高速走行中(100km/h~120km/h)のハンドルフレでお悩みのオーナー様からユニフォミティを見て欲しいとのご依頼がありました。
車両はアウディA6アバント3.2FSIクワトロです。通販でタイヤホイールセットを購入して装着後、ハンドルのブレ(高速シミー)が出て、何度かホイールバランスを取り直したが治らずバーデンのブログを見てご来店されました。毎度お馴染みの高速シミーですが、果たして治るのでしょうか?
オーナー様と一緒に試乗してみます。確かにシミーが発生していますが、なんとなくユニフォミティ不良のような感じではなく、すごく細かい振動がある速度域でのみ発生します。タイヤはハンコックVENTUSV4ES 245/35R19 です。
アジアンタイヤは品質のばらつきが大きい事が多いので怪しいと思いつつユニフォミティテスターバランサーGSP9700にセットして測定します。
4本ともに測定した結果ですが、意外にユニフォミティ、重量バランス共に良好でした。左リアのみRFVが125Nといまいちですが、リアなのでステアリングが振れるほどでは無いように思います。
とりあえず一旦タイヤを外します。
ホイールのみで、ビードシート部のラテラルランナウト(RRO)を測定して、ユニフォミティマッチングでタイヤを組み付けます。
4本ともにホイール、タイヤ共に良好でした。左リアも組込み(嵌合)不良のようで、RFVは70Nと大幅に低減しました。
ユニフォミティマッチング後の数値です。特に問題なく良好です。数値的には振動の原因は見当たりません。
車両に取り付けようとしてハブリングを装着して初めて原因が判明しました。
ハブリングがぐらぐらです。1mm程度動いてしまいます。
ハブリングを外した状態ですが、ハブ側が少し凹んでいるのが分かるでしょうか?
横から見るとよく分かります。最近のアウディはハブが少し特殊な形状をしています。多分固着防止の為だと思われますが、ハブの車両側の直径が少し小さくなっています。
これでは厚みの薄いハブリングの場合(今回は約5mm)は遊んでしまって芯が出ません。国産車のように、スタッドボルトにナット締めの場合は、ナットのテーパーで芯が出やすいですが、輸入車に多いボルト締めの場合は、ハブセントリック(ハブにぴったり)でないとかなりの確率でブレます。
今回のアウディの場合は厚みが10mm程度のハブリングが必要です。出来れば精度の良い金属製の物がベストです。
国産用のハブリングはほとんど在庫しているのですが、輸入車用は有りませんので人力で芯出しをします。
タイヤにテープを貼り、ダイヤルゲージでタイヤのラテラル(縦方向)ランナウト(RRO)を測定します。最大1mm程度振れています。これではブレブレになります。
根気よくボルトを少し緩めては締めて微調整していきます。結構な職人の技が必要になります。
少し空転させて振れを確認します。何とかギリギリ許容範囲まで追い込みました。(約0.1mm~0.2mm)
規定トルクを掛けて終了です。
早速試乗してみます。。。。
試乗した限りではシミーは出ません。振動の原因は、やはり取付時の偏芯による振動だったようです。
タイヤホイールが重量バランス、ユニフォミティ共に良好でも、車両に取り付ける時にズレてしまうと振動の原因となります。偏芯取付については、わずか0.3mmのズレでなんと車軸加振力15kgに相当します。(バランスウエイト(錘)換算で約30g程度と言われています)
ハブリングについては、入れるべきかどうか良く質問を頂くのですが、輸入車のようなボルト止めタイプは必須です。ない場合はかなりの確率で微振動が発生します。国産車のようなナット止めタイプは、正確な手順で装着するとほとんど問題は出ませんが、ハブリングを入れておいたほうがより安心だと思います。
ハブリングについての注意事項ですが、ハブリングが固着して外れなくなる事が良くあります。固着防止に銅グリス等を塗布しておくと固着防止になります。
パンクや純正戻し等で、純正ハブ径のホイールに付け替える場合は必ずハブリングを外して下さい。忘れるとタイヤが外れる等の重大事故に繋がります。
今回実施した、ダイヤルゲージ等を用いた車両への取付(無負荷状態のランナウト)ですが、前提としてユニフォミティ(RFV)が良好な場合のみ有効です。
いくら無負荷状態のランナウトが良好でもRFVが悪いと振動が発生してしまいますので、誤解無きようお願いいたします。おまけにタイヤホイールを脱着するとまた狂ってしまいますので。。。。
今回は何とか直すことができて良かったです。
オーナー様ご利用ありがとうございました。(早めにハブリングを導入して下さいね)
昨年書いた 車両の左流れの原因は? ですが、いまだに全国からお問い合わせを頂きますしPVも多いです。
特にVW、アウディ等の輸入車やアジアンタイヤや逆輸入タイヤを使用しているオーナー様が真直ぐに走らずに非常に困っていらっしゃるようです(VW 左流れ で検索すると炎上してたりします)。
記事を読み返してみると今一つ分かりにくい部分も有りますので再度なるべく分かりやすい(?)ようにユニフォミティに絞って解説したいと思います。
アライメントやサスペンション等車両側は全て正常で、路面は平坦なのに走行すると左(右)に流れる症状の原因はタイヤのユニフォミティの一つであるラテラルフォースバリエーション(LFV)不良です。
(1)ユニフォミティとは、均一性を指します。タイヤのユニフォミティとは広義には次の3つの事を指します。
①重量の均一性
重量的なアンバランスを指します。タイヤはゴムと金属等を張り合わせた物なので重い所と軽い所が出来てしまいます。タイヤ交換時にホイールバランサーで測定してバランスウエイト(錘)を装着する事でアンバランスを修正します。
②寸法の均一性
無負荷状態のタイヤの真円度を指します。昔は2分割の金型で鯛焼のように製造していましたが、現在は8分割以上の金型を使用する場合が多く見た目上の真円度はかなり良くなりました。大昔はでこぼこを削って真円に近づけていました。
③剛性の均一性
タイヤは金属やゴム等を張り合わせて出来ているので、場所により剛性のアンバランスが出来ます。簡単に言うと硬い部分と柔らかい部分が出来てしまいます。この剛性のアンバランスを狭義のユニフォミティと言います。バーデンでも剛性のアンバランスの事をユニフォミティと表現しています。
(2)剛性の均一性(以下ユニフォミティ)には、主に3つの力の変動力(フォースバリエーション(FV))が有ります。 測定方法はリム組したタイヤに一定の荷重を掛けて回転ドラムに押し当ててタイヤに発生する変動力を測定します。 詳しくはこちら(PDFです)
①ラジアルフォースバリエーション(RFV)
タイヤの径方向の変動力 (主に振動の原因となります)
②ラテラルフォースバリエーション(LFV)
タイヤの幅方向の変動力 (主に車体が左(右)に流れます)
③トラクティブフォースバリエーション(TFV)
タイヤの接線方向の変動力(主にRFVと関係して振動の原因となります)
(3)ラテラルフォースバリエーション(LFV)は、主に次の2つの力(残留コーナーリングフォース(RCF))に分けられます。
①プライステア(プライステア残留コーナーリングフォース(PRCF))
主にタイヤの骨格であるスチールベルトの向きや角度、トレッドパターンで発生します。特徴はタイヤを前後左右裏表に入れ替えても同一方向に流れます。 (回転方向により反転)
②コニシティ(コニシティ残留コーナーリングフォース(CRCF))
主にサイドウォールの剛性のアンバランスやベルトの位置ずれで発生します。特徴は左右をインアウト入れ替えずに付け替えると反対方向になります。 (回転方向に関わらず同一方向)
プライステアとコニシティは力が作用する方向が逆の全くの別物ですので注意が必要です。これがごっちゃになると解決が難しくなります。
車両流れの場合すぐにアライメントに目が行きますが、アライメントも重要ですが、その前に車体に対してタイヤが正確に装着されているかが一番重要です。タイヤが正確に装着されていないと、アライメントはタイヤが回転する度に変化します。
プライステアを利用した右側通行用タイヤと左側通行用タイヤについてですが、ラジアルタイヤを作る上で構造上スチールベルトの向きを右上がりか左上がりかのどちらかしか選択肢が無く、どうせ流れるなら路面カント(傾斜)に合わせた方がましなのでそうなっていると個人的には考えています。現在では各メーカーはRCFはなるべく無くそうとしているようです。最近のブリヂストンの左右非対称サイドウォール等はコニシティを使用した物で理にかなっていると思います。(問題が多い某メーカーは、RCF低減の特許がらみで作りたくても作れないのが原因な気がします。。。)
ユニフォミティを念頭に置き、実際に車両が流れる場合の原因の推定方法ですが、平坦な道路を走行して流れ方を見ます。左に流れる場合、ステアリングは右に切った状態で直進するはずですが、手を離した場合でもほぼ問題なく直進する場合は、リアのトー(スラストアングル)かフロントのトーのセンターが出ていない場合が多いです。リアのトーが調整出来ない車両に多い症状です。(キャスター、キャンバーの左右差が10分以内程度でも同様な症状の場合が多いです) この場合はあまり問題が無い場合が多く、ハンドルセンターが気になる場合は右に切った状態でフロントのトーを調整します。
問題は、常に右に力を入れていないと直進しない場合です。この場合は、ユニフォミティ不良の可能性大です。キャスター、キャンバーの左右差を測定して、10分以内程度でしたら、フロントのタイヤをアウトインを変えずに左右入れ替えます。入れ替えて流れる方向が逆になればコニシティが原因です。流れる方向が変わらない場合はプライステアが原因と考えられます。次に片側ずつ前後に入れ替えて流れ方を見ます。入れ替えて流れ方が変化したタイヤが原因です。
特にプライステアが発生しているタイヤは偏摩耗します。左流れの場合は、常に右にステアリングを切るので、右前のタイヤはトーアウトに(内減り)左前のタイヤはトーイン(外減り)になり偏摩耗するので、タイヤの摩耗を見て判断することも可能です。
以上が大まかなトラブルシューティングとなりますが、プライステアが悪いタイヤを判断するのはかなり難しいです。バーデン自慢のGSP9700でもコニシティは測定出来ますが、プライステアは難しいようです。
有機物で出来た粘弾性体であるタイヤは、実際は想像以上にばらつきが大きいのが現実のようです。某タイヤメーカーに同一サイズの同一銘柄の重量の公差はどれぐらいですか?と質問した所、5%ですと回答されました。17インチタイヤで大体10kg程度ありますので、誤差は500g程度が許容範囲となります。いかにタイヤを均一に作る事が難しいかの事例だと思います。 ですので、同じ車両に同じタイヤでも症状が出たり出なかったりします。
車両と路面の唯一の接点であるタイヤは、非常に重要です。出来ましたら信頼性の高い物を正確に装着され、日常点検される事をお勧めします。タイヤは命を載せていますので。
(個人的な経験に基づいた考え方ですので、間違い等有りましたらご容赦ください。)

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