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2014年12月30日 イイね!

【小説】時空峠戦記"スズカ"【新連載か?】

【小説】時空峠戦記"スズカ"【新連載か?】突然ですが・・・

今日は仕事がお休みでしたので・・・

小説を書いていました・・・

稚拙なものですが・・・

よろしければお読みください。




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2014年12月24日・深夜

静寂が支配する真っ暗な山道。
うっすらとした月の明かりと、満天の星と、山々の巨大なシルエットだけが存在する世界。
人類を拒むかのような深夜の自然界は、太古の昔からなんら変わらず悠然とそこにあり、その聖域を侵すものを地獄に落とすかような不気味さを放っている。

だが、その静けさを切り裂くように、突然二台のクルマが絡み合うように現れた。

響く排気音、焦げるタイヤとブレーキが放つ匂い。
全く明かりのない道路に、ヘッドライトだけが浮かび上がる。

前を走る赤いマシンは、ランサーエボリューションX・GSR。
最大馬力300PS/6500rpm、最大トルク43.0kg-m/3500rpm、6速ツインクラッチDCTを搭載した、直列四気筒2リッター・ターボエンジンの四輪駆動スポーツセダン、通称ランエボX。

一方、それを追いかける青いマシン、WRX-S4。
最大馬力300PS/5600rpm、最大トルク40.8kgf·m/2,000-4,800rpm、8速マニュアルモードを持つCVTを搭載した、水平対向四気筒2リッターエンジンのターボモデル。ランエボと同じく四輪駆動のセダンタイプである。

二台とも、公道では無謀ともいえる速度で曲がりくねった道を駆け抜けてゆく。
非合法で私的なレースだ。

この道は、かつて好景気時代にリゾート開発の一環として作られた道路だが、不況でその計画が頓挫。途中まで作られた道は捨てられ、狭い林道から突然広がる道は約20kmのワインディングを経て、突然途切れる、なんの役にも立たない、世間から完全に忘れ去られた道。

暗黒峠。

いつか誰かがそう名付けたこの道は、密かに走りを愉しむ一部のスポーツカー愛好家のための秘密のコースとなっていった。

後ろの青いWRXを駆る青年は焦っていた。
「スペックは互角、なのに抜けねぇっ!こっちは最新マシンだってぇのに! 」

無造作に伸びた髪、安いトレーナーとジーンズ、ファッションには全く無頓着な、見るからにクルマバカ一直線の熱血漢。

蒼井レイジ。

高校卒業後、自動車整備工場に就職し、ひたすら働き、服も買わず遊びもせず、ただただ貯めたカネを頭金にローンを組み、やっと手に入れた新車のスポーツカー、それが彼のWRX-S4である。
彼は熱くなっていた。視界には前を行くランエボしか見えていない。

「ふっ、慣らしを終えたばかりの慣れないクルマで、僕に勝てるつもりなのかよ?」
前を行く赤いランエボのドライバーは、レイジとは対照的に冷静で、クルマの挙動を手足のように扱い、軽やかに舞うような弧を描いて突き進んでゆく。

仁科ヒカル。

レイジとは対照的に沈着冷静、容姿端麗、スポーツ万能。大学で物理を学び、クルマの運転も徹底して理論を重視した走りを得意とする。彼にとってはクルマは数ある趣味の一つでしかないが、その運転スキルはプロ並みと称されるほどだ。

真冬の山道は寒く、気温も場所によっては摂氏零度を下回る。もちろん凍結の恐もある危険な状態だ。しかし二台共に履いているタイヤはスタッドレスではなく、乾燥路面用のスポーツタイヤ。この速度で凍結路面に出くわしたら、制御不能に陥る可能性すらある。

だが今のレイジにはそんな事まで考えている余裕はなかった。
「ぶち抜いてやる!ぜったいにぶち抜いてやるからな!」

どうしてもヒカルに勝ちたい。それがレイジの悲願であった。




幼馴染のこの二人は、まったく対照的な学生時代を送った。

何をやっても卒なくこなす仁科ヒカルと、何をやってもダメな蒼井レイジ。
どの学科も卒なくこなす仁科ヒカルと、何をやってもダメな蒼井レイジ。
いかなるスポーツも卒なくこなす仁科ヒカルと、何をやってもダメな蒼井レイジ。
バレンタインはチョコの山・仁科ヒカルと、バレンタインはチョコゼロ・蒼井レイジ。

ただ、乗り物好きだったレイジは、自転車やバイクだけはうまく扱えた。
小学生の時、校庭で自転車ウイリーを成功させ、皆の拍手喝采を浴びたことが唯一の勲章だ。
原付免許を取得した時は、中古の壊れたスクーターを自ら修理して走行可能にし、友人をして『誰にでも何か取り柄があるものだな』と言わしめた。

だがその栄光もつかの間。レイジが原チャリでブイブイとイキがっているところに、中型免許を難なく取得したヒカルが250ccのバイクで軽く抜いていった時、レイジの中で最後の砦が崩れる音がした。
ヒカル父は実業家で、どんなものでも手に入れることができ、学習塾にも通い成績優秀、スポーツもいろんな体育部からヘルプを要請されるほどの万能ぶり。貧乏育ちでダメ人間のレイジからすれば、常に見下されているような気がして、猛烈な対抗意識をもったまま、大人になった。

それが今、やっと互角に戦える環境が整ったのだ。

「ヒカルに勝ってからだ。それから俺の真の人生が始まる」

レイジは一方的に粘着していた。クルマでだけはヒカルに勝ちたい。いや、勝てると信じていた。
性能さえ互角のクルマがあれば、あのランエボに勝てる、と。
WRX-STIではなく、S4を選んだのも、ヒカルのランエボXへの対抗意識だった。
ランエボXはステアリング脇のパドルで素早い変速を行う6速ツインクラッチDCTが搭載されている。レイジはMTのSTIより、パドルシフトのS4のほうが良いと思ったのは、ランエボXのDCTを見たからだ。S4が発表されたとき、パドルシフトで8段変速が可能と知り、
「あいつは6速だがこっちは8速もあるぞ!しかも同じ300馬力だ!」
と、実に単純な発想だった。実際はランエボはDCT、つまり機械化マニュアルミッション、 S4はCVTに段をつけた擬似8速。まったく性質も性能も違うものだ。
だがこの2車種、いろいろな部分で酷似しているのは間違いない。
永遠のライバルと称される2車種である。

納車され、慣らしを終えたレイジはヒカルを暗黒峠に誘った。
決着をつける。
人生、勝つか負けるか。実に単純で負けず嫌いの蒼井レイジ。
それに快く付き合う仁科ヒカルは、実にオトナである。



二人が走る峠は、進むほどに標高を上げて行き、気温も下がってきた。

「いかんな。ここは凍結しているかもしれん」

路面の状態に危険を感じたヒカルは、冷静な判断で少しペースを落とした。

その刹那、青いS4がイン側に頭を突っ込んで道をこじあけた。

「もらったぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

レイジは一瞬にして前に出る。

「あのバカっ!」

ヒカルは思わず叫んだ。

車内の外気温度計は摂氏0度を表示している。

お調子者のレイジがこのまま突っ走れば、凍結地帯で制御不能に陥る可能性が高い。

ヒカルはパッシングで合図する。

「あの野郎、焦ってやがるぜ!」
勘違いするレイジ。

やがて道は大きく回り込み。昼間は日陰となるエリアに入る。

聡明なヒカルはふと気付いた。
数日前に降った雨。この標高では雪だったか?ならば一旦溶けて硬くなった雪が路面を覆っているはず!

「レイジーっ!」

叫ぶヒカル。

しかしその声はレイジに届くはずもない。

「抜いた!抜いたぜっ!!ヒカルに勝った!!!」

ペースダウンしたヒカルを置き去りに、どんどん前を行くS4。

そのテールランプが、深いコーナーに遮られて見えなくなり・・・

次に視界が開けた瞬間・・・・

ヒカルが見たのは・・・

ガードレールを突き破り、深い深い谷底に落ちてゆく・・・・



青いWRX-S4の姿だった。


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「すまない・・・・」
ヒカルはうつむいて、流れる涙を隠した。

峠のふもとにある、廃墟ドライブインの駐車場に、十数台のスポーツカーが並んでいる。
いつも暗黒峠を走っている仲間たちだ。
照明のない山中で、駐車しているクルマのヘッドライトの明かりだけが、ヒカルと彼のマシンを照らし出している。

「僕がもっと・・・しっかりしていれば・・・・」
そういったきりヒカルは黙り込んでしまった。

しばらくの沈黙の後、皆がボソボソと口を開き始めた。

「あの谷に落下したなら、もう生きてはいないだろうな・・・」
「くっそぉ、レイジの野郎、なんで無茶しやがったんだよ!」
「警察、呼んだ方がいいんじゃないか?」
「馬鹿野郎!ここで走ってることが一般に知れたら、もう走れなくなっちまうぜ!」
「そうだな。今はどこの峠もポールやキャッツアイが立ち並んでしまって、もうここしか走れる場所は残ってねぇんだからよ・・・」
「かといって、このままレイジを放置しておいていいのか?」
「じゃどうすりゃいいんだよ!俺らだけであの深い谷底まで歩いて捜索するってのかい?」
「・・・夜が明けりゃ、誰かがみつけるさ」

「それでいいの!?」
いやな空気が蔓延する中、突然、後ろにいた少女が泣きながら叫んだ。

「返してよ!彼を返して!まだ生きているかもしれないじゃないの?!みんな、なんとかしてよ!ヒカル君!彼を返して!」

「鈴香・・・」

鈴香と呼ばれた少女は、堰を切ったように叫び始めた。

「ねぇ、今日は、彼が戻ってきたらドライブに行く予定だったのよ!クリスマスイブなのよ!そうでしょ!? 私は、彼にプレゼントをあげるの。彼はいつもクルマのことばかりで、私のことなんか気にしてもくれない。だから、今日はハッキリ言うつもりだったのよ!ねぇ、いつ戻ってくるの?!彼は、レイジはいつ帰ってくるのよ!?ねぇ、ねぇ!!!ねーえってばぁぁぁぁぁ」

「もうやめろ、鈴香!!」
「警察を呼ぼう。こうなったからには、もうここを走れなくなっても仕方がないぜ。」
「ちくしょう・・・」
男たちは携帯電話で警察に連絡をする相談を始めたが、半狂乱になった鈴香の叫びはエスカレートするばかりだ。

「なんなのよ!?これは何?!レイジはどうしたのよ!ねぇ!返して!返して!返して返して返して!!!」

「鈴香っ!」
ヒカルが鈴香の肩を掴んだ。
涙でボロボロになった顔で睨みつける鈴香に、ヒカルは小さな声で力なく
「帰ってこないよ、あいつは帰ってこない。見たんだ。あの深い谷に落ちてゆくS4を。誰だって助かりはしない・・・・すまない・・・」
とつぶやいた。

少し落ち着いたのか、鈴香は首を横に振りながら
「戻して。時間を戻してください。お願い。ヒカル君、あなた賢いんでしょ?ねぇ、時間を戻すことぐらいできるでしょ?ねぇ・・・ねぇ・・・」
と言った後、そのまま座り込んで動かなくなった。

サイレンの音が近づいてくる。
やがて廃墟のドライブインは喧騒に包まれる。
峠に向かう者、事情聴取を受ける者 ・・・

「見ろ!山火事だ!」
警察官が指差したその先で・・
山に炎が広がってゆくのがハッキリ見えた。
レイジのクルマが炎上し、それが広がっているのだろう。

炎と回転灯の喧騒の中、鈴香は座り込んだまま全く動かなかった。





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研究室のドアを叩く音がした。

「どうぞ」

卓上のディスプレイを見ながら答えたのは、メガネをかけた初老の女性。
やつれてはいるが、髪はきっちり染められ、凛とした佇まいの女性学者。
一方、部屋に入ってきたのは、スーツに身を包んだ白髪の紳士。

「ひさしぶりだね。最後に会ったのは確か・・・2040年代だったか・・
10年・・・いや、11年ぶりかな・・・」

「もうそれくらいになるのね。私、時間の感覚が麻痺しちゃってるみたい。」

彼女は老紳士の顔を少しみた後、再びディスプレイに視線を移した。

紳士は少しずつ彼女に歩み寄り、声をかける。

「どうだね、人工知能に人間の記憶を植え付ける実験のほうは?」
「まぁ順調、ってとこかしら。かなり容量を圧縮するまでこぎつけたわよ」
「さすが日本の至宝、風見教授。たいしたものだ。それでこそ、うちの財団で資金援助させてもらった甲斐があるってものだよ」
「ありがとうございます。これが実現すれば、人の記憶を未来に運ぶことがでるわ」
「そうなるといいねぇ。私ももうこの歳だ。人工知能に記憶を残せたなら、ひ孫に昔話をいつでも語ってやれるよ」

紳士は穏やかな表情のまま続けた。

「あ、今からお願いしておきたいのだが、もし私の記憶が人工知能に入るとしたら、一つだけ消しておいて欲しいものがあるのだがね・・」

風見教授と呼ばれた彼女は、ディスプレイから視線を老紳士に移した。

「暗黒峠・・・・ですね、仁科ヒカル君」
「そうだ、あの日の記憶だけは、持って行くに耐えられないよ、風見鈴香」

しばし沈黙の後、仁科ヒカルは唐突に話題を変えた。

「時空データ転送の実験は進んでいるのかね」

ほんの一瞬、鈴香の表情がこわばったが、すぐに微笑みを取り戻し
「なんの話かしら」

「お互いもうこんな歳だ。そろそろ本音で話そうじゃないか。私は、君が時空データ転送理論を研究し、実験を重ねてきていることは知っているのだよ。人工知能の研究は表向き。一体何を考えているのだね? 」

鈴香はしばらく腕を組んで黙っていたが、諦めた表情で語り出した。

「まいったわね。いや、さすが仁科財団総帥というべきかしら。覗き見されていたんじゃ仕方がないわ」

鈴香はメガネを外し、立ち上がった。

「確かに、時空データ転送の実験は何度も行ったし、成功もしているわ。それがどうだというの?人工知能が永遠の未来へ記憶を運ぶものなら、時空データ転送は過去へ情報を送るもの。一貫していると思わない?」

「モノはいいようだな。しかし、過去へアクセスできる技術など前代未聞。発表すればノーベル賞ものじゃないか。なぜ成功しているのに隠す?」

「まだ未完全だからよ。私、完璧主義者なの」

「どれくらいのデータを、どれほどの時間を遡って送信できるのかね?それによっては、大変危険な技術ともいえるんじゃないか」

「送れるデータの量はたいしたことないわ。遡れる時間の限界は、まだわからない。だって、大昔に送ったところで本当に届いているか確かめる術がないじゃない」

「確かに。しかし過去に干渉することは歴史を変える危険性がある。例えば競馬の勝敗を過去に教えるだけで、億万長者誕生、ってこともありうるからな」

「くらだらないことを言わないでくださる?私はそんなことの為に何十年もかけてこの理論を実験してきたわけじゃないわ!」

鈴香の声が熱を帯びてきた。
彼女の感情的な性格の本質は、いくつになっても変わりはしない。
老仁科は、彼女が自分の術中にはまったと確信し、切り札ともいえる懐かしい名前を告げた。

「レイジか」

その名を聞いた瞬間、鈴香の瞳に思わず涙が溢れてきた。

「あなたが殺したのよ、彼を・・・」

鈴香のストレートな言葉に動じることなく、仁科ヒカルは言葉を続ける。

「時空データ転送を利用して、レイジを救う気か?」

「私はね、彼を助けると決めたの。あの日から」

あの事故の後、鈴香は大学で勉強に必死に取り組んだ。
レイジを忘れるために何かに没頭していなければ、壊れてしまいそうだったからである。
だが、ある時期から彼女は変わった。
大学から大学院へと進み、その後も大学に残り、自らの研究室を持つようになって、ずっと研究に没頭してきた。そして、そのまま結婚もせず、ひたすら時間を研究に費やし、月日が流れていった。

「レイジの性格を覚えているか?時空データ転送で危険を知らせたところで、あいつの行動が変わるとは思えない。確かに私も、ずっとあの事故の責任を感じてはいるが、レイジが死んだのはレイジの性格によるものだ。どうしようもないだろう」

「どうかしら?私は今日、彼を救うのよ。今日が何の日か知ってる?」

「12月24日、クリスマスイブ。そしてレイジの命日だ。だから私はここへ来た。君の助手から逐一報告される実験内容を聞くに、そろそろ今年あたり、何かやらかすだろうと思ったからね」

「お見通しね。内通者がいたのなら、もう何も隠すことはないってことね・・・」

「やめておけ。時空干渉で『今』が変わってしまう可能性は高い。過去に干渉するのはやめろ!」

「ふふふふっ」
鈴香は笑った。
「レイジに時空データ転送で危険を知らせる?そんなことじゃ彼は救えないわ」
「では、どうするというのだ?!」

「 私が行くのよ」

「なんだと?!」
ヒカルは驚いた。まさかデータだけでなく、タイムトラベルまで可能にしていたのか、と。
そのヒカルの表情を見た鈴香は、即座に反応した。

「まさか。人間が過去へ行けるわけないじゃない。私がそんなにすごいと思っているの?」

戸惑いを隠せないヒカル。
だが、鈴香の背後にあるディスプレイに視線を移した時、ヒカルは気付いた。

「まさか・・・人工知能の時空データ転送?!」

「さすがね。でも、私の記憶全てを詰め込んだ人工知能データを転送するのは不可能なの。受ける側もそんな高度なプログラムは実行できないわ。送れるのは、ほんのすこしのデータだけ」

「その程度の技術で何ができる?」

「記憶が無理なら、私に関する基本的なデータと、自動車制御を出来るデータだけを送り込めばいい。幸い、彼のクルマには原始的だけど、ある程度の自動運転が可能な技術と、ステレオカメラが装備されていたわ。あの頃の写真から、通信経由でカーナビのデータがアップデートできる機能があるのもわかってる。だから、まずはナビ経由で彼のクルマに入り込んで、あとは車両本体の電子制御にアクセスできれば・・・なんとかなるかもしれないわ!」

「ばかばかしい!いったいいつまでレイジに固執しているんだ!奴は死んだ。それが答えだ。そんな楽観論で奴が救えると本当に君は思っているのかね?聡明な君らしくもない」

「聡明なんかじゃない。ばかばかしい事に一生を捧げてきたのよ。わかる?あなたにこの気持ちが!」

「もし君が本気なら、万が一で成功する可能性もある。だが危険だ。時間干渉は危険すぎる!何が起こっても、現在にとって良いことは何もない。ここで君の身柄を拘束させてもらう事になるぞ」

「あの頃の私はね、彼のクルマに嫉妬していたの。私が彼のことを好きなのをわかっているくせに、一緒にいてもクルマのことばかり。クルマが憎かった。でも不思議なもので、彼が死んでから、彼が好きだったクルマを好きになることで、彼と一緒にいるような気がしたわ。だから自動車工学も、物理学も、自動車に関することはなんでも学んだ。そのうち思ったの・・・」

鈴香が白衣のポケットから拳銃を取り出し、ヒカルに銃口を向けた。

「私は彼のクルマになりたい。彼のクルマになりたかった、て・・・」

銃口を向けられてもヒカルは動じず、外に控えるボディーガードを研究室内に呼び入れ、冷静な声で指示をする。

「この女を取り押さえろ、すぐにだ!」

パンパン!

乾いた銃の音が研究室に響いた。

鈴香は身をかがめて、ディスプレイのタッチスクリーンに手を触れた。

「私の魔法よ、レイジ君」

その瞬間、研究室は消滅した。

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真っ暗闇の中に、18歳の鈴香が全裸で漂っている。

そして、ふと目をあける。

「ここは・・・・」

暗闇の先に光が見える

「私は・・・・・・スズカ・・・・」

その光が、だんだん近づいてくる。

「あそこが・・・・私の・・・目的地・・・・」


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ヴォオンヴォン!

静けさを切り裂くように、突然二台のクルマが絡み合うよう走り始める。

響く排気音、焦げるタイヤのスキール音。
全く明かりのない道路に、ヘッドライトだけが浮かび上がる。

スタート直後、レイジはカーナビのアップデートが勝手に始まっていることに気付いた。

「このタイミングでアップデートかよ!」

S4のナビには、時空データ転送システムを介して鈴香の送った人工知能がインストールされている最中であった。この時代のナビのCPUと容量で動くように効率的に組まれたプログラムとデータ圧縮の革命的進歩で、原始的なハードウェアで実行可能な最高で最大のプログラムとデータが書き込まれてゆく。

しかし、走りにナビのアップデートは関係無い。
意に介さず、レイジは走り続けた。

「今日こそはヒカルを倒すっ!覚悟しやがれ〜っ!」

レイジが気合を入れてアクセルを床まで踏み抜いた瞬間、突如カーナビの画面が切り替わり、全裸の少女が映った。

「蒼井レイジ君ですねっ!お待たせしましたっ!」

「え、ええ〜〜〜っ?!」

突然呼びかけられて驚くレイジ。

「だ、だれだよ、俺のカーナビにエロ動画入れた奴はっ!?」

少女は間髪入れず続ける

「このままでは、レイジはもうすぐ死にます!死にたくなければ、私の言うことに従ってください!」
「し、死ぬ!? な、なにいってんだコイツ?!」
「とは言っても・・・カーナビじゃ車両内のCAN通信にはアクセスできないわね・・」
「おまえ、いちいち乳揺らすなよっ!こちとら一世一代のバトル中なんだ!気が散るじゃねーかっ!」
「レイジ、何かOBDIIポートに差し込んでいるものはない?」

レイジは運転に集中しようとするが、刺激的なカーナビの画面をつい横目で見てしまい、問いに答えざるを得ない。

「オーびーD?・・あの、故障診断コネクタみたいなやつか?」
「そうですそうです!それです!そこに何か挿していませんか?」
「あー、電波でスマホに車の情報を飛ばすなんとかってやつ、今日つけたんだ!これすごいぜ。水温とかブーストとか表示されるんだ」
「スマホ・・・そうか、OBDIIからBluetooth経由でスマホに接続しているのですね!それなら、こちらから行けます!」

スズカは、スマホとナビを繋いでるBluetoothを経由して、OBDIIポートにアクセスし、車両本体の制御に入り込むことに成功した。

WRX-S4は、アクセルやステアリングに電気制御が使用されている。
かなり自動運転に近い事も可能なシステムではあるが、まだ開発途上の技術のため、ステアリング操作は人の操作を補助する程度にしか動かない。
OBDIIポートから車内通信網に侵入したスズカは、車両の内部をくまなく探り、システムの全容を理解、まるで生まれたばかりの手足動かすかのように、急加速したり制動したり、ステアリングを軽く動かしたりしはじめた。

「お、おい、なんだこれ、勝手に動いてやがる?!」
レイジは気味が悪くなった。
「こ、故障してやがるっ!おいこれ、ヤバいっちゅーの!!!」

続いてスズカは、WRX-S4のアイサイトver.3システムのステレオカメラにアクセスし、その制御を確認していた。

「み、見えます!前が見えます!カラーです!!」
「当たり前だろ!車に乗って前が見えなきゃ死ぬチューの!」
「だから、レイジは死ぬんです!!!早くしないと!」
「いやだぁ〜死にたくねぇ〜!」

前を走るランエボX。
そのコクピットでヒカルは、バックミラーを見ながら不審に思っていた。
「レイジのやつ、大丈夫か?挙動がおかしいぜ・・・」
ランエボはすこし速度を落とし、S4との距離を縮めた。

「お、ヒカルめ、速度を落としやがった!俺のことをナメやがって〜!」
熱くなるレイジに、スズカはカーオーディオのスピーカを通して、のほほんとした調子で話しかける。
「このバトル、どんなルールなんですか?」
「そりゃおめー、あいつを抜けば俺の勝ち、抜けなければ俺の負け、それだけだよ!それだけっ!」
「あ、わかりましたっ!」

スズカには、鈴香の記憶はほとんど移植されていないが、事故に関してだけは克明に記録が入力されていた。

〜この人は凍結でスリップして谷底に落ちて炎上した・・・〜

スズカは、凍結地帯までに決着をつければレイジが助かると判断し、ナビ画面を通して指示をすることにした。

「レイジ、いいですか?私がクルマの加減速を操作します。ステアリングだけはレイジが操作してください!操作するタイミングや方向は、軽く私がステアリングインフォメーションを伝えますから、その方向に切るようにっ!」
「ええっ!?何言ってんのおまえ!?」
「いいからっ!」
とたんに加速を始めるS4。
それに気づくヒカル。
「なんだとぉ?油断させて追い抜く作戦か?」
とっさに加速を始めるランエボX.
「レイジの奴め、させるかっ!」

暗黒峠はリゾート用に作られただけあって、舗装は綺麗で比較的穏やかな高速コーナーが多いが、今は普段は通る者もなく、路面は砂埃や枯葉などが落ちたままで、路面状態は荒れている。それだけに高速域でコーナーに侵入するとテールスライドが起こりやすい。
そんな状況の中、前を走るヒカルのランエボは、スライドを利用してゼロカウンターでコーナーを綺麗にクリアしてゆく。

「ヒカルめ、上手いな・・・」
「私達もやってみましょう!」
スズカはバイワイヤ、つまり電気で制御されたアクセルとブレーキを駆使して、侵入時の姿勢を作り、ステアリングを少し動かして、レイジに切り角を指示する。
「こっちへ少し切って、あ、ここで戻します!」
「こ、こうか?!」
S4は一瞬タコ踊りしそうになるが、見事に持ち直してコーナーを抜け、加速でランエボに迫る。
「今のがカウンターステアです!出口で姿勢を乱さないよう、ドンピシャに合わせましたっ!」
「え、おれが今のやったの?もしかして・・・おれって・・・カッコいい?!」
「はい、かっこいいです!」
「だからー、乳隠せチューの!」

「あいつ、ついてきやがる!あんなに運転上手かったか?!」
ヒカルはレイジがついてくる速度を完全に誤算していた。
軽く付き合って終わり、のつもりが、いつの間にか本気の走りになっている。

動力性能がほぼ互角な両車だけに、追うことはできても抜くのは難しい。
二台のマシンは、絡み合うようにワインデイングをすり抜け、危険地帯へと迫ってゆく。

「おい、こんな状態じゃついていけるけど、抜けはしないぜっ。テメェ なんだか知らないが、俺にコントロールを渡せよ!」
「だめです!レイジが運転したら氷で死んでしまいます!」
「俺は氷なんかで死なねぇ〜!!」

スズカは暗黒峠の地図にアクセスし、戦術を考えていた。
仕掛けるとしたら、やはりコーナリング中しかない。
スズカプログラムは、あらゆる可能性を計算し、最良と思える解を導き出した。

「・・・・・・・わかりましたっ!レイジは死にません!」
「な、なんだよっ!」
「二つ先のコーナーでインを獲ります! 」

あの凍結地帯まで、残るコーナーは三つ。
依然ランエボが前を走り、S4が追いかけている。
二人が走る峠は、進むほどに標高を上げて行き、気温も下がってきた。

「いかんな。この先は凍結しているかもしれん。そろそろ突き放して終わらせるか」
ヒカルは一気にペースを上げた。

目の前に迫る次のコーナーは、切り返しのS字である。

「脱出速度で差をつけて、一気に突き放す。凍結してそうな北側に回りこむ前にジ・エンドとさせていただこう」
ヒカルは自信満々にS字一つ目のコーナへ侵入してゆき、それにS4が続く。

「いまですっ!このままインに突っ込みますから、しっかり体を固定してっ!」
「うぉ、あ、あぶねぇ〜! 」

S4が速度を落とさないまま、コーナーの内側へ張り付くように突っ込んでくる。

想定外の突っ込みに、ヒカルは驚く。

「バカなっ!あの速度で突っ込んで脱出できるはずがない!ぶつかるぜっ!?」

S4が挙動を乱すと予想したヒカルは、速度を落として後ろへ引く。

「内輪だけにギリギリ限界のブレーキをかけますから、途中まではこのままいけますっ!その先、出口ではイン巻きしちゃう可能性があるので、こちらでも頑張ってみますが、レイジもがんばってください!」

「が、がんばるって、何すりゃいいんだよ!?」

S4はS字二個目のコーナーの中盤までは驚くべき速度で曲がっていったが、出口付近でリアが流れ始めた。

「四輪にトラクションをかけます!ステアリングをこっちに切って!!」

内輪のみ制動していびつな姿勢になっていたS4に、スズカは加速体制のトラクションをかけた。

しかし肝心のレイジは、いきなりの出来事になすすべもなく固まっている。

「だめです!スピンしちゃう!!なんとかコースアウトだけは回避しなくちゃ〜!」

スズカはレイジに見切りをつけて、四輪を独立制動し、巧みにクルマを道幅の内側に留め、

そして・・・

止まった。




「おい、大丈夫か?!」
心配したヒカルがレイジのコクピットを覗き込んでいた。
「あ?あ〜〜〜〜〜、ああ・・・」
レイジは一瞬何が何だか解らなかったが、バックミラーにランエボが映っているのを確認すると
「あ〜〜〜〜、俺の勝ちだぜ!抜いたよな?な、な?!」
「ああ、抜いたよ。しかし無茶苦茶だなぁ。一歩間違えれば谷底に転落だよ。巻き込まれるのはごめんだからね。僕の判断で抜かせたんだ」
「このーこのー、負け惜しみいっちゃって!事実は事実!」
そういうとレイジは満面の笑みでガッツポーズをした。
「おっしゃ〜!!!!!」


====================


「じゃぁな」
「また来年な」
廃墟のドライブインから、走り屋たちが去って行く。

「さ、僕も帰るよ」
ヒカルがレイジに挨拶をする。
「隣に彼女が乗ってるんだから、君も帰りは安全運転でな」
「べつに彼女じゃねーよ!」
頰が赤くなったレイジの助手席には、風見鈴香が乗っていた。



帰り道、レイジはボーっとしていた
「レイジくん、どうしたの?勝ったんでしょ?!嬉しくないの?」

鈴香の問いに

「ああ・・・だけどよぉ・・・なんだったんだろう、アレ・・・」

と、一連の出来事を振り返って首をかしげるレイジ。

『次の信号を、右です』

カーナビの音声案内が誘導する。

その声に反応するレイジ。

「あれ、ナビの声が変わってる」

「設定があるんじゃないの?音声の」

「・・・・そうだな、そうかもしんないな、鈴香」

「それよりね、私、今日ね、レイジくんに渡したいものがあるの」

「え?なんかくれんの?食い物?」

そんな様子を、ナビの電脳空間中で浮遊しているスズカは聞いていた。

「がんばれ、わたし・・・」

その言葉を最後に、彼女の機能はスリープモードに入った。



真っ暗な山道から街の明かりが見えて来る道。



冬空にきらめく満天の星を頂き、WRX-S4は征く。



レイジと、二人のスズカの想いを乗せて。






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Posted at 2014/12/30 16:48:53 | トラックバック(0) | 小説 | その他
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