目の前の命一つが救えない自衛隊に
どうして国の平和と安全が守れようか・・・
昨日,何ともやり切れない出来事があった。
一人の男性が倒れ,意識不明の状態に陥っている
すぐ傍らで,何人もの自衛隊員が居ながら,彼らは
全くの無力だった。
自衛隊基地と共用している地方空港に,
ジャンボ機のチャーター便が初めてやってくる
ということで,空港には大勢のギャラリー
が詰めかけていた。
空港内だけでなく,周辺のフェンス沿いにも
離発着の瞬間を狙うカメラマンや飛行機ファンたちが
陣取っていた。
昼の12時を少し過ぎた頃にジャンボ機が到着し
シャッター音が一斉に響いた。
その直後,一人の方が異変に気付いた。
「車の中で誰か倒れている」
「一緒に来た人は居ないか」
何人かが駆け寄った。
だが,駆け寄った中に,倒れている人の連れは
誰も居ない。
一人は,医療関係の経験があるらしく,
脈を取りながら状態を確認している。
倒れていたのは70歳ぐらいの男性。
脈は乱れていないようであったが,意識が朦朧とし
手足を痙攣させている。
てんかんの発作なら短時間で収まるが,
一向に収まる気配もない。
横で「大丈夫ですからね,頑張りましょう。」
と声をかけた。
最初は手を動かし何か話そうとする
ような反応があったが,やがてその反応も
弱まっていく。
どう見ても一刻を争う容態。
目の前のフェンスの内側では自衛隊員たちが
警備に当たっていたので,
最初に異変に気付いた方(一般の方)が
「自衛隊のほうで何とかできないのか」と交渉している。
基地内には診療所がある。医務官は休みであっても
少なくとも救急車がある。
「目の前のゲートを開けて,中に運べないのか!」
「許可がなければ開けられない(隊員)」
「救急車は呼んだのか,呼んでいないのか?」
「(自衛隊で)対応できないなら,こちら(居合わせた者)で
呼ぶが,どうなんだ?」
隊員は連絡用の無線機でボソボソと連絡しているが
スピーカーから漏れ聞こえる返答は要領を得ない。
「救急車は手配できたのか?」
「基地のが来るのか?」
「消防のが来るのか?」
消防署はかなり遠くにあり,呼んでも到着までに
10分以上はかかる。
結果的には消防の救急車が来たが,おそらく
隊員とのやりとりから30分は経っていた。
消防に連絡を取り,救急車の手配だけはついたようだが
そんなことは我々にだって初めからできる。
「フェンスから中にカメラを入れても問題になりますからね!」
と,さっきまで威圧的とも思える態度で警備していた隊員たち。
心の中では,もはや,ただの役立たずに成り下がっていた。
手分けをして
救急車の誘導をしたり,
通りすがりのパトカー(警察にも連絡は入っていなかった)を
止めて協力を要請したり,
知らずに入ってくる飛行機見物のギャラリーに
離れて待機してくれるよう声をかけたり・・・
その間,誰一人としてフェンスの外側に駆けつける自衛隊の
関係者は居なかった。
救急車を送り出して,その後男性がどうなったかはわからない。
無事,回復されていることを望む。
あの場で自分は,自分にできることをしたと思う。
大勢の命を守るために,命令なしに勝手な行動は許されない。
組織の事情は理解できる。
彼らは彼らで,もどかしい思いをしていたのかもしれない。
隊員個人を責めても仕方がないことなのだろう。
だが,誰にどこまでの命令が出せるのか?
命令を出せる人物まで,どれだけの時間をかけて
状況の報告が伝わるのか?
自分が,正義を振りかざせるほど立派な人間じゃない
ことはわかっているのだけれど
何とかならないものなのかとやり切れない思いがした。
目の前の命一つが救えない自衛隊に
どうして国の平和と安全が守れようか・・・
Posted at 2010/04/18 10:09:33 | |
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