
今から15年ほど前でしょうか・・・
当時仕事はコンビニの深夜勤務でした。
夜の10時か11時から朝9時くらいまでだったかな~
店は周りにはほとんど民家のない、いわゆるロードサイドの立地。
ある朝見たことのない中学生ぐらいの男の子が店に顔色を変えて飛び込んできました。
「助けてください!」
「追われてるんです!」
ちらちら後ろを見ながら私に訴えかけてくる男の子。
どこから来たんや~?
すでに明るかったので時間は6時前後だと思います。
「誰もおらんよ」
「どんな人?」
話を聞くと追ってきているのは人ではなく、宇宙人のようなパラサイトのような非現実的なヤツらしい。
「はあ?」
しかし本人はいたってまじめ。
相変わらず外をチラチラ見ながら、棚に隠れたりトイレに入ろうとしたりしています。
「何しとるんや??」
何を言っても「助けてください」の一点張り。
しばらく放っておいたのですが、見えないところでしゃがんだりもしているので、もしや変人を装った新手の万引きか?と思い始めました。
「誰も来てないやろ」
「もう帰り」
何度言っても言うことを聞かず、そのうちバックヤードに入ろうとしたのでとうとう
「出てけー!!」と外を指差し叫んでしまいました。
するとその男の子「はいー!!」と一瞬ビシッと起立し、外に出て走り出しました。
どこ行くんや?と私も外に出て目で追いましたが、数百メートル先で道がカーブしているので、確認できたのはそこまで。
最後までしっかりしたフォームで走り去っていきました。
なんやったんや、あいつ・・・
いつもの平穏な朝に戻り、早朝の準備をしていると入店のチャイムが鳴りました。
「いらっしゃいませ~」
すると、さっきの男の子がまた戻ってきているではありませんか!
「お願いします、助けてください!」
いやだから誰もおらんやろ・・・
「追われてるんです、お願いします」
今度はレジカウンターに無理やり入ろうとしてきました。
「もう帰ってくれ!」
渋々帰る男の子。
そして、道路に出た瞬間
バン!という音とともに車にはねられました。
すでに朝の通勤時間に差し掛かっていたので、そんなにスピードを出した車ではありませんでしたが口と鼻から血を出してうずくまっています。
しかし、意識もあり起き上がろうとする男の子。
いかんいかん、動かないで横になって・・・と介抱しながら救急車を呼びました。
結局何だったのか?
あとから聞くと男の子は少し複雑な家庭環境で育てられたようでした。
父親は医者を目指して忙しく、育児を放棄。
母親の存在はわかりませんが、そのためその子は父親の弟さんのご家族に育てられたようです。
その父親が独立して店の前に個人医院を建て、そこに泊まった朝の出来事だったみたい。
夢と現実が分からなくなったのか幻覚を見たのか・・・
途中、おもいっきり数百メートル駆け抜けているし、私とのやり取りもしっかりしていたので夢遊病的な感じでもないし。
男の子は夕方や休みの日にはよく店に来ていたらしい。
でも深夜しか知らない私には初めての顔でした。
その後その子には一度も会っていませんがケガのほうは命に別状もなく、無事回復したということです。
事故の直後、母に電話したら前の病院の子かもしれないというので、裏口から父親らしき人に事情を説明。
「今救急車呼びましたが車にはねられたので出血して・・・」
と説明するも、「あ、そうですか・・・ま、ま、わかりました」と冷静というか冷めたリアクションが何とも奇妙でしたね。
正直、変なおっさん・・・という印象。
ちなみに育ての親である弟さんにも後から電話しました。
すると「え―――っ!!」「それで○○は!!??」「わかりました、ありがとうございました」
こっちのが普通のリアクションですね(^▽^;)
おそらく、トータル1時間ぐらいの出来事だと思いますが、一生忘れられない不思議な時間でした。
最後に私の想像ですが、男の子がうちに助けを求めに来た理由は店に「こどもSOSの家」という旗が掲げてあったからのように思われます。
当時、子供を襲ったりいたずらしたりが頻発しており、日本中あちこちにこういう旗やシールが貼られ、近辺のコンビニには全店舗つけてありました。
一度出て行ったとき走っていった先にも小さい商店があり、この旗が出ていました。
しかし早朝なので開いておらず、またうちに戻ってきたようです。
日頃からなにかあったらここに、とチェックしていたのでしょうか。
誰か分かっていたら、もう少し違う対応も出来たんだけど・・・とちょっと後悔もした出来事でした。
あのときの一部始終が録画されたビデオテープはまだ家にありますが、コンビニ用の長時間録画できる特殊なデッキでしか再生できません。
もう見ることはないでしょうね~
あの子もすでに30歳ぐらい。
また会うことがあればあのときの真相が聞いてみたいな~
Enigma 1990年 Sadeness
Posted at 2011/08/21 14:21:37 | |
トラックバック(0) |
日常 | 日記