引き続き、ラテンフェスタな猛者の走りを分析していきます。
Sector 2 までやったので、今回はSector 3以降です。
ですが、その前にSMDさんのT4についてもう少し。
Fのポイントです。
速度データ的には、T4の進入で減速を開始し、一旦加速を開始しますが、再度減速を強いられ、その後さらに加速、という流れです。
これを加減速Gのグラフで見ると、Fのポイントで他の2台はマイナスGから加速Gへと移行しているのに対し、SMDさんは一旦加速G(プラス側)に入った後、再度減速(マイナス側)へと戻っています。
この結果、何が起こるかというと、T4の立ち上がりで他の2台より加速が鈍る、という事になります。
Sector 3
T4立ち上がりから、T5(第二ヘアピン)の進入まで。
上記の結果がSector 3です。ここでもジリ貧さんがTopで7.221秒、kiku106に0.379、SMDさんに0.691秒の差をつけています。
SMDさんは、ジリ貧さんに対し、130mで0.691秒失っています。これは1kmなら5秒近い差となりますから、かなり大きな遅れです。kiku106に対しても1kmで2.4秒の差になります。
T4の1個のミスはこのくらい大きな損失なのです。
YZのようなコーナーをストレートでつないだようなサーキットでは、1つのコーナリングが如何に重要か、を示しています。
このように、立ち上がりの悪さが、T5にむけての加速と最高速度に如実に現れています。
それともう一つ、ジリ貧さんと他の2台の違いはギア比です。テンサンファイナルだと、T5の減速ポイント直前で、2速がレブリミットに当たるんです。kiku106の山の頂点が、ながらかになっているのはコレが原因で、3速に上げてすぐにシフトダウンするロスより、2速でレブるロスの方が少ないとの判断です。SMDさんも2速で走ってましたね。
そして、T5でのジリ貧さんの特徴は、またしても早めの減速開始でコーナーのボトムスピードを高く保ってクリアしている点。Gのポイントを見るとはっきり示されていますね。
kiku106は他の2台に比べ、ボトムが少し遅目です。これは実は意識的にボトムを低めにして、しっかり向きを変えることを狙ってはいるんですが、ここまで落とす必要はないかもしれません。
SMDさんはボトムはジリ貧さんと同じ位なんですが、進入の速度の減速の傾斜が2段階になってますね。減速の後半で減速Gが緩めに変化しているのですが、これは極端に言うとブレーキが余っている状態です。この部分は詰める余地があり、上手く詰められば、ジリ貧さんと同じような地点でボトムを向かえ、スムースに加速に移れるのではないかと思います。
SMDさんの話によると、ラリー的な走りではコーナー進入で車の向きを早めに変える(横に向けるのが早め)だそうで、そのクセがある、との事だったので、この速度変化はそれを示しているのかもしれません。
Hの部分、T5の立ち上がりのラインを見てください。ここは3台が違うラインを取っています。
ジリ貧さんは、コーナーをU字に近いラインで走り
SMDさんは立ち上がりを重視した鋭いラインで走り
kiku106はその中間的なラインで走っています。
T5からT7(最終コーナー)にかけては、(このコースでは)長いストレートなので、T5の立ち上がりはかなり重要になります。
というわけで、その結果を示したのが・・・
Sector 4
T5から、T6(キンク)を経てT7(最終コーナー)まで。
タイム的には、ジリ貧さんが11.101秒で、kiku106を0.181、SMDさんを0.238秒引き離しています。
しかし、ここはそのタイム差とはまた少し違う発見があります。
まず、T5からの加速を見ると、中盤まではSMDさんの速度が高いです。
おそらく、T5の立ち上がり重視のラインが功を奏していると思われます。さらにT6のキンクの処理にも秘密がありそうですが、それは後ほど。
ジリ貧さんと、kiku106は途中までは同じような加速です。
しかしkiku106が2-3速にシフアップした後、ジリ貧さんはそのまま加速。
明らかにその後3速に入れてるはずですが、シフトチェンジによる加速の鈍りがありません!
Iのポイントを見ると、まったくシフトチェンジのロス無しです。一体何してるんでしょう??
シーケンシャルでも入ってるんでしょうか・・・。素晴らしい技術ですね。
しかし、もしジリ貧さんがSMDさんのようなラインでT5を立ち上がると、さらに加速を伸ばす余地がありそうです・・・。
あと気になるのは、ジリ貧さんのT7での速度グラフ。これは普通に見ると突っ込みすぎです。
ってことは普通なら、T7の立ち上がりは悪くなるはず。Sector 5が楽しみですね。
後はSMDさんのタイムがもう一つ伸びなてない理由ですが、おそらくT7進入にあると思います。
T7進入は立ち上がりを相当重視した走りです。その分進入で抑えてるのがセクターだけで見るとタイムに悪影響与える感じですかね。
しかしSMDさんの前半の加速はお見事。それを支えているもう一つの理由は、このT6の処理にありのではないかと思います。HのT6にむけた旋回の開始(というよりSMDさんはT5からT7を大きなRで結んでいる風ですが)が3台中もっとも早い。その分加速モーメンタムを生かしています。
さて、勢いに乗って
Sector 5
T7(最終コーナー)からスタート/フィニッシュライン。
タイムはジリ貧さんがトップ、6.795秒で、SMDさんを0.03秒、kiku106を0.317秒離します。
ここはkiku106の一人負けっぽい展開ですね。
ジリ貧さんはT7で突っ込みすぎに見えましたが、結果は問題なし・・・。
速度グラフで驚くのは、Kの部分。ジリ貧さんのT7立ち上がりでの謎の加速です。
ボトムスピードの地点からの、最初の加速は他の2台より緩やかで、これは!と期待させますが、その後ジャンプするように速度を積み上げ、2台の加速を追い越していってます。
これはかなり謎ですね・・・。
それとSMDさんの立ち上がりの良さにも注目。これはT7のライン取りをかなり立ち上がり重視に、逆に言うと、T7進入でがんばりすぎてない(上述参照)結果です。お見事です。
kiku106は、T7からの立ち上がりの初期の加速が鈍いです。これはT7の処理が上手くいってない、簡単にいうと車の向きが変わるのが遅く、加速に移れいてない状態ですね。
T7のラインを見ると、SMDさんの立ち上がり重視ラインがはっきりわかります。(データの「ズレ」があるので、実際にはここまでは違わないと思いますが)
ボトムスピードのポイントもかなりコーナーの中にあり、そこからの強烈な加速に成功してますね。
kiku106は、コーナー前半は悪くなさそうだし、ボトムスピードの地点も悪くないんですが、コーナー後半でラインが外に膨らんでますね。これはコーナー後半、つまり加速に移りたい時点で、まだ車の旋回が終わってなくて(出口を向いてなくて)、加速できない状態にあることを示します。まぁミスですね。
そして問題はJのジリ貧さんです。こりゃ突っ込みすぎでしょう。速度グラフと同じ結論です。
ここまでボトムスピードのポイントが奥に入っていれば、普通は立ち上がりに悪影響が出ます・・・。
そこで、この理由を調べるため、速度と縦G、さらに横Gの推移を見て見ます。
やはり縦Gでも、Kの地点で急激な加速が出てますね。それ以前の部分では加速Gの増加が他の2台より緩やかですが・・・。
で、横Gを見ると、Kの地点で特異な動きがあります。左右のGの大きな触れがありますね。
そう、これは急激な横Gの変化、つまりリアが流れたことを示しています。
おそらく、意識的か、無意識的かはわかりませんが、
突っ込みすぎた後、リアのスライドを誘発させ、一瞬で車の向きを理想的な方向に変え、その後アクセルとステアでスライドを収束、一気に加速していったと思われます。
その結果、車の向きが変わるのを待つ必要がなく、むしろ早めにアクセルを全開できるようになったと思われます。
いや~、恐ろしい・・・。
もし意図的にやってるなら、超絶テクですね・・・。
ところでこの図を良く見ると、Lの地点で、SMDさんの加速が鈍ってますね。
ということは、SMDさんはさらにこのセクターで改善の余地を持ってることになります。
その理由がこの図です。
Kの地点、すなわちT7の立ち上がりの終わりでの車の向きを見たものですが、
実は、SMDさんの車が一番外側向いてますね。
ということは、アクセル踏み続けると、アウトに行き過ぎるわけです。
上記のLでの加速の鈍りは、これの修正のためと思われます。
逆に言えば、向きさえ変わっていれば、多分このセクターはジリ貧さんより速い、ってことです。
さすがです!
というわけで、これにて、1周終了なんですが、いくつか面白い発見が他にもあるので、簡単にご紹介。
これは、上が速度、下がコーナーでのRの大きさを示したグラフです。
コーナーを走る際、ライン取りによってそのRを大きくしたり小さくしたりできるわけですが、それが一目でわかるものです。グラフが上に行くほどRが大きい(すなわち緩やかに曲がっている)事を示します。
相対的な位置は(タイムの違いによるため)あんまり意味がないのですが、
まずT1のRの大きさと長さが、各車違いますね。
SMDさんはRが大きいというより、Rを長くとっている感じ。
逆に一番Rがゆるいのはkiku106なんですね。
次にT3(キンク)。ここをどのくらいのRで行くかもかなり違います。
SMDさんはここを小さなRとしています。つまりT4(第一ヘアピン)にむけて、向きを大きく変える必要があるライン取りですね。
もう一つのキンクであるT6も違います。
ここはSMDさんが極端にRが大きくなっています。T5-T7の加速の鋭さの理由の一つでしょう。
逆にkiku106はここでRがきつくなっているので、その分加速もメンタム状は損なわけです。
最後に、ジリ貧さんの軽量化の効果について。
このグラフは、データから仮説上のパワー(馬力)を演算したものです。
ここでは、各車の車重をイコールに設定してます。
そうすると、明らかにジリ貧さんの車のパワーが高いですよね。
つまり、車重がイコールでパワーが高く出るという事は、実際にはジリ貧さんの車は車重が軽いので、それは効果としてはパワーを増すことに匹敵する、という話です。
まぁこのグラフはタイム速いと馬力あるように出るんで、アレなんですけどww。
これはSMDさんやMoriさん、t_murさんとも話してたんですが、やっぱり重さの差は大きいですね。
ジリ貧さんの加速が鋭いのは、当然コーナーの処理が上手くてボトムスピード高いからですが、その背後には、軽さもものを言ってます。
軽いので、コーナーのボトムを上げられる(=同じ横Gでより軽い車体を支える)し、
似たような馬力で、軽ければ加速はするどくなる(ハズ)ですから。
さて、今回はここまで。
でもなんやかんやで、後3件くらい分析ネタが溜まってる~(汗)。