
東レは、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を多用して大幅に軽量化した電気自動車(EV)のコンセプトカーを開発した。同社は炭素繊維を「戦略的拡大事業」と位置付けており、自動車は素材の使用量が最も期待できる分野。コンセプトカーを通じて、自動車メーカーの採用拡大を狙う。
開発したのは、2人乗り・オープンタイプのEV「TEEWAVE AR1」。TEEはToray Eco Efficient、AR1はAdvanced Roadstar 1の略で、環境性・効率性に配慮した自動車の開発という波(WAVE)を、東レが仕掛けていくという意図が込められている。
車体の基本構造には、CFRPを積極的に使った。部位や用途により、熱硬化性樹脂をマトリックスとするCFRTS(Carbon Fiber Reinforced Thermosets)と、熱可塑性樹脂をマトリックスとするCFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics)を使い分けている。設計思想としては、中央の乗員スペースは強度や剛性に優れるCFRTS製モノコック構造を採用。その前後スペースは衝突時のエネルギ吸収を担う「クラッシャブル・ゾーン」とし、成形性や成形コストなどに優れるCFRTP製の部品を適用している。
モノコック構造は、Resin Transfer Molding(RTM)法に大幅な改良を加えた「ハイサイクル一体成形法」で製造した。同成形法では、炭素繊維の織物(クロス)を裁断して細かなパーツとし、それらを張り合わせた上でプレスした「プリフォーム」を作製。型内にプリフォームを置き、型を閉じてからマトリックスとなる熱硬化性樹脂(主にエポキシ樹脂)を注入し、複合材料とする。複雑な構造を一体成形できる特徴があり、今回のモノコック構造の部品点数はわずか3点である。これは、鋼板で同様のモノコック構造を造った場合の1/20だという。
CFRTS製のモノコック構造は、単体で優れた強度や剛性を実現できるため、複数の車種で共用化しやすいという。今回のモノコック構造も、2人乗り・オープンタイプに限らず、4人乗りのセダンやワゴンにも流用可能な設計にしている。ハイサイクル一体成形法のサイクルタイムは現状で約10分だが、5分に短縮できるメドが付いているという。複数の車種で共用できるという前提であれば、3分まで縮めれば自動車メーカーに受け入れられるだろうと東レでは見ている。
TEEWAVE AR1の寸法は、全長3975×全幅1766×全高1154mm。車両重量は、846kg(うち2次電池は220kg)である。CFRTSとCFRTPは合わせて約160kg使用しており、その効果として鋼板の使用量を550kg減らせたという(2人乗り・オープンタイプでの比較)。2次電池には、リチウムイオン2次電池を採用した。電力消費率は11.6km/kWh、航続距離は185km(JC08モード)である。
車両の意匠設計や構造設計は、環境対応車の企画・設計などを手掛ける英Gordon Murray Desing社に委託した。同社は、かつてFormula 1の車体設計を行っていたGordon Murray氏が代表を務める会社である。TEEWAVE AR1は公道を走行するための車両登録が可能な仕様となっており、現在英国で登録申請中だ。この申請が通れば、所定の手続きを経ることで、日本の公道での走行も可能になる。
東レは、TEEWAVE AR1の実車を同社のプライベート展示会「東レ先端材料2011」(2011年9月14~15日、東京国際フォーラム)で公開する。同展示会後は、同社の自動車向け技術開発拠点である「オートモーティブセンター」(名古屋市)で展示する予定だ。
以上日経より転載
Posted at 2011/09/10 17:03:54 | |
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