2010年06月17日
ツイッターでチョット書いたネタなのですが、長くなりそう・・というか説明が必要そうだったのでこちらに書いてみます
話は、106系の軽量クランクプーリーについて、その是非について質問したことでした。
ただその前に少々。
私個人としては、競技車両的(アスリート的)考え方と、チューニングカー的(趣味的)考え方は、似て非なるものであると考えています。
これは車に限らず、カッコ内のようにアスリートとして競技成績を求めるものと、趣味として楽しむスポーツではスタンスが違うのと似ていると思います。
競技車両を作るにあたって考えることは、いかに速く走るかです
もっというと、いかに成績を出すか
更に言うと、費用対効果の問題になります
車両があって、10万円あったら、どこにどれだけお金を使ったら(サーキットのタイムアタックなら)タイムが縮まるのか・・・と考えるわけです。
タイヤを替えたら1秒当たりいくら、サスペンションのセッティングをしたら1秒当たりいくら・・・という具合です。
逆にチューニングカー的考え方にはそんなものは必要ありません。
改造する喜びを得られたり、フィーリングが変わったり、なんかいいような気がする・・で十分成功です。
言い方を変えたら、競技車両的考え方においては上記のすべては不必要で、いかにタイムが上がるかに尽きるわけです。
(そうはいっても競技参加を趣味としてやっている私等の場合はそこにチューニングカー的遊び心がなくなることはありませんが)
そういう観点で、クランクプーリーの軽量化のメリットデメリットは?と思ったわけです。
私の考えたのは、トルク低下、そしてクランクシャフトのバランスが崩れることに対するリスクです。
前者は、実際の出力としてのトルクというよりも、低い速度で上り坂になったとき等に回転落ちにつながらないか(回転しやすくなるということは回転が落ちやすくなると同意語ですから)ということ
また言い方を変えたら、軽量化することでどの回転域(速度域)においてどれだけ速くなり遅くなるのか
後者は、まぁ106程度の出力なら考えなくても良いのかもしれませんが、大出力のエンジンなどはフライホイールを軽量化しただけでエンジンがブローする事もあります。
これはクランクシャフトの両端の重量を変える事は、縦方向のバランスを変える事だからです。
ちなみにレーシングエンジンの場合、フライホイールの軽量化という考え方はありません
クランクシャフト全体(プーリーやフライホイールも含む、回転方向&縦方向)でのバランスと必要な慣性に基づいて当初から重量が決まります
もし単純に回転部分を軽量化すればよいのなら、レーシングエンジンにフライホイールは存在しないでしょう。
話を戻しますが、一番出力軸に近い部分で安易に重量バランスを変えるのはちょっとリスクを感じますし、その慣性バランスも出力やトルク特性に合わせて決まっている部分ですので、どれだけ実際のメリットがあるのかが見えないんですね
確かに、プーリーやフライホイールを軽量化すると、(少なくとも空ぶかしにおいては)ピックアップが良くなり回転がすばやく上がります。
しかし実際の走行時はそこから先にクラッチがあり、ミッションがあり、ドライブシャフトがあり、ホイールがありタイヤがあり、そのすべてを一緒に回して慣性が生じているわけです。
それならばタイヤやホイールの重量を気にするほうがはるかに効果的に思います
ただのその慣性も減らせばよいというものではありません
例えば、重いホイールのほうがブレーキロックしにくいです
小刻みに荒れた路面において、むしろバタバタ動きすぎずにスムーズなこともあります
バネ下加重はバネ上加重の○倍に匹敵云々なんて言葉もありますが、実は根拠は希薄です
(余談ですが、電気自動車のホイールインモーターの話を某トップクラスのレーシングエンジニアが話していたとき、バネした荷重が増えるがどうなのかという問いに対して、「そんなの、バネ下加重が重いほうが良いという論拠を作って明示したらいい」といっていました。何が正しいかはよくわかりませんが、どちらにしてもその程度の話のようです)
車重は軽いほうが良い
重量は中心に寄った方が良い
回転部分は軽いほうが良い
すべて正しい面はありますが絶対的ではありません
例えばサーキットでタイムを比べるとします。
多くのドライバーの場合、カーボンボンネットと軽量バッテリーで軽量化した車とノーマルを比べたら、ノーマルの方が早く走れるでしょう。
ノーマルよりも重くするためにスポイラー等つけるともっと早く走れると思います(ダウンフォースよりも実加重のほうが運転を楽にします・・というかFF車で50:50のバランスになったら速くは走れません)
ウエット等では更に顕著になるでしょう。
また、軽量ホイールとノーマル・・若しくは重いホイールを比べても、シチュエーションによっては重いホイールのほうが早く走れるかもしれません
それ以外にも、車高を落としたほうが速く走れるかどうかも状況次第(106の場合は、Fはロールセンターの変化の弊害やバンプトーアウトのバランス、リアはバネレートと車高のバランス、前後車高のバランスまで考えないと本当の意味でメリットのある車高変更はできません
しかし、ルックスを考えるとやっぱりある程度低いほうが格好良いと思うほうが大勢かと。
重いスポイラー、オーバーハングに会えて重量物、主にノーマルボンネット・・・こと競技車両的思考のもとでタイムを考えたらアリな選択です(が、チューニングカー的にはナシですね)
そんな事も考えた結果、私のクランクプーリーはシトロエンAX-GTi用の純正流用をしています
これは鉄のワンピースものですので重量はほぼノーマルのサクソのものと同様ですし、インシュレーターがヘタって分離するトラブルを回避できます
またBMC?レッドポイント?から鉄のクランクプーリーも発売されていたと思いますが、個人的にはアルミよりこちらが安心してお勧めできるかと思います
ただ、軽量化のメリットはあるのだと思います
しかしそれ以外の作用・副作用がどう出るのか出ないのか
実際には考えるほどのデメリットは無いのかもしれません
ただ競技に使うことを前提に考えると、若干でもリスクが上がるなら(そしてそのメリットがそれほど大きくないのなら)全体としてはどうなのかな?と考えたりするわけです
この辺りは考え方や車との取り組み方、使い方、立場にも寄るので一概に何が正しいとは言えないでしょうね
難しい話になってしまいましたが、こんなことを色々考えているとノーマルってすごいなって思うことが多いです
まぁなんていっても開発費が数十倍~数百倍ですから・・・
まぁそんな話でした
何かの話しの種にでもなれば幸いです
Posted at 2010/06/17 01:01:55 | |
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