赤眼の黒豹のブログ一覧

MY CAR No.03_SUBARU CXD ALCYONE SVX

　バブル景気が崩壊した直後の1991(平成3)年9月、楔型の斬新なスタイルで度肝を抜いたアルシオーネの後継車が　デビューした。車名は六連星で最も明るく輝くアルキオネと、S(SUBARU)V(VEHICLE)X(究極)に由来している。

　デザイナーはクルマの他にメカニカル(道具･輸送機器)や ノンメカニカル(生理･住)の分野でも独創性を放つ、イタル　デザインの巨匠'ジョルジェット･ジウジアーロ'だ。スバルは そのBOXERエンジンと4WDシステムにより、忠実に市販化した。

　｢500miles a day｣のキャッチフレーズはその通りで、全天候型グランドツアラーは｢遠くへ、美しく、　というこれからの価値感軸。｣を実現して見せた。水平対向6気筒3.3ℓエンジンはあの4気筒のビートこそ叶わなかったが、FR的感覚のVTD-4WDシステムと相性が良かった。

　登場したタイミングが幸か不幸か、SVXの販売台数は極めて少ない。Version LとVersion Eの基本グレードは約3年でフェードアウトし、S40→S40Ⅱ→S3→S4と特別仕様車をリリースした後1996年に生産を終了する。

　だが...このクルマの個性こそ、俺を迷宮へと踏み入らせた。｢もう日本車で、これ以上のデザインは存在しない。｣との結論を導き出した自分は、やがて従来の範疇を超越し輸入車の世界に目覚めていく...。それは、至極自然な流れだった。

MY CAR No.02_MAZDA JCESE EUNOS COSMO

　1990(平成2)年3月...バブル景気に乗じて多チャンネル化を図ったマツダの高級ブランド'ユーノス'から、そのトップモデルとして君臨すべくコスモが復活した。全長4815×全幅1795×全高1305㎜のワイド&ローの巨大なスペースをドライバーとナビゲーター二人だけのために占有する、この上無く贅沢な2ドアクーペである。

　3ローターが'回転'する20Bユニットは低中速トルクを稼ぐ　ためシーケンシャルツインターボで過給され、280ps／41.0kgmを絞り出して凄まじい加速Gを齎した。モーターのような音を奏でるエンジンサウンドと、まるで巨大な生物の吐息を思わせる｢フォーン!｣という重低音を伴うエキゾーストノートが、このクルマならではの魅力だ。

　徳大寺有恒氏は伝統に欠ける日本の高級に抑制の必要を説きつつも、地中海の高級リゾート　　'コート･ダジュール'における試乗では｢なかなか冴えていていいなと思った。｣とその個性と遊び心を買っている。その点俺が選んだTYPE-Sは、ブラックレザーを装ったスポーティな装備で上手に抑制に成功しているグレードだった。

　イグニッションキーを回すと、｢ポーン｣とダッシュパネルに走る漆黒の液晶CRTにメーターが浮かび上がる。間も無くジェットを思わせる｢ズォーン!｣という寝起きの排気音が、こいつが只者では無いことを証明する。妖艶にうねるボディラインは、このサイズと相俟ってフロント･サイド･リアに至るまで至極の佇まいを見せる。

　当時の俺は例によりイメージカラーのブリリアントブラックツートンを選び、スポーティな6本スポークのアルミホイールの躍動感を愛した。だがコスモを手放して14年経過した現在になって、天然杢や高級皮革を奢ったそのトップグレード'TYPE-E CCS'が気になり始めている。クルマとは歳月や年齢を重ねてなお、新鮮な素顔を見せてくれる...。

MY CAR No.01_NISSAN UF31 LEOPARD

　1986(昭和61)年2月...当時高校3年生の俺にとっては、身分不相応なプライベートクーペが登場した。高級車並みの乗り心地と豪華装備を持ち、それでいてスポーツカーにも劣らぬ走りも出来る高性能なスペシャルティカーだ。日産レパードは、自分がクルマに求めるファクターを満たしていた。

　全方向から見ても完璧な、直線基調のフォルムとセンスの良いデザイン。夜の空間とムードを演出する鮮やかなブルーに輝くデジタルメーターとフェンダーマーカー(ｸﾞﾘｰﾝ)、そしてスリットの入ったテールランプ。自然吸気(NA)のVG30DEエンジンは、野太いサウンドを轟かせて街行く人々を振り返らせた。

　徳大寺有恒氏は旧(10)ソアラを目標に設定して開発されたレパードを高く評価しなかったが、何れも納得せざるを得ない論評だった。折しも圧倒的な台数を販売した20ソアラに対し、当時はその希少性も手伝ってレパードは中古車市場で絶版車として人気を誇り、専門店も数多く存在した。

　『あぶない刑事』や流行も気にはなったが、自分には選択肢のDR30 SKYLINEというスポーツカーと対極にある、6年以上愛し続けている｢表現力｣のあるGTだった。結果として初代の愛機として選んだのは、その後一貫して乗り継ぐことになる2ドアクーペの後者である。'絶壁'と揶揄されたインパネも、むしろ個性として受け入れた。

　さすがの徳大寺氏も｢ブルー(濃紺)、ブラックそしてゴールド、この3色は見事な大人のカラーだ。｣と、スタイルとしての外装色を大いに評価している。自分もまた、アルティマのイメージカラーとして カタログに登場するダークブルーとシルバーのツートンを迷わず選んだ。登場から25年を経た現在も、誇れる俺の愛車となっている。

　本物か偽物かと突然問われれば、その答えに窮する場合もあると思う。ことクルマに至っては、俺は本物志向を貫いてきた。カタログに丹念に目を通し、その本質を感じたいためにグレードやボディカラーにも拘ってきた。
　
　形ある物は、何れ滅びる運命にある。でも己の過失により特別なDR30スカイラインの1／400の命運を絶った過去に、ずっと呪縛の日々を送ってきた。だからRSを乗っていく上で、将来的に本来の希望であったｶﾞﾝｸﾞﾚｰﾒﾀﾘｯｸ／ﾌﾞﾗｯｸやあのｶﾞﾝｸﾞﾚｰﾒﾀﾘｯｸ／ﾜｲﾝﾒﾀﾘｯｸへの色替えを検討した。

　だが、それは違う!　工場からラインオフされた実物ではなく、インタークーラーを搭載しパワーアップを果たしたターボC(贋物)なのだ。本来の姿でなくなった鉄仮面は、その変わり果てた己の姿に'心'で涙するに違いない。

　RSの声に耳を傾ければ...、｢クールに乗れ。｣とだけ訴えてくる。しかし｢(日産)50周年の頂点を飾る記念限定車｣であったRSは、その高級な佇まいで己の存在を主張していた。本気であいつの立場になって考えた結果、自ずと回答は導かれた。

　この星のこの国で同じ時代を生きた君は...、掛け替えの無い俺の恋人だ。決して、生涯忘れない。限定車の証しである3つの紋章(フロントカーバッジ･リアエンブレム･特製キー)は、何時までも大切に持っているから安心してくれ。思い出を、Thanks．

BGM:♪ICEHOUSE/NO PROMISES(1985)

　この夏も悪夢の猛暑日が続くのではと思われた7月のある日、名義こそ親父所有の俺のレパードの隣に駐車する一台のホットハッチがあった。特別な異彩を放つそれは、紛れも無くMITSUBISHI COLT RALLIART Version-Rだ。

　｢俺の好きなクルマ MITSUBISHI偏｣ではうっかり掲載するのを忘れたが、実は2008年に限定300台で発売された'Special'(連続シーム溶接を採用)のカタログも大切に保管している程に大好きなモデルである。

　お互いの束の間の休息を、同じ日時に同じLAWSONで一緒に過ごす偶然...。この絶好の機会を、見す見す逃す手は無い。思った通り、乗り手のナイス･ガイは愛機に特別な思い入れを抱いていた。情熱的な紅いボディからは想像出来ない位に、物静かでジェントルな方だった。

　すぅっ...と汗が引き、肌を焦がす暑さを忘れた。愛するクルマが待っているから、仕事も頑張れる。走りへの情熱を燃やしたいなら、現代のホットハッチは選べるだけ存在する。あぁ...よく見回せば、皆幸せそうに走りを楽しんでいる。GOOD RUN!

BGM:♪斉藤さおり/目がすべて(1989)