致しません。
完全硬化した状態では、硬度・耐性共に光るものがありますが、硬化させていないとなると、薬品による溶解、ツヤ落ち、ワキ・フクレの発生、ダストの付着等、問題発生のリスクを常に背負うことになると思われます。
これでは幾ら塗装を綺麗に仕上げても無駄骨となってしまいますし、逆に言えば塗らない方が良いかも知れません。
この塗料を完全硬化させることが出来なさそうであれば、他の塗料の使用をオススメ致します。
また個人的には、焼付け時の高温によるキャリパーブロック間のパッキンの劣化が不安でしたが、これについてはまだ詳しい事は判っておりません。
また、使用・経年による劣化等についても、実際に装着してからのレポとなりますのでご了承下さい。(笑
追記:(2010.12.25)
・完全硬化後の塗装物は薬品耐性は上がるが、パーツクリーナー等を使用するとツヤが引け、硬化前と比較する
と、ゆっくりではあるが塗料の溶解もみられる。(ただし、有機溶剤の入っていないアルコールによる侵食は皆無
である)
・焼付け乾燥時のシール(パッキン)の劣化については、その度合いを知るために、使用済みのピストンシールを
セットして本焼付け(180~190度で30分程度)を行なったが、硬度、ツヤ等に於いて全く変化が見られなかっ
たため、この程度の焼付けでは全く問題ないものと思われる。
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Exiga DIY | 日記
Posted at
2010/11/19 17:23:12
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