• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

つーやん☆のブログ一覧

2012年01月15日 イイね!

添加剤のお話

藤沢さんのお話です。

自動車産業の発達進歩に合わせアフターマーケットも後を追いかけるように時代と共に様変わりしてきた。新しい ケミカル用品が次々と新発売され自動車用品店に多量に並ぶ時代が訪れるようになった。 当時はボディコートの時代ではなくワックスの時代で、油脂でギラギラと塗装面がギラギラに輝くのが嬉しかっ た。中には使用すると気分が悪くなってくる製品もあった。 当時のオイル添加剤は大きく分けて3種類。
1:無機モリブデン系(黒灰色)
2:粘度指数向上剤系(水飴のようなドロドロしたネバリ系) 3:PTFE、TFE(フッ素樹脂系)
日産大森→ニスモ(出向)やオーテックジャパン(出向)当時は上記添加剤を使用したことも稀にあった。しかし 残念ながら効果は不明。 現在は自動車産業が試練に立たされているが生産台数がうなぎ登りの成長期の頃は、次々と新しいオイル添加剤が 新発売され、またたく間に雑誌の広告から消えて行った。 その中には、一般の人対象の代理店募集方式で「数十本をまとめて購入して販売することで儲けが出るよ」と週刊 誌などに広告展開し、いつの間にか、その製品名は消えていった。 その頃は、その他にも「みみずの養殖」とか「布団の洗濯」とか、雑多な副業で賑わっていた時代。当然ながら、 効果も疑問符が付く製品も多くオイル添加剤のイメージも大幅にダウンした。 そんな時代を乗り越えて現在まで生き残っている製品は弊社のestremoX1&X1FSを含め数種類。
私がestremo製品において心がけるのは、
1:圧倒的性能
2:車好きを感動させる製品
3:結果が出る(体感できる)製品
「自分が一歩も妥協しない事」が、製品づくりの基本でもあり、最も軽んじてはいけない事だと肝に銘じている。 送り出した製品がお客様にご理解頂き、結果として評価される事が最も嬉しいだからだ。 そんなestremo製品、使用するに際には他の製品とは一線を隔す部分がある事を御理解頂きたい。 例えば「アタック製品は使い方が難しい」という方もいらっしゃる。 万人が易しく使用できる事は、プラスな面も当然出てくるが、時としてマイナスな面も生む事にもなる。 万人向けにすることが、折角の高性能製品を「ほどほどの性能」にしてしまいがちにしてしまうことがあるから だ。 あくまで「性能に妥協しない」のがコンセプト。万人向けにする事より高性能を追求するのが藤沢流である。 だから・・・使い方が判らなくなったら1人で悩んで判断せず、「気軽に弊社まで電話してもらえたら」と願って いる。 実際に製品をお使いのお客様とお話が出来る事は、私にとっても嬉しい事だから・・・

※今月発売のCARBOY誌にMVSテスト記事が掲載されます。興味のある方はご覧ください。
Posted at 2012/01/15 14:18:27 | コメント(1) | トラックバック(0) | estremo | クルマ
2012年01月11日 イイね!

藤沢公男の提唱するメンテナンス術~第六章潤滑を掘り下げて考察する~

エンジンを組立時、オイルを入れ忘れて回転させれば短時間で焼きつく。だから、エンジンを組み立てる際はエンジンラッパと呼ぶ「油さし」で、少量のオイルを塗布しながら組み立てる。人によってはテフロンペーストや二硫化モリブデンを塗布する。
note:
私はエンジン組立ての際にX1使用を推奨する。X1を塗布した後にドライヤーで熱してX1成分を表面に浸透させて組むと、次回分解した際に全然表面が違う。また分解した部品にX1を塗っておくと、オイルのみを塗っていた部品は錆びるがX1を塗った部品はサビが出てこない例があった。
この塗布したオイル+添加剤は、エンジンを始動しオイルポンプがオイルを吸って、各部に給油を始めるまでの数分間の潤滑を担当することになる。エンジンを始めてOHすると、最初はドキドキしながらセルモーターを回す。最初はなかなか油圧が上昇しないのであせることだろう。エンジンOH時は、①オイルポンプを分解したら必ずポンプの中に沢山オイルを入れて、ポンプ内部のエア抜きをする。②OH後にセルモーターを回す際も、スパークプラグを全数取り外しておき、油圧計の配管はしないでおく。③油圧計取り付け部よりオイルが噴出するまで(受け皿を用意するかウエスなどで周囲に飛散しないように注意する)セルモーターを回す。こうすると短時間でオイルはエンジン各部に潤滑する。これらのノウハウも先輩から教えていただいたり色々な経験を積み重ねてゆく中で自然と身につけたものだ。もっと高度なノウハウもたくさんあるが、高度なノウハウほど文章で伝えることは難しい。
馴らし運転が終了し、各部にオイルが行き渡った状態でドレーンプラグからオイルを全部抜いたとしても、メインギャラリーを含めて各部に給油されたオイルの全てが抜け落ちる訳ではない。オイル総量に関して理解している人が意外と少ないが「本当の意味でのオイル総量とは、エンジン(メカニズム)を組み立てた後で初回に入れることの出来る総量」である。実はオイル交換時にエレメント交換し、全量で4リットル入ったとしても、本当はシリンダーヘッドの凹み、カムシャフト軸受け、メインギャラリー、メタル部分、オイルポンプ内部、この他(オイルクーラーがある場合はオイルクーラーと配管内)などにオイルは残っている。エンジンの種類・粘度・エンジン温度などで左右されるが、この総量は500cc程度になる。添加剤の添加率で「オイル総量の10%」と表記しても、多くの人は「エレメント交換時で4リットルだから10%添加は400ccでOK」と判断してしまう。だがこの500ccを考慮すれば、本当のオイル総量は4.5リットルだから、10%は450ccとなる。
効果が低いとクレームをつけてくる人のほとんどはオイル総量の意味を深く理解していなくて推奨添加率より大幅に低い添加率で使用したケースがほとんどである。間違いなく効果が得られる製品は「効果が低い」と感じたら50ccほど追加投入してあげると見違えるような効果で驚かされたと報告が寄せられる。この例題がヒントになるように急激に効果が高まる添加率が必ず存在する。
コーヒーブレイク:
深夜番組で興味深いCMがある。飛行中のセスナ機からオイルを抜いてしまっても大丈夫・・・という内容なのだが、実際は、特別なことをしなくてもセスナ機はオイルを抜いても飛行できてしまう。その理由は簡単で、滑走⇒V2⇒上昇までの工程はエンジンに多大な負荷が掛かるが、安定飛行になれば、車に例えればアイドリング+α程度の推力で飛行は可能なのである。
ロスアンゼルスで、これから乗り込もうとするセスナ機をレーシングカーを点検する感覚で自然とチェックするのは長年染み付いた職業柄で無意識の内に目で追って各部を点検する。エンジンはスバルの水平対抗。でもボルトやナットは真っ赤に錆びている。主翼を止めているリベットは数本抜け落ちているではないか。「ゲゲッ!」それを見た瞬間に搭乗するのを辞退しようという考えが一瞬脳裏を横切るがそれを押し殺して狭い機内に乗り込む。やがて離陸を始めるがタコメーターにふと目を移すとイエローゾーンは2500rpm、レッドゾーンは3000rpm付近と極端に低い回転数ではないか。故障が許されない飛行機でトラブルの少ない原因が一瞬で解明でき「なん~だ」と安堵すると共に、それまで私の中で神話化されていた飛行機に対する尊敬するイメージが音を立てて崩れ落ちていった。2300rpmほどで軽々と離陸すると巡航は1200~1500rpmで充分なのである。着陸はアイドリング状態でボロンボロンと左右に揺れながら降りてゆくのである。飛行機に使用されていると聞いただけで飛行機が解からない(私もセスナ機を体験する前までは凄い信頼性と勝手に思い込んでいた)人は「素晴らしく信頼性が高い」と自分勝手に信じ込んでしまう。実は私も同じように考えていたので飛行機のエンジンは信頼性がずば抜けて高いと信じ込んでいて疑うことはなかった。
セスナ機の巡航は約1500rpm、自動車で高速道路を100km巡航するときは約2000rpm前後、船舶は約4000~6000rpm巡航、レーシングカーの直線MAX回転数は10000rpmオーバー、F1のMAXは18000rpm、こう比較してゆくと、どのエンジンが一番過酷な条件であるか言うまでもないだろう。参考までにロスアンゼルスに長年住んでいる日本人に話を聞くとセスナ機にエンジントラブルが発生して路上に降りてくる飛行機事故はけっこう起きていると言っていた。
日産大森時代は、マニュアルトランスミッションをOHしてオプションギヤ比を変更したり、デフェアレンシャルを分解してLSDを組み込んだり、ギヤレシオを変更する作業を頻繁に行っていた。これらはいろいろなサーキットを転戦するレーシングカーでは日常茶飯事の作業である。日産大森ファクトリー発足当初、うっかりミッションオイルを入れない状態(組み立て時のオイル塗布のみ)でTSサニーを走らせてしまったことがあった。

富士スピードウェイ左回り:
TSサニーB110:トップを快走するゼッケン84番の鈴木誠一選手。
この頃のレースは名勝負が繰り広げられ見ごたえがあった。


今から考えると貴重な経験をしたのだが、こんな失敗談は決して表に出せないものだ。既に時効であると勝手に判断し、結果を書いてしまうが、MTは富士4.3km(右回り)で、15周目で車が重くなり異臭。その時点でドライバーは「おかしい」と感じてピットインしてきた。一般道路に置き換えるとレーシングカーの4.3km×15周=64.5kmの最低10倍は伸びると予想できるので600km以上は走行可能ではないかと推定される。全く別の時にデフオイルなしで走行してしまった車両を目撃したことがあるが、この時は1周目の1コーナー付近で焼きついてリタイアしてしまっていた。距離にして500~800メートル。一般道路でも5km持つかどうかであろう。この違いはミッションとデフの構造の違いから出てきた結果であり、オイルが極圧状態でいかに重要な働きをしているかを端的に表している。過酷な条件であるほど、潤滑性能の要求度は高く、故に性能差はミッションよりもデフに大きく表れてくることを示唆している。エンジンはMTとデフの中間くらいの要求度なので、オイルを抜いても巡航を続ければ100~300km程度は走行できる可能性があると予測される。
手前味噌な話・・・・
私のリリースしたオイル添加剤やデフオイルを始めて使用した古いFR車のユーザーから「デフオイルを交換しただけなのにエンジンが滑らか&元気になってしまった?おかしいな?」という話があった。また他のユーザーからも同じように「デフオイル交換だけなのに、なぜかエンジントルクが大きくなったように感じる」と言われたことがある。
プロペラシャフトから伝達されるエンジンパワーは、デフのリングギヤとピニオンギヤにより、90度の角度変換が行われて両輪のドライブシャフトに伝達される。デフを分解した経験がある人なら話が理解しやすいと思われるが、この90度変換をするためにピニオンギヤはサザエの殻のような螺旋形をしている。リングギヤとの接触は強大な摩擦が発生しているので、この接触摩擦によりエンジン出力が大きく失われている。ここにフリクションロス低減に有効な添加剤を使用すれば、フリクションを大幅に軽減出来た結果でエンジンが見違えるように元気になる。ちなみにFFエンジンの場合は、デフのギヤ構造と異なり伝達方法はミッションギヤに近く、90度の角度変換は行われないので、FR車のデフほどのフリクションロスは発生していない。

6-1:潤滑とは見えない所で連続して発生する物理的化学作用
添加剤やオイルが実態とかけ離れて議論されるのは、エンジンにしてもミッションにしてもデフにしても、使用している箇所は全て内部機構であり、直接も目視することが出来ない部分に作用しているからである。余程の研究機関で可動を目視出来るカットモデルでもあれば話は別だが(実際にあるかは不明。)現実には想像するしか術がない。しかし、どんな世界でも長年その道を探求している人は、自然と技術を蓄積してゆく。中華料理の技を見ていると調味料を大きなスプーンで適当にすくって投げ込んでいる。もしハカリで精密に測定すれば、何回やっても同じ量を入れていることだろう。また客の好みに合わせ、微調整していることだってあると思う。これが匠の技であり長年の経験で身についた技術である。素人はあくまで目に見える表面的な部分で判断しがちである。しかしテレビで公開されるのは画面で見えている部分であり、画面で見えてこない部分に長年のノウハウが隠されている。「おいしさの秘密を教えてください」と頼んだら「食べておいしければいいじゃないの」と普通は答えが返ってくると思う。また極意の部分(いわゆる秘伝の部分)は弟子となり長年下働きしたとしても簡単に教えてくれるとは限らない。それをいきなり「教えて下さい」と言うのもある意味失礼な話である。

オイルメーカーとて話は同じであり、色々な試験機を用いて評価試験を積み重ねて製品を開発しているが、これはあくまで机上(試験機)での話である。実際にオイルが使用される環境は試験機のように単純ではなく多岐に亘る。エンジンはオイルポンプでオイルパンのオイルをくみ上げ、複雑なオイル通路を通過して潤滑部分に運ばれる。カムシャフトはシリンダーヘッド上部に取り付けられていて小さな通路からオイルは潤滑を行っている。エンジンの種類によって通路の穴径も異なればオイルパン形状も異なる。またブローバイガスというやっかいな物も潤滑の妨げをするし、最高回転数9000rpmなどの高回転域だって存在する。材質や精度やクリアランスもまちまちであり、オイルの気泡発生率や油温の分布、クランクシャフトを含めた金属の膨張や曲がりや応力や圧力変化など、様々な要因を試験機で再現することなど不可能に近い。従って最後は実車での確認試験を行い、貪欲にDATAを集める訳である。そしてその結果を元に、より良い製品を開発する訳である。そこには経験・試験・DATAの積み重ねが必ず存在し、時には新しい発想や、異なった業種のテクノロジーでさえ存在するだろう。そこには「プロジェクトX」のような勇気や決断でさえ存在するのである。逆に言えば優秀な試験機の結果だけでも優れた製品は生まれるが、それを逸脱するような最高の製品作りは出来ないとも言える。
ちなみに一般的なオイルメーカーの試験方法の例を下記に掲載する。(メーカーによって試験方法は異なる)

A:圧力試験機(油膜保持性能)
試験機により試験方式は異なるが耐荷重、磨耗、磨耗係数を測定。場合により耐荷重と磨耗のみを測定。

A-1:チムケン試験機
回転体を試験片に押し付けて磨耗損傷具合を測定する。私は他でも解説しているように試験方法を改良して試験片に熱伝対を埋め込んで試験片の温度変化を自動測定することにより温度変化(摩擦係数の変化)を自動測定できるように改良した。その試験結果で驚かされた新発見はX1だけは荷重を2倍にすると瞬時に反応して温度上昇が停止しゆるやかになる特殊反応を示すことであった。

A-2:四球試験機・・・名前が示すように複数の鋼球を押し付けて測定する。試験機は更に分かれる。
A-2-1-管田式
A-2-2-JIS式
A-2-3-シェル式
A-3:SAE試験機・・・二つの回転体で測定する。
A-4:アルメン試験機・・・中央の回転体を両側から湾曲した形状の物で押し付けて測定する。 
A-5:ファレックス試験機・・・中央の回転体を両側からV形形状の物で押し付けて測定する。

B:粘度測定テスト
オイル劣化具合を見るために100℃と40℃の動粘度を測定する。細いガラス管の中にテスト用オイルを入れて、これを100℃になるまで加熱し、一定の量のオイルがどのくらいの時間を要して流れ落ちたかということから粘度を測定する。

C:酸化安定度テスト
オイルを高温(165.5℃)に保ち、触媒として銅と鉄を挿入。96時間の長時間に渡って攪拌を続けてオイルと空気とを強制的に混合して酸化を促進させ粘度や劣化具合を分析テストする。

D:パーネルコーキングテスト
オイルが高温に晒される部分の炭化スラッジ発生をこのテストによって確認する。アルミ板を高温(280~320℃)に熱しておき、このアルミ板に15秒間オイルを飛散させて45秒間停止。このサイクルを長時間(試験目的により時間を変えて)長期間に渡って行う。当然ながら低温時よりは高温時に変化が現れる。実車でもエンジンOHを行った際に目にすることが多いのがピストントップリング付近とピストン側面(ピストンピン周辺)に付着したスラッジ。

E:中和価テスト
新品オイルにはブローバイガスを中和する目的でアルカリ成分が添加されているのでオイルが劣化するとアルカリ成分が減少することになる。従ってオイル劣化具合を知るためには、どれだけアルカリ成分が減少したかをアルカリ成分を添加する量によって知ることが出来る。

F:ホットチューブテスト
高温耐熱性及び洗浄性を確認するためのテスト法。ガラス管の中に1Hに0,3ccという極少量のオイルを空気圧で押し上げる。これを300℃という高温で時間を掛けて(1Hに10cm)流すことによりガラス管内部に付着するスラッジ量をテストする。当然ながら性能の悪いオイル(清浄分散作用の低い)はスラッジ付着量は多くなる。

J:フレックステスト
動弁系(カムシャフト対ロッカーアーム)に対するオイル潤滑性能を測定するテスト法でアメリカのフレックス社が考案したことから、この名前で呼ばれる。実際のエンジンの動弁系部品に掛かる圧力(20~40kg/m㎡)の3~4倍(90kg/m㎡)でテストして磨耗損傷具合を見る。

H:ベンチテスト
オイル性能の確認のために実際のエンジンを台上で長時間にわたり運転して各種DATAを測定し確認する。規定の時間をテストした後で、オイル劣化具合を再び測定し評価する。

これらの試験法はほんの一部であるが、最終的に使用されるのは実車でありベンチテストとは大きく異なってくる。つまり、頻繁にストップ&ゴーが繰り返される。ベンチテストは一定の回転数での燃料消費率や馬力&トルクを測定することに向いている。また水温や油温は大きなタンクで(余裕がある)自動的に温度管理できるので、実車の決められた冷却容量とは異なってくる。また、レース車両で要求される性能と一般市街地で要求される性能は大きく異なってくる。一番大きな違いはレースは短時間で評価できるのに比べ、一般車は長期間のオイルライフサイクルを見ていかなくてはいけない。それも他の項目で解説しているように千差万別なので正当な評価はとても難しい。

大企業には全てが存在し、中小企業には存在しないものが沢山ある。ゆえに、中小企業に製品開発など出来ないと思っている方も多いだろう。だが製品開発に必要な重要要素の中には、KKD(勘・経験・度胸)だって必要なことを忘れてはならない。前出の通り、私は小さな町工場から大手自動車メーカーまで幅広い職歴があるが、それぞれを分担して研究開発・実験を行う部分においては大企業には目を見張る部分がたくさん見受けられる。またコストマネージメントも徹底しており、無理・無駄・ムラといったものが発生しない環境作りは流石と思わせてくれる。だが、そこまで徹底した管理は職人ではなく作業工の受け持ちであり匠の技のコツや勘などアナログ的な部分はできるだけ排除したい。だから勘や経験はすべてDATAとして形を変える。だが全てが変換出来るかといえばそれはNOである。また経営者独断での度胸も発揮されることはない。私が30数年前に3バルブ、可変作動角カムシャフト、可変バルブタイミングの構想を抱いていても、どうすることも出来なかったのが現実である。これがもし小さな工場であれば、社長が決断した瞬間から新製品の開発のスタートが始まる。また、製品用途に関しても、客先ニーズが多くなければ開発出来ない大手に対し、「優秀なものなのだから、完成してからニーズなんて考えればよい」という性能優先思考で製品の開発が可能なのである。

オイルとまるで違った業界ではあるが、判りやすく比較する意味で、料理店にすり替えて話をしてみたい。例えて言うなら、高級割烹料理店とファミリーレストラン。比較にならないことは誰の目にも明らかであり、互いにモチベーションは違う。だがどちらも同じ空腹を満たす料理店には変わりない。割烹料理店は素材にこだわり、コストよりクォリティーを最優先で考える。それは価格ではなく、味にウェイトを置いた顧客のニーズに合わせてである。だがそれだけに顧客を選び、その店の味を知っているのはごく限られた人だけである。逆にファミリーレストランは、コスト優先によるセントラルキッチン方式がゆえに、鮮度や味には限界がある。だが全国どこでも同じ味というのが売りであり、チェーン・ブランドとして安心感がある。ゆえに多くの人が味を知っている。
ここで互いにやってはいけないこと・・・・それは高級割烹料理店でコスト優先の料理を出してしまったり、ファミリーレストランで、客単価が1万円を超えるような価格になってしまったら、それはどちらも顧客からの信頼を疑われる。だから高級割烹料理店はたとえ無駄と言われようとも、妥協やコスト優先を絶対にやってはいけないし、ファミリーレストランは、5000円以下の客単価でも、十分に(それらの)顧客層の腹が膨れる料理を提供しなければならない。
どちらの店を選ぶかは、顧客次第である。大きい小さいがクォリティに比例しない好例である。

6-2:広告や宣伝やイメージ図は事実を表していない
もし、オイルや添加剤を販売しようとしたら、その宣伝や広告は、タイヤ&ホイールなどと異なり、詳細な作用を説明しないと購入してくれない。消費者が求めるものは「A:性能 B:作用 C:結果」の具体的な解説であり、それが購入動機となる。それらの広告での具体的記載例は要約すると下記の通りである。
A:性能 馬力&トルクの上昇率を記載。 「何馬力アップ」「トルク何%向上」「燃費何%アップ」など
B:作用 模式図を用いて作用を説明。 「摩擦面のザラザラが・・・」「潤滑性能が格段にアップ」など
C:結果 第三者の使用を例に挙げる。 「○○で使用」「○○が正式採用」「○○でなくてはならない」など
だが、これらの宣伝・販売方法には、首を傾げたくなるようなおかしな点が多々存在する。

●「何馬力アップ」
最高発生馬力はそのエンジンの最高回転数から約300~500rpm下がった回転数で発生する。ところが一般道路ではアイドリングから最高回転数の3分の1ほどの範囲(650~3000rpm)までが主に使用されている。もちろん最高馬力は低いより高いほうが性能が良いのは明白であるが、それより「何秒で最高回転数に到達するか」の方がユーザーが実際に効果として体感出来るものなのである。レースと異なり、一般道では「赤信号で停止、青信号で発進」を繰り返す。アクセルを踏んだ瞬間の反応(ピックアップ)、加速の早さ(レスポンス)、回転の伸び(トルクとフリクションの少なさ)の方がドライバーにとって五感に感じるものであり、広告にある「何馬力アップ」を体感しようと思っても、なかなか味わえる場面は訪れない。また最高回転数での数馬力向上を肌で感じ取ること自体が無理だろう。それより、前記した項目に対して効果的な製品の方が、滑らかで軽やかな走行感覚となって伝わってくる。

●「性能向上を謳う各種実演販売」
大きなマイナスドライバーの先端に、水飴のような粘度指数向上剤を一滴塗りつけ「親指と人差し指でつかんで見てください」と差し出す。誰もがつかもうとして力を入れても、滑ってしまいつかむ事が出来ず、ドライバーは落下してしまう。すると「うわー!凄い!」と感激の声をあげることとなる。このテストでの大きな間違い(トリック)は、オイルが常温(気温に準じたその時の温度)であるので本来の高温状態での潤滑など何も表していないことが欠落している。オイルの常温状態はエンジン始動直後の僅かな数分間であり、すぐさま摩擦熱や燃焼温度の影響で上昇してしまうということを考察しなければいけない。摩擦部分の表面温度はフリクション発生(摩擦熱)により短時間で急激な温度上昇に至っている。この摩擦熱を冷却する役目を担っているのがオイルだから、レースや坂道のように過酷な条件で、いかに摩擦部分を保護する働きをするかはたとえ模式図や模型を使用したとしても、表現しきれるものではない。実験と実際との落差もここに隠されていて、エンジンを長時間最高回転数付近で連続走行を続けると、オイル中の気泡含有率が次第に上昇する。この気泡含有率がある一定率を越えると(約15~20%)現在主流となっているオイルタペット(ラッシュアジャスターとか、ハイドロリックアジャスター、HLAと呼ぶ)が正常に作動しなくなり(バルブ誤作動)バルブとピストンが干渉し、エンジン破損に至る。そこでWRCクラスの車両になると破損防止目的でシム式(更にアウターシム式とインナーシム式がある)に改造するがシム式のメリットは重いHLAの軽量化が同時に図れてしまうという利点も生まれてくる。横道にそれたが、要は店頭での実演販売、模型、模式図では本当の性能は伝えきれないということである。またそれが真実か?否か?ですら、判らないのである。だから全てが無意味かと問われればそうではなく一般の人に解りやすく作用を説明する際に解り易い模式図を用いて説明することは避けて通れないアプローチと言える。

●「○○で使用」
まず、○○という名称自体が存在しているかが問題である。国内ならまだ確認のしようがあるが、話が海外になればその存在を確認するのも大変である。次に本当に使用しているか?というのにも疑問が残る。特に軍需産業などの場合、その真偽を確かめたくて問い合わせを行ったとしても、回答は返って来ないだろう。もし使用していたとしても、それが継続的使用なのか?一度のスポット使用なのかすら判らない。原材料の不透明さ、配合率の真偽はメーカーを信じるしか方法はない。だが、ハッキリとした効果がある製品なら疑う余地もなくもっと早く問題が浮き彫りになったのでは?と私は思っている。

オイルのいろいろな作用のうち潤滑という仕事をしているのは、接触しているA面とB面の間での境界面だけ(数ミクロン単位)であり、残りのオイルは循環しながら冷却したり洗浄したり防錆したりしている。このA面とB面の潤滑を境界潤滑と呼び、ベースオイルのみでは保護しきれない。そこで摩擦調整剤(フリクション・モデファイヤー:略してFM剤)が内部添加剤として添加される。だがらベースオイルが良いオイルほど添加剤は少ないというのは変な表現である。確かに大昔の技術によって作られたベースオイルに、ただ固体潤滑剤を入れただけの単純な製品なら当てはまらなくもないが、何十年前の話を持ち出して、現代の製品に当てはめて論じても的を得ていない。
ひとつの成分で複数の働きをする添加成分は沢山見受けられる。例えば硫化テルパンという名前の添加剤成分。この添加剤の目的は酸化防止と腐食防止の二つの働きを助けることである。また非常にポピュラーなものだと、アルコールが挙げられる。(但し添加率は0.1~1.0%と微量)油性剤、防錆剤、消泡剤の三つの作用を高めることが出来る。これらの複合作用をもつ成分を含め、最低でも5~10種類の成分を配合し、外部添加剤としてオイルに添加した際、内部添加剤の添加率が低減しないように配慮して調合される。従って(製品によって大きな差があるが)外部添加剤を添加したら元々のバランスを崩してしまうとか、ひとつだけ性能を向上させても意味がないという話は検討違いな話となる。以前、どこかの国のジャーナリストが書いた添加剤に関する記事が一時話題になったことがある。詳しくは記憶していないが「ホットケーキを作ろうとして卵を入れたとき、たくさん卵を入れてもバランスを崩してしまうだけで添加する意味がない」おおよそこんなたとえ話で添加剤を評していた。普通の人には一見して解りやすいようでデマと同じように広まった。果たして真相はどうなのだろうか?懸命な読者は理解が深まってきたと思われるが、この説明は大きな間違いを犯している。
A:卵の中に卵を入れるという同じ成分としてとらえているが添加剤成分は同じ目的で使用される成分でも種類は豊富であり同一で論じられない。当然、価格と性能はピンキリで性能差も大きな格差がある。
善意的にとらえれば、安いオイルはベースオイルも当然安価な粗悪品が使用されている。後からどんなに高性能な添加剤を添加してもベースのオイルライフが短いので、あまり延長できず、結果的に高い添加剤になってしまう。このことを勘違いして読者に伝えようとしたのかもしれない。また、どんな複合製品であっても、最大量として20%を超えて添加するような使い方をすれば、ベース(オイル)の割合が低くなり過ぎて、多量に添加した意味合いが少なくなってしまう。砂糖を水に溶かしても、ある一定以上は溶けなくなるのと似ているので過剰な添加は慎まなくてはならない。
B:一つの成分が一つの役割だけをするのではなく、複数の役割をする成分もたくさんある。確かに一つだけの成分であれば問題に思えるが、0W-20などの柔粘度オイルが引き起こすメカニカルノイズを軽減させようと粘度増強剤を添加することは、対ノイズ低減には効果的と言える。だが純正オイル(0W-20)はバランスが取れていると錯覚している場合、そのバランスを崩す行為ととらえてしまうであろう。確かに性能が低い製品であれば期待した効果は得られないまま添加剤不要論に発展しても不思議ではない。
C:昔は基油の中に一つの成分(例えばPTEF)を入れた物が多く販売されていたが、今は複数の成分による複合タイプでトータルパフォーマンスを向上させるように高価格帯添加剤は進化してきている。金属表面を改質するタイプの場合、摩擦に反応する成分だからエンジンを始動して走行しないと金属表面に作用しない。これは即効で結果が出るマジックなど(種と仕掛けがある)や即効性だけの成分と異なり走行距離が増すほど効果が発揮されるので長期間に渡って高い性能を傍受できることになる。
D:百聞は一見にしかず。使ってみれば判るのだが・・・・但し、安かろう悪かろうというコンセプトの製品をいくら使っても理解は進まない。この手の安価な製品を沢山試して「やっぱり添加剤は効かない」と言ったところで最高性能を含めた全体像の話とかけ離れた話をしていることに本人は気がついていない。安物買いの銭失いなだけである。だが添加剤を否定する人々の多くはこの例に当てはまるか、その話を聞いて自分の体験と同じだったので間違いないと信じ込んでしまった人である。 その他の誤った認識の例
添加剤で高回転が綺麗に回るのはオイル粘度が柔らかくなるからである。
それなら同様に添加剤ではなくとも、柔らかい粘度のオイルを使用すれば結果は同じであると勘違している。レスポンスがアップするのは、摩擦低減や燃焼改善による波及効果でトルクアップなどが改善されたためである。また高回転が軽やかに回ったりするのもフリクションロスを大幅に低減できた結果で軽やかに回るのである。他にも摩擦熱発生が抑制され、油温が低下する。この場合、実質粘度は下がるどころか反対に上がったことと同じになるので、油圧はむしろ向上&安定する。
もちろん粘度が柔らかければ抵抗は減少するので通常はレスポンスがアップする。しかし、高回転を長時間使い続ければ当然ながら激しく走ることになるので、柔らかいオイルであれば油膜を突き破って接触は増大しフリクションは増大しシリンダーが傷ついたり磨耗したりして軽やかに回らなくなってきてしまう。オイルは柔らかければ良いというのは、スプリントレースのような短時間で勝負する場合のみ有効なことで、長時間レースでは耐久性に影響が出てしまう。また粘度の低い添加剤を50%も添加すれば確かに粘度は低下するが、通常の推奨添加率は10%前後なので粘度は然程変わらない。オイル銘柄によっては固い粘度と柔らかい粘度のオイルを混ぜて希望する粘度を作り出す製品もあるが、添加剤の5%~10%とは比べ物にならない粘度変化となる。
クロスハッチが無くなると焼きついてしまうから、鏡面化される添加剤は使用しない方が良い
ピストンリングを潤滑させるために必要なクロスハッチが無くなり、鏡面化されるのは研磨剤で削りとられたためで、クリアランスが広まってしまうとか、鏡面化によりオイルが保持できないから焼き付きの原因になるというのも誤った認識と言える。昔の潤滑理論をそのまま現代に持ち込んで吹聴しているに過ぎない。
私のリリースしているX1もこの部類の添加剤に入るので、例として解説すると、X1は一種の圧延作用を行う。通常は接触するとお互いが傷つき、切粉が発生したりする。表面に吸着した成分が作用して滑らせることにより、ハンマーで叩かれたのと似たような力が表面に加わり、圧延(引き伸ばされる)されるため、切粉発生は大幅に減少する。この時にオイルの中に数ミクロンの切粉が混在していても、金属表面に箔押しのように一緒に同化させてしまう。この作用が繰り返し行われることにより、金属表面の損傷や磨耗は軽減できるので、長期間使用するほど金属表面が光り輝いてくる。
光り輝くことは高度な潤滑が行われ傷つかないで守られていることの何よりの証であり、むしろ好調子が長期間維持できている(調子は10万km過ぎても向上してゆく)結果が全てを実証している。従来の常識を打破する製品にしばしば見受けられる現象と言える。

次に添加剤の基礎知識を少しだけ紹介する。
添加剤は大きく下記の二つに分類できる。
A:摩擦調整剤
B:油性向上剤

更に分類を細分化すると
A:摩擦調整剤は
A-1:固体潤滑剤
    ●二硫化モリブデン(MoS2)
    ●PTFE(テフロン)正式名「ポリ・テトラ・フルオロ・エチレン」
    ●セラミック
    ●ボロン・ナイトライド
    ●人工ダイヤ
※無機化合物と総称する
A-2:極圧添加剤
    ●硫黄化合物
    ●リン酸化合物
    ●塩素化合物
    ●有機モリブデン
    ●有機チタン
※有機化合物と総称する

B:油性向上剤は
B-1:粘度指数向上剤
    ●オレフインコポリマー
    ●ポリメタクリレート
    ●その他
B-2:潤滑補助剤
    ●オオバオイル
    ●エステル
    ●ジェステル
    ●オレフィン
    ●スクワレン(鮫油)
    ●ラノリン(羊油)

これらは基本中の基本の部分であるが、すでに多岐に亘っている。昔はベースオイルの中に、A-1:固体潤滑剤を1種類のみ添加している単純な物が多かった。(現在でもまだこの形態で販売されているものもあるらしい)またはB-1:粘度指数向上剤(水飴のような粘度の高い物)100%の製品が販売されていた。だが現在販売されている(効果のある)製品は、このような単純なものではなく、成分の種類においても、各々の特性にしても格段に優れている。また塩素系添加剤はコストパフォーマンスが高いので、機械加工の切削油のなかの添加剤として盛んに使用されてきたが、近年の環境問題に配慮した場合、燃焼によりダイオキシンが発生するため、各種の対策が取られている。
A:塩素系添加剤の含有率を少なくする。
B:塩素系添加剤の代変え品を使用する。
C:塩素系でもダイオキシンを発生しないように改良する。

よって塩素系といっても、一昔前のものとは別物であり、もはや名称だけのものとなりつつある。安全面・環境面での配慮がなされ、長期腐食するなどといったことは、ユーザーとは無縁な事となっているのである。
AとBとCの添加剤を混合使用すると、同じ金属表面に対し3つの違う成分が作用することになる。実際は余程相性が悪くない限り、混合によって短期間に焼きついたり、弊害が発生する確率は限りなく低いのだが、各社共に「混合して使用しないで下さい」という公式見解であろう。その理由は
A:実験により全てが確認されていない。
B:従って結果を100%予測できない。
C:自社製品の性能が高いと判断しているので混ぜる必要性がない。
D:万が一の故障の際に、故障原因として他社との因果関係は断ち切りたい。
などの理由が考えられる。あくまで自己責任であるが、廃車直前の車に試してみるのもおもしろいかもしれない。
予測:特別な場合以外は悪くなるケースは考えにくい。ただし余計な出費がかさむ割に効果は比例して期待できないため私は推奨しない。実力のある高性能製品であれば1種類で使用したほうが確かな結果が得られ易い。

エンジンオイルに最初から添加されている内部添加剤には、厳しい規制が実施されている。特定化学物質として少しでも有害性が認められた場合、規制に該当し使用できなくなってしまう。高度な話はつまらない話になるので興味の無い人はパスして構わない。

「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令の一部改正案(2,4,6-トリーtert-プチルフェノール及びN-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミンを第一種特定化学物質として指定すること等)」の概要
1:第一種特定化学物質の推定
 「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)」(以下「化審法」という。)第2条に定める第一種特定化学物質として、間法施行令第1条に次の2物質を追加指定する。
2,4,6-トリーtert-プチルフェノール(TTBP)
N-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミン(PDA-Z2)
(N,N’-ジトリルーp ーフェニレジンアミン(PDA-T2)、NートリルーN’ーキシリルーp-フェニレンジアミン
(PDA-TX)又はN,N’-ジキシリル-p-フェニレンジアミン(PDA.X2)
(第一種特定化学物質に該当するものと判定された根拠)
(1) 以下の理由から、2,4,6-トリーtert-プチルフェノール(以下「TTBP」という。)は、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生体の体内に蓄積されやすいものであり、また、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるため。
① 微生物等による化学物質の分解度試験において、酸素消費量(BOD)により測定した分解度が0%、直接法(HPLC分析)により測定した分解度が5%であるとの結果から、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであると判断された。(詳細は別紙=割愛)
② 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験において、コイを用いた試験により測定した濃縮倍率が最大23,200倍であるとの結果から、生体の体内に蓄積されやすいものであると判断された。
(詳細は別紙=割愛)
③ 動物試験(ラットを用いた2年間経口投与毒性試験において、肝臓の肝細胞肥大や空胞化ならびに巣状壊死がみられること、また、NOEL(最大無作用量)は飼料中濃度で30ppm未満(注)と判断されたこと等から、継続的に摂取される場合
には、人の健康を損なうおそれがあると判断された。
(注)動物当たりの投与量としては約1,5mg/kg/day未満程度

(2) 以下の理由から、N-モノ(又はジ)メチルフェニルーNーモノ(又はジ)メチルフェエルバラファニレンジアミン(以下「PDA-Z2」という。)は、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであり、かつ、生体の体内に蓄積されやすいものであり、また、継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるため。
① 微生物等による化学物質の分解度試験において、酸素消費量(BOD)により測定した分解度が0%、直接法(GC-MS法)により測定した分解度が4%であるとの結果から、自然的作用による化学的変化を生じにくいものであると判断された。(詳細は別紙=割愛)
② 魚介類の体内における化学物質の濃縮度試験において、コイを用いた試験により測定した濃縮倍率が最大15,200倍であるとの結果から、生体の体内に蓄積されやすいものであると判断された。
(詳細は別紙=割愛)
③ ア)動物試験(ラットを用いた2年間経口投与毒性試験において、肝臓、腎臓や副腎の相対重量の増加、摂取量の減少、貧血症等の影響があること、NOEL(最大無作用量は)は飼料中濃度で40ppm(注)と報告されたこと、
(注)動物当たりの投与量としては約1,1mg/kg/day程度
 イ)さらに同試験の飼料中濃度1000ppmにおいて、卵巣への発がん性が懸念 される所見がみられていること、
(3) ウ)催奇形性の動物試験において、胎児への胚致死作用等の影響があること、NOEL(最大無作用量は)は飼料中濃度で4mg/kg/day(注)と報告されたこと等の結果から継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあると判断された。

第一種特定化学物質の推定に伴う規制
(1) 当該化学物質の製造、輸入の規制について
当該2物質の製造の事業を営もうとする者は、化審法第6条に基づき事業所ごとに通産産業大臣の許可を受けなければならないほか、これらを輸入しようとする者についても化審法第11条に基づき通商産業大臣の許可を受けなければならない。
(2) 当該化学物質が使用されている製品の輸入規制について         
TTBPが使用されている製品のうち、酸化防止剤(潤滑作用、燃料油用)及び潤滑油について、化審法第13条に基づく第一種特定化学物質が使用されているものを輸入してはならない製品(以下、「輸入規制品」という。)として指定する。また、同規定に基づき、PDA-Z2が使用されている製品のうち、老化防止剤及びスチレンーブタジエンゴムについて輸入規制製品として指定する。
それぞれの化学物質を用いた製品の概要ならびに化審法第13条の規定に基づく輸入規制製品としての指定の理由等については以下に示すとおりである。

エンジンオイルに添加される内部添加剤は、この法令で解かるように厳しい規制が施行されている。古い規制の一部を抜粋したものであるが、一般の人にとったら始めて目にする名前や試験法・専門用語がぎっしりと並んでいる。規制以外にも研究開発でのクリアすべき課題は多岐に亘るが、難解な話なので詳細はあえて語ることもなかろう。

6-3:雑誌テストで見えてこない真実について考察する
ここで雑誌テストの全般を否定するつもりはない。しかしながら雑誌という性格上、どうしても見えてこない部分が存在する。それはテストが短期間であるがゆえに発生する、テストレポートの不十分さに起因している。だが実際にユーザーは長期間にわたり一台の愛車に使用する訳だから、そこにユーザー車両での最終結果とは大きな隔たりが出てしまうことは否めない。

テストレポートが不十分である原因
A:発売日の締め切りに間に合わせることが優先
短期間ゆえに初期性能のみをテストしている。持続性を含めた全体像には程遠く、結果として即効性さえ優れていれば「良い製品」と判定され紹介される。

B:同じテスト車両が次々と違う製品をテストする(残留成分の影響がある)
金属表面を改質する製品Aのテスト後に、改質効果がない普通のオイルB(但し新油)を入れた場合、改質効果が有効な間は、Bの新油効果と相まって良い結果が出てしまう。実際には、Aの改質効果がなくなった時点で急激な性能低下が起きる。つまり、これではAの新油との比較ではなく、Aの古い油 vs Bの新油+Aの改質効果 ということになるが記事で語られることはない。

C:長期間の継続テストではなく、短期間なテスト結果で評価される
Aと同じ理由、また、紙面で「今後も継続するかテストを続けて結果を発表したい」と書かれていても実際にはライターが変わってしまったり、次の製品のテストをする関係で難しく実際に掲載されるケースは限りなく低い。

D:テスト車=ライターの自家用であるケースが多く、排気量、走行方法などが千差万別
テスト車が自家用車であるがゆえに、各ライター間での差は未知数。同じ人間でも違う車でテストすれば公平な評価が出来ないのに、各々が違う車で評価すれば、その結果が公平であることに勤めても、実際は大きくかけ離れた実験結果となる。読者側もそこまで気がつかないので数値など結果だけで判断することになる。

E:ライターにより技術把握レベル・性能評価レベルに大きな差がある
ライターは書き手のプロであって、評価のプロ・自動車についてのプロではないということ。いい風に捉えればよりユーザーライクなのかも知れないが、それは感覚的なものであり、評価基準さえ知らなくとも記事を書いてしまう例もあるので、注意が必要である。もちろん、メーカーサイドの説明をしっかりと聞いた上で、その通りにテストするのが正しいのだが、「1000kmから(徐々に)効果を発揮しだします」という解釈を1000km走行すれば(完全な)効果を発揮すると勘違いしたり、説明書もロクに見ないで規定量を数十倍超えるような方法でテストしたりとハチャメチャなケースも割と多いのが事実である。こだわった車好きの一般アマチュアの方で高度な評価試験ができる方をたくさん見受ける。苦労して自分で稼いだお金を投資して愛車をいたわる人の中には下手なレポーター以上の人も存在する。

活字(雑誌、新聞、単行本)放送(ラジオ)、映像(テレビ)から得た情報は100%正しい受け取られがちである。それが正しい情報か?間違っている情報か?は実際に使ったことのある製品評価を敢えて読んでみたり、他のソースでの評価を参考にしたりして、総合的に判断することも必要である。「8割予測して、2割検証する」という感じでも十分読み取り能力は高くなり、個人としてのスキルも高まる筈である。

Posted at 2012/01/11 21:50:21 | コメント(2) | トラックバック(0) | estremo | クルマ
2012年01月11日 イイね!

藤沢公男の提唱するメンテナンス術~第五章研究開発と実車結果との落差について~

自動車メーカーの開発はゼロから開発が始まり、次第に完成された姿となって新型車を世に送り出し てくる。その技術力は恐るべき力を秘めている。多額な開発費を掛け、新型車をリリースするのだか ら、ノーマルも捨てたものではない。しかし、全ての面で万人向けに振ったセッティングを採用するこ とになる。また新型車の開発テンポは早く、時間との勝負、コストとの勝負となってくる。新しい技術 の開発は100%満足な性能に到達しなくても、販売開始時期は待ったなしで訪れてしまうのだ。ま た、どんなに実験・試験方法が進歩したりコンピューターによる解析が進歩しても、市場での結果は実 験結果と100%合致するものではなく、その想定の範囲外の事態が必ず発生する。また、経年劣化に 関しては、短時間に過剰な劣化を起こさせて、長期間の劣化を予測する「推定値」でしかないので、実 際に10年、20年経過した場合の経年劣化を考慮した訳ではない。メーカーの責任はあくまで保障期 間であるから、その期間をクリアすることがひとつの基準になっている。だが、気に入った車を10年 以上の長期間に渡って愛用しようとする場合には、メーカー保障を超えた期間の保守が必要である。ま た経年劣化は複雑で、使用される地域、保管場所の状態、メンテナンス等で状態は大きく変わる。例え ば中東に輸出した自動車が数年後に、計器盤(ダッシュボード)に大きな亀裂が入ってしまうトラブル が多発したとする。メーカーはこのエリアでのダッシュボードの耐久性を向上させる等の対策を行い、 次のモデルからはその対策を盛り込んだ製品作りをする。問題は一度把握した問題に対する対策(経 験)も後進に継承するシステムが確立されていないと、熟知した設計者の配置転換や退職により、また 新任者が同じ過ちを繰り返すことになる。

5ー1:実験DATAの持つ意味を理解する
実験とは実験装置を使用し色々な側面から試験材を測定し数値データーを得ることである。試験方法 や試験装置はべらぼうに高価格であるが実験で得られたデーターにより性能を把握し結果を知ることが できる。結果が悪ければ改善を盛り込み、どの程度の向上が得られたかを再度測定し数値を比較検討す る。一般の人は、その装置を一目見ただけで「凄い、確かな商品開発をしている!」と感激するに違い ない。他の項目でも解説しているように実験と実車では大きく異なるケースも出てくることを認識しな ければばらない。私自身でさえも、日産大森、ニスモ、オーテックジャパンではエンジンのベンチテス トを行ってきた。また、エンジン性能試験がレースの勝敗を左右するほど重要な意味を持っていたこと は言うまでもない。でも、実験の数値や対策を一歩誤ると実験結果は生きてこない。例えを上げると チェリーX1-Rが1300cc(TS 仕様)で165馬力を発揮しエンジン音も甲高く、いかにも速そうな排気音を発していたがラップタイム は伸び悩んでいた。(見た目でも車の加速や伸びが感じられなかった)何年後かにエンジンを分解する 機会に恵まれたがポート内径が驚くほど太かったのでその理由を一瞬で突き止められた。反対にポート 内径は細いほど流速が早まり高回転も伸びるというノウハウを知っている技術者がいれば結果は違って解かる、また数値化(デジタル化)した時に意味あるものとなってくるのである。 エンジンベンチテストで製品の性能をチェックすることになるが、どんなに長期間ベンチテストを重 ねても、車両搭載での実際DATAとは異なってしまう。また、市場に出てからの実際の使用では、 様々な人が様々な使い方をするので、私は沢山の実車DATAの積み重ねを重視している。経年劣化や ドライスタートも実車で確認しないと気が済まない。ユーザーレポートも1枚が持つ意味と、100枚 が持つ意味、そして1000枚が持つ意味とではその信頼性、信憑性は大きく違ってくる。そこから得 られたDATAを分析してゆけば、自然と見えない性能が浮き彫りとなってくるというのが藤沢の考え 方である。 エンジン潤滑は、オイルパン形状、バッフルプレート、ストレーナーの位置、オイルポンプの構造や 砥出量、オイル通路や穴の大きさなど、エンジン形式の違いで大きく異なってくる。実際走行ではオイ ルは横G・縦G・前後Gでシャッフルされ、気泡が発生したり片寄ったりする。ブローバイガスが発生 し、混合気中のガソリン希釈も発生する。摩擦熱や爆発燃焼による温度上昇で油温が上昇する。ピスト ンやクランクシャフトも、熱の影響を受けて膨張収縮を繰り返し、設定されたクリアランスも変化す る。エンジン回転数もアイドリングの低回転から最高回転までの間を不規則に上昇下降を繰り返し、し かも長時間にわたり連続して使用される。ホンダS2000の最高回転数は9000rpmと高いの で、オイルは濁流のようにポンプで給油されている。これらの説明で何を伝えたいのかと言えば「こん な複雑な条件を試験機で100%解明することなどできない」と言いたいのである。 誤解を招きやすいので補足する。チムケン圧力試験機で圧力試験を行い、オイル潤滑の良否を判断する 手法は一般的に広く用いられている。中には、このチムケン圧力試験機を「信頼できない試験機」「何 もオイル性能が解からない」と否定する人もいる。この試験機は「圧力耐荷重と磨耗」を比較する目的 の試験機なのだから他の要因が解からなくて当たり前であり、それ以上のものを求めるたものではない と割り切るべきである。オイル開発メーカーで使用されている試験機は更に複雑ではあるが、それでも オイルに関わる全ての性能を解明することはできないので数種類から数十種類の各種試験機を用いて全 体性能を把握しようと模索している。それでも実走行との格差が生まれてしまうので私が試験機より実 車テストにこだわっている理由が理解してもらえれば幸いである。どんな試験機によるどんなテスト も、実際ユーザーが使用しての結果には適わないからだ。何故ならそれを最終的に評価するのは試験機 ではなく、実際にその恩恵や被害を受けるユーザー自身だからである。

5ー2:生産車は全て同一性能ではない
この項目を説明する上で車両による個体差が顕著な、マニュアルミッション(MT)を例としての話 を進める。全く同じ10台の新車(MT)を乗り比べると浮き彫りとなってくるのが、不思議と1台1 台ギヤの入り具合が微妙に違うという事実である。だが実際は、なかなかそのような機会には恵まれな いので、ユーザーは「個体差」ではなく、「車両形式固有の特性」と判断するだろう。だから同一車種 限定のオーナーズクラブなどに入会して、自分の車両より調子の良い・悪いミッションに出会うと「何 故?」と疑問に思い、もし使用しているMTオイルが違えばきっと「オイルによる影響では?」と判断 するだろう。他にもギヤ入りは状況(気温や走行直後、暖まってから、シフトダウン等)で変化してし まう事や、あくまでフィーリングの問題なので明らかな指標がない。ディラーから「こんなもんです よ」とか「新車ですから当たりがつくまで様子を見てください」と言われてしまったら、そのまま乗る こととなる。(だが、現実には渋いミッションは渋いままで不満が募るケースが多い。) ではなぜ、生産技術や加工技術が進歩した現代で、こんな製品のバラツキが発生するのだろうか?MT は長い1本のメインシャフトに1速ギヤから6速ギヤまでが順に組み込まれている。ギヤとギヤの間にもス リーブなど他の部品が組み込まれる。こうして数10個の部品が組み込まれ、それがひとつの結合体と して完成、初めて機能する。つまり1個1個の部品が良品の基準値内であったとしても、それが組み合わ されることにより、誤差が積算され、結果がばらついてしまう。
構成部品     A    B    C     D    E   誤差合計
グループ1 誤差 +0.05mm +0.04mm +0.05mm +0.04mm +0.05mm +0.23mm
グループ2 誤差 +0.10mm +0.10mm -0.08mm -0.02mm -0.05mm +0.05mm
単体部品での良品の限界が±0.10mmの各部品で、5個の構成部品を継ぎ足して、一本の棒を作るとす る。 グループ1には最大+0.05mmの許容誤差のある部品が使われ、誤差の合計は+0.23mmである。 グループ2には最大+0.10mmの許容誤差のある部品が使われ、誤差の合計は+0.05mmである。 誤差だけでとらえると、誤差の大きい部品を使っているグループは1である。 しかし、結果として誤差が少ないのはグループ2である。製品として優れているのはグループ2とな る。 故に、誤差の少ない同士の部品を集めたとしても、それで最終結果が良くなるとは限らない。逆に誤差 の大きい部品でも、最終結果は良くなってしまう場合もある。 だから単体部品の良品限界を±0.05mmまでシビアにしても、グループ1は良品となり、グループ2は不 良品なのである。 反面、完成品の良品基準を±0.10mmとシビアにすると、今度はグループ1は不良品となり、グループ2 は良品である。 これをMTに置き換えると、一つ一つの単体部品の精度を高くすることは可能だが、完成品の良品基準 である「フィーリング」となってしまうため、これを個体差として表現するしかないのが現状である。 更に1速とリバースはクラッチカバー&ディスクとエンジン回転も関係してくるので、これらの影響も反 映される。ここにきて6速ミッションに柔らかい粘度が純正採用されたりホンダ車は、ホンダMTF(公 表されていないが5W-30位のミッション専用オイル・または同等のエンジンオイル)が純正指定され ている。この柔らかい粘度こそ(中味の添加剤も重要であるが)ギヤ入りを良好にするのに貢献してい るのである。その理由はオイル粘度が固いとギヤとシャフトの回転差は減少し一体となって回転しやす くなる。同調(シンクロ)作用はシャフトの回転数に阻害されることなくギヤ回転数をシンクロさせた いわけだから、ギヤとシャフトはできるだけ切り離されてフリーの状態が良好なギヤ入りに理想的な条 件なのである。

ミッションギヤ入りと異なって、これが新車のエンジン性能差となってくると皆目検討が付かなくな る。比較しようとしても走行距離が違っていたり、オイル銘柄が違っていたり、メンテナンスが異なっ ていたり、使用ガソリン銘柄が異なっていたりと完全な同一条件の車種を10台比較することなど不可 能に近い。では生産ラインで1台1台パワーチェックが実施されているのかと問えば、答えは明らかで 基準に合わせて1000台(生産台数により異なる)に1台という割合で抜き打ちでテストを行ってい る。全てのエンジンの馬力を測定している訳ではないのである。そして抜き打ち試験の結果が規定され た範囲内に収まっていればOKということになる。もちろん収まっていなければ原因が究明され、その 対策が盛り込まれると思われるがリコール対象でない限り、生産ラインは簡単にはストップできず、そ の間も製造は続けられる。 結論から先に言ってしまえば少しくらいの性能の違いは発生しており、またメーカーも問題にしてはい ない。当然ながらカタログ数値の公表馬力と、自分の愛車の測定馬力が20馬力違ったとしても、それ が生産不具合や、規格外品と断定することは不可能(理論的には可能であるが・・・)である。もちろ ん生産技術が進歩してゆけば性能誤差(バラツキ)は次第に小さくなってゆくだろう。一昔前には「当 たり車」「外れ車」という言葉が存在したが、現在、その言葉が死語に近くなったのは生産技術の進歩 の結果であるが決してゼロになった訳ではない。 note: 市販車のエンジンをベースにチューニングを施してゆくと、必ず出来の良いエンジンと出来の悪いエン ジンとの明らかな差が浮き彫りとなってくる。チューニングを実施するとポート形状の違いや、バルブ タイミングの微妙な違いなどが大きく影響してくる。しかし、シリンダーヘッドなどは1個の型から鋳 造されるのではなく、複数の型から生産されるので、微妙に違う部分があったりする。改造範囲の狭い ノーマル仕様を前提としたN1レースなどでは重大な要素となってくるが一般市街地を走行する普通の 使用方法であれば問題にするレベルでなく何の支障もきたさない。

5ー3:専門家は過程も重視するがアマは結果のみを重視する
何かの実験を一度でも経験した人なら解かることだが、実験には結果以外にもそのプロセス自体にも ノウハウがたくさん隠されている。例えば海水から塩を作るとすれば、「海岸で海水をすくい持ち帰 り、その海水を煮詰めて塩を作った」と略される。そして、塩がどのくらい作れたか?味はどうなの か?に最大の興味を持つだろう。しかしながら、その製作過程には「煮詰める」という行為が存在し、 実際にやってみないと判らないことが数多く隠されている。最適な鍋の大きさは?火加減は?まきを燃 やすのが良いのか炭火が良いのか?プロパンガスが良いのか?かき回す速度は?など無数のノウハウを 本当は必要としている。多くの人は海水=塩が出来るで、過程のノウハウには注目しない。当然ながら 初めて塩を作った場合と、何度も経験して「味の良い塩」を作った場合ではその過程に違いが出てくる 筈である。 これと同じことがケミカルの開発でも言える。例として私のリリースしたMTオイルの開発エピソード を紹介する。 私がMT専用フルードの開発をした時には、結果的に5年の歳月(過程)を費やした。だが、消費者の 関心は「どんな成分と原理ですか?差し支えなかったら教えて下さい」と問いあわせがくる。成分で効 果(結果)が判るのであれば、5年間の過程など必要としない。10日間もあれば製品は完成してしま うことだろう。だが、現実には、ひとつの試作品のテストだけでも数ヶ月~1年の期間を要した。テス ト車両には使用前から良好な「当り車」ではなく、新車時に問題があった「外れ車」のMTを使用。ガ ンガンと攻めた走りや冷えた状態、温まった状態、これを長期間続けて(春夏秋冬)持続性(劣化具 合)、経年変化、温度変化も一般使用と同じように見てゆく。当然ながら最初から最高の品物など完成 しない。しかし、テスト結果を次回試作品に反映することを繰り返し、7試作目で、ようやく満足でき る性能が確認できた。おもしろいのは最初は凄く入りが良くて「これは最高だね」と思って喜んでいる と、タレが突然襲ってきたり、最初は「これはたいしたことがない」と期待していないと「凄く良くな い替わりに、持続性に優れる」とかオイル性能曲線上で色々な変化が現れる。これが過程であり、その 結果を見きわめて分析し、改良を加え、少しづつ最終的に狙っている目標性能に近づける。そして各試 作品が完成すると、毎回あえて自社工場ではなく、ディラーに持ち込んでオイル交換を実施した。その 理由は、このテスト車の販売先であり、実際に2回MTを不良交換(クレーム処理)を実施しているか らである。故にこのMTのギヤ入りを熟知しているから、販売元からの意見もフィードバックしてもら えると判断したからである。そしてディラーのエンジニアは興味も手伝って、交換後に必ずテスト走行 してくれ、率直な感想を述べてくれた。5回目の試作品あたりから「これは変わりますね」という言葉 が出始め、試作7回目(販売品と同じ)の時には「エッ、ここまでやるのですか?」と素直に驚いてい た。 [estremo ギアオイル 「疾風」 開発エピソード]より抜粋 このように成分=結果という単純なものではない。確かに成分の性質で、ある程度の性能は決まってき てしまうケースも見受けるが、それは昔の単独成分の古い時代の添加剤の話である。化学の進歩が著し く進歩していることはユーザーサイドにおいてでも、販売されているオイルの規格がSG-SH-SJ -SL-SMと短期間の内に切り替わっていることでお解りになると思う。だが、更に専門的なオイル の最新技術が世に出てくることは少ない。成分も複合化が図られ複雑化してきている。 添加剤の場合は更に事情は複雑である。一般的に広く「オイルに後から入れる製品の総称」として添加 剤という呼び名が存在するが、オイル自体にも最初から沢山の添加剤が入っている。これらの添加剤を 総称して「内部添加剤」と呼ぶ。これに比べると前出の後からオイルに混ぜる添加剤を「外部添加剤」 と呼び区別している。しかし、内部添加剤で使用されている成分と外部添加剤として販売されている成 分とが、実は全く同じ成分である場合もあり、単純に区分けしたから解かり易くなるものではない。年 代的に一番古くから産業界で使用されてきた添加剤として、無機モリブデン(二硫化モリブデン)があ る。ある程度の効能が認められ、盛んに使用されてきた背景を持つが、化学が進歩しエンジン性能やオ イル性能が飛躍的に高まった現代においては自動車用としては、いささか時代遅れの性能と言わざるを 得ない。モリブデンと言う言葉は同じでも、無機モリブデンが灰色のペースト状をしているのに対し て、有機モリブデンは黒褐色な液体で、当然ながら性能も無機モリブデンよりは少し高まりペースト状 よりもデメリットは少ない。10数年前より有機モリブデンは様々なケミカルメーカーの外部添加剤と して販売されてきたが、近年では自動車メーカー純正オイルにも内部添加剤として採用されているケー スも見受けるようになってきた。ただしコスト優先なので優秀な成分と比較してしまえば性能的にはは るかに落ちてしまう。またバイクなどの湿式クラッチに有機モリブデン配合のエンジンオイルを使用す ると湿式クラッチが滑ってしまうというトラブルも増加してきている。だから添加剤嫌いの人が盛んに 外部添加剤を否定する理由もここにある。しかし自動車メーカーでも、有効な成分でコストがクリアで き、一定条件が揃いさえすれば採用されるという良き例である。この背景にはエンジン出力の向上や、 エンジン最大回転数が更に高まったことにより、従来のオイルでは対応できないという問題が発生し、 それを補う必要からリリースされたという背景は理解出来る。

note: 有機モリブデン配合に至るまでの過程 一般消費者は有機モリブデン配合だけで全てを判断してしまい、ベースオイルや他に配合されている成 分には関心を示さない。もっとも関心を示してもどうなるものでもなく解説されたとしても一般的に知 らない成分を言われたとしても、それがどれだけ有効かなど簡単には確かめようがないので意味が無 い。私のような技術屋は有機モリブデン配合に至るまでの開発過程の試行錯誤の時間が一番楽しい時間 となる。目標とする結果が得られてしまえば興味は薄れ、新たなる目標を見つけなければ生きてゆく楽 しみが半減してしまう。誤解しないで欲しいのは結果を無視するという意味ではない、結果は結果とし て出てくるものだから否定もしないし尊重しなければいけないが必ずそこには過程が存在し開発では過 程が重要でノウハウが蓄積できるというのが私の経験から悟ったことである。私も消費者となれば立場 は変わって当たり前だが結果(性能)を重視する。最善の性能を追求している私の性能基準には有機モ リブデンの保有性能は魅力を感じさせない。ただ低価格製品には盛んに使用されている成分である。
Posted at 2012/01/11 07:51:33 | コメント(0) | トラックバック(0) | estremo | クルマ
2012年01月11日 イイね!

藤沢公男の提唱するメンテナンス術~第四章プロ生活43年間で学んだこと~

私が貴重な経験を積むことが出来たのは、自分自身が持つ好奇心旺盛な性格と強運に恵まれた結果 思っている。15 歳(現在で考えると高校1年生)で機械、溶接、塗装、板金、自動車整備の基礎を(学科&実技)を学 び、実際の自動車製造ラインで艤装、最終検査、アライメント調整、ライト光軸調整、雨漏りテスト& 修理、車体製造等を一般社員と一緒に作業をすることにより自然と技術を習得することができた。その 後も修理工場、ディラー勤務(横浜日産モーター)も2年間経験した。

①:SR311フェアレディのU20エンジン・タペット調整中の藤沢
②:中央が藤沢。人で隠されて見えないが車両はセドリック・ストックカー
③:22~23歳頃 SR311
④:携行缶でガソリン給油中の藤沢 富士スピードウェイ・ピット前

日産自動車大森分室では、レース車改造開発、レースエンジン改造開発、日産レーシングスクールス タッフ、レースサービス、ラリーサービス、オプション部品開発&製造、試作車製作と多岐に渡って技 術を磨くことになる。 部署柄、ほとんどの業務が社外秘事項に該当していたので、あまり公に出来ないことばかりであるが、 約30年も経過したので少しだけ公開してみよう。パルサーエクサというクサビ型のFF車が存在した ことを知っている人は少ないと思われるが、あのFFエクサのフロントエンジンをミッドシップ(実際 はRRに近い)にするというプロジェクトが持ち上がり、私に改造が依頼された。私は1枚の設計図も引 かないで1ヶ月ほどでミッドシップ(厳密にはRR車に近い)車を完成させた。トランク部を切開し、エ ンジンブラケット製作、シフトリンケージ製作、アクセルリンケージ製作、冷却系配管など初めてのト ライに熱中し製作を楽しんだ。

クサビ形状のデザインが個性的だったパルサーエクサ。FF方式が出始めた頃。

一番苦労したのがエンジン搭載位置の決定である。ガランと開いたスペースに(ボディチェーンブロッ クで持ち上がっている状態)エンジン、ミション、ドライブシャフト、ストラット、タイヤを取り付け たアッセンブリーを押し込む。ボディの中心線と合わせなければいけないが図面上では中心線が引けて も実物車両の中心線など簡単に解らない。エンジンだって中心線など解らない。タイヤだってストラッ ト上部が固定されて始めて向きが解かるわけだから、ブラブラの状態ではアライメントなど測定不可 能。更にエンジン位置の上下も決定しなければならないことになる。(実際はエンジン重量で車両は沈 み込むことになる)この状態でエンジンブラケットを手作りで製作しなければばらないのでとても難し い作業となる。本来は位置出し治具などを製作して位置決めを実施する。また半年から数年間の開発期 間と莫大な開発資金を必要とする作業なのである。今から考えても奇跡的に思えるほど短期間な製作日 数と最小限の費用(ありあわせの部品を最大限利用した)で製作したので、今考えても実に感慨深い。 エンジンをトランク側に移動したため追いやられたガソリンタンクはフロント側に移設した。もちろん 前後重量配分を考慮すれば必然的な結果で収まる位置だ。 この改造に至るまで色々な経験を重ねて技術を蓄積していたことと、他にも、サニー、チェリー、ブ ルーバード、スカイライン、フェアレデイSR311,セドリックストックカー、フェアレディZ43 2、フェアレディ240ZなどのTS車両の改造及びラリー車の改造なども手がけてきたので、技術的 にはそれほど困難ではなかった。完成した車両で富士スピードウェイの初試験走行のハンドルを、私自 らが握り感激しながら軽くフィーリングと不具合をチェック。テスト走行は星野選手が担当した。その 結果などは当然ながら社外秘であるため公開できないのが残念である。その後、車両はテクニカルセン ターに持ち込まれ、操縦安定性テストが行われたと伝え聞いたのは、だいぶ後になってからのことであ る。

当時、2輪で活躍中の若手選手を3名富士スピードウェイでテストを実施する。 星野選手と本橋選手と2名が合格した。

その後フロントにもエンジンを載せたツインエンジンのテストに発展してゆく。最近ホンダレジェンド が4WD(駆動力四輪自動配分)を世に出してきたが、30年前にツインエンジン×4WD車がテスト 車とはいえ存在した訳だ。一番の課題は前後エンジン回転数の同調であった。当時はまだビスカスカッ プリングも開発されていない時代であったので、前後エンジンのアクセル開度の微妙な違い(エンジン 回転数の違い)を吸収できるのはタイヤのスリップとクラッチのスリップ(オートマ車であれば逃げ場 があったがエクサにはAT設定がなく前後共にMT)しかなかったのでテスト走行を重ねるうちに片側 のエンジンが壊れてしまった。今にして思えば当然とも言える事なのだが、可能性を追求した実験も必 要であり、私は熱中して仕事に没頭していた。(ダートトライアルのモンスター田嶋選手がスズキカル タスのツインエンジンでダートトライアルを戦っていた頃のことである)私が日産市販車の開発ポスト に在籍していたとしたら、4輪駆動配分システムの開発をはるか以前に提案していたかもしれない。
サニーTS1300エンジンを開発してゆくと(当時1300ccで165馬力オーバーの出力を得て いた)インテークバルブ&エキゾーストバルブ直径の大型化は必然であった。最後の熟成はバルブ大型 化による重量増を軽減すべく、チタンバルブの採用に至る。後はインテークバルブ直径とエキゾースバ ルブ直径の組み合わせを1mm単位で変更しバランス(マッチング)を煮詰めることに移行してゆく。 当然ながら最終的にINとEXバルブが大きくできる限界点に到達してしまう。技術的に突き詰めてゆ くと「せめてインテークバルブがもう1本余計にあれば(今や常識の3バルブの発想)良いのに」と到 達する。私が20~21歳の頃だったから30年以上も前になる。日産大森の中で「3バルブ、3バル ブ」と私が叫んでも誰も聞く耳は持たなかった。その頃の日産はご存知のようにS20の名機があり、 LZ系の4バルブレース専用エンジンと4バルブが高性能の決め手といった風潮があった。トヨタ2TGの2バルブツインカムは眼中になかった。それから15年以上経過し、世に3バルブが販売開始され るが、日産は他社に遅れをとって一番最後に世に出してくることになる。レースでは極限性能の領域で 勝負するので、4バルブは大きな意味を持つが一般道路の要求では、3バルブがコスト対性能のバラン スに優れていると今でも思っている。また、カムシャフト作動角を色々とテストしてゆけば誰しもが可 変作動角、可変バルブタイミングが出来ないものかと考えるようになる。後はその考えを実践しようと 動き出す、社内システムが構築されているか否かであり企業体質が大きく影響してくる。また当時の周 辺技術はコンピューター制御技術は開発されていないので、可変バルタイを制御する信頼できる技術は 整っていなかった。
ある時、技術員から近藤真彦のマーチシルエットをモーターショーに出品するから「できるだけオー バーな感じで製作しなさい」とたった一言(信じられないかと思うが本当の話。日産自動車では技術職 が設けられ、指示書に詳細な仕様が書かれた正式な指示書に沿って、現場技術者が実際の作業を実施す るのが正規な方法。後日、1行書かれた簡単な指示書を渡される)の依頼が私に舞い込んだ。いつものよ うに1枚のラフスケッチも設計図も引かずに、製作に取り掛かる。真っ先に何をしたのか・・。フェアレ ディZのファイバー製オーバーフェンダーやサニーTSのオーバーフェンダーを、フェンダーに当てて 使用できないかを調査開始。結果的にはフェアレディZのオーバーフェンダーを左右逆さまに使うこと で、何とか骨格が完成することを見つけ出す。ハンドリベットでオーバーフェンダーを取り付けた上か ら、アルミ板を板金して少しづつフェンダーを製作。段差を板金用パテで盛り付け修正した。リヤース ポイラーは他の車で使用していた物を改造。フロントスポイラーは骨格を角チャンネルで作りアルミ板 を整形しアルゴン溶接で仕上げた。レッカー車の積載を考慮して、ワンタッチ留め金(ズースと呼ぶ特 殊金具)で簡単に脱着できるようにした車である。この技術は私独特の物であったが、16歳の時に、日 産車体で塗装実習を勉強した際の教材からヒントを得ている。この教材は御用済の古いダットサント ラックであったが、塗装をするために下地の鉄板まで裸にすると、小さな鉄板が継ぎ接ぎだらけに(溶 接)製作されていたのである。もちろん曲線部分のフェンダーも含め、全てのボディーが手作りであっ た。溶接、板金の基礎技術も学び、転職した整備工場でも板金屋や塗装屋さんの手伝いで更に技術を磨 いていたので、日産大森でもTS車両改造なども最初からこなせることができ更に腕を磨くことができ た。その腕前を見込まれてのマーチシルエットの話である。手先の器用さは持って生まれた私の長所で あったので当時のレーシングカーのゼッケン番号やドライバー氏名の記入は私の担当であった。






このマーチシルエットは「マッチのマーチ」という宣伝文句で、新車販売の広告に一役かうことになり モータショーにも展示され、現在では記念車となって残っている。金色と黒の組み合わせなので、この 車を見たことがある人は多いと思う。今度遭遇した際には仔細に観察してみて欲しい。この車は単に カッコばかりでなく本当に富士スピードウェイをマッチ(近藤真彦)がドライブしている。エンジンも 改造されTS仕様が搭載されている。この車は、ちょうどマッチがレース活動を開始した時期と重な る。その他、オプション部品開発&組み立て、ラリー&レースサービス(一般ユーザーの修理)、オー テックジャパンではルマン24時間耐久レース用Cカー用VEJ30型エンジン耐久テストをメイン担当 することになりベンチテストを繰り返す毎日であった。フルスロットル(アクセル全開)で4800r pmで30分、次は6800rpmで30分と技術員から指示された回転数と時間にのっとってエンジンを 連続して耐久試験する。絶えず排気温度、油圧、水温、ブースト圧力、ベンチ内のエンジンからの異 音、排気漏れ、オイル漏れ、白煙など監視しながら神経を研ぎ澄まして運転するのである。排気温度は 少し油断するとアッという間に1200℃を超える。 また排気管に亀裂が入ったり、排気温度計が壊れたり、ウエストゲートに問題が発生したりするとエン ジン回転をアイドリングまで落として(できる限り停止しない)修理し再び実験を続けるという過酷な 耐久実験であった。 オーテックジャパン退社後、アタックレーシングを設立。当初は長年の経験を後進の育成に生かそうと 日本で初めて「チューニング&メカニック通信教育」を開始し、約3年間で1000名の受講生が受講 した。現在も私の教材から基礎を学び、独立してショップを経営しているお店が鹿児島県、兵庫県、埼 玉県など何軒か存在している。その後はAE86リビルトミッション、ヘッドチューニング、コンピュ ターチューニング、テクニカルビデオ製作と新しい分野に次々と挑戦する。 この時までは潤滑系である添加剤や高性能オイルだけで自動車が大きく変わる世界があることなど夢に も思わず、コンピュターチューニングに没頭していた。会社を自分で作ったことでサラリーマン時代で は考えられない色々な業者の方と知り合って仲良くなるメリットが生まれた。たまたま小さなオイル メーカーの技術者と仲良くなり、自社ブランドの開発に着手する話が持ち上がる。話をすればするほど オイルのプロは車を熟知しているわけではないことを痛感させられた。いきなりオイルの開発は難しい ので、第一段階はオイル添加剤の開発から始めることにする。オイル開発の技術者とはまったく違うス タンスで添加剤をテストすることができるので新しい発見を重ねてゆく。そんな中で今までの長年の経 験が生かせることを次第に実感してゆくことになる。やがて潤滑性能を大幅に向上させてゆくと今まで 考えられなかった別世界が展開することに驚きの声をあげることになり次第に添加剤とオイルなどの高 次元潤滑の世界に引き付けられ没頭してゆくことになる。今までメカニズムに惹きつけられ、真円度、 テーパー度、クリアランス、締め付けトルク(トルク締め付け法から始まって、角度+締め付けトル ク、ボルト延び測定による締め付け法)だとか、オイル通路拡大、バッフルプレート改造、オイルスト レーナーの向きや高さ&吸い込み位置改造、バルブタイミング追及、圧縮比追及、ポート形状追求など を探求してきたつもりだ。コンピュターチューンも一生懸命取り組んできた。でもこの添加剤開発を きっかけに考えてみれば、そこに深く潤滑が関わっていたことを長年にわたって見逃していたことに気 づき呆然と佇んでいる自分がいた。 コンピューターチューンを知らない人から見れば、ECUは得体の知れないブラック・ボックスでしか ないが、そこにはDATAが存在し、DATAの意味さえ判れば、それを変更することによりエンジン を自由自在にコントロールする(燃料マップ&点火タイミングマップ等、一部のDATAに限定されて しまうが)ことができる。だが、オイルに関しては分析結果で成分の95%が解ったとしても、あまり 意味のない世界。残りの5%に性能が隠されている場合もあるし成分で全てが決定されるわけではな い。お手軽ECUチューンとは違い、オリジナルオイルなどそう簡単に作れるものではないのである。 性能さえ問わなければAとBを混合しABを作ることは簡単に出来るが、現実問題それだけで高性能化 は出来ない。粘度のみを30番と50番を半々に混ぜて40番の粘度を作ることが一番簡単な方法と言え る。沢山のDATAもオイル開発になると何の助けにもならないことが多いが、私の場合は様々な経験 で培えられたノウハウが後押ししてくれる。
考えてみれば解かることだが、メカニズムから潤滑を担当するオイルを入れ忘れて走行すれば、短時間 で焼きついて寿命は終ってしまう。そこを気がつかないで(目を向けないで)長年に渡りメカニズムば かりを追求していた自分に腹が立った。全てのメカニズムは材質、構造、クリアランスというハード部 分、それを制御する部分、ハード部分を保護して作用を円滑にするケミカル部分、この三位一体により 成立する化学製品なのである。それ以降は液体の性能の重大さに目覚め、現在は液体チューニングに心 血を注ぎ、各種潤滑関連製品をリリースするようになった。

日産大森ワークスのチーフドライバー:鈴木誠一選手は私のチューニングの先生でもあった。 誠実・温厚・頭脳明晰な人柄で出張中に一緒にマージャンもした仲であった。

日産大森分室に所属していたドライバーは鈴木誠一(富士GCで風戸選手と一緒に事故死・風戸選手が マスコミの注目を集めるが、実績では鈴木誠一選手が多大な業績を残していると私は思っている)、黒 澤元治、都平健二、長谷見昌弘が所属していた。びっくりしたのは当時はフェアレディSP310,ブ ルーバード310、410の頃であるから、オプション部品などほとんどなかった時代なので、自分た ちがノーマルピストンを卓上ボール盤で穴を開け、軽量化を施したりコンロッドを軽量加工していたこ とである。ノーマルのピストンスカートを弓鋸で切断し、ピストンピンの入る肉厚の厚い所を目検討で ルーターで削り軽量化を図る。チューニング専門書で「コンロッドをピカピカに研磨して応力分散を図 る」と書いてあるが、それはオプション部品が無かったこの頃の話で、ノーマルコンロッドを極限まで 細く軽量化の目的で削っていたことが発祥となっている。極限まで細く削れば折れる確率は高まるの で、弱い一点に応力を集中させない目的でピカピカに磨いていたわけである。 その当時は、レーシングカーのエンジンや車両の改造第一ポイントは軽量化競争であった。ボディーか ら必要でない物は全て取り外す。更にホルソーカッターで大きな穴をたくさん開ける。ボンネットは ファイバー製に交換する。ガラスはアクリル板に交換。もちろん厳密な規則(レギュレーション)に 沿って改造を進める。少しでも違反していれば車両検査で落とされ、出走できないという厳格な規則で あった。だからピストンも出来るだけ軽量化を図る。コンロッドもぎりぎり削って軽量化を図る、とい う時代背景の話が、そのまま現在において常識化してしまっているのである。 その数年後からは強度を高めたオプションコンロッドが発売されるので、コンロッドが強度不足で折れ ることなど考えられず、折れる場合はコンロッドメタル焼き付きが主原因で折れることになる。オプ ション・コンロッドはタフトライド加工(高温の曹で、炭素を表面に浸透させ強度アップを図る加工) を施してあるので磨く必要性は無くなり、重量誤差を修正する目的で微調整のみを実施する。表面は固 い炭素層が形成されているので、できるだけ研磨はしたくない。だから先に磨いて重量合わせを実施し た後で、タフトライド加工を実施する順序が理想的。それから数年後にはNCマシン(DATAをイン プットすると自動的に機械加工を連続して行う)が加工現場に採用された結果、H形状の削り出しコン ロッドの登場となり、コンロッド重量誤差はほとんど無くなり、コンロッド研磨などレース界では過去の話となってゆく。
それなのにチューニング専門書の本を見ると必ず書いてあるので、この辺の事情を理解していないと、 コンロッド研磨に憧れを抱いて実施する。ノーマルコンロッドを研磨して、数グラムの重量合わせを実 施しても何の意味も持っていないことに気づく人は少ない。生産ラインではコンロッド重量を自動測定 し、一定の幅に揃えて組み込まれるように、生産システムが確立されている。自動車メーカーの技術者 はコンロッド重量誤差やピストン重量誤差が性能に与える影響など百も承知なのである。クランクシャ フトにしても、あのAE86の4AGエンジンですら10数個のバランス調整穴が開けられ、調整済な のである。そこに1個か2個、浅い調整穴を開けただけで大幅な性能変化が得られるのであれば、当然 ながらメーカーは最初から開けてくるのは明らかと知るべきだ。チューニングも時代と共に絶えず進歩 してきているのに、実戦経験の無い人の知識では古いノウハウが平気で紹介される。F1を観ていると 解かるように毎年毎年、空力ひとつ取り上げても進歩しているのでいつの時代の話か判らないような チューニングは何の役にも立たないと知るべきだ。もっと言ってしまえば、一戦一戦の戦いの中で絶え ず進化してゆく世界なのである。それなのに古い話に戻って技術論を展開しても何の意味も持っていな い。同じような現象が最近ではインターネットの世界で存在している。例えば発売当初は安定度が低 く、問題も多かった製品が、その後の改良で現在では高い性能を発揮しているのに、インターネットで 検索した結果が発売当初の製品に対してのインプレッションだったとしても、見る側はそこまで深く考 えないで「この製品は安定しておらず問題が多い」と判断してしまう。また記事自体は新しくとも、そ れを記載した人の経験が、発売当初のものだけならば、同様なことが起きる。記事を鵜呑みにせず、そ の信憑性を検証することも大切なことである。

その後も、辻本征一郎、鈴木亜久里、片山右京各選手の車両を担当。この他にも寺西隆利、歳森康師、 柳田春人、高橋健二、桑島正美、田村三男、須田すけひろ、萩原光各選手といったプロ選手のメカニッ クも担当していた。ご存知のように優勝して当たり前の腕の持ち主ばかりであるから、二位になっても 「残念!負けてしまった!」と当時は考えていた。私だけでなくドライバーも他のメカニックも同じ気 持ちだったと思われる。 フォーミュラーカーは排気量やレギュレーションが色々と変更された中で、F3だけは不変のまま、2 000ccエンジンを搭載していた。その代わりとして吸気入り口を小さく絞る規則(リストリクター と呼ばれる吸気制限部品)によってイコールコンデション化を狙っていた。その代償としてエンジン改 造はほとんど自由であり、チューナーの腕の見せ所となっていたので私は自分の持てる技術を試す最高 の舞台であると考えていた。そんな時勢、大森がNISMOに変わり、F3を走らせることになり私が エンジン主担当として参画することになる。F3シャシーにFJ20を搭載し参戦。ドライバーは鈴木 亜久里選手であった。ライバルのトヨタは2TGを途中から軽量型の3SGに変更、最強チームはトム スと戸田レーシングであった。VWは最軽量のエンジンでコックスからの参戦。日産FJ20型はエン ジン単体重量が約125kgもあり3SG(約80kg)より約45kg、VW(約75kg)より約 50kgも重かった。この重量差はレースの世界だと厳しいハンデとなる。(現GT500で50kg のウェイトハンデは最大)初期開発は追浜特殊車両部(後にNISMO社長に就任した難波社長が率い る部署で、サファリラリー車を開発する部署)が行っていたが、鈴鹿ラップタイムで4秒遅かった。4 秒差は走る前から結果が明らかに解かってしまう致命的な性能差であった。しかし、それまで培った技 術を駆使し、その後このハンディを跳ね返すことに成功する。
マカオGPにて 出走前のエンジン暖機中の藤沢と、それを見守る鈴木亜久里選手。

シリンダーブロックをサンダーで一日中削り続けて1日1kgづつ軽量化を図った。全てのボルトは出 来るだけ短くカットしワッシャーは使わない。太いボルトは、中をドリルで穴を開け軽量化を施す。少 ない予算の中で後半はチタンボルトも採用し、1g単位の軽量化を施していった。富士の高速100R だと、リアが重いと後部がアウトに流れてしまう。それを解消するためには必然的にリア・スポイラー をライバルより多めに立てることになる。しかし、1ノッチ=5ミリ立てるとパワーの無いF3では、 ストレートでのエンジン回転数は300~500rpmダウンしてしまう。タイムを短縮するための処 置がストレートでのタイムを悪化させてしまう致命的問題を抱えていた。だが、5kgのエンジン軽量 化が効を奏して100Rでアクセルを全開で踏めるようになり、タイムも0.5秒短縮された。成績も 比例するようにアップし、結果はトータル4回の優勝を飾ることができた。(もちろん、これは鈴木亜 久里選手のテクニック、シャシーセッティングを請け負ったベテランメカニックの功績でもある)残り の2戦を残す時点でポイントリーダーとなり、マカオGPに招待される。F1ドライバーへの登竜門と して有名なサーキットだ。市街地という悪条件とヨーロッパ・トップクラスの車両とドライバーが参戦 するマカオGPは、車両とエンジンのポテンシャルが非常に重要であり、歴然たるレベルの差を見せ付 けられた。それを一番に感じたのは予選後の車両重量測定。ロールバーにフックを掛け、クレーンで持 ち上げる。ワイヤーの途中に重量計をはさんで測定する原始的方式である。理想的重量配分は50:5 0なので多くのヨーロッパ参加車両は地面と平行に最初から浮かび上がってゆく。我が鈴木亜久里F3 車は(ある程度予測できていたが・・・)まずフロント側からゆっくりと持ち上がり、重いエンジン側 は一向に地面から離れない。最終的には約45~50度傾斜した所でようやく全体が浮き上がった。我 ながらこれでよく戦っていると妙な感慨が湧き上がってきたことを今でも鮮明に覚えている。ライバル チームやオフィシャルなどのレース関係者からも「よくこんな車でレースを戦っているな」と思わず驚 嘆の吐息が洩れていた。この結果を見て、どんな過酷な状況下においてもそれをクリアしようという熱 意が結果に繋がり、またそれに自分が組することが出来たことにより、私自身の体の中にそれまでは感 じることのできなかった大きな自信が確実に育っていることを強く感じ取ることが出来た。

4ー1:沢山の優秀な仲間から吸収して成長できたこと
人間一人の力でも、その力が100%発揮された際には、驚かされるような働きを発揮する。でも時 と場合によっては反対に、一人では何も出来ない無力さを痛感させられるときもある。特に災害時など であれば殊更である。日産車体では講師は現場の技術職の人たちで入れ替わりで教えてくれた。その 後、転職した整備工場も10人ほどのスタッフがいたが、個性の強いベテラン整備士の技術を盗んで成 長できた。板金屋も東京から流れてきた人で優秀な技術を持っていた。昔の腕の良い板金屋は、ドアの 板金でもパテはほとんど使わない(下手な人は沢山使っていたが)で、試作車の製作と同じで鉄板を整 形して切り貼りしていた。鉄板の凹んだところを叩けば伸びて歪が出て変形してしまう。鉄板を溶接す れば高温で同様に凸凹になってしまう。これを防止するために欠かせない作業が歪取り作業で、アセチ レンバーナーで歪の集中する1点を選んで10円玉ほどの大きさに真っ赤に熱する。板金ハンバーで周囲を 叩いて、伸びた歪を赤い1点に集める。その後に水で濡らしたウエスで冷却して歪を吸収する。この作 業を何十回、何百回と行いながら歪を取ってゆく。1回の歪取り作業を言葉で説明すると長くなるが、実 際は短時間に行わないと熱した意味がない。時には数百箇所にこの作業を行う。どこにどのくらいの歪 がたまっていて、どのくらいの大きさで幾つやるのかは経験で身につけるしかない高等技術となる。こ んな難しい匠の技術はどんなに化学が発達してもロボットマシンでもコンピューター解析(デジタル 化)でも安易には達成できないだろう。指先でさぐって鉄板の凸凹やゆがみ具合を探り当てるのも、経 験で身につけた匠の技となる。現場作業を一度も経験していない世代は、デジタル化で全てが解析でき ると思い込んでいる。次第に職人の生き残る現場が減少しているが、一度失われた匠の技は今後二度と復活することは難しい。言わば絶滅危惧種と同じ意味合いを持っている。言わば絶滅危惧種と同じ意味合いを持っている。化学の進歩で得るものも多い が、失う物も多いと痛感させられることは多い。

第三回日本グランプリ 出走前のパドックに待機中のSR310フェアレディと藤沢。 34番のゼッケンは藤沢が記入した。 当時のワークスカーのゼッケンと選手名は、ほとんどが私が記入してい た。

日産大森に入社すると、当時のチューニング創世記を模索していたメンバーが集まっていた。鈴木誠一 選手は有名な東名自動車(現在は弟の鈴木修二氏が代表)を経営しながら、日産大森ワークスドライ バーのチーフドライバーであった。富士GCレースで破竹の連勝を成し遂げた、高原選手のチーフメカ ニックは大森に在籍していて、その後退職した人が担当していた。そのとき、日産社内や社外から総勢 14名が集められ、日産大森分室(ニッサン大森ファクトリー)が誕生するのである。今から当時を振 りかって考えると優秀な仲間に刺激を受け、自然と仲間の技術を吸収し自分自身がレベルアップ出来た と感謝している。人によって発想が異なるので一緒に仕事をしていると「エッ、そんな方法もあったの か?」自然と勉強できてしまう。レースは共同作業が多いので、軍隊の規律のように一糸乱れぬ素早い 判断力と行動力が常に要求される。そこで言えることは技術的な部分は、外から見える部分と隠された 部分と2面があり、内部的部分は実際にそこに在籍し、経験しないと何も解らないということが言えると 思う。 たとえば、今まで溶接の経験がない人が溶接を依頼されたとしたら、本屋さんを探し回って専門書を沢 山購入して勉強するか、NET検索で情報を収集して作業に挑むだろう。だが最初から綺麗な溶接など できるわけはない。何事も経験しながら身につけてゆくものが技術力という見えない技術なのである。 経験を積まないと見えてこない世界は、経験を持たない人から見れば、幽霊と一緒で見えないことばか りで信じられないことになる。溶接ひとつでも材質により溶接方法は異なってくる。一般的な鉄材であ ればアセチレン溶接や電気溶接、CO2溶接などの方法が用いられるが、溶接方法により使い分けが必 要となってくる。材質がアルミニュームに変われば、アルゴンガスを用いたアルゴン溶接でなければで きない。溶接でも初心者向きなのがCO2溶接と電気溶接、次がアセチレン溶接で、一番難しいのがア ルゴン溶接の順と言えよう。TSサニーのフロントスポイラーは、初期段階ではグラスファイバーが用 いられていたが、空力部品は形状や大きさ変更による性能差がダイレクトにラップタイムに影響を与え るため、形状&サイズ変更を実施して性能を追及したい部品である。しかしファイバーだと一度型を起 こして製作する工程なので、量産品には向くが性能追及するワンオフ部品には不向きである。そこでア ルミ板を加工・溶接してワンオフで製作することになる。私もそれまでアセチレン溶接などの経験が あったが、アルゴン溶接は非常に難しかった。息を止めて溶接するわけだが溶接棒の溶ける早さが早い ので、右手の人差し指と親指で自動送りで溶接棒を送り込まないといけない。途中で溶接を停止してし まえば、そこが継ぎ目となって連続した綺麗なビートが乱される。また溶接棒ひとつを取り上げても市 販品では好みの太さが選択できなかったり、同じように見えるアルミニューム板でも成分の配合により 種類があるので、同じ材質の板を切断して好みの溶接棒を自作するように技術レベルはアップしてゆ く。更にアルミニュームは熱変化に敏感で熱しやすくさめやすい性質をもつため、溶接開始直後の溶け 出しは少なくても溶接が進むにつれて溶け込み量(溶接ビート幅)が大きくなる。そのため、溶接ス ピードも最初はゆっくりで次第に早くなってしまうが結果として溶接ビートに結果が現れてしまう。 ビートを均一に仕上げることはごまかしようがないので至難の技となる。溶接作業に入る前の設計初期 段階で、どこをどのように溶接するか、板厚は何ミリにするかといったノウハウも高度に要求される。 例えば90度で2枚の板を溶接する場合、普通に両端を合わせて溶接しようとしたらアルゴン溶接では至 難の業となってしまう。そこで片側の板の端を数ミリ90度に折り曲げておき、板の切断面と切断面を合 わせておき、それを溶接棒を使用しないで溶かしこんで溶接すると、簡単に綺麗な溶接が出来て中味が 漏れやすいガソリンでも漏れが少なく信頼性が向上する。このようにまだまだ書ききれないノウハウを たくさん必要とする作業なのである。困難であればあるほど、腕に自信のある人達は競いあって(暗黙 の内に)自然と自分たちの技術力を高めていくことに繋がっていった。当時の大森ワークスの戦跡を改 めて振り返ってみると、目を見張るほどの素晴らしい結果をたくさん残していることに気づく。このよ うに実際の開発現場の最先端に自分をいつも置いて生きてきた。それはケミカル開発に心血を注いでい る現在でも変わらぬスタンスのままである。

4ー2:トラブルの裏には複数の原因が隠れている
自動車の故障と人間の病気とよく似ているという話をした。人間の病気もその人の日常生活、食生 活、遺伝など、沢山の要素が複雑に連携しあい、複合で引き起こされる結果と言える。これを自動車に 当てはめて考えると・・・
A 日常生活=使用条件
B 食生活=ガソリン(オイル&メンテナンス)
C 遺伝=設計
新車で壊れた場合はC:設計的要因が大半で、後は購入者の誤った使用方法が原因となることが多い。これが中古車になると様相は一変する。ピンときた人もいるようにA+B=結果 図式となるように、 Aの使用条件とBのガソリン(オイル&メンテナンス)によって大きな格差が生じてくる。「ノーマル 車を改造=壊れやすくなる」と思われがちだが、改造と一言で言っても「良い改造」と「悪い改造」と 大きく二つに分けられる。確かに耐久性を悪化させる「悪い改造」を施せば壊れやすくなるが、私が提 案している改造は、耐久性も向上し排気ガスも低減できる進歩的改造術である。 5万km、10万km、15万kmと走行距離が増大するほど、故障した際の真の原因追及は難解とな る。なぜならどんなに高性能化を図っても、磨耗損傷をゼロには出来ないからである。また部品の材質 によっては、経年劣化&変化が避けられない材質も使用されている。オイル交換によってスラッジを含 め汚れを外部に排出することになるが、長期間にわたれば人間の歯に蓄積する歯石と同様、汚れ蓄積は 避けられない。エンジン部品も毎分、数千回という爆発力が加わっているので、金属疲労が発生し、応 力の集中した弱い部分から亀裂が生じたりする。またバルブフェースとバルブシート当り面は、昔はガ ソリンに添加された鉛で潤滑されていたが、法改正で鉛の使用が禁止されると、ガソリンが無鉛になっ たため、長期間使用での磨耗は避けられなくなった。これらの複数要因が作用し、バルブ当り面からの 圧縮漏れ、ピストンリングとシリンダー当り面からの圧縮漏れが進行してゆく。加えて燃料噴射装置の エアフローセンサーの汚れや磨耗、インジェクターの噴霧状態の悪化など完全燃焼に影響を与える部品 の劣化が進行してゆくことになる。 私の勧める、アーシング、トルマリン、コンデンサーチューン、各種添加剤および高性能オイルの使用 などは、不完全燃焼に起因するスラッジや燃料希釈発生を抑制する働きを持つので、「正の連鎖」で好 調子を長期間維持する補助アイテムとなる。 また、誤認されるトラブルの原因として次のような例がある。例えば8万km走行したATの変速 ショックが気になったのでATFに添加剤を添加して様子をみていたら1週間後に走行不能となった。 この場合の原因は最後に添加した添加剤に疑惑の目が向けられる。確かに最後に試した物が一番怪しい と疑うのが自然であるが、それ以外にもトラブル発生のトリガーなった部分を考察して欲しい。
確認事項 考察 メンテナンス記録が残されているか? ATF交換の実施状況が判る ATF交換は何kmで実施されてきた か? ATF銘柄は? 粘度・特性等が判る その人の運転方法は正しいのか? 信号の度にNや1・2に入れるような運転はATに負担が掛 かる その車種の平均的AT寿命は? 車種によりATの設計が違うため寿命は車種ごとに違う その車種に多発しているトラブル傾向 は? 特定車種には特定のトラブルが発生する 添加剤を使用する前の状態は? もともと異常があったのか? 添加剤の市場での評価は? 効能は広告であり、実際の効果とは限らない これらを総合的に判断して初めて解明できてくるものである。ここで走行不能になった一番の要因と思 われるのは添加剤の投入以前に、走行距離8万kmということである。AT寿命は80%、場合によっ ては99%使い果たしていたと考えたほうが自然だと思う。しかし、考察をしなければ「昨日までは正 常に動いていたから添加剤が悪い」と思うだろう。同様に車検を終わった車が車検後すぐにパンクする と「車検を受けたのに壊れた。無料で直せ!」という例も同じである。「最後に○○した」という事実 があるだけで犯人に仕立て上げられることになる。前出のATの例だと、既に走行距離8万kmは1% も考慮されないで判断されるのである。壊れるまでの1週間と、それまで使用していた8万kmの歳月 の違いを少し考えれば誰でも解ることと思うのだが、通常は簡単に無視されてしまう傾向を示す。 添加剤がトリガーとなった可能性: 余談ではあるが、走行不能になった原因に、添加剤を投入したことも要因である可能性は数%と低い確 率で考えられる。但しこの場合は、添加剤が悪さをしたのではなく、添加剤が有効に作用したから起き たのである。既に8万キロを走行し、またATFの交換が全く実施されていなければ、ATの中にはス ラッジ等の老廃物が蓄積されている。この老廃物を添加剤が洗浄作用によって剥ぎ取った場合、いきな り老廃物がATFの流動経路を塞いでしまう場合も数%と低い確率であるが発生しても不思議ではな い。前出の通り、既に8万キロを走行し、寿命は尽きようとしていたのは事実だが、いきなり走行不能 になったのにはそんな可能性もあるのだ。 だが、だがらといって添加剤の使用はNGというのは早計である。改善された80%の喜ぶ人がいて、 変わらない18%の人、トラブルの発生した2%の人の比率を考慮しなければならない。2%のトラブ ルを恐れていては80%の良き改善を傍受することはできない。だからこそ手遅れにならないうちの早 目の使用を推奨するわけである。 もっと早くATFが交換されていたら・・・・もっと早く添加剤が投入されていれば・・・・きっとス ラッジの発生は低減されており、8万キロを超えて性能を発揮していただろう。つまり一番の原因は ユーザーの管理方法に問題があったのだ。それを使用した製品に全責任を転換することは的を得ていない。
どんな製品にも、設計的な不具合や限度を超えた磨耗損傷を補え切れない限界線は必ず存在する。 「添加剤は、どこまでの不具合が完治可能かを明記すべきである」と唱える人を見受けるが、これは作 用される部品側の限界点が明確にならない以上明記は不可能である。医者が病気になった人の残り寿命 の予測は可能だが、どこまで回復出来るかの判断は難しいという話と似ている。人間の病気ならCTス キャンやレントゲンなどを用いて、内部の進行具合を目でみることが可能であるが、自動車で圧縮圧力 を測定したり、シリンダー磨耗損傷をファイバースコープ内視鏡で見ることが出来ても、メタル損傷具 合やAT湿式多板クラッチ面の磨耗損傷具合は、分解点検してみないことには解かりはしないのだ。必 ずどこかに限界点が存在するように、100%の改善は無理でも、製品Aの故障改善能力が20%、製 品Bの故障改善能力が50%、製品Cの故障改善能力が90%とするならば、A&B製品で改善できな くてもC製品なら改善できる可能性が残されている。但し、C製品を使用した人が改善できない10% になってしまうのか改善される90%に該当するかは実施してみる他に調べる方法はない。従って出来 るだけ改善能力の高い製品を見つけ出し、状況が悪化する前にテストするのが確実な方法となる。 日ごろからメカに興味がない人ほど、トラブルの症状が悪くなってから相談してくる。健康管理と同 じで「症状が軽いうちに対処して欲しい」と願わずにはいられない。対応が早ければ内部損傷は少なく て済むので、修理を望まない人ほど早めの対処と改善能力の高い対策製品(添加剤)の使用が強く望ま れる。 マニュアルミッションのギヤ入りが悪くて、シフトチェンジのたびに「ガッン」と大きな音を発生さ せていると内部のシンクロや、カップリング、ギヤ側面の噛みこむ部分が削れてゆく。新品の時は噛み こみ部分はヤリの穂先のような鋭いV字形状をしているので、V字とV字はスンナリ噛みこむ(正常な 状態)。それが何らかの阻害要因によってギヤ入りが悪い車は「ガリッ、ガリッ、」と先端が削られて ゆき、次第にV字形状はU字形状に磨耗してしまう。すると最終的にはU字とU字の先端が合致するた め、まったくシフトが入らない現象がときどき現れる。この反対に、スンナリ気持ちよくシフトチェン ジができる車は、それ以上の走行を経ても、毎シフトでの磨耗が少ないので、消耗は最小限に抑制され る。つまり機能が正常に行われていると、メカニズムはいつまでも元気が続き、へたりが少ないことに なる。

4ー3:最終到達点は液体性能の重要性に着目
昔のレーシングカー(1960年代)で使用していたオイルは、シェルのシングルグレードX-100, #40のみであった。このオイルでTSサニーで8500rpmをまかなっていた。プリンス自動車と 合併して解かったことは、スカイラインGT-Rのエンジンとミッション、デフオイルは当然のごとく 日産とは違ったオイル銘柄が使用されていた。プリンス関係者のメカニックは「このオイルでないとだ め」と言いきっていたが、その頃はシェルX-100 40番を使用しても壊れないで結果を出すことだけに集 中していたので、オイル性能の違いなど眼中にはなかったし、潤滑性能の違いが結果に影響するのは焼 きついて壊れることだけと想像していた。潤滑を司る液体性能の重要性に気がつき、開発を始めたのは 1990年。考えてみれば30年間の歳月を無駄に過ごしてきたことになる。

TS サニー110 和田孝夫選手の車両も見える

自動車メカニズムには多くのケミカル(液体)が重要な役割を担って充填されている。
1:エンジン=エンジンオイル
2:AT=ATF CVT=CVTF
3:MT=ミッションオイル
4:パワステ=パワステフルード
5:デフ=デフオイル
6:エアコン=エアコン用オイル
7:ブレーキ=ブレーキフルード
8:ラジエター=LLC
9:バッテリー=バッテリー液
10:その他AYCやトランスファー等

メカニズムは、このように実に様々なケミカルが充填されて初めて機能するように設計されている。ま ず一般的に考えることは・・・
1:レベルは適切であるか点検する。
2:汚れたり劣化していないかを確認し、交換時期を検討する。
3:交換する際に、どこの製品を使用するか検討する。

自動車愛好家の関心時は、「少しでも車両の性能をアップしたいしたい」という事。その目的は各個人 で異なってくる。
1:少しでも燃費向上を図りたい人。
2:少しでも走りのポテンシャルを向上したい人。
3:マニュアルミッションのギヤ入りの渋さなどの欠点を改善したい人。
4:自動車の耐久性を高め、長期間にわたり使用したいと考える人。

しかしながら、現実的には「予算内で・・・」でと注釈が付く。従って、どんなに高性能な製品が存在 しようとも、価格的に手が届かなければ、それを理由に使用する機会は永遠に訪れない。結果として、 液体の性能により車両のポテンシャルを高めることが出来ることに、気が付かないで終わってしまうの である。実際、車両の販売・修理・再販に携わる人や、潤滑製品を最も多く販売するGS・用品店などで も同様である。それはハイ・ポテンシャルな製品を実際に経験してみて初めて解ることであり、どんな に人から話を聞かされたとしても、にわかには信じられない世界だからである。現に、私自身、この事 実に直面するまでは信じていなかったし、逆にその事実に直面したからこそ、添加剤やオイルをチュー ニングの要として考えるようになったのである。確かにメカチューンに於いてもコンピュターチューニ ングでも車の走りを変えることは出来た。だがケミカルによる性能アップは、単純に速さだけを向上さ せるのではなく、走りの味そのもものまで別物に変えてしまう。この「走りの味」という表現は抽象的 だが、具体的には、車両が自分の「意図通りに反応してくれる結果から得られる爽快感」と考えてもら えればよいと思う。シフトチェンジの度にシフトに気を使ったり、踏み込んでもリニアに追従しないエ ンジンではこの爽快感は得られない。人馬一体の如く、「人車一体」となり、「車両」であることを意 識しない走行感覚である。多くのメカニズムは潤滑性能を高めてゆけば、更に高い性能が引き出せるこ とが解ってきた。タイトルでは「液体性能の重要性」と謳っているが、単純な潤滑性能向上だけでなく 「摩擦と滑り」という相反する要素が、相乗的に作用を齎すということ。それはオイルの潤滑性能が、 燃焼の高効率を促し、結果として振動やトルク、馬力、レスポンスなどに良い影響を与えるだけでな く、全く液体として繋がっていない「ミッションの入り」にさえも深く関与していることでも判る。当 然、メカニズムの寿命にも大きく影響している。(これらの詳しい解説は他の項目で詳しく述べる) エンジン内部の構造が理解できてくれば、そこから「エンジンはオイルによって保護されて性能を発揮 している」ということが理解出来てくる。その場合、次のステップとして「保護性能を高め自動車の耐 久性を高める」に到達し、最終的に「オイル性能によってエンジン性能も耐久性も大きく左右される」 という結論に到達する。だが実際にはその上のステップも存在する。しかしながら残念なことに、それ をここで私がいくら語っても理解することは出来ないだろう。「百聞は一見にしかず」と言うが、これ ばかりは実際に自分で経験しなければ、永遠に私の話が玉虫色にしか見えないからである。 ブレーキフルードに関しても同様で、液体性能がブレーキ自体に重要な役割を果たす。サーキット走行 を行う人なら経験がある筈だが、ブレーキフルードを沸点の高いDOT4とかDOT5に交換する。す ると対温度特性は優れるのだが持続性が低くなる。つまり、「フルードを交換するとブレーキが変わ る」という結果の先に「フルードを改良すればブレーキが変わる」という発想に到達できることにな る。こうして[ブレーキフルード添加剤]という発想が生まれた。ブレーキフルードの場合は潤滑ではなく 「圧力を効率良く伝達する」性能が重要となるが「液体性能」を高めることによりパフォーマンスが向 上することには変わりない。 時代が進むにつれ「常識めいた迷信」を唱える人も減少傾向にある。自分の常識だけで判断し、最初か ら試行することを否定していれば、永遠にその存在さえ気がつかない。20年前30年前の私自身がそ うであったと同じように・・。

第五章
Posted at 2012/01/11 05:07:44 | コメント(0) | トラックバック(0) | estremo | クルマ
2012年01月11日 イイね!

藤沢公男の提唱するメンテナンス術~第三章純正仕様が本当に一番理想的なのか?~

チューンナップを相談してくる人に私は口癖のように「純正仕様も悪くないよ。だって自動車メーカーが莫大な開発費用を掛け、優秀な技術集団が専門的見地から、妥協点を見つけ世に出してきた仕様なのだから」とアドバイスする。これはこれで正解な部分と不正確な部分とを含んでいる。運転技術が未熟だったり、自動車を下駄がわりに考えたり、ごく普通の使い方をしていたり、メカ音痴で車に対して興味が無かったりする人には正解である。反対に愛車の欠点が解る人、運転技術が高い人、もっと快適な車生活を送りたいと考える人、大事な愛車を長期間維持しようと考える人、車に対する知識が高い人、普通よりレベルの高い走りを望む人、モータースポーツなど特別な使い方をする人には不正解となる。ノーマル仕様は一般的な人の一般的使用をターゲットとして開発されてくる。もちろん多少の過激な使用条件は当然ながらテスト項目として考慮される。それでも乗り心地と操縦安定性とは相反する永遠の解決すべきテーマなので、どこかに妥協点を見出し発売されてくる。新型車が発売されて、大部分は大好評なのに乗り心地が評判が悪いとなれば、マイナーチェンジで改善される。だったら最初からマ イナーチェンジ後の仕様をなぜ出してこないのか?といった疑問が出てくる。メーカーによって事情は様々であると思うが、それが車開発の難しさで開発期間との折り合いと言える。またコンピューター解析がどんなに進歩しようが、最終仕様を決定するのはコンピューターではなく、人間の判断であり、市場の評価なのである。

3ー1:普通の走りで普通の耐久性を望む
チューンナップに興味を持たない人には、チューニングの為に大金を掛ける人の考え方を多くの人は 理解できていないに違いない。逆に「なんで純正ではいけないの?」中には「純正が一番」と平気で意 見を言う。コーヒーの宣伝文句とは反対に「違いの解らない人は何でも一緒」と大きな勘違いをしてい る。自動車と彼女が近いと感じるのは、初デートしただけでは数%しか解らないところ。だからディー ラーで試乗車に乗った時のインプレッションと、自分の車として1年間使用してみてのインプレッション では、まるで別な結果になっても何ら不思議でない。それだけ自動車評価の奥は深いのである。一見非 の打ち所のない新型車でも、愛車として長年使用していると、次第に欠点が見えてくる。だが、初めて 車を購入した人であれば比較対照がないので何も感じず、自分なりに満足していれば「最高の車」と喜 んでいても不思議ではない。それが乗車定員一杯に人を乗せ急勾配を登ると、今まで感じなかったパ ワー不足を感じたり、エアコンをONした途端に出足の加速に不満を抱いたり、ワインディングをハイ ペースで走行したら操縦安定性に不満を感じたり、大雪が降った途端にワイパーの作動範囲に不満を抱 いたりと、次第に欠点が浮かび上がって気になってくる。だから自動車雑誌の試乗記事を読んでも、参 考にはなるだろうが、それは自分が感じるであろうインプレッションとは異なるし、実際に乗ってみな いと解からない部分も多い。 エンジンオイルやミションオイルの性能についても同様なことが言える。最近の新型車は省資源・省燃 費コンセプトを追求しており、低粘度化が推進され5W-20や0W-20のような柔らかいオイル粘 度が純正採用されている。確かに低粘度タイプでは、フリクションが低下することにより燃費アップが 図れる。私もこの手の低粘度指定の新型車を購入したが、街中では特に問題を感じなかった。しかし、 自分のテストコースでもある箱根の登坂では、エンジンは悲鳴に似た凄まじいメカニカルノイズを発す ることに驚かされた。それこそ10万km以上使い込み、相当劣化したエンジンから発生するメカニカル ノイズと非常に似た音質と音量なのだ。メカニカルノイズの大小は、そのまま潤滑能力レベルを色濃く 反映しているので、ダメージ蓄積が懸念された。粘度が柔らかければ、当然ながら油膜は薄くなり保護 性能が低下してゆく。このように使用条件でオイル粘度要求はガラリと変化し、それをドライバー自身 がそれらを察知し、粘度選択を適正化しなければ、使用を続ける中で問題や故障は発生するだろう。悲 しいことにノーマル(純正)が一番と信じこんでいる人は、そこまでの知識を持たないか一般的な使用 条件のどちらかであろう。レースは使用条件が厳しいから、特別なオイルを使用することは誰でも理解 しやすいが、一般市街地でも、ある領域を超える条件が発生するケースに陥ると、タイヤもオイルも途 端に純正レベルではキヤパシティ不足に陥ってしまう。柔らかい粘度のオイルも設計ポイントの項目で 話をした「鈍感設計」の正反対であり、ひとたび限界点を超えた場合のダメージはより大きくなってし まう。それよりもオイルや新型車の開発者達も実験室での評価ではなく、実際の走行、しいて言えば箱 根の上り下りなどのようにストレスが発生する環境で、長時間試乗テストを繰り返すべきである。(秘 密保持の観点からテストコース内に限定されてしまうが・・・)普通より少しハイレベルな走行条件に 追い込まれた場合や、オイル交換に無関心の人が交換サイクルを無視し(つい忘れたりして)た際には トラブルに見舞われる頻度が高まる訳である。メーカー側から分析すれば、指定交換時期を無視した側 の落ち度であると判断するが、キャパシティに余裕のある設計をしていれば、万が一の際にもその余裕 範囲がカバーしてくれるので、ユーザーのメンタルな面への負担軽減に繋がっている。 0W-20や5W-20などの超低粘度なオイルになればなるほどに保護性能を分担する潤滑レベルの 差が大きく性能や耐久性にダイレクトで影響してくる。これは10W-50などの油膜の厚いオイルと は比較にならない特性である。油膜が厚ければ多少性能が低くても余裕分は大きくなるので大きな問題 となりにくい。

アクセルの踏み方ひとつでも、その人の性格が色濃く反映され、ゆっくり優しく触るように加速させる 人、反対に一気にガッと踏み込む人、一度踏み込んでからアクセルを少し離す人など、実に様々であ る。幾度となく書いてきているように全ての走行条件は千差万別なので、当然ながらノーマルで充分な 人が存在する反面、ノーマルでは満足出来ないと感じる人も出てくる。 レースにおいてはアクセルをあまり踏まない(パーシャル域)走り方はしない。アクセルを大幅に踏み 込んでいる時間がほとんどである。一般市街地は渋滞のノロノロ運転に代表されるように、時速10k m以下での低速運転を強いられたり、真夏の炎天下で渋滞にはまり、エアコン全開で停車しているケー スも多い。これはこれでエンジンもエンジンオイルも、そしてエアコンコンプレッサーにも過酷な条件 なのである。しかしそのダメージはドライバーには一切見えてこない。そして内部にダメージは蓄積さ れてゆくことになる。なぜなら走行することでラジエターコアに外気温の走行風は通過し、エンジン ルーム内の熱気も排出される。エンジンオイルの役割は摩擦部分と燃焼室の両方の「冷却作用」を担っ ている。冷却はエンジン本体から放出される冷却よりも、ラジエターコアを通過して放熱される冷却作 用が重要となってくる。渋滞が長時間続けば、エンジンルームにこもる熱は蓄積され次第に上昇を始め る。近年地球温暖化により、世界中の最高気温が塗り替えられているが、ここでもメーカーが温暖化に よる温度上昇分までをも設計許容限度に盛り込んでいるかが気になるところである。限界値の低い設計 だとトラブルに結びつくが、限界値が高ければ多少の上昇には影響されない。更に、ここで純正より潤 滑性能が高いオイルを使用中であれば、摩擦熱発生は軽減できるので何事も起こらない。レースでも一 般車でも最後は人間の経験と考え方が大きな違いとなって現れてくる。

3ー2:車の技術は日進月歩で進んでいるが・・・
昨今の最先端技術の進歩には目を見張るものがある。私は20代後半の時、8mmフイルム撮影機を購 入して子供たちを撮影していた。音声記録はされないタイプだった。その後、音声録音できる新型機の 購入をためらっていると、繰り返し録画や再生ができる磁気テープ記録の「ビデオカメラ」が発売さ れ、思わず購入してしまった。(カメラとレコーダーは別体。カメラとの総重量は10kg近くあった ように記憶している。)それがその後は、あれよという間に小さくなり始め、いつ購入したら良いのか 迷ってしまう程であった。テープも当初のVHSフルサイズからミニサイズ、そして8mmを経てデジ タル時代へと突入した。そして今やマイクロドライブ記録の時代。サイズもティーカップサイズにまで 小さくなった。だが大きさは小さくなっても、映像の美しさは初期のビデオカメラとは比較にならない ほど美しくなった。 同様に、新しい技術投入によって、基本設計は現行エンジンのままでも公害を出さない車が燃料を見直 すことにより解決するかもしれない。その第一候補が水素ガスであり、私がニスモに在籍している頃か ら、ある大学が水素ガスを燃料とする自動車の開発を行っていた。 しかし、これが趣味の領域の話だと理論値だけではつまらなくなる。現在のレシプロエンジンの燃焼具 合は完全燃焼ではなく、まだまだ100%完全燃焼に向かって改善の余地が多く残されている。だか ら、アーシング、トルマリン、SEVなどといった、燃焼改善アイテムが製品化されるのである。逆に 言えば、メーカーが100%完全燃焼を確立してしまったら、エンジンに関するチューニングアイテム のほとんどは意味をもたなくなってしまう。それはそれでつまらない世界かもしれない。

3ー3:なぜ超高性能オイルは純正採用されないのか?
自動車メーカーの開発は純正指定オイル(年々規格は新グレードが追加されてくる)を元に開発が行 われる。よほどの高性能バージョン(新型高性能エンジン)でなければ純正オイル性能を変更しような どといった発想は浮かばない。ディーラーではオイルをサービス品として利用することも多いが、開発 においての重要課題はコスト低減であり、オイル性能アップはそのままコストアップに直結してしま う。大衆車と高級車、ターボ有り無しでもオイル要求性能は異なってくるので、純正オイルとは言って も車種や使用目的に合わせ、数種類が選択できるように考慮されている。オイルにこだわる人は少し高 くても良いオイルを選択するが、そうでない人は価格が少しでも安ければOKと正反対に分かれる。 「潤滑レベル対価格」とのコストパフォーマンスなど、考えたこともないというのが一般の大多数だろ う。どんな場面でも共通して言えることは中途半端な知識の人と、頑固で人の話を受け入れない人が一 番始末が悪い。かえって何も知らなくても素直に受け入れてくれる人には難しい話でも伝わりやすい。 確かに「振り込め詐欺」に代表されるように簡単に信じてはいけない世の中であるから、自己防衛力が 働き危険を回避することも大事なことではあるのだが・・。 オイル性能を向上することにより「車両の耐用年数」が向上する。(後の項で詳しく解説する)資本主 義経済は消費文化に支えられ、発展するよう宿命づけられているので、耐用年数が過度に長くなること を歓迎していない。嘘か本当かは定かでないが市場では「○○○○タイマー」(○○○○は某家電メー カー名)という言葉が聞かれるように、ある一定の期間で故障することが企業戦略として盛り込まれて いても不思議ではない。短すぎる耐用年数ではクレームが増加し、商品イメージやメーカーイメージが 悪くなる。逆に耐用年数が長過ぎれば「買い替え需要」は生まれてこない。従って販売価格と耐用年数 とのバランスはある意味重要であると言える。 そうは言っても省燃費やリサイクルに代表される対環境性能への要求と、更なるエンジンを含む車両性 能の向上も望まれるので、それに対応した純正エンジンオイルの性能特性も僅かづつではあるが変化・ 向上が図られていることになる。 これ以外にも、あらゆることを総合的に検討することになる。自動車メーカーに要求されることは一般 の人の予想とは少し異なる場合も多い。経済的に恵まれていない国の車事情を少し深く考えれば解るこ とだが、性能の悪いオイルしか手に入らず修理しながら車を長年使用する国や地域が多く存在してい る。性能的に優れるオイルはコスト的にどうしても高価格になってしまうので良いオイルと判っても使 う余裕などはないし簡単に入手できまい。従って純正オイルより性能の落ちる粗悪品でも問題が発生し ない「余裕度設計」が要求されることになる。このようにオイルに限らず製品開発においては「性能に 優れるから純正採用する」と言うような単純な開発では無いことが理解できてくる。

第四章


Posted at 2012/01/11 03:13:32 | コメント(0) | トラックバック(0) | estremo | クルマ

プロフィール

「みんカラ:モニターキャンペーン【キイロビンゴールド】 http://cvw.jp/b/582316/48433120/
何シテル?   05/16 18:50
ヨロシクだぷ~v( ̄Д ̄)v

ハイタッチ!drive

みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/6 >>

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

リンク・クリップ

スズキ アルトワークス つーやん☆【アタックレーシング】 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2019/06/28 08:41:55
ennepetal 
カテゴリ:足回り
2011/12/23 06:25:24
 
NGK 
カテゴリ:点火系&駆動系
2011/07/24 19:44:46
 

愛車一覧

スバル プレオプラス 復活の青い車 (スバル プレオプラス)
WRブルーサンバー以来の青。ダイハツ色の青ですが、これもなかなか良い感じ?(笑)第三のエ ...
スバル サンバー つーやんサンバー (スバル サンバー)
スバル復活~😃✨⤴️ 宜しくお願いします🙇⤵️
日産 モコ 代車 (日産 モコ)
次期愛車納車までの代車生活( ・∀・)ノ
スズキ アルトワークス つーやん☆【アタックレーシング】 (スズキ アルトワークス)
初スズキ車です( ゚∀゚)ノ 宜しくお願いしますm(__)m ★アフターパーツ ■タ ...

過去のブログ

2025年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2024年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2023年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2022年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2021年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2020年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2019年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2018年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2017年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2016年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2011年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2010年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2009年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation