
ここに来たみなさんこんばんは!
987ⅡS PCCB+LSDを駆る主人公「タケシ」が、見えないライバルを追いかけながらドライビングを磨いていく空想小説に乞うご期待。
さて、今日はその第一話。登場人物を紹介し、kanibokuワールドへどうぞ!
題 「地の妖精」~熱風の大六天山~その1
登場人物
主人公 「タケシ」 ソリブラ/黒/黒の987ⅡS L6F PCCB+LSD+PASM+スポクロに乗る。
上星川のスズキ(寿々喜家)のラーメンが好き、注文は中チャー味うす麺固め。
ヨシコ タケシの奥様
ヨウ ボクスター主体のツーリング集団である「埼玉金僕団」の主宰。砂団地のラーメンショップが行きつけ
第一話 迷い
「ズズズ・・・ズ・・・ウウウ・・」
雨の中高速・・北に向かう・・1台のボクスター・・
雲は低く垂れこめ、目指す峠はきっと霧の中だろう・・
「チッ!」 テンション下がりまくりの天気に悪態をつく。
休日の高速道路は早朝であろうとも車の数も多く、回転数は上がらぬまま淡々と時間だけが過ぎ去っていくだけだ・・
6速固定で2,000回転をいったりきたり~♪・・ハローグッバイでも聞くか・・
6速マニュアルシフトであっても、デジタルスピードメーターの右隣には6速以外のときは、平べったい三角形が「その速度ならシフトあげなぁ!」的に現われては消えている。
「フン・・」
ラジオから聞こえてくる天気予報は、雨は残るところがあるが、概ね曇りということだ。
ため息をつきながら気持ちをリセットしようと途中のSAに滑り込む。
羊羹をかじり、牛乳を流し込む・・うまい!どおりで・・85℃で15分殺菌か・・
でも一リットルは多かったな・・ストローが届かなくなったところで止めとくか・・
「げぷっ」
ボクスターは本線を離れ、自治体経営の支線に向きを変える。ところどころが対面通行で道幅は狭いと感じるが、交通量も少なくなり、追い越し可能な片側2車線区間では、右足に力を込め、左足と右手の動きをシンクロさせながら、景色を後方に追いやっていく。
「ガファァァァ・・ッン・ゴッワーーーーッンン!」
スポーツクロノをオンにすると、足の硬さがはっきり感じられ、アクセルレスポンスも同時に敏感に反応する。しかしながら、アクセル踏み込み量の最初から真中がレスポンスが高くなるだけで、パワーが上がったと錯覚させる仕組みはなかなか考えているなーと思った半面、要らんよねーと思ったのよ正直。
でもこの不要とも思えるスポクロが後々多いなる恩恵を授けてくれることとなるとはこの時はまだ知る由もない。
自動車専用道路は終わり、一般道へ紛れ込み、ちいさな漁村をくねくねと走り抜けることになる。車を止めることなく、幌のラッチを解放、アルミルックのセンターコンソールのスイッチに手を触れる。停止時はずっと手を触れなければならないスイッチではあるが、走行中は一旦触れれば手はハンドルに添え直しても解放動作は続くのだ。
ハンドルを握る手、ダッシュボード、アルミルックスティックシフトノブが徐々に日に照らされ・・
「ぼふぉっ!」
緑の甘苦い香りが、牛乳の匂いに占拠されていた室内の澱みを一瞬にして解放。
何ということか、目がしゃきっとしてぇ・・きたーっ!!
・・・・・・・
町はずれの一時停止標識、ここを左折し大きく左に流れる登りのカーブを駆け上がりさらに稜線に向かう長い直線がここからのドラマのプレリュードとなるのだ。
路面は基本的にはドライ、所々に水たまりが残るコンディション、路肩、コーナーのカントがついた場所では水が横断していることは容易に察しがついた。
一旦車を停止、コンセントレーション。
グローブを嵌めながら車を一周・・・「たのんだよ」
「おうよ!」ボクスターはあたりまえではあるが、そんな返事を返してくれるわけではないし、ただ、「バババ」とも「ゴゴゴ」ともつかないアイドリングでその時を待っているだけだ・・
斜め上に握りあがるドアノブを掴み、シートに腰を嵌める。このバケットシートは少し太ったおっさん(オレかっ!)でもスポーツドライビングをアシストするべく生まれたRECARO SPGNⅡEDELという限定モデルだ。赤く染めた高級革の表面をグレーに染め、パンチングすることで、赤・グレー陰影を表現、バックシェルは基本的にグロスのブラックだが螺鈿のラメがちりばめられたような造り。二人乗りの911系であれば、追従する後車からはそれはキラキラと光り、本人は見ることのできない至高の輝きを放つそうな・・
プレミアム感漂うスペシャルシートなのだ。
PSMはおっこねーのでONのまま。スライドさせない限り介入はしないはずだからグリップ主体のシュアなドライビングであれば速く走れることには変わりはない。
スポーツクロノもOFFのまま。パワーが上がるわけでもねーし、このような峠は首都高セッティングと一緒の猫足がいいからな。足まわりも柔らかめで加重移動を積極的に使うシチュエーションも出てくるはずだ・・ヨシっ!
このコース・・そういえば以前、「埼玉金僕団」のヨウ団長に誘われ、ツーリングに来たコースさ。名うての団長でさえ、手をこまねくと言ってた難コース。段差、逆カント、緩やかなカーブからいきなり反対方向へのヘヤピン!鋭いブレーキング駆使しながらの荷重を意識した段差のイナシ、あらゆるテクニックを場面ごとに合わせ、五感をフルに出し切るクレバーな走りが求められるコース。「くーっ ちびるぜ!!」
「タケシ・・・がまんなさいっ!」ヨシコの声が聞こえたような気がした。
いよいよその時がきた。
クラッチをいたわるやさしい操作、だけどもアクセルは底まで踏みつける。各ギヤは各々の仕事をきっちり行い、隣のギヤにパワーを移していく。
空気の流れはやがて轟音となり、緑の山々へ木霊するのだ。
風景は揺らぎながら右、左とすっとんでいく。ジワリと額と手に汗が滲む。
・・・・
「くおーーん!ガフォン!!」
アクセルを床まで踏みつける長い直線の終わりは、急激に下がる段差だぁ?そのあとはキツイ右コーナーだっ!はるかに速いスピードで進入、「クオァーーーーーン!!」
ブレーキン・・ん!
「今か向こうか・・・どっちだっ!??」
「ブレーキの完了ポイントを段差前で終え安全マージンをとるか段差後のリスキーな方をとるかでドライビングは全く変わってくるぜっ!」
しかしっ!迫りくる段差!迫るガードレールゥッ! どーするっ!!
―続く―