
相手チームは4年生を入れなければ10人枠をクリア出来ない1校のみで構成されたクラブチームです。スピードとテクニックがあり負けん気の強い4番(5年の時、ポイントゲッターで悔し泣きしながらコートを走り回っていた)と背の高い5番、ミドルシュートの上手な6番はよく覚えています。10人揃わずに選手権には出場してませんでしたが、今回最後の大会にギリギリの人数で挑み、3位決定戦まで勝ち残ってきたチームです。ウチのチームは6年生こそ4人ですが、毎回試合に出ていた5年生が10人以上いました。メンバーのバランス通り前半2クオーター終了して20点以上の差でリードしていました。
10人ルールをクリアし、ベストメンバーが揃う後半2クオーターが本当の勝負です。接戦に慣れていない我がチームと負けを覚悟してバックコートからプレスをかけてくる相手チーム。体力の消耗も手伝って3クオーターを終了した時点でリードは7点になっていました。
(あんなに点差があったのに)(フリーだったのにシュート外した)(追いつかれるかも)
4クオーターが始まる前の子供たちの顔は自信を無くしつつありました。こうなると追うチームの方が俄然有利です。
最終クオーターの6分はあまり覚えていません。相手チームの得点による歓声、シュートミスによる悲鳴。あまりの盛り上がりに、いつの間にか2階席は決勝を控えたチームを含めた子供たちと保護者で満席になっていました。
相手の勢いにファールで止まるタイマー、フリースローで縮まる得点。途中1点差になった後、キャプテンの個人技で2点返し、3点のリードを保ったまま試合は一進一退で進みました。
残り2分で取ったタイムアウトは休ませる為で、もう何も指示する事はありませんでした。「マイボールになったら時間を使え」息を切らして子供達は「はい!」と答えました。その目は集中していました。今まで見た事のない真剣な眼差しでした。勝たしてやりたい。早く時間が過ぎて欲しい。
3点差はファールを受けながらのシュートで一気に同点となる可能性があります。また10秒あればバックコートからボールを運んでシュートまで持ち込めます。
残り30秒を切った時点で相手ファールによるスローインでキャプテンがボールを持ってコートの外に出ました。パスを通し30秒間ボールキープすれば勝ちです。キャプテンは近くの味方に確実にパスを通さず、相手チームのボールになるか分からない遠くへスローインしました。時間稼ぎです。
がっちりマンツーマンディフェンスをしていた相手チームばかりか、味方も一瞬虚をつかれていました。
誰もいないコートにワンバウンドするボール、追いかける両チームの子供達。
仲間がボールに追いつき、遠いゴールに向き直り、スローインしたキャプテンにパスが通った時、試合終了を告げるブザーが体育館に響き渡りました。
ウワッ!!という大歓声を聞いた後、ベンチで僕は音を失いました。何も聞こえませんでした。
コートの子供達をスローモーションで見ていました。控えめなガッツポーズをしたキャプテン。両腕を高く突き上げた5年生。一番にベンチを飛び出した控えの6年生の目は真っ赤でした。その場でうずくまる相手チームの5人は全員が泣いていました。審判に促され、コート中央で両メンバーが挨拶をした頃に僕は音を取り戻しました。2階席からはずっと拍手が続いていました。「ナイスゲーム!」「おめでとう!」賞賛の声の中、僕は涙が溢れてきました。「早くベンチを空けろ。着替えて決勝戦は見ろよ」キャプテンに指示をすると僕は足早にコートを後にしました。
体育館の出口では保護者が我が子たちを待ち構えていました。涙ぐんでビデオを回している保護者、抱き合っているお母さん。誰が呼んだのか、学校の先生までいました。
ベンチを横切る時、スコアをつけていたお母さんが、泣きながら「勝ったんで!勝ったんで!」「ウチの子がな4回もファールしてな・・」「○○チャンも大活躍で、○○チャン泣いてなぁ~」と声を詰まらせベンチを片付けながら携帯で話していました。電話の相手は「勝つトコが見たい」と僕に言ったキャプテンのお母さんです。その日は、ちょっと風邪気味でインフルエンザだとチームに迷惑がかかるとの配慮で来ていませんでした。その事について思いを巡らせると、またまた涙が出てきました。
あれから7カ月、新チームはあの時の5年生が10人以上います。
みんなもっと上を目標にしています。
また、あの感動を味わいたく僕のブザービートは始まっています。
Posted at 2009/09/26 07:17:20 | |
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